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欧州には悪くないトランプの経済政策 ロシアの経済は急成長   「一中原則」米中の駆引きは中国の勝利 強者こそが強者と平等
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/190.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 2 月 15 日 00:35:40: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

 


 


欧州には悪くないトランプの経済政策

インタビュー

欧州金融機関から上がる期待の声
2017年2月15日(水)
蛯谷 敏
トランプ大統領の予測不能な行動に振り回されているのは、日本だけではない。EU(欧州連合)やNATO(北大西洋条約機構)に批判的な態度を取るトランプ大統領を、欧州でも警戒する動きが広がっている。

2月3日にマルタで開催されたEU非公式首脳会議では、トゥスクEU大統領が、トランプ政権をEUにとっての「外的脅威」と位置付けた。イスラム圏7カ国の国民に対する入国制限に対しても、EU主要国が批判。EUと米国の政治的な溝は深まっている。

ただし、経済面を見れば、必ずしも悪いことばかりではない。トランプ大統領が提唱する金融規制の緩和や経済政策には欧州金融機関からも期待の声が上がる。欧州経済に及ぼすトランプ効果を、大和総研の菅野泰夫シニアエコノミストに聞いた。

菅野泰夫(すげの・やすお)氏
1999年大和総研入社。年金運用コンサルティング部、企業財務戦略部、資本市場調査部(現金融調査部)を経て2013年からロンドンリサーチセンター長。研究・専門分野は欧州経済・金融市場、年金運用など。
トランプ大統領が打ち出した経済政策をどう見ていますか?

菅野:経済政策に特化して見れば、極めて真っ当な政策を打ち出しているとの印象です。トランプ大統領の狙いは、シンプルです。すなわち、財政出動による景気拡大と、反グローバリズムの通商政策により国内雇用を増やし、中間層の所得水準を上げるというもの。移民についても、これまで受け入れ過ぎた反省から、適切な水準での管理に舵を切っていくということでしょう。

 もちろん、彼独特の政策の打ち出し方や、ツイッターを使った“口撃”という手法については賛否が分かれますが、市場関係者から見れば結果が大切です。ダウ平均株価の水準を見る限り、トランプ大統領の打ち出した施策は今のところ期待されていると言っていいでしょう。

 自動車メーカーに米国内で工場を作るように介入したりする行為も、自動車メーカーが従っているのは、米国の力を認めているからに他なりません。もし、本当に米国に未来がなければ、メーカーは米国から逃げ出してしまうわけです。こうした事情も勘案した上で「取引(ディール)」がなされているとの見方もできます。トランプ大統領が今後繰り出す施策は予測不能ですが、今のところ米国企業や米国で事業を展開する外国企業双方の利益が確保されていると考えられるでしょう。

 彼にとっては、貿易交渉もディールの感覚に近いのではないでしょうか。TPP(環太平洋経済連携協定)のような多国間交渉よりも、2国間で交渉をまとめた方が、取引がしやすいし、スピードは速いですからね。ビジネスマンの発想ですべての政策を動かしている印象です。

 マクロ経済をみると、財政出動への期待が高まれば、株価は上がる傾向にあります。現時点での株価を見る限り、金融市場はトランプ大統領の政策を評価していると見ていいでしょう。

 ただし、大型のインフラ投資や減税策に関する法案が提出されるのは2017年春以降となりそうです。選挙公約には、与党である共和党内から反発の声が上がる恐れがあり、可決までに時間がかかる可能性がありますね。従って、実際に財政出動が始まるのは、2018年以降と想定する向きも多く、現段階では期待が先行し過ぎているという見方も否めません。

