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史上初「マイノリティ・プレジデント」の憂鬱 イアン・ブレマーが占う英国EU離脱後の世界 迫りくる「先進国リスク」    
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/791.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 3 月 31 日 22:10:34: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

史上初「マイノリティ・プレジデント」の憂鬱 
2017/03/31
斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)
 トランプ大統領にとって首都ワシントンのホワイトハウスほど居心地の悪い住宅環境はないだろう。就任以来、2階のベッドルームから見下ろすペンシルバニア大通り周辺では、連日のように騒々しい「アンチ・トランプ」集会やデモが繰り返され、ウェスト・ウィング(西館)大統領執務室で取り組む内外政策は思うように進まず、八方ふさがり状態だ。その背景に、いまだに多くの国民の支持が得られない厳しい現実がある――。


(GettyImages)
 ワシントン政界を敵視し、「アウトサイダー」の看板を掲げて鳴り物入りで登場したトランプ大統領。だが、今後の成否を占う上でもうひとつ無視できない特異性がある。すなわち米国史上前例のない「マイノリティ・プレジデント」であるという事実だ。

 「マイノリティ」とは、白人が主流を占めるアメリカ社会では通常、黒人、ヒスパニック、アジア、アラブ系などの「少数民族」をさすが、トランプ氏の場合は、「マジョリティ」(多数派)でなく「マイノリティ」(少数派)の支持しか得られていない大統領であることを意味している。

 トランプ政権発足以来の各種世論調査機関が随時公表してきた大統領支持率が、そのことを示している。 とくに、草分け的存在であるギャラップ社が、就任式以後、毎日一貫して実施してきた、有権者1500人を対象とした大統領支持率追跡調査Daily Trackingのデータは注目に値する。

 それによると、初日の1月20日では「支持」「不支持」が共に45%でまったくの互角だったが、翌日調査では「不支持46%」が「支持45%」を上回った。その後、3日目、4日目にいったん「支持46%」「不支持45%」と逆転したものの、以後、60日以上も連続して「不支持」が「支持」を上回ってきており、3月26日には「不支持57%」「支持36%」と、大統領を「支持しない」と答えた人が21%もの差をつける結果となっている。

 しかも、連日発表される数字には多少の変動こそあるものの、特筆すべきは、支持率は就任以来、今日に至るまで1日たりとも過半数を超えたことがないことだ。米議会調査局(CRS)の長年の知人は、「彼こそまさに歴史に残るマイノリティ・プレジデントだ」と言い切る。

 実際、歴代大統領の場合を見ると、少なくとも就任後100日間の「ハネムーン(蜜月)期間」の支持率は、近年のクリントン(1993年)、ブッシュ(2001年)、オバマ(2009年)各大統領は言うに及ばず、建国以来まで遡っても、誰もが60〜80%台の高い支持率を記録してきた。つまり、過去のどの大統領も「マジョリティ・プレジデント」だった。就任以来、1日たりとも50%をクリアできない「マイノリティ・プレジデント」はトランプ氏が初めてだ。

 このことは、ホワイトハウス入り前から本人が十分自覚していたはずだ。昨年11月の選挙で選挙人の数でこそ多数を制したものの、投票総数では民主党のヒラリー・クリントン候補に280万票もの差をつけられる結果だったからである。トランプ氏には“illegitimate(正当性を欠く)President”とのレッテルさえ貼られている。

大統領令の連発

 そこで彼が人気挽回策として就任直後から矢継ぎ早に打ち出してきたのが、オバマ前政権がスタートさせた国民医療保険制度「オバマケア」の撤廃、環太平洋経済連携協定(TPP)からの脱退宣言、イスラム諸国からの移民・旅行者入国禁止、メキシコ国境沿いの不法入国者阻止のための「壁」建設構想など、一連の大胆ともいえる大統領命令だった。   

 ところが、選挙公約の目玉としていたオバマケアの撤廃とそれに代わる共和党代替法案は、下院共和党内の多数の造反と民主党の反対で撤回となったほか、入国禁止令もハワイ、ワシントンなどの連邦地裁で差し止められ、巨額の費用を要する「壁」建設計画も、メキシコ政府の反対にあい具体的な実現のめどが立っていない。

