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ロンドンテロ直後の情けない世相
語るべきは、鈍った心に刺さる思いがけない出来事
2017.3.28(火) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年3月24日付)
英議会襲撃、新たに容疑者1人拘束 捜査はメッセージアプリに焦点
英ロンドンの襲撃事件の現場となったウェストミンスター橋で、犠牲者に手向けられた花束(2017年3月26日撮影)。(c)AFP/Daniel LEAL-OLIVAS〔AFPBB News〕
これについて、本当に語る価値のあることなど存在するのだろうか。一時的とはいえ人々を日常から非日常へと追いやったロンドンでの忌まわしい事件の後、日常に戻る過程で見られたのはうんざりしてしまう光景だった。
まず、ソーシャルメディアにユニオンジャックが現れた。弔意を表すためだが、むしろ、我々英国人がテロの犠牲者というおぞましいクラブに再度加わったことを思い出させる方向に作用するように思われる。また、セキュリティーの「専門家」が続々と登場し、以前語っていたことを繰り返した。
政治家たちは、国民の決意を強固にしようと、どうしようもない決まり文句を羅列した。ポピュリストや識者たちは、悲惨なほど予測可能でたいくつな反応を示した。事実の概略すら把握せずに、今回の攻撃は自分の指摘が正しかったことを裏付けていると躍起になって主張したのだ。ドナルド・トランプ・ジュニア、英独立党のナイジェル・ファラージ、同党の支援者アロン・バンクス、コラムニストのケイティ・ホプキンス――人々の期待に絶対に届かないことを最も得意とする、何とも風変わりな人たちだ。
たとえ政治家が適切なコメントをしても、その言葉は繰り返されることですぐに希釈されてしまう。事件が起きた水曜日の夜には、まさにそんな光景が見られた。テリーザ・メイ首相は警察官らに言及し、「ほかの人々には逃げるよう促しながら、自らは危険な場所に向かって駆けていった」と称えた。この対応には筆者も胸を打たれた。
ところが国防相が繰り返し用いたせいで、翌朝にはこのフレーズは常套句になり、心の深いところに響く言葉ではなく、唱えられるだけの言葉になってしまっていた。国防相はこのフレーズのようには考えていない、と筆者は言っているわけではない。ただ、どのように言えば価値のある発言になるかは自分で考えなければいけない、と言っているだけだ。
翌日の木曜日は朝から晩まで政治家たちが、キャスターらの求めにとことん応じて同じお題目を口にしていた。テロリストが勝利することはない、我々の暮らし方は変わることなく続いていく、という例の表現だ。これ以外のことを言ってもらえることはないだろう。国民もこの言葉を聞きたがっているし、ほとんどの人はこの通りだと思っている(もっとも、犠牲者の家族はテロリストが負けたとは思わないだろうが)。
そして、ほとんど時を置かずに始まったのが、ミスをしたのは誰でどんなミスを犯したのか、誰に責任があるのかという追及だ。国民は、警備に何らかの不備があったのだと思いたがっている。もしそうであれば、あらゆる残虐行為を自分の手で防止する可能性が残ることになるからだ。たとえこの事件に、ロンドンまで車を飛ばしてきた1人の男の犯行だとして片付けるわけにはいかない部分が多少残るとしても、だ。
今回のテロ攻撃が行われるほんの少し前に、下院議員たちがマーティン・マクギネス――英国が生んだ最も悪名高いテロリストの1人――に追悼の意を表していたというのは、かなり皮肉な話だ。野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、親しげに「マーティン」とファーストネームで言及することさえした。
マクギネスは、若かりし頃に暴力に明け暮れた後に政治家に転じ、最終的には北アイルランド自治政府の副首相に上り詰め、ネルソン・マンデラにたとえられるほどになった(南アフリカ共和国と違い、北アイルランドではテロに代わる民主的な方法が認められていたが、そのことを人々は忘れていた)。
マクギネスが称えられるのはその人生の第2章、すなわち、アイルランド共和軍(IRA)のデリー旅団から正式に身を引いた時代の行動のためだ(ちなみにこの旅団は、1人の男性の家族を人質にとり、その男性に爆発物を満載したトラックを運転させ、そのまま軍の検問所に自爆攻撃させるという「人間爆弾」を開発した)。
