http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/245.html
Tweet |
北朝鮮金正恩委員長の異母兄金正男氏が13日午前9時ころクアラルンプール(KL)国際空港の格安航空専用ターミナルで殺害されたというニュースが駆け巡り現在なお大きな盛り上がりも見せている。
KL国際空港怪死事に関するマレーシア政府(警察)の公式的な発表は断片的なものだけで詳細はない。
これまでのところ、この事件に関する報道は、韓国政府が自国メディアや国会議員に情報をリークした内容を基礎にしていると言える。
要するに、クアラルンプールから遠く離れた捜査権限もない韓国国家機関のリークをもとに韓国メディアが再構成して発信した「金正男氏毒殺」情報に世界のメディアが踊っているという話なのである。
ニュース番組やワイドショー番組は、今回の「金正男氏毒殺」事件を超特大ネタとして大げさに取り上げているが、日本のメディア自身が裏を取っている情報はほとんどなく、ほぼすべてが韓国及びマレーシアのメディアが発信した情報の“繰り返し”でしかない。
この出来事は、現在のところ「朝鮮系男性KL国際空港怪死」事件と呼ぶのがふさわしいものである。
最近「フォルスニュース」や「アフタートゥルース」といった用語が流行っているが、熊本地震で動物園の檻から逃げ出したライオンが街をうろつているという話とそれほど変わらない“未確認情報”を大量の取材陣と膨大な時間をかけて垂れ流している(リツイートしている)というのがメディアの状況なのである。
基本的な問題として、情報発信源である韓国政府機関が死亡した男性を金正男氏と認定した根拠は何なのかと問うことができる。
「KL国際空港で死亡した男性について、どこが何を根拠に金正日氏の長男金正男氏と確認したのか」という説明すらされないまま話だけが肥大化している。
「KL国際空港で死亡した男性」が保有していた旅券がどこの国の発行でどういう名義だったのかという初歩的情報さえ当初は報じられなかった。
韓国KBSニュースによれば、死亡した男性が保持していた旅券は偽造旅券で、「キムチョル」(金哲か?)名義で1970年6月10日ピョンヤン生まれと記載されていたという。(金正男氏は1971年5月10日生まれとされている)
しかし、偽造であれ旅券発行国が北朝鮮か韓国なのかそれとも第三国なのかは語っていない。
このように書いているからといって、KL国際空港で死亡した男が金正日氏の長男金正男氏ではないとか、死亡原因が毒殺ではないとかを言いたいわけではない。
北朝鮮工作機関が殺害したということを含めて、具体的な裏が何も取れていない韓国発の“未確認情報”をこれでもかというほどの量で拡大再生産していると言いたいだけである。
今回の騒動は、現在の世界の異様さの一つが噴出した出来事とも言える。
現在の世界では、2種類の出来事について、ろくな検証もないまま、ある国家機関が発表する内容がそのまま“真実”とされている状況が目立つ。
一つは、欧米主要諸国で起きている“テロ事件“であり。ほとんどの事件で犯人とされる人物は事件終結時に殺され、そのためもあり裁判は行われず、裁判以外でも事件の検証や実証もまともにやられることなくイスラム過激派の犯行と確定されている。
その積み重ねの結果、欧米諸国で尋常ならぬ爆破や銃撃の事件が起きると、当該国政府が説明せずとも、多くの人が即応的に「イスラム過激派のテロ」だろうと考えるようになっている。
民主主義や人権そして“法の支配”の尊重を声高に叫び、トランプ大統領の政策に非難を浴びせている(西側)世界の実態はこんなものである。
もう一つが北朝鮮に関わる事件である。
まず、北朝鮮については、狂気あふれる奇妙で異常な支配者に統治された国だから、何をしでかしても不思議ではないという刷り込みがこれでもかとなされている。
それゆえ、少し冷静に考えればおかしいと思うような出来事でも、北朝鮮犯行説ならすんなり受け入れられるという素地ができ上がっている。
今も生きている金賢姫らが実行したとされる大韓航空機爆破事件や全斗煥政権の閣僚多数が殺害されたラングーン爆破事件などは、実行者が生き残り証言したこともあり、韓国政府の主張がそのまま“事実”として受け入れられている。
