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欧州最後の“独裁者”に振り回されるロシア 世界が仰天トランプ中東発言 国境フェンスの向こう側にあるアメリカ庭で大量の麻薬
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投稿者 軽毛 日時 2017 年 2 月 24 日 01:07:33: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

欧州最後の“独裁者”に振り回されるロシア

解析ロシア

人口1000万人弱の隣国が強気に出る理由
2017年2月24日(金)
池田 元博
 ロシアが隣国の“独裁者”に振り回されている。近隣の独裁者というと、思い浮かぶのは北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長かもしれないが、そうではない。西の隣国ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領だ。

2016年2月、ベラルーシの首都ミンスクで行われた首脳会談の際の、ベラルーシ・ルカシェンコ大統領(左)とロシア・プーチン大統領(写真:Sputnik/Kremlin/ロイター/アフロ)
7時間超すマラソン会見でロシアを批判

 ベラルーシはロシアとポーランドの間に位置する小国だ。ロシアと同じスラブ系主体の国家で、人口は1000万人弱。かつてはソ連を構成した共和国のひとつで、最も親ロシア的な国とされてきた。そのベラルーシとの関係に、ロシアが困惑しているのはなぜか。


(出所:外務省ホームページ)
 事の発端は今月3日、ルカシェンコ大統領が国内で開いた記者会見だ。7時間を超す異例のマラソン会見で、ロシアへの不平、不満を並べ立てたのだ。

 大別すると、大統領の不満は3つ。ロシアからのエネルギー供給問題、両国間の国境管理問題、そしてロシアによるベラルーシからの食品輸入制限の問題だ。

 まずはエネルギー問題。ベラルーシは石油、天然ガスの調達をロシアに依存しているが、ロシアはガスの未払い代金が5億5000万ドルに上ったことを理由に、年初からベラルーシ向けの原油供給量を一方的に削減し始めた。大統領はこれを「合意違反だ」としてかみついたのだ。

 天然ガスの未払い代金は、契約価格が1000立方メートル当たり132ドルだったにもかかわらず、ベラルーシが昨年、年間を通じて同107ドルしか払わなかったために発生した。

 ところが、ルカシェンコ大統領は国際的な原油安の状況を踏まえれば、ロシア産のガス価格は同83ドルが妥当だと主張。ベラルーシにはガス代金の支払額を引き下げる権利があるとし、それにもかかわらず、ロシアが原油供給の削減という手法で圧力をかけるのは「違法」と断じた。

 「我々は兄弟国ではなかったのか?」

 大統領はロシアの油田開発権をベラルーシ企業に付与することまで要求。さらに「我々はイランやアゼルバイジャンの原油を調達すれば、ロシアの原油なしでもやっていける。ロシアはそれが分かっていない」と、ロシア政府の高圧的な対応に激しい怒りをぶつけた。

ロシアによる「国境ゾーン」の設置に猛反発

 次に国境管理の問題。ベラルーシはロシアが主導するユーラシア経済同盟に加盟し、両国間の国境管理も原則廃止されている。

 ところが、ロシア連邦保安庁(FSB)は最近、ベラルーシとの国境地域のスモレンスク、ブリャンスク、プスコフの3カ所に「国境ゾーン」の設置を命じた。ルカシェンコ大統領はこの決定が国境管理の復活につながると猛反発したのだ。

 実は、ルカシェンコ大統領は先月、米欧や日本を含めた80カ国を対象に、5日以内の滞在なら査証(ビザ)なしで入国を認める大統領令に署名した。ロシアによる「国境ゾーン」の設置はそれに対処したもので、FSBは特にベラルーシ経由のテロリスト流入を阻止するのが目的とする。しかし大統領は事前に何ら打診もなかったとし、「両国関係を悪化させるだけだ」と非難した。

 そして食品の輸入制限問題。大統領はロシア連邦動植物検疫監督庁が衛生管理の問題を理由にベラルーシからの食肉、乳製品などの輸入を頻繁に禁止、制限していると非難。同庁長官の対応が「ベラルーシ国民に多大な損害を与えた」として、刑事事件として立件するよう内務省に指令したと述べた。