武力闘争に失敗したマクギネスは、IRAを話し合いの場に連れてくる上で重要な役割を果たした。そのおかげで死なずに済んだ何万人もの人々を考慮して発言するなら、多少の追悼の言葉くらいどうということはない。しかし、もし暴力に走っていなかったら、マクギネスが交渉のテーブルに着くこともなかっただろう。これでも、テロリストが勝利することはないと言えるのだろうか。
では、本当に語る価値のあることとは、どんなことなのか。それは恐らく、先日の水曜日のような日には、人々の鈍った心に刺さる、はっと息をのむような思いがけないことが起こる、ということだろう。それは、走って逃げたいと思ったに違いないのにウエストミンスター橋にとどまり、重傷を負った人々を助けたり元気づけたりしようとした人々がいたことであり、近くの聖トマス病院から看護師や医師が飛び出してきたことであり、トバイアス・エルウッド下院議員の顔に血がたくさんついたりしたことだった。
外務次官のエルウッド氏は元兵士で、ほかの議員が逃げるように言われている時に外に飛び出し、倒れた警察官の命を救おうとした。エルウッド氏が優秀な次官かどうか筆者は知らないが、勇敢で立派な人物であることを身をもって示した。予想外のことを、予想外に見事にやってのけた。本人は恐らく、たいしたことではないと言うだろうが、筆者にはそうは思えない。
このように同情の念が示されたり英雄的な行為がなされたりする瞬間、そしてそれほど劇的ではなくありふれてもいるが思いやりのある行動は、心に刺さる。感想を述べるに値するのは、「たいしたことではない」とあっさり片付けられる平凡なことだ。こうした出来事、小さいが非常に大きな意味を持つものこそ、語るに足ることなのだ。
By Robert Shrimsley
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49542
宇宙の姿が変わる!私たちはすごい時代を生きている
重力波にヒッグス粒子、少しずつ分かってきた宇宙の秘密
2017.3.27(月) 小谷 太郎
この星空の果てがどうなっているか、少しずつ分かっていくかもしれない。
筆者がJBpressを介して皆様にこうして記事をお届けするようになって1年経ちました。1年の間には、X線天文衛星「ひとみ」に悲劇的な事故が起きたり、113番元素がニホニウムと命名されたり、熱力学・統計力学の新たな法則が発見されるなどなど、驚きのニュースが相次ぎました。自分の記事の目次を見返して、いろいろあったなあと感慨にふけっております。
科学のニュースはいつでもどれでも驚きなのですが、実は私たちの宇宙観を変えるほど超重要な発見や衝撃的な報告が、この21世紀に入ってから相次いでいるのです。16%が経過した21世紀に、どんな事件があったか、宇宙の姿がどう変貌したか、最近の件からさかのぼって思い出してみましょう。
2015年、重力波発見
アインシュタインの一般相対論が予言する、時空のさざ波「重力波」は、検出が極度に困難なため、100年の間、検出は不可能でした。
しかし2015年9月14日9時50分45秒(世界標準時)、巨大で精密な重力波検出装置LIGO(ライゴ)が、人類史上初めて重力波を検出することに成功しました。太陽質量の36倍と29倍のブラックホールが13億年前に衝突・合体し、その際に放射された重力波が地球に到達し、LIGOをほんのわずかだけ振動させたのです。
これにより、重力波とブラックホール両方の存在が疑問の余地なく証明され、同時に重力波天文学が創始されました。
2017年現在、LIGOは2期目の観測を行なっています。今回は何が飛び出てくるのか、楽しみに待ちましょう。
2014年、よその恒星の惑星が1000個を超える
太陽系には惑星が四捨五入して10個ほどありますが、よその恒星がはたして惑星を持つのかどうかは、数世紀にわたって知りようがありませんでした。なにしろ最も近い恒星でさえ、光の速さでも何年もかかる遠方にあります。そこのちっぽけな惑星を検出するには、すさまじく高度な望遠鏡技術が必要です。
しかし約500年のたゆまぬ技術開発のおかげで、1995年には太陽系以外の恒星の惑星(系外惑星)が初めて検出されました。太陽系以外にも惑星が存在したのです。
以来、系外惑星の数は年々増え、特に宇宙機「ケプラー」は、むちゃくちゃな勢いで新・系外惑星を検出していきました。2014年、人類の知る系外惑星の数は1000個を超えました。
この宇宙は惑星に満ちているのです。中には生命を宿すものもあるかもしれません。夜空を見上げる時、そのことを意識せずにはいられません。星の王子様風に表現すれば、21世紀の星空が美しいのは、どこかに生命を隠しているからなのです。