当然ながら、トランプ氏の政策は、欧州の経済にも影響を与えますね。

菅野:そうですね。ポイントは、3つあると思います。

 1つは金融政策です。結論を言えば、長らく続いた低金利の潮目が欧州でも変わる可能性があります。

欧州の低金利が正常化する可能性も

 トランプ大統領は、低金利に批判的なスタンスで知られています。このため、今後の金融市場は、現状よりも高い金利になるという見方が金融関係者の間で一致しています。

 一方、為替市場では、為替操作国を名指しするなど、トランプ大統領が口を出しすぎる状況が続くと予想されます。大統領の発言がファンダメンタルズに即しているとは思えず、各国の金融政策担当者にとって悩ましい状況が続くでしょう。口先介入で永遠に相場が決定されることはないと思いますが。

 ただ、実際に米国金利が上昇すれば、欧州にも影響を与える可能性があります。折しも、世界の主要国で金融政策の有効性に対する信頼性が揺らいでいるタイミングです。金融緩和によって長らく低金利が続いてきた欧州でも、金利がある程度正常化する可能性はあります。

 特にECB(欧州中央銀行)の政策金利はグローバルな経済環境の変化を受けて決定されます。年央以降の金融政策会合の場で、ドラギ総裁が進める現行の金融緩和政策に対する出口戦略がどのような形で決定されるかに注目しています。

英国では英中銀のイングランド銀行が利上げを模索していると見られていますが…。

菅野:英国は、国内のインフレ率上昇という別の要因もあり、利上げに転じる可能性は十分にあるでしょう。焦点となるのは、ここでもECBですね。ドラギ総裁が、トランプ効果によって、いつごろ意思を変化させるのかが今後の注目の一つになるでしょう。ドラギ総裁は現段階では金融引締め、利上げに否定的な見方をしています。そのタイミングを見計らって(通貨防衛の意味合いも含め)、英中銀の動きがあわただしくなると思います。

 2つめのポイントは、財政政策です。先程も述べたように、米国は財政出動を拡大させることで、景気拡大を推し進める考えです。その流れは、欧州にも広がる可能性があります。EU離脱を決めた英国は、財政拡大の姿勢を既に明確にしています。フランスの大統領選でも、財政拡大が一つの論点になるとみられています。

EUを事実上取り仕切るドイツの厳しい監視は、加盟国が財政支出を拡大させるハードルになりませんか。

菅野:もちろん、EU主要国は、財政規律を順守することを求めるでしょうが、その声が弱まりつつあるのも確かです。欧州委員会も、2017年以降に財政支出を拡大させる必要性を2016年11月に指摘しています。これはドイツに対するメッセージだとして注目されました。ドイツ側は相変わらず、財政拡大による景気浮揚効果について異論を唱えており、反発しています。欧州委員会がこのドイツの方針をどこまで変えられるかが、一つの注目点になるでしょう。

 最後のポイントが、金融規制です。トランプ大統領は2月3日に、金融規制の一つであるドッド・フランク法などの見直しを命じる大統領令に署名しました。加えて、新たな規制の導入も凍結すると発言しており、金融危機以降に実施した金融改革を見直す方向に向かっています。

 この結果、世界共通の金融規制枠組みの策定に向けて、米国の関与が弱まる可能性があります。例えば、現在進められている銀行規制のバーゼルIII規制改革(バーゼルIV)は、欧州銀行の意向をより多くくんだ形で最終決着する可能性が濃厚です。そうなれば、欧州の銀行にとっては、追い風になる可能性もあります。

EU離脱を決めた英国と米国との関係はどうなりますか?先日のメイ首相とトランプ大統領の会談では、特別な関係をアピールしていました。

菅野:この会談が英国にとって一定の成果となったのは確かでしょう。米国との特別な関係を改めて確認するとともに、トランプ大統領からNATOへの100%コミットを引き出すことに成功しました。メイ首相は、米国のコミットを取り付けるため、防衛支出をGDP(国内総生産)比で2%支払うようNATO加盟国に説いて回ることを約束しています。

 ただし、英国が米国とEUの橋渡し役になるという目論見については、疑問符がつきます。2月3日にマルタで開かれたEU非公式首脳会議で冷遇されるなど、英国はