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米国の恫喝に欧州はどう反応するのか
熊谷徹のヨーロッパ通信
新国務長官「防衛費を増額しないなら欧州の同盟を見直す」
2017年3月2日(木)
熊谷 徹
軍事演習を行うドイツ連邦軍の兵士たち。(撮影・熊谷 徹)
ミュンヘン中心部の高級ホテル「バイリッシャ―・ホーフ」。ここで毎年2月に開かれる「ミュンヘン安全保障会議(MSC)」は、民間団体が主催するイベントだが、ドイツ政府の首相をはじめ、主要国の外務大臣、国防大臣らが一堂に集うユニークな催しだ。比較的狭いホテルなので、通路は立錐の余地もないほど混み合うことがある。参加者は特定の条約、協定について合意しなくてはならないという、時間的なプレッシャーにさらされていないため、比較的自由に意見を交換できる利点もある。
注目されたペンス演説
今年2月17〜19日に開かれたMSCは、内外のメディアや安全保障関係者から特に大きな注目を浴びた。昨年11月にトランプ政権が誕生してから初めてのMSCであり、同政権の副大統領マイク・ペンスが参加したからである。彼が米国外で演説するのは初めてのこと。
トランプは選挙期間中に、「NATOは時代遅れだ」と言い切っていた。「トランプの大統領就任とNATOの運命/atcl/opinion/15/219486/120600023/」でお伝えしたように、この発言は、欧州に強い不安と動揺をもたらしている。欧州諸国の指導者たちは、「米国は将来も欧州の防衛に関わるのか。それとも、欧州から徐々に手を引こうとしているのか」という問題に強い関心を示している。
特にロシアが2014年にクリミアに戦闘部隊を送って強制併合、ウクライナ東部の内戦にも介入するなど、不穏な動きを強めている。ロシアと国境を接するバルト3国やポーランドでは、80年代の東西冷戦の時代に似た不安感と緊張感が高まっている。MSCで、米新政権のナンバー2が、NATOの未来についてどのような方向性を示すのかが注目されたのは、そのためだ。
「欧州諸国は約束を守れ」
ペンスが2月18日にミュンヘンで発信したメッセージは、独首相アンゲラ・メルケルら会議場を埋めた欧州諸国の政治家たちの胸に、安堵と不安が混ざった感情を生じさせたに違いない。
ペンスは、トランプのような露骨な表現を避け、「米国はNATOを力強く支援する。大西洋を挟んだ軍事同盟への関与は揺るがない」と述べた。紋切り型の表現ではあるが、少なくとも米国は、欧州との軍事同盟に関わり続けるという言質を与えた。このことは、メルケルら欧州諸国からの参加者に、一抹の安堵感を与えただろう。
だがペンスは、彼のボスからのメッセージを伝えることも忘れなかった。それは、「米国は防衛ただのりをもはや許さない」という意思表示だ。
ペンスは「北大西洋条約は、加盟国が攻撃を受けた場合、他の国が結束して反撃するという集団的自衛権の原則に基づいている。この原則は、加盟国が応分の貢献をすることも義務付けている」と述べ、「NATO加盟国は、約束した防衛費をきちんと負担することを約束した」と欧州諸国に矛先を向けた。NATO加盟国は、2006年の会議で、「2024年までに、国内総生産(GDP)に対する防衛支出の比率を、2%に引き上げる」と合意している。
その上でペンスは「この約束は、あまりにも長い間、大半のNATO加盟国によって無視されてきた。この約束を達成したのは、まだ数か国にすぎない。欧州の大国の中にも、防衛費を本格的に増やす努力を始めていない国もある。この約束不履行は、軍事同盟の基盤を侵食している」と批判した。米国の本音は、「NATOへの関与を続ける」という外交辞令ではなく、むしろこちらの方だろう。
ドイツに向けられた矛先
ペンスは名指しを避けたが、「防衛費を増額するための真剣な努力を始めていない大国」とは、欧州最大の経済パワー・ドイツのことである。NATOの統計によると、2016年のドイツの防衛支出の対GDP比率は1.19%で、2%の目標から遠く離れている。英国(2.21%)やフランス(1.78%)にも水を開けられている。ペンスは「我々は、同盟諸国がこの目標を達成することを期待している。今や、本格的な行動を始める時だ。欧州の防衛には、米国だけでなく欧州の貢献も欠かせない」と釘を刺した。