 それでもトランプ氏は少なくとも表面上は、強気の姿勢を崩さず、「オバマケア撤廃は一時棚上げでも、次は大幅減税に着手する」とホワイトハウス執務室で報道陣を前に大見えを切って見せた。しかし、米議会法案審議に詳しい政界筋は「代わる財源確保のめどがたたないまま法人税などを大幅カットすれば財政赤字はふくらむだけであり、共和党内の反発も少なくなく、下院可決はオバマケア代替法案以上に難しい」と指摘する。

 一方、昨年以来マスコミで取りざたされてきたロシア諜報機関の米大統領選介入疑惑をめぐり、連邦捜査局(FBI)、米議会における真相解明の動きも、トランプ政権にとっては気がかりだ。

 すでにコーミーFBI長官が3月中旬、下院情報特別委員会での証言で、ロシア政府が選挙期間を通じ、プーチン大統領に批判的だった民主党のヒラリー・クリントン候補の当選を阻止するため違法性の高い対米諜報工作に乗り出していたことを事実上認めたほか、現在すでに、トランプ陣営がロシア側と共謀した可能性も含めて捜査中であると明言した。

ウォーターゲート事件並みの超党派の議会特別調査委員会設置

 これとは別に、共和党の重鎮ジョン・マケイン上院軍事委員長らを中心に、ロシアとトランプ陣営との共謀疑惑解明のため、ウォーターゲート事件並みの超党派の議会特別調査委員会設置の動きも見逃せない。そしてもし調査の進展具合で、大統領自身もこれに関与していた疑惑が出てきた場合は、最悪の場合、弾劾に追い込まれる可能性も否定できなくなりつつある。

 トランプ大統領は、就任以来、週末はワシントンではなく、南フロリダの自慢の別荘「マー・ア・ラーゴ」でメラニア夫人と過ごすことが多くなった。その回数は3月半ばまでの間にすでに5回にも及んでいる。そしてかたや、自らの出身選挙区かつ“郷里”でもありながら、大統領選ではクリントン候補に大敗したニューヨーク市。今なお断続的にトランプ批判デモが続くその中心部マンハッタンの一等地にある豪華絢爛たる自分のトランプ・タワーでは、夜も落ち着いて眠れないというのだろうか。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9247


 


イアン・ブレマー氏が占う英国EU離脱後の世界

インタビュー

「Gゼロ」の混乱、10年は続く
2017年3月31日(金)
3月29日、英国はEU(欧州連合)に対して正式に離脱を通知した。英国の離脱は、大国主導の統治体制からリーダー不在の時代への突入を意味する。『日経ビジネス』では、英国が国民投票によりEU離脱を決定した後の2016年7月に、国際政治学者イアン・ブレマー氏に話を聞いた。同氏が予測する新しい世界の姿とは。

イアン・ブレマー(Ian Bremmer)氏
米国際政治学者。1994年米スタンフォード大学で博士号を取得。25歳で同大学フーバー研究所の史上最年少研究員に。98年にシンクタンク、ユーラシア・グループを設立し、政府系機関や金融機関、多国籍企業など約300の顧客を抱える。(写真=Mayumi Nashida)
英国のEU離脱をどう位置付けていますか。

イアン・ブレマー氏(以下、ブレマー):私がシンクタンクを設立した1998年以来で最大の地政学リスクだと考えている。戦後、世界は米国1極の『G1』から、先進国の『G7』、中国やインドを交えた『G20』体制へと極を分散させてきた。そして今や世界に圧倒的なリーダーが存在しない『Gゼロ』の時代に入った。英国のEU離脱はその象徴的な出来事だ。

 2001年に米同時多発テロが起きた当時、米国はまだ世界への影響力があり、リーダーシップを発揮してテロ対策を先導した。2008年の金融危機時も、力は弱まりつつあったが、米国を中心に国際的に連携し、金融・財政の両面で対策を打った。

