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ルペン氏に対抗する男、マクロン氏の強みと弱み
The Economist
人柄が魅力的なインテリは、過激
2017年3月2日(木)
The Economist
訪英したマクロン氏(写真:ロイター/アフロ)
フランス大統領候補の中で欧州統一に最も積極的な人物が2月下旬、ロンドンで演説し、熱狂的な歓迎を受けた。
エマニュエル・マクロン氏は39歳。社会党政権で、経済産業デジタル相を務めた経験を持つ。陽気で国際感覚に富み、技術にも詳しい。まさにロンドン暮らしのフランス人が敬愛するタイプの人物だ。同氏は、外国に住むフランス人の票を集めようとロンドンに降り立った。
マクロン氏は今回、無所属で立候補し、右派か左派かを問わず有権者全体に働きかける。まったく無名の候補だったが、今では世論調査で支持率2位に肩を並べる。だが仏大統領の座が近づくほど、同氏の選挙活動は厳しさを増している。
ロンドンを訪れる数日前、マクロン氏は同氏に対して敵対的な土地柄の場所にいた。軍港を擁す地中海の町、トゥーロン。伝統的に右派が優勢な地域だ。
マクロン氏が開催した集会の入り口は、激高する多数の国民戦線(FN)*支持者とピエ・ノワールにふさがれた(ピエ・ノワールは植民地時代のアルジェリアに入植していたフランス人)。人々は「マクロンは裏切り者!」との大合唱を続けた。同氏が同じ週に北アフリカのアルジェリアを訪れた際、フランスによる同国の植民地支配を「人類に対する犯罪」と呼んだことに反応したのだ。
*:フランスの極右政党。
有権者の好奇心をあおる
集会は終始そんな感じで進んだ。マクロン氏は聴衆に対し、誰かを「傷つけた」のなら「すまない」と述べる一方で、フランスは自らの歴史のあらゆる側面に向き合う必要があると主張した。会場の埋まり具合は定員の半分を少し上回る程度で、活気はなかった。人々がそこに集った理由は政治的な信念のほか、好奇心もあったようだ。
高校で数学を教えるジョンリュック氏は政治的な集会に出るのはこれが初めてだという。同氏曰く、マクロン氏に「興味を覚えた」。退職した元セールスマンのロベール氏は、共和党の予備選挙では中道右派のフランソワ・フィヨン候補に投票したが、今は「別の道を探している」という(フィヨン氏は、家族に対して議会予算から不正に給与を支払ったとの疑惑で現在取り調べを受けている。家族の勤務実態を証明するものはほとんど見つかっていない)。
かつて海軍に勤務し社会党を支持するある有権者は、魅力的なのはマクロン氏の「今までとは違う政治のやり方」だと言う。そして、誰に投票するかはまだ決めていないと続けた。
政治改革訴えるインテリ
2カ月後に第1回投票を控えるフランス大統領選挙は、最近のどの選挙よりも予断を許さない状況となっている。ひとつ、ほぼ確実に言えるのは国民戦線のマリーヌ・ルペン党首 が決戦投票に駒を進めることだけだ。
今回の大統領選は、ルペン氏との対抗レースの様相を呈する。同氏は集会をほとんど開いていないにもかかわらず、第1回投票を対象とする世論調査で約26%の支持を獲得し、トップにいる。同氏の支持者の4分の3以上が「自分の選択が正しいことを確信している」と答える。マクロン氏の場合、フィヨン氏と共に2位につけたものの、こうした熱心な支持者の割合は45%にすぎない。
だが支持率で2位につけただけでも十分驚くに値する。マクロン氏はフランソワ・オランド政権下で、大統領府副事務総長としてエリゼ宮殿(大統領官邸)最上階のオフィスで働いた。この職を辞めた後の2014年7月には、これから本の執筆をしようか、それとも哲学を教えようかとワクワク考えていたような若者なのである。
マクロン氏が昨年立ち上げた政治運動「前進!」の事務所はスウェットシャツを着た若者であふれ、新興企業と学生組織を足して2で割ったような雰囲気を醸し出している。
マクロン氏の主張は経済学者のジャン・ピサニフェリー氏 など政治に影響力を持つ大物をも惹きつける。大統領選への出馬を辞退した中道派のフランソワ・バイル氏 もマクロン氏への支持を表明している。