ドイツの防衛支出
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(出所:ドイツ連邦政府)
つまりペンスの発言は、「ドイツなどが応分の防衛負担を怠り、欧州の防衛について米国に過度に依存しているのは、もはや許せない。米国が将来NATOに関与し続けるのは、他のNATO加盟国が防衛費増額の約束を守った場合のみだ」というメッセージを含んでいるのだ。
MSCの会場でペンスの演説に対する拍手は、少なかった。彼の発言は、外交辞令のオブラートに包まれていたとはいえ、しょせんはトランプによる欧州批判の繰り返しである。このため欧州諸国の外務大臣や国防大臣たちは、喝采を送る気にならなかったのだろう。
MSCでメルケルは、「防衛支出の増額は、徐々に行うべきものであり、効率性についても配慮しなくてはならない。安全保障に貢献するのは、防衛支出の増額だけではない。発展途上国への援助や教育水準の改善、難民の援助も安全保障にとって重要だ」と反論。議論の焦点を防衛支出だけに絞り込むトランプ政権の姿勢を、間接的に批判した。
同時にメルケルは「対GDP比で2%」の目標達成に向けて努力する方針を強調するとともに、「欧州はイスラム過激派の脅威とロシアの野心に直面しており、米国の軍事力を必要とする」と述べ、欧州が独力ではこの2つの試練に対応しきれないという本音を漏らした。
集団的自衛権の原則から逸脱?
ペンスは3日後にブリュッセルのNATO本部で事務総長イェンス・ストルテンベルグと会談。その後の記者会見で、ミュンヘンでの演説よりも率直な表現を使い、「防衛支出の目標を達成しない同盟国に対する、米国市民の忍耐は、永遠には続かない」と述べている。彼は、そうした国に対して米国がどのような措置を取るかについては、明言を避けた。
ペンスに先駆けて、2月15日にNATO本部を訪れた米国の国防長官ジェームズ・マティスは、ペンスよりも単刀直入に「他のNATO加盟国が防衛費増額の努力を怠るならば、米国は欧州防衛への貢献を減らす」と語った。これは、欧州に対する「恫喝」もしくは脅迫とも取れる発言だ。
欧州の加盟国が最も強く懸念しているのは、北大西洋条約の第5条、つまり「NATO加盟国は、他の国に対して行われた軍事攻撃を、自国への攻撃とみなす」という原則が、トランプ政権によって揺るがされることだ。トランプがNATOを批判して以降、「欧州諸国は、対GDP比2%の目標を達成していない国が攻撃されても、米国は自国への攻撃と見なさず、反撃しないのではないか」という懸念を強めている。
この点について、NATOの事務総長ストルテンベルグは、ペンスとの共同記者会見で「北大西洋条約の第5条が定める集団的自衛権について、(防衛費負担などの)条件を全く付けていない」と釘を刺している。この発言は、ロシアからの脅威に最も直接的に曝されているバルト3国やポーランドが抱く不安を緩和するためだろう。
独の2024年までの目標達成は不可能
さてペンスに批判されたドイツにとって、2%の目標達成は容易なことではない。ドイツはロシアがクリミアを併合した2014年以来、防衛支出を毎年引き上
げている。その増加率も、年々増えている。2017年には防衛支出を前年比で7.9%と大幅に増やした。その伸び率は、GDP成長率を上回る。
だがストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が2015年の各国の防衛支出を比較した統計によると、ドイツの支出は393億9300万ドルで、米国(5960億ドル)の約15分の1に過ぎない。
主要NATO加盟国の防衛支出の対GDP比率(2016年)
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(出所:NATO)
NATOの統計によると、2016年のドイツの防衛支出の対GDP比は、NATO加盟国28カ国中で第16位(2%の目標に達しているのは、米国、ギリシャ、英国、エストニア、ポーランドの5カ国だけ)。つまりNATO加盟国の82%は、2%の目標に達していない。