 これもロシアには言い分がある。欧米の食料品輸入禁止措置との関連だ。

 ロシアはウクライナ領クリミア半島を併合した2014年以降、欧米からの食料品輸入を禁止している。ウクライナ危機に伴って欧米が発動した対ロ経済制裁への対抗措置だが、禁輸対象の欧米の食料品がベラルーシ経由でロシア市場に流入するケースが頻発した。ロシア当局にしてみれば、ベラルーシからの食料品の輸入には、ことのほか目を光らせなければならないというわけだ。

今月前半に予定されていたモスクワ訪問も見送り

 ベラルーシはかつて、ロシアによるクリミア併合を支持した数少ない国のひとつだ。2014年3月、国連総会で「ウクライナの領土一体性」に関する決議を採決した時も、ロシアを除く旧ソ連諸国で「反対」した国はアルメニアとベラルーシだけだった。

 ただし、ウクライナ危機にはかなり神経をとがらせており、ドイツとフランスが仲介した停戦協議の場を提供したこともある。もちろん、ロシアが発動した欧米からの食料品禁輸措置には否定的で、しかも自国に「多大な損失」を与えているとすれば、大統領として黙っていられなかったのだろう。

 ルカシェンコ大統領はこうした一連のロシアの措置に善処が見られない限り、プーチン大統領と会談しても「意味がない」として、国際会議の場を含めた両国の首脳会談を拒否する構えだ。現に昨年末にサンクトペテルブルクで開いたユーラシア経済同盟の首脳会議は欠席し、今月前半に予定されたモスクワ訪問も見送られた。

 ベラルーシ大統領の尋常でない「憤り」に慌てたのがロシアだ。ロシア大統領府はルカシェンコ大統領のマラソン会見があった当日、さっそく両国関係に関する異例のコメントを発表した。

 ロシアはベラルーシとの統合プロセスの継続を優先課題とみなしている――。コメントは両国関係の重要性を強調するとともに、経済問題は実務協議を通じて冷静に解決すべきだと指摘。「国境ゾーン」の設置も第三国の市民を対象にしたもので、国境管理を導入する意図は毛頭ないと弁明した。

 一方で、エネルギー問題に関しては、「ロシアは2011年から2015年にかけ、毎年1800万〜2300万トンもの原油を関税ゼロでベラルーシに供給してきた」と言明。それに伴うロシアの歳入減は223億ドルに上ったと具体的数字を挙げ、いかに多額の支援をベラルーシに施しているかを訴えた。

 所詮、ロシアの支援抜きには国家経済が成り立たないのに、あれこれ文句をつけるとは何事か。ロシア大統領府のコメントからは、そんな不満もにじみでているようにもみえる。

べラルーシの怒りを放置できない理由

 ロシア国民の反発も強まっている。全ロシア世論調査センターが先に実施した調査では、市場価格より安い価格でのベラルーシへの原油・天然ガス供給に69%が反対し、78%が両国間のビザなし制度を廃止すべきだと回答した。


 しかし、プーチン政権がルカシェンコ大統領の怒りをそのまま放置しておけないのも事実だ。

 国内人気が高いルカシェンコ氏は1994年に大統領に就任して以降、すでに5選を果たしている。「兄弟国」ロシアとの関係を最優先にするとともに、かつては国内で野党勢力の弾圧やメディア統制を強めたことから「欧州最後の独裁者」と呼ばれた。欧州連合(EU)が制裁を科したこともあった。

 ところが、ウクライナ危機の長期化の影響もあって、ロシアとベラルーシの関係は次第にぎくしゃくしつつあるのが実情だ。ルカシェンコ大統領自身、欧州との関係にも配慮するようになり、政治犯の釈放などにも応じた。EU側も昨年、人権問題で改善がみられたとして制裁の大部分を解除している。