 今回は事態を収束する国が見当たらないどころか、英国に続こうとする勢力が増えている。金融市場や世界経済のマイナス要因だけと考えず、欧州全体が長期間にわたって脆弱な状態に陥る、地政学リスクとして捉えるべきだ。すぐに効き目の出るような対策は存在しないため、この先5年、10年はかかる息の長い対応が求められることになる。

欧州は解体の道へ向かっているということでしょうか。

ブレマー:残念ながら国家を超えて共通の価値観でまとまるという実験は失敗に向かっている。今や大欧州の崇高な理念は風前のともしびであり、もう元には戻らないだろう。

 一方で、経済面での結びつきが弱まることはない。EUの単一市場はなくならないだろうし、経済統合プロセスは今後も続くだろう。

 EUは拡大を急ぐあまり、ロシアやトルコに拙速に近づきすぎた。EUと彼らでは政治理念や経済価値が違いすぎる。そのひずみが、中東から大量に押し寄せる難民問題や、欧州各国で頻発するテロとなってEUを混乱させた。

再び大国がリーダーシップを発揮する時代が来る可能性はありますか。

ブレマー:有力候補はやはり米国と中国だ。中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を主導し、自前の製品開発力を高め、サプライチェーンも構築している。アジアの一部の国にとって中国は既にリーダー国となっている。ただ、中国はかつての米国のように、世界の警察になるつもりはない。世界の貿易を振興しようという考えもないだろう。

 米国も多方面で貿易関係を構築することよりも、特定の国との緊密な関係を選ぶようになった。そこに長期的な外交戦略はなく、より商業的な価値や自国のセキュリティーが優先され、保護主義的な意味合いが強くなっている。これは次の大統領が誰になっても変わらないだろう(※このインタビューが行われたのは、米大統領選挙でトランプ氏が当選する前だった)。

 ただ、米国も中国も経済、地政学の両面で安定した欧州を望んでいる点で利害関係は一致しており、今後はつながりが強まる可能性もある。

大国のリーダーシップが失われつつある一方、各国には大衆迎合主義(ポピュリズム)が台頭しています。

ブレマー:グローバル化によりわずかな富裕層が多くの富を抱え込む構造が定着した。それでも、世界経済が成長している間は、中間層の所得が上昇し、国が豊かになっていた。しかし金融危機以降に成長が停滞し、中間層はかつてのような収入増は見込めず、富裕層は租税回避地などを利用して所得を防衛するようになった。

 広がる格差は多くの中間層や低所得層にとって国家に対する不信感と不満につながり、ポピュリストはそれを巧みにあおる。『我々のことを考えない政治エリートに罰を与えよう』と。

 英国では移民問題や経済への影響が争点になったと言われるが、それは表層的な理由だ。その裏にある、大多数の国民が政治的なエスタブリッシュメントに抱いていた不満が大きかった。この状況は、英国だけでなく欧州各国や米国で見られる現象だ。

政治的な指導力を発揮することがますます難しくなっていると。

ブレマー:その一方で、興味深い動きもある。ローマ法王のような、国家を超えた組織の指導者が重要なリーダーシップを果たしていることだ。ローマ法王は、今や世界を二分するようなテーマに積極的に関わっている。非科学論争や避妊、同性婚の問題など、センシティブだがどれも極めて大事なイシューだ。

 昨年、地球温暖化防止を議論したパリ会議でも、陰で影響力を発揮したのは、ビル・ゲイツ氏やイーロン・マスク氏といった企業家だった。国家の影響力が相対的に衰える中で、こうした新しい形のリーダーシップは今後さらに重要性を増すだろう。

(日経ビジネス2016年7月25日号より転載)

【4月13日開催!】イアン・ブレマー氏 来日記念セミナー
“迫りくる「先進国リスク」に、企業としていま何をすべきか”
 欧州問題を早くから提言していたユーラシア・グループ代表のイアン・ ブレマー 氏(政治学博士)が来日。さらに企業経営者やPwC Japanグループ のブレグジット・アドバイザリー・チームに登壇いただき、今後想定される 主要国の政策シナリオ、ならびにその政策シナリオに基づいた各企業として の対応策を検討する上でのポイントを解説します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/230078/033000080