マクロン氏は現在、あらゆる経歴の人々を対象にして、6月に実施される国民議会選挙の候補者を募っているところだ。その目的についてマクロン氏は、「『過去の選択肢』を拒絶し、政治において『抜本的な斬新さ』を追い求め、『新しいフランス』を築くことだ」と述べている。
「彼はインテリすぎる」
だがマクロン氏が第1回投票でフィヨン氏を破るにあたって、政治経験がないことに加えて2つの障壁が立ちはだかる。ひとつは、より幅広い人々に訴えかける方法を見つけられるかどうか。現在マクロン氏を支持するのは都市部で生活する大学卒の有権者だ。
今後は、この層以外からの支持を広く得ていく必要がある。「彼はインテリすぎる」――。ある、現役を引退した元骨董商は感想を漏らした。航空母艦のシャルル・ド・ゴールが停泊し、修理を施されているトゥーロン港を一望するカフェでのことだ。
マクロン氏が訴える過度に欧州寄りの政策は、今日のフランスでは、場所によっては流行らないものだ。マクロン氏はシリア難民を受け入れるドイツの政策を支持している(同氏はドイツのこの政策が「我たち全体の尊厳を守った」と言う)。この主張は、フランスの人々の間に台頭している国家主義的なムードと対立する。
また、マクロン氏が「破壊的な技術革新」を積極的に容認していることは、次なる犠牲者になることを恐れる人たちの共感を呼ばない。調査グループIfopのジェローム・フルケ氏は「マクロン氏の支持率は工場の現場で働く労働者の間で極めて低い。そして彼らの投票なくして選挙で勝つことはできない」と指摘する。
人柄はよいけれど…
もうひとつは、現在の支持率を伸ばしている理由だ。政策の内容ではなく人柄の魅力で稼いでいる部分がある。マクロン氏は、政権の座に就いた大統領たちがただちに棚上げしたような政策案の数々を並べるよりも、フランスには「ビジョン」が必要なのだと主張する。だが明確な方針を打ち出すことをためらう同氏の姿勢は、政策が曖昧だとの批判を受けやすい。「マクロン氏が訴える政策のうちどれが最も好きか」とトゥーロンで尋ねたところ、支持者たちは答えることができなかった。
マクロン氏は近々もっと具体的な政策を発表するとしている。長らくこれを避けてきたのは恐らく戦術的な理由によるのだろう。だが、政策を明らかにすることで新たなリスクが生じる。マクロン氏が昨年出版した書籍『Revolution』で概説したアイデアの一部は、フランスにおいては極めて急進的な内容だった。
公共支出の総額を抑える、失業手当給付制度を国が引き受ける(第二次世界大戦以降、雇用者や労働組合が費用を負担してきた)、労働条件に関する交渉の大半を企業に委譲する、といった具合だ。
マクロン氏は自らを「『北欧諸国が取る政策に近い』リベラル」だと評する。フランスに必要なものと、フランス人が何に対して投票するか、この2者間で適切なバランスを得るのは難しい作業になるだろう。
マクロン氏は、歴史における類まれな機会――既成政党の候補者すべてを第2回投票にかけて打ち破り、フランスの大統領になるチャンス――を掴みかけている。世論調査の結果は、決選投票でルペン氏と一騎打ちするのは名に傷を負ったフィヨン氏ではなくマクロン氏になる可能性が高いことを示している。現在の第五共和政においては、無所属の候補者が大統領の座を勝ち取った例はない。勝利に手が届くところまで辿り着いた者さえ、これまで誰もいなかったのだ。
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Feb 25th 2017 | PARIS AND TOULON | From the print edition | Europe, All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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