 大統領が80カ国の市民を対象に、ビザ免除で短期入国を認める措置を打ち出したのも、西側との関係改善と交流拡大を視野に入れたとみられる。

 こうしたベラルーシの“ロシア離れ”を黙認すれば、ロシアにとって打撃となりかねない。まず、ロシアが主導するユーラシア経済同盟への影響だ。現在はベラルーシのほか、カザフスタン、アルメニア、キルギスが正式加盟しているが、その成果は乏しく加盟国の不満も多い。仮にベラルーシが抜けるようなことがあれば、この同盟がますます形骸化しかねない。

ベラルーシの地政学的な重要性

 さらにロシアが危惧しているのは、北大西洋条約機構(NATO)対策という安全保障への影響だ。ベラルーシはポーランドや、バルト諸国のラトビア、リトアニアと国境を接する。いずれもNATO陣営の中で反ロシア色が最も強い国々だ。ロシアにとって、ベラルーシの地政学的な重要性は増している。

 ロシア軍はかねてベラルーシにも空軍を展開している模様だが、ウクライナ危機で緊張が高まって以降、NATOに対する抑止力強化が喫緊の課題となっている。プーチン政権はその一環として2015年、ロシア軍の空軍基地設置を認める合意文書に署名するようベラルーシに要請した経緯がある。

 しかし、ルカシェンコ大統領はロシア側の要請を拒否。先の会見でも「ロシアは空軍基地を設置するのではなく、我が国に軍用機を引き渡すべきだ」と強弁した。こうした発言には、ロシアがベラルーシを独立国家ではなく属国のようにみなしていることへの不満もにじむ。

 かといってロシアの支援が命綱なのが現実だけに、ルカシェンコ大統領の執拗な対ロ批判はロシアからより多くの援助を引き出す戦術といえなくもない。両国の関係が完全にこじれることはないとみられるが、ロシアも隣国の“独裁者”の機嫌取りを怠ると、将来的に大きな痛手を被りかねない。


このコラムについて

解析ロシア
世界で今、もっとも影響力のある政治家は誰か。米フォーブス誌の評価もさることながら、真っ先に浮かぶのはやはりプーチン大統領だろう。2000年に大統領に就任して以降、「プーチンのロシア」は大きな存在感を内外に示している。だが、その権威主義的な体制ゆえに、ロシアの実態は逆に見えにくくなったとの指摘もある。日本経済新聞の編集委員がロシアにまつわる様々な出来事を大胆に深読みし、解析していく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/040400028/022200023/


 
世界が仰天したトランプ大統領の中東発言

The Economist

イスラエルとパレスチナ「2国家共存」方針を転換?
2017年2月23日(木)
The Economist


首脳会談後の記者会見に臨んだイスラエルのネタニヤフ首相(左)とトランプ米大統領(写真:Abaca USA/アフロ)
 オバマ政権(当時)とイスラエルの複数の右派政権の関係が冷却化していた過去8年間、米国の官僚はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を「自国の狂信者に立ち向かう気概のない腰抜け政治家」と揶揄した。

 だがドナルド・トランプ氏が大統領となったホワイトハウスをネタニヤフ首相が初めて公式訪問した2月15日、そんな嘲りとは正反対の光景が繰り広げられた。

 確かに、トランプ大統領は一定の自制を示すようイスラエルを促した。会談前の共同記者会見ではネタニヤフ首相に対し、イスラエルが1967年から占領しているパレスチナ自治区でのユダヤ人入植地の建設について「少し差し控える」よう伝えた。加えてトランプ大統領は、和平交渉の参加者をアラブ諸国に広げるべきだと発言している。

 しかし、この程度の忠告であれば、ネタニヤフ首相の補佐官でも書ける。同首相は連立政権内の強硬派を抑え込む手段として、入植地の拡大に米国が過敏に反応していることを引き合いに出したがる。同首相は米国の反応を操る能力において自分の右に出る者はいないと主張する。

 イスラエルの強硬派はパレスチナ国家成立の可能性を否定し、ヨルダン川西岸地区の一部を併合するようネタニヤフ首相に求めている。

2国家共存の方針を転換

 米国は今回、微妙であるものの、重大な方針転換を示した。トランプ大統領は歴代の米国政権が党派の違いを超えて長年掲げてきた2国家共存という方針、つまり「ユダヤ国家と並んでパレスチナ主権国家を樹立することでしか和平は実現できない」という主張を捨てたのだ。

