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大統領補佐官を辞任したフリン氏(GettyImages)
フリン単独の判断だったのか? 大きな疑惑残るロシアとの秘密協議
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8918
2017年2月15日 佐々木伸 (星槎大学客員教授) WEDGE Infinity
トランプ米政権の安全保障の要であるフリン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が政権発足前に駐米ロシア大使と対ロ制裁を協議した問題の責任を取って辞任した。トランプ政権にとっては大きな打撃となったが、本当にフリン氏の単独の判断だったのか、新たな疑惑も持ち上がっている。
■プーチンが報復しなかった理由
フリン氏は13日の夜9時に大統領に辞表を提出した。事実上の解任だ。米司法省は1月の時点で、フリン氏がロシア大使と制裁問題について話しており「ロシア側から脅迫を受けやすくなっている」とホワイトハウスに警告、トランプ氏らが精査中だった、という。
フリン氏の“容疑”は大きく言って2つ。1つは政府の承認を得ていない米市民が、米国が懸案を抱える相手国と協議することを禁止した「ローガン法」に違反しているというもの。これは政府の政策を阻害しないようにすることが目的の法律だ。
しかしフリン氏はオバマ大統領が米大統領選挙へのロシアのサイバー介入に対する対ロ制裁を発表した昨年12月29日、キャスリク大使と数回に渡って電話会談した。この会談はロシア外交官の電話などを盗聴している米情報当局によってキャッチされていた。
オバマ大統領の制裁はロシアの情報部員ら35人を追放する厳しい措置だった。フリン氏はロシア大使の電話会談でこの制裁措置について言及。トランプ政権に交代したあかつきにはロシアに対してオバマ政権よりも融和的な姿勢で臨むので、過剰に反応しないよう求める内容だった。
フリン氏が大統領補佐官に正式に就任したのは政権発足時の1月20日であり、これは明らかに「ローガン法」に違反するものだ。ロシアのプーチン大統領から報復措置があるのは当然視されていたが、プーチン氏は予想に反して報復には一切出なかった。当時から不可思議だ、との声が出ていたが、フリン氏の発言で報復措置を取らなかった理由が分かる。
フリン氏が法に反して制裁問題をロシア大使と協議した、とのうわさはワシントンで広く出回った。しかしフリン氏は強く否定。このためペンス副大統領ら政府高官はテレビなどで繰り返し同氏を擁護した。しかし先週末、実際にはフリン氏がペンス副大統領にうそをついていたことが判明し、温厚な副大統領が激怒したと伝えられている。
もう一つの疑惑はフリン氏がオバマ氏によって国防情報局長を解任された後の2015年、元将軍として「ロシア・ツデー」なる行事に参加するためモスクワを訪問、食事会ではプーチン氏の隣に座るもてなしを受けた際、ロシア政府からカネを受け取ったのではないか、というものだ。
元軍当局者が外国政府からカネを受け取る場合は、議会の承認が必要で、フリン氏はこの件でも調査の対象となっている。しかし、ロシア大使との協議は「フリン氏単独の判断」によるものだったのか、についてさらなる疑惑も持ち上がっている。
トランプ氏は選挙期間中からプーチン氏を「オバマ氏よりも有能」と公言するなど、オバマ政権の対ロ強硬方針とは180度転換した融和姿勢を示していた。トランプ氏はロシアとの間で軍縮ができれば、クリミア併合で欧米が科した対ロ制裁の解除もあり得るとの考えも示唆していた。
こうした雰囲気の中でのフリン氏の大使との電話協議だった。フリン氏の行動は“誰か他の者による指示”を受けたものでなかったのか。フリン氏をそそのかしたり、指示できるものはほとんどいないという現実をどう考えればいいのか。
■後任に2人の有力候補
トランプ大統領はフリン氏の辞任を受けて、取りあえずは補佐官代行にケロッグ元陸軍中将を充てる人事を決めた。だが、同氏は元々フリン氏が国家安全保障問題の担当者の1人として連れてきた人物で、正式な補佐官としてとどまる可能性は小さいだろう。
米メディアなどでフリン氏の後任として有力視されているのはロバート・ハワード海軍中将とデービッド・ペトレイアス中央情報局(CIA)元長官の2人。
ハワード将軍は中東を管轄する中央軍の元副司令官。マティス国防長官が司令官だった時の副官とされ、長官がトランプ氏に推薦している人物と見られている。ペトレイアス元CIA長官はアフガニスタン駐留軍司令官も務めた人物。CIA長官時代に伝記作家との不倫が明るみに出て辞任した。しかしトランプ氏はペトレイアス氏を買っており、一時は国務長官候補としても検討した。
トランプ氏は政権が混乱している印象を払しょくするためにも、また弾道ミサイルを発射した北朝鮮の脅威に対処し、過激派組織「イスラム国」(IS)の壊滅作戦を強化するためにも、安全保障問題の補佐官の空席が長引かないよう、一両日中にも後任を決定した考えだ。
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