ドイツの防衛支出の対GDP比率
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(出所:ドイツ連邦政府・NATO)
ドイツの2%達成が難しい理由は、経済規模が大きいことだ。2017年のドイツの防衛支出は、370億ユーロ(約4兆4400億円)。2016年のドイツのGDPは、3兆1330億ユーロ(約375兆9600億円)。GDPの2%は、627億ユーロ(約7兆5192億円)である。
つまりドイツが米国に対する約束を果たそうとすると、防衛支出を現在より257億ユーロ(約3兆840億円)も増やす必要がある。約70%もの増額だ。欧州最大の経済パワーといえども、これは難題である。ドイツが7年以内、つまり2024年までに、2%の目標を達成するのは不可能であろう。
米国への依存からの脱皮を目指すドイツ
トランプの圧力は、欧州の安全保障地図を塗り替え、米国からの「乳離れ」を促す可能性がある。今欧州の安全保障関係者の間では、「米国がNATOへの関与を減らす場合に備えて、我々は防衛能力を高める可能性がある」という意見が強まっている。
ドイツのジグマー・ガブリエル外務大臣は、MSCの直前に行ったドイツの保守系日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)とのインタビューの中で「欧州諸国は、いつまでも米国に防衛してもらえばよい、自分たちは何もしなくてよいと長い間思い込んできた。だがそうした時代は、完全に終わった。我々は、強い欧州を作らなければならない。そうしなければ、トランプ、プーチン、中国から一人前のパートナーとして見られることはない」と断言している。
彼は「米国がリーダーとしての役割を果たさなくなるのであれば、欧州は防衛力の強化という、長年の課題を実行に移さなくてはならない」と述べ、米国との新たな関係を模索することになるだろうと指摘した。
さらに過激な意見も出ている。ポーランドの元首相ヤロスワフ・カチンスキーは、今年2月初めに「米国が欧州を防衛しないとしたら、欧州は独自の核抑止力を持つべきだ」と発言した。
かつてソ連の支配下に置かれた中東欧諸国は、米国に対して、ロシアの脅威から自分たちを守る守護者の役割を期待してきた。中東欧諸国が、独仏とは異なり、ブッシュ政権のイラク侵攻を支援したのは、そのためである。だが中東欧諸国の期待は、トランプ政権の誕生で大きく揺らいでいる。「米国の核の傘は、本当に頼りになるのか?」。カチンスキ―の発言の背景には、NATOの将来について不透明感が強まったことに対する、中東欧諸国の焦燥感がある。
平和の配当を享受できる時代は終わった
MSCの2日後、ドイツ連邦政府は連邦軍を増強すると発表した。連邦軍の将兵の数は現在17万8000人。これを2024年までに2万人増やして19万8000人とする。ドイツは東西冷戦の終結後、徴兵制を廃止した他、将兵の数を年々減らしていた。欧州の中央に位置するドイツは、冷戦終結による「平和の配当」を最も享受してきた国の1つである。
だがロシアだけではなく、大西洋の反対側の米国、そして中東や北アフリカでも、地政学的な不透明感が強まりつつある今、ドイツは「米国のいない西側陣営」の中で指導的な役割を果たすよう、EU諸国から求められる可能性がある。ドイツが平和の配当を享受していればよい、居心地の良い時代は、終わったのだ。
2017年は、ドイツそしてEU諸国が米国からの自立を目指し始める、重要な分水嶺となるかもしれない。
欧州の対米戦略に注目するべきだ
我々日本人は、米国の豹変に直面した欧州人たちの焦りと不安感を、対岸の火事として眺めているだけでよいのだろうか。SIPRIによると、日本の2015年の防衛支出はGDPの1.0%で、ドイツよりも低い。409億ドルも防衛に支出しているのに、対GDP比率が低いのは、経済規模が大きいためだ。つまり日本も、ドイツと同じ悩みを抱えている。
万一トランプ政権が、日本に対しても防衛費増額を要求してきた時、我が国はどう答えるのか。欧州とアジアの地政学的状況は大きく異なるとはいえ、欧州が考える対米戦略の中に、我々が学べる内容もあるはずだ。本シリーズでは、今後も欧州諸国の動きについてお伝えしていくつもりだ。