 トランプ大統領は「2国家でも1国家でも、双方が望む方でいい。(米国は)どちらでも受け入れ可能だ」と述べ、米国が当事国の決定に従うつもりであることを示唆した。トランプ大統領のこの発言は、現在まで掲げられてきた外交上の“絵空事”をほぼ終焉させるものだ。国際社会はこれまで、2国家共存の実現に向けてあらゆる当事者が努力しているとの前提の下、占領地区をどうするかについての決断をイスラエルに求めてきた。

 ネタニヤフ首相はパレスチナ国家の樹立について「無条件で」交渉する意思があると繰り返し表明してきた。だが今回の記者会見で、長年主張している2つの「和平の必要条件」の重要性を強調した。一つはパレスチナがユダヤ国家を認めること。もう一つは、全ての地域において治安上の全権をイスラエルが掌握することだ*。

*:原文のまま訳した。ネタニヤフ首相は「ヨルダン川西岸における治安権限」を求めた
 訪米中、ネタニヤフ首相は一定の譲歩を余儀なくされた。トランプ氏は大統領選で「米国大使館を現在のテルアビブからエルサレムへ移設する」と公約した。これに対して、大統領に就任後、同盟諸国から「イスラエルとパレスチナの双方が首都であると主張する都市でそのような象徴的な動きをとれば、反発だけでなく暴力沙汰につながるリスクがある」と警告されている。トランプ大統領はホワイトハウスでの記者会見で、大使館の移転について「極めて積極的に」検討していると述べた。

矛盾はらむ対イランと対IS

 ネタニヤフ首相は訪米中、慎重な態度を貫き、「米国は、オバマ政権下で欧米など6カ国が、核開発を阻止すべくイランと成立させた核合意を破棄すべき」という以前からの要望を強く主張することはなかった。

 トランプ大統領はこの核合意について、今まで見た中で「最悪の協定の一つだ」と主張する。だが同盟国やトランプ陣営のメンバー、例えばジェームズ・マティス国防長官などは、米国が合意内容を従来より厳格に行使し、弾道ミサイル技術など他分野での違反についてイランに制裁を科すつもりなら、この協定はイランの核開発を遅らせる上で最も”まし“な選択だとトランプ大統領に伝えている。

ネタニヤフ首相はイランの「行為」に対してトランプ大統領がより強硬な路線を進んでいることを称賛するにとどまった。

 また、ネタニヤフ首相は、トランプ大統領の外交政策においては、スンニ派イスラム過激組織「イスラム国(IS)」の撲滅が優先事項だという現実にも直面した。イスラエルにとってはそれよりもまず最大のシーア派イスラム教国であるイランを封じ込めることが急務だ。

 だがイラン自身がシリアとイラクでISと戦火を交えていることを考えれば、米国の目標とイスラエルのそれは互いに矛盾しているとさえ言える。米国のシンクタンク、ワシントン近東政策研究所のロバート・サトロフ所長はこう指摘する。「イランに力を与えずにどうやってISを破れるのか」(同氏)。

ネタニヤフ首相はISとイランの違いから目をそらし、両者を一括りに「過激なイスラム主義者」と呼んで非難した。同時にトランプ大統領は「イスラム過激派が実行するテロ」に対して「多大なる勇気」を持って取り組んでいると褒め称えた。

 前回のホワイトハウス訪問と比べてずいぶんと変わったものである。

© 2017 The Economist Newspaper Limited.
Feb 18th-24th 2017 | From the print edition | Middle East and Africa, All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。


このコラムについて

The Economist
Economistは約400万人の読者が購読する週刊誌です。
世界中で起こる出来事に対する洞察力ある分析と論説に定評があります。
記事は、「地域」ごとのニュースのほか、「科学・技術」「本・芸術」などで構成されています。
このコラムではEconomistから厳選した記事を選び日本語でお届けします。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/022200124

 