しかし、大韓航空機爆破事件は、2000年代になって韓国内で陰謀説や捏造説がはびこり、それを受けた韓国政府が調査を行って「政治的に利用されたのは事実であるが、事件自体は真実である」と説明している。
■KL国際空港で死んだ人は誰なのか
在マレーシア北朝鮮大使館職員が司法解剖に長時間立ち会ったようなので、KL国際空港で死んだ人は北朝鮮の“重要人物”と推測できる。
(マレーシアの副首相が遺体を北朝鮮に引き渡すと言ったという報道もある)
誰が死んだのかという疑念については、二つを指摘できる。
一つは、死んだ人はほんとうに金正日元総書記の長男金正男氏なのか?もう一つは、死んだのが金正日元総書記の長男金正男氏としてもそれは事件報道でたびたび流れているあの“金正男”なのかというものである。
彼が登場する代表的で印象的な映像は、01年5月に偽造旅券(ドミニカ共和国)行使で日本入国を図り強制送還(中国へ)されたときのものであろう。
そのときも、日本政府が、外務省高級職員が同行する“厚遇”で強制的に送還した男を金正日元総書記の長男金正男氏と認めたわけではない。
金正日元総書記の長男金正男氏が日本に向かっているという情報は英国政府機関から日本政府にもたらされたそうだが、映像の男性を金正日元総書記の長男金正男氏と断定したのは韓国政府機関である。
そして、この騒動以来、あの男=“金正男”は、金正日元総書記の長男金正男氏となりそのように扱われるようになったのである。
面白いことに、金正日氏の長男とされる正男氏は、北朝鮮国民のほとんどがその存在を知らず、金正日氏の料理人として知られ一家の近くに寄ることもあったとされるあの藤本健二氏(仮名)も、「将軍様や軍の大将、党の幹部らが集まる宴席で正男氏の姿を見たことはないし、噂話として語られたことさえ一度もない」、「正哲(正恩の兄)や正恩の話は将軍様からよく聞いたし、遊びの相手もした。将軍様きっと長男の存在を隠し通したかったのではないだろうか」と話しているほどである。
金正恩委員長も、異母兄である正男氏と会ったことがないとされている。
金正恩氏に関しても、後継者に選ばれたという情報が流れた09年時点では、漢字表記も年齢も姿形もわからずあれこれ詮索がなされた。北朝鮮国民も、父親金正日総書記とひな壇に並ぶ姿を見るまでその存在を知らなかったと言われる。
テレビ映像として流れ金正男氏と思って見られている男は、ほんとうに、金日成氏の長男で後継者になる可能性もあった金正男氏なのだろうか?
先に自分の判断を言えば、目の表情から、父親金正日氏と一緒に映っている子どもが成長してあの “金正男”になったとしてもおかしくはない(否定はできない)と思っている。(お坊ちゃんからちょっと薄汚れた雰囲気のオッサンになっているが、それは精神的な変化のせいかもしれない)
“金正男”は、01年5月より前の00年12月にも来日して、赤坂の韓国クラブでホステスと写真に収まっている。(場所がほんとうに赤坂の韓国クラブかどうかは確認できないが、その写真に収まっている男はあの“金正男”と認められる)
このような経緯を考えれば、本人にその気があったかどうかはともかく、後継者争いから完全に脱落した後ではなく、長男として後継者になる可能性もあったはずの2000年時点から二度も警護要員や随行員もなく日本を訪れ、そのあげく“不名誉”な写真や映像が露出しているのは不可解というか不自然である。
どちらも、国家指導者後継者(日本的イメージで言えば皇太子や親王)の振る舞いとしては褒められたものではないというより容認されるようなものではないだろう。英国など欧州的王室なら奔放な行動もある程度許されるようだが、あの厳格な北朝鮮ではどうだろう。
01年5月の不様な強制送還映像が後継者争いから脱落した原因とも言われているが、“金正男”がほんとうに金正日氏の長男だとすれば、経過は逆で、後継者の芽がまったくない存在だからこそ奔放な活動が許されていたと見るのが妥当だろう。
その後も、“金正男”は、何度か、一人で動いているところを北京国際空港やマカオ市街地で日本のメディアの取材を受けている。