このコラムについて
熊谷徹のヨーロッパ通信
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/219486/022700025/
トランプ大統領、議会演説でトーンが一変
ニュースを斬る
楽観的な米国の大統領らしさ演出も、政策に進展なし
2017年3月1日(水)
今村 卓
トランプ大統領の初めての議会演説は、これまでのトーンとは一変して明るいものだった。ただし、政策立案が具体的に進展していないという現実も露呈した。特設サイト「トランプウオッチ」のTRUMP WATCHER、丸紅米国会社ワシントン事務所長の今村卓氏が解説する。
暗く怖い現状描写を封印、夢と希望を語る演説に
演説のトーンはこれまでとは一変した。米国の明るい未来を強調し、議会に超党派での協力を呼びかける。「米国の惨状(American carnage)」というショッキングな表現まで飛び出すほど暗かった1月20日の大統領就任演説に比べれば、2月28日のトランプ大統領の米議会上下両院合同本会議での初めての演説は、米国の夢と希望を強調して国民に団結を訴えるという米国の大統領らしいものだった。
つい最近の遊説まで続いていたコアの支持層だけが視界に入っているかのような保護主義を正当化する極端な主張も消え、インフラ投資、大型減税を含めた税制改革、オバマケア(医療保険制度改革法)の撤廃と置換、規制改革を穏やかに論理的に訴える。野党の民主党や共和党主流派に対する攻撃的な口調も封印され、協力を呼びかける姿勢も目立った。トランプ大統領の就任から40日近く、混乱続出の政権運営に不安を抱いていた米国民の多くも、この演説を見て少しは安心したのではないか。CNNが実施した緊急世論調査でも、演説に好印象を持った有権者が78%に達している。これなら40%前半に低迷していたトランプ大統領の支持率も少しは上向くだろう。
重要政策が進展していない状況を露呈
問題は、トランプ大統領が演説で訴えた政策も夢の次元にとどまっていることである。最たる例がオバマケアの撤廃とより良い制度への移行(Repeal and Replace)を議会に求めた訴えである。
トランプ氏はオバマケアが崩壊しているから撤廃する、選択肢を増やして価格を下げ、良質な医療を国民に提供する、真に競争力のある全米規模の保険市場を作ると強調した。これに対して議場にいた共和党議員は総立ちで拍手喝采の様相だったが、その心中は複雑だったに違いない。議会共和党内では、保険内容の劣化や無保険者の増加を招かずにオバマケアを撤廃、置換する手段が見つからず、議論が紛糾しているのである。
共和党議員が地元選挙区で開く対話集会には、自分の保険がどうなるのか不安を訴える有権者が押し寄せていることもあり、オバマケアの撤廃を先行させて代替案は後から考えればいいという楽観的な議員は少なくなっている。議会演説でのトランプ大統領の訴えに対して、政権に妙案があるのなら早く出してくれと思った共和党議員が大半だろう。
トランプ氏が演説で議会に承認を求めた1兆ドルのインフラ投資法案も、昨年の選挙公約から具体的な政策への組み替えがほとんど進んでいない。一方で議会共和党にはトランプ氏ほどのインフラ投資への熱意はなく、むしろ財政赤字が膨らみかねないと消極的な議員も多い。このため、同党の下院指導部は、既にオバマケアの撤廃・置換と税制改革、予算などの審議を先行させることを決め、インフラ投資法案の審議は来年に持ち越しとの観測が強まっている。
野党の民主党はインフラ投資に積極的だが、今のトランプ政権には議会で民主党と調整を進められるような策士はいない。むしろ、議会演説でのトランプ氏のインフラ投資の訴えは、議会共和党に対しての優先順位を上げてくれという訴えであり、トランプ氏のコアの支持層への弁明だろう。
「国境調整税」に具体的な言及なし