“国境のフェンス”の向こう側にあるアメリカ

トランプのアメリカ〜超大国はどこへ行く

「庭で大量の麻薬を見つけたこともありました」
2017年2月24日(金)
篠原 匡、長野 光
 米国最南端の町、ブラウンズビル。国境を隔てるリオグランデ川の向こう側はメキシコのマタモロスである。2つの町に架かる橋の料金はわずか1ドル(メキシコに行く場合)で、ブラウンズビルの住民は安価な薬や歯科治療などを求めて、マタモロスの住民は仕事や買い物のために日常的に国境の橋を渡る。ブラウンズビルとマタモロス。2つの町は密接に結びついている。

 トランプ大統領は1月25日、メキシコとの国境に「通過不可能な物理的な障壁」を建設するという大統領令に署名した。いわゆる国境税や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉は大統領が取り組む課題の中でプライオリティが高い。米墨国境に物理的な障壁だけでなく、経済的な障壁を築くという大統領の野心は、いまだに燃えさかっている。

 もっとも、ブラウンズビルには国境のフェンスが既にある。それも、極めて奇妙な形で。

 ところどころ蛇行しているリオグランデ川。川に沿ってフェンスを敷設するとコストがかさむため、国境のフェンスは直線的に建てられている。場所によっては実際の国境から1km以上も離れたところだ。川とフェンスの間に取り残された住民も少なからずおり、彼らの日常生活に支障が出ないように、道路が走っているところはフェンスが切れている。

 フェンスの向こう側のアメリカ。それを地元の住民は“No Man's Land”と呼ぶ。

 「米国第一主義」というスローガンの下、トランプ大統領は雇用の国内回帰と治安の強化を推し進めようとしている。その政策を支持する米国人は一定数、存在する。それでは、国境に住む人々はどう感じているのか。“No Man's Land”に住む人々に聞いた。

 第1回目は70年以上もブラウンズビルで暮らすパメラ・テイラー氏を取り上げる。

(ニューヨーク支局 篠原 匡、長野 光)

メキシコとの国境に接するブラウンズビル(米国テキサス州)。国境のフェンスよりメキシコ側に住むアメリカ人が少なからずいる

国境の橋を渡る人々。金網の向こうに見える小さな川が両国を隔てるリオグランデ川 (写真:Miguel Angel Roberts、以下同)

道路のところで切れた国境のフェンス。奥に見えるのは巡回しているボーダーパトロールの車両

ブラウンズビル。メキシコの文化が色濃いサウステキサスの典型的な街並み
フェンスの向こう側 Vol.1 パメラ

Pamela Taylor(パメラ・テイラー)
88歳
元高校の校長秘書

“No Man's Land”に住むパメラ・テイラー氏。不法移民は定期的に見かけるという
 私がブラウンズビルに引っ越してきたのは1946年、17歳の時です。私は英国で生まれましたが、第二次世界大戦の時に同じ病院で働いていたGI(米軍兵士)と結婚して、彼の実家のあるこの場所に来たんです。この辺は今と全然違って、マタモロスの人々がうちの庭に来て、庭でトルティーヤを焼いて食べるなんていうことがよくありました。あの当時はブラセロ・プログラム(注)があり、メキシコ人が家族で米国に来て、仕事をしてメキシコに戻るということが許されていたんです。

<注>米国の労働力不足、特に農場での労働力を補うため、メキシコ人労働者を期間限定で受け入れた制度のこと。1942〜1964年まで22年間続いたが、そのまま米国に居着いたメキシコ人も数多い。

不法移民についての2つの感情

 不法移民については2つの感情があります。一つは気の毒だという気持ち、もう一つは怖いという気持ちです。私はここを通る不法移民のために、いつも水や炭酸水を用意しています。なぜかとよく聞かれますが、そうしなければならないと感じるんです。

 例えば、戦場では敵機が爆弾を投下しますが、だからといって落とした人間を憎むかというとそうは思いません。だって、それが彼らの仕事なんですから。ドイツの旅行者を嫌ったりしませんよ。それは不法移民でも同じです。赤ん坊を抱えているような女性には洋服だって渡します。