2012年、ヒッグス粒子発見
20世紀末から21世紀にかけて、素粒子物理学でも著しい発展がありました。
「トップクォーク」という重い素粒子が発見され、幽霊のような「ニュートリノ」が質量を持つことが確実になり、そして2012年には「ヒッグス粒子」がとうとう発見されました。
ヒッグス粒子は、50年前に理論的に予言されて以来、検出が待ち望まれてきた素粒子です。そのあいだ、建造される粒子加速器はどんどん大規模になり、世界最大の粒子加速器LHCは全周27kmという途方もない大きさになりました。ヒッグス粒子を合成するのにはこの大きさが必要だったのです。
これで、存在すると予想された素粒子はあらかた出揃いました。これまでに発見された17種の素粒子は「標準模型」と呼ばれる素粒子理論で説明されます。ここのところ見つかる素粒子は標準模型の予想におおむね従っているし、人類は宇宙のミクロな部分をほぼ理解し尽くしたのでしょうか。
けれども、宇宙を満たす「ダークマター」や、次に紹介する「ダークエネルギー」は、既知の理論と17種の素粒子では説明できません。標準模型は近いうちに拡張する必要があるようです。
2011年、宇宙の加速膨張の発見にノーベル賞
20世紀末から、どうも宇宙は加速膨張しているらしいという証拠が出てきました。
138億年前のビッグバン以来この宇宙は膨張し続けていて、そのため、遠方の銀河を観測すると私たちの天の川銀河から高速で遠ざかっているのが分かります。宇宙の膨張自体は90年ほど前に発見されていて、新発見ではありません。
20世紀末に始まったプロジェクトは、50億光年以上という、訳が分からないほど遠くの銀河を観測して、距離と速度を精密に測定するものです。そういうことを調べると、宇宙論にインパクトのある結果が出せるんじゃないかと思ってやったら、本当にインパクトがありました。宇宙は加速しながら膨張していたのです。ほとんどの研究者はこんなこと予想しませんでした。ひっくり返るほどの驚きです。
宇宙膨張は、一般相対性理論に従って起きます。一般相対論の方程式をあれこれいじくると、宇宙の膨張を表す解が得られるのです。そして加速膨張を表す解を得るためには、一般相対論の方程式中の「宇宙項」と呼ばれる定数項を0でない値に設定しないといけません。
宇宙項は、宇宙空間を満たす「ダークエネルギー」を表すと解釈されています。空っぽで真空の宇宙空間には、実は目にも見えないエネルギーが詰まっていたのです。
一体このダークエネルギーとは何物でしょうか。量子力学において「零点エネルギー」だとか「スカラー場」と呼ばれる代物が実在したのでしょうか。どう扱えばいいのか、研究者も戸惑っている段階です。この解決は21世紀の課題です。
2001年、ヒトの全DNAが読み取られる
21世紀の初頭、ヒトの全DNA配列が発表されました。ヒトの全DNAを読み取る「ヒトゲノム計画」は、当初は不可能ともいわれましたが、約10年かけて完了しました。
ヒトのDNAは約32億塩基対、情報量にして1ギガバイト弱です。これは約2万〜2万5000の遺伝子に相当すると思われますが、そのうち役割が判明し、きちんと解読されたといえるものはごくわずかです。ヒトゲノム計画のおかげで、どういうDNA配列が書いてあるかだけは分かったものの、ほとんどはいかなる機能を持ち何の役に立つのかは不明な状態です。
この理解は21世紀のサイエンスの主要なテーマであり、生物学、医学、薬学、工業など広い分野に革新をもたらすことは間違いありません。
ヒトゲノム計画の過程で開発された新技術は、その後ますます磨きがかかり、現在では、ゲノムDNAのサンプルを与えると、その全配列を最短で数時間で読み取るまでになっています。これは生物学の手法を変革しつつあります。生物界におけるヒトの位置付けもどんどん変わっています。
このように21世紀は、宇宙がどうなっているのか、それはどういうミクロな存在から構成されているのか、私たちヒトはどのような存在なのかといった、この世界を捉える観点が大きく変化している時代です。
地球創生以来46億年経ちますが、21世紀は地球史(宇宙史?)始まって以来の稀な瞬間です。そういう革命のさなかに居合わせ、その目撃者になれることは、46億分の100ほどの大変な幸運なのです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49510
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