税制改革も、演説では具体的な内容は乏しかった。ホワイトハウスは、そもそも議会演説は具体的な政策を説明する場ではない、今後の予算教書で示せばよいと考えているのだろう。だが、議会共和党内でも意見が割れている国境調整税に具体的な言及がなかったことから推測できるのは、トランプ氏とホワイトハウスの共和党指導部の距離であり、両者の意見の相違を調整して政策を作り上げていく機能と仲介役の不在である。
議会演説では中国やメキシコに対する高税率の制裁関税など、極端な保護主義の主張はなかった。米国企業が国内にとどまり、海外に流出しにくい法人税制にするとの主張にとどまったのも、トランプ氏の発想を政策に作り上げる機能が弱いという問題が解決していないからだろう。
ムニューシン財務長官は調整に動いている模様だが、財務省の他の政府高官は不在。通商分野では、ロス商務長官は2月28日に正式に就任したばかり、ライトハイザーUSTR(通商代表部)代表候補はまだ上院の承認手続き中である。トランプ氏が信頼しているとみられる側近のナバロNTC(国家通商会議)委員長も政策立案は不得手とみられる。財務省、商務省、USTR(通商代表部)の他の高官がそろうには時間が必要であり、税制改革は今後も議会共和党が主導するのだろう。
従来の外交に動きつつ、支持者との公約で線引き
外交・安全保障では、世界に直接、強力に関与すると訴えたことが選挙戦からの主張との違いだったが、一方で「自分は世界の代表ではなく米国の代表」との従来通りの主張もあり、世界における米国の役割への考えが変わったとはいえない。NATO(北大西洋条約機構)について支持を強調しつつ、加盟国の負担増を要求したことをみても、マティス国防長官、ティラーソン国務長官の外交・安全保障での影響力が強まったことで、トランプ氏の世界への関与についての慎重姿勢がやや修正された程度とみるべきなのだろう。
このあたりからは、トランプ氏のコアの支持層に対する公約へのこだわりと、どこまでマティス氏らの意見を聞くかの線引きも感じられる。議会演説では、白人労働者階級などトランプ氏のコアの支持層向けの露骨な発言は少なかった。それでも、同層との公約はけっして後退させていない。
世界への関与の限定もその一つである。トランプ氏は議会演説で「イスラム過激派」という表現を使ったが、それは20日に就任したマクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)の反対を振り切っての発言だったという。そうなったのも、イスラム過激派を米国内に入れない、イスラム過激派組織ISを抹殺するという公約があったからと思われる。
日本にとって安心できる演説だが…
日本にとっては、トランプ氏がNATOの加盟国に負担増を求める一方で、日本に駐留米軍経費の負担増を求めなかったことは評価できるだろう。2月10日の日米首脳会談に続いてであり、この問題は終わったとの確信はそのままでよいと思われる。
経済面での対日批判もなかったが、こちらは日米首脳会談と同様に、政権の準備不足が大きいだろう。むしろ、貿易赤字や不公正な貿易に言及しながら、そこでは中国やメキシコも名指ししなかったことから、二国間の貿易赤字を削減するための政策立案に、トランプ政権が手を焼いている様子も伺えるほどである。
一方で、トランプ氏から同盟国の日本への信頼や期待への言及もなかった。とはいえ、今回の議会演説では、特定の国への言及自体がほとんどなかったことからみて、ことさら問題視する必要はないだろう。それだけ、トランプ政権が国内問題に関心が集中しているということだ。逆に言えば、日本は米国、そしてトランプ政権にとって、言及されるほどの特別な国にはなっていないことが確認されたとも言えそうだ。
日経ビジネスはトランプ政権の動きを日々追いながら、関連記事を特集サイト「トランプ ウオッチ(Trump Watch)」に集約していきます。トランプ大統領の注目発言や政策などに、各分野の専門家がタイムリーにコメントするほか、日経ビジネスの関連記事を紹介します。米国、日本、そして世界の歴史的転換点を、あらゆる角度から記録していきます。
このコラムについて
ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
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