 私は第2次大戦を経験していますから、他の米国人とは違う感覚で不法移民を見ているのかもしれません。


庭のクーラーボックスには水や炭酸水が用意されている
 一方で、怖い思いもしています。ある時、庭でちょっとした作業をしていて、午後4時くらいに戻ってきたら男性のシェービングクリームのにおいがして。最初は義理の息子のものかと思ったんですが、よく見たら知らない男性が洗面所で髭を剃っていた。10年くらい前の話ですね。それ以来、家のドアのカギを閉めるようになりました。

 またある日、一台のクルマが私の家のすぐそばに止まりました。最初は娘が帰ってきたと思ったのですが、すぐに国境警備隊のクルマが何台も続いてきて、そのクルマのドアをこじ開けたんです。中からは大量の麻薬が出てきました。

 何が驚いたって、そのクルマが娘のものと同じようなクルマだったんですよ。メキシコの麻薬カルテルは娘のクルマの車種を調べて、ここを通ったんでしょう。国境警備隊のカメラに写っても怪しまれないように。


「自宅で不法移民が髭を剃っていたこともあった」とパメラ氏は語る
庭に置いてあった大量のマリファナ

 大量のマリファナを見つけたこともありました。庭の雑草を刈っている時に見知らぬバッグがあって。そのあたりで不法移民が着替えをすることがよくあるので、その荷物かなと思ったんです。それで、国境警備隊を呼んだところ、中からマリファナが大量に出てきた。国境警備隊は「あなた、麻薬ですよ」と。そんなの知らないわよ。実際にバッグを置いたところを見ているわけじゃありませんし。

 その後、国境警備隊は保安官のところにマリファナを持っていきました。その人物は今、刑務所に入っています。マタモロスの麻薬カルテルとつながりがあったんですね。私は彼のところに麻薬を届けたようなものです。あなたは笑うけど、私たちにとって危険なことなんですよ。


パメラ氏のキッチンにかかっている額縁。ここがテキサスだということを思い起こさせる
 家の裏にフェンスができたのは2010年でした。驚くべきことに、ワシントンの人たちは誰もフェンスの建設について相談にこなかったんです。当時、私は癌で闘病中でしたが、国土安全保障省の長官に手紙を書きました。だってそうでしょう。私たちは普通に暮らしているのに、家の向こう側にフェンスができたらどうやって暮らせばいいんですか?

 最終的に、政府は道路をフェンスで塞ぐことはできませんでした。空いた部分に警備員を配置するだけの余裕もないので、フェンスはほとんど意味がありません。フェンスを壁にしたって意味はありませんよ。壁は止めて、軍隊に国境警備をやらせることでしょうね。国境を警備する人が少なすぎる。私はトランプ氏に投票しましたが、それは今の政治を変えてほしいと思ったため。今の政治は全く物事について無関心です。

 トランプ政権になって、多くの移民の子供たちがデモをしています。デモは法的に認められていますが、彼らはメキシコ国旗を振りかざしている。私は米国に来て、市民権を取って働きました。それが正しい方法だと思います。国境を勝手に越えるのは犯罪です。


国土安全保障省の長官などに宛てた手紙の束
 日経ビジネスはトランプ政権の動きを日々追いながら、関連記事を特集サイト「トランプ ウオッチ(Trump Watch)」に集約していきます。トランプ大統領の注目発言や政策などに、各分野の専門家がタイムリーにコメントするほか、日経ビジネスの関連記事を紹介します。米国、日本、そして世界の歴史的転換点を、あらゆる角度から記録していきます。

このコラムについて

トランプのアメリカ〜超大国はどこへ行く
1月20日に第45代米大統領に就任したドナルド・トランプ氏。通商政策や安全保障政策など戦後、米国が進めてきた路線と大きく異なる主張をしているトランプ大統領に対する不安は根強い。トランプ氏は具体的に何を実施し、何を目指しているのか。新大統領が率いるアメリカがどこに向かうのか。それをひもといていこうというコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/012700108/022200009  

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