日本の話に例えれば、皇太子ないし秋篠宮が警護も付き人もなしで外国を訪れ外国のメディアから取材を受けぺらぺらとしゃべっているという構図である。
処刑された張成沢氏が金正男派で後継者に推していたという話もあるが、日本を含む外国をふらふら歩き回る以前ならともかく、あのような言動が外国メディアで報じられている2001年以降に、張成沢氏がそのような動きを見せることはあり得ない。
(01年に日本で拘束されたとき、“金正男”の背中には虎の刺青があったとも言われている)
正恩氏と正哲氏の母親(在日だった芸能人)も正男氏の母(元女優)も正妻ではなくどちらも愛人的存在だから、金正日氏の長男である正男氏が後継者と位置付けられてもおかしくない。
それでも、日本のメディアが多数映像を残している“金正男”が金正日氏の長男だとすると、本人の希望なのか親や周辺の判断なのかはともかく、2000年時点で国家支配層(インナーサークル)から完全に離脱している可能性が高い。
そして、それなりの金銭的保護は受けつつも、北朝鮮国家とは無関係という立場で暮らす存在になったのかもしれない。
それでも、彼が本物の金正男氏なら、“宿敵”日本のメディアの取材を受けて北朝鮮の体制を非難するような言葉を発した時点で金銭的支援は即座に停止され、拉致を含む手荒い手段を行使されてでも北朝鮮に連れ戻され軟禁状態に置かれることになる可能性もある。
このように、そもそも、我々が知るあの男性=“金正男”が金正日氏の長男で金正男氏あるという確証はないのである。
KL国際空港で死んだ人が金正日氏の長男金正男氏だとしても、殺された金正男氏の顔や姿形を、“金正男”の顔姿形でイメージするのは勇み足なのかもしれない。
■B級映画以下の雑なシナリオ
「金正男氏KL国際空港殺害事件」は、ほぼ、韓国政府(国家情報院)の説明を事実として受け入れることで初めて成立する話である。
韓国政府が主張する北朝鮮国家機関が金正日氏の長男金正男氏を毒殺したという事実を今のところ否定するネタもなければその必要も感じない。
しかし、冷静に考えれば、13日午前9時頃KL国際空港で金正男氏が死んだのが事実としても、司法解剖での所見が明らかになっていない段階では、毒殺されたかどうか不明なのである。脳内出血や心不全でおかしくなり救護を求めたのかもしれない。
まず、冒頭でも書いたが、韓国情報当局が、クアラルンプールというはるかかなたで起きた捜査権限もない男性死亡事件について、マレーシア政府が公式に発表する前から、死んだのは金正男氏で北朝鮮工作員に毒殺されたとなぜ主張できるのかという素朴な疑問を提示できる。
ミステリー創作物的に言えば、そのような主張をするものこそ、真犯人ということになりかねない。
マレーシア政府機関が、死んだ男性が金正男氏かどうかを特定できる“もの”(DNAサンプルなど)を持っていたとは思えない。
捜査の流れとして言えば、北朝鮮当局に遺体を確認してもらったり(北朝鮮大使館員で本物を知っている人がいるのか?)、親族のDNAサンプルを提供してもらう(ほんとうに金正男氏ならそれは不可能だろうが)ことから始まるけっこう時間のかかる身元確認作業が必要な案件である。
韓国政府が自信をもって死んだ男性を金正男氏と主張している姿は、韓国国家機関が、金正男氏を日頃から監視下に置いていたことを示唆している。
彼の行動を監視していたからこそ、死んだ男性をそれほど時間が経たないうちに金正男氏と主張することができたと言える。
韓国政府(KBSニュース)は、死亡した男性が保持していた旅券は偽造旅券で、「キムチョル」(金哲か?)名義と説明している。
しかし、「キムチョル(金哲)」という名義はこれまでも“金正男”が何度も使った名義とされているもので、それを今なお使い続けているのは疑問である。
金正日氏が11年12月に死去したとき、“金正男”は、北京経由を避けて密かに「キムチョル(金哲)」名義の旅券で帰国し父親の遺体と対面し、数日後に出国したという話も流布していた。
韓国国家機関が当日の“金正男”を監視していなかったとしても、韓国政府がKL国際空港で死んだ男性が“金正男”と知る方法はある。