 
イアン・ブレマー氏 来日記念セミナー 迫りくる「先進国リスク」に、企業としていま何をすべきか」
 英国のEU離脱や米国のトランプ新政権誕生によるナショナリズムの台頭に伴う先進国における地政学リスクが高まっています。その影響は日々の為替、株式・債券市場はもちろん、企業の運営や投資活動、さらに各国の経済政策、TPPなどの通商政策にも及ぶのは必至です。それに伴い日本企業も海外拠点の対応やオペレーション、通貨・財務運営の見直し、さらに長期的な経営・投資戦略までの検証と備えが欠かせません。
 本シンポジウムでは、欧州問題を早くから提言していたユーラシア・グループ代表 イアン・ブレマー 氏(政治学博士)を迎え、さらに企業経営者やPwC Japan グループのブレグジット・アドバイザリー・チームに登壇いただき、今後想定される主要国の政策シナリオ、ならびにその政策シナリオに基づいた各企業としての対応策を検討する上でのポイントを解説いたします。
(同時通訳にて御聴講いただけます)
開催概要
日時
2017年4月13日(木) 13:00〜17:15 (12:30開場予定)
会場
ベルサール東京日本橋 B2 ホールC
(〒103-0027 東京都中央区日本橋2−7−1東京日本橋タワー)
主催
日経ビジネス
特別協賛
PwC Japan グループ
受講料
一般      :33,000円(税込)※「日経ビジネスDigital版セット」半年間購読付
日経ビジネス読者 :25,000円(税込)
※PwC Japan グループと同業者さまの御登録はお断りさせていただいております
(事前登録制)
プログラム
※講演者や講演時間など、プログラムは変更になる場合がございます。予めご了承ください。

12:30〜
開場

13:00〜14:30
基調講演
「迫りくる「先進国リスク」 本格的なGゼロ時代の地政学リスクを読み解く」

ユーラシア・グループ代表
イアン・ブレマー 氏(政治学博士)
※13:45分からQ&Aセッションを実施 
14:30〜15:15
【講演1】
「英国のEU離脱で揺れる欧州政治動向 欧州内の選挙動向から今後の地政学シナリオを考える」

ユーラシア・グループ ヨーロッパ マネージングディレクター
ムシュタバ・ラーマン 氏
15:15〜15:30
休憩

15:30〜16:15
【講演2】
「英国のEU離脱シナリオ、ならびに米国の外交・経済政策に向けた日本企業の課題と対策」

PwCアドバイザリー合同会社 ブレグジット・アドバイザリー・チーム
舟引 勇 氏
16:15〜17:15
【パネルディスカッション】
「ブレグジットならびに米国の外交・経済政策に向けて、企業としていま何をすべきか」

日本企業 海外担当役員(調整中)
PwC コンサルティング合同会社 ストラテジーコンサルティング(Strategy&)
尾崎 正弘 氏
PwC税理士法人
小林 秀太 氏
モデレーター:日経BPビジョナリー経営研究所 研究員 酒井耕一
http://ac.nikkeibp.co.jp/nb/0413eu/
 

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コメント
 
1. 2017年4月02日 14:52:00 : 2ba1UeOS2E : 62OIab_eEe0[429]
抜書きしてみた
欧州は解体の道へ向かっているということでしょうか。

国家を超えて共通の価値観でまとまるという実験は失敗
一方で、経済面での結びつきが弱まることはない。EUの単一市場はなくならない

再び大国がリーダーシップを発揮する時代が来る可能性はありますか。

有力候補はやはり米国と中国だ。
アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立
世界の警察になるつもりはない
世界の貿易を振興しようという考えもないだろう。

米国も多方面で貿易関係を構築することよりも、特定の国との緊密な関係を選ぶようになった。そこに長期的な外交戦略はなく、より商業的な価値や自国のセキュリティーが優先され、保護主義的な意味合いが強くなっている。

 ただ、米国も中国も経済、地政学の両面で安定した欧州を望んでいる点で利害関係は一致しており、今後はつながりが強まる可能性もある。


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