それは、死んだ男性が「キムチョル」名義の韓国旅券をもっていた場合である。KL国際空港を管轄する警察は、その人物を知るものが近くにいない状況で不審死が起きたら、所持旅券の発行国(大使館)に問い合わせをするだろう。
仮に、多くの人が金正日氏の長男だと思っている“金正男”が韓国情報機関のアセットだとすれば、韓国政府は、KL国際空港で殺害を疑われる死に方をした金哲(キムチョル)こと“金正男”に関する問い合わせがあった時点で、国家情報院の説明を受けることで、金正恩委員長の兄とされる“金正男”が殺害されたと判断することになる。
これは、韓国政府と韓国情報機関が一体ではなく、韓国情報機関が独断で“金正男”を利用してきたという構図に限られる話である。
ただ、在マレーシア北朝鮮大使館が動いていることから、放蕩を続ける本物の金正男氏ないし北朝鮮で地位(身分)が高い人物が金銭的手段で韓国情報機関のアセットになったケースでなければならない。
“金正男”殺害の実行犯ではないかと疑われている二人の女性がマレーシア警察当局に拘束されていると報じられている。
女性の話も不可解なものである。何が不可解かと言えば、空港からタクシーで逃げたと言われているのに、タクシーでどこに行ったのかという簡単な問題でさえ報じられていないことである。
タクシーは空港カウンターで行き先のホテル名を告げてチケットを購入し乗ったと言われている。
なのに、ほんとうにそのホテル近くでタクシーを降りたのか、そのホテルに滞在もしくは予約があったのかという基本情報すら確認されていない。
その一方で、韓国政府は、殺害を実行した女性二人は既に殺害されているという情報を流し、日本政府関係者もそのような情報が外交ルートで入っているとメディアに話している。
最初に拘束されたベトナム旅券を持つ女性は、事件が盛んに報じられているのに、事件の二日後に空港に舞い戻ったところを拘束されたとされる。
そして、ベトナム人で“インターネットアイドル”だと説明したり、空港でイタズラを行っているところを撮影するため “金正男”(とは知らないまま)にスプレーを噴射させたり布で口を覆ったと“供述”したと報じられている。
旅券が真正かどうかベトナム政府はすぐに確認できる。また、“インターネットアイドル”かどうか、ベトナムで確認すればすぐにわかるだろう。
もう一人の女性はインドネシア旅券を保持していたとされる。その旅券もインドネシア政府に確認すれば偽造かどうかすぐにわかる。
拘束された二人の女性に韓国で働いていた過去があるかどうかは重要なポイントになると思う。
北朝鮮国家機関が金正日氏の長男金正男氏を殺害することなぞないとは言わないが、上述したことからも抹殺の必要性が認められないし、北朝鮮の国柄を考えると白頭山の偉大な革命一族の直系を殺す選択はほぼないと思う。
しかも、今日2月16日は金正日元総書記生誕75周年の祭日であり、抹殺したいと思っているとしても、その3日前に長男正男氏を暗殺するというのはタイミングがあまりに悪すぎる。北京の北朝鮮大使館でも金正日元総書記生誕75周年のレセプションが催されており、中国共産党の幹部も出席している。
正男氏を殺す必要があったとしても、あのタイミングは選ばないし、空港という公衆の面前でというあのような殺害方法も選ばなかったと思う、
事実はわからないが、今のところ、「金正男殺害事件」で“得”をしているのは韓国政府である。
韓国は今年大統領選があり、そう考えると、“北朝鮮の悪逆非道”ぶりが喧伝されることで“得”をするのは韓国保守勢力ということになる。
韓国政府は、今回の「金正男殺害事件」をネタとして、米国政府に再度北朝鮮をテロ支援国家に認定するよう要請するという。
「金正男殺害事件」は、現在進行中である「朴大統領弾劾騒動」とつながっているように思われる。
詳細は別の機会にするが、「朴大統領弾劾騒動」は、韓国国家機関のどこかもしくは一部がコ・ヨンテ氏を利用して起こした政治的陰謀だと考えている。
- 金正男氏の長男、中国当局が保護:骨肉の争いは、炎。その憎悪は、倍化する。 手紙 2017/2/17 00:25:14
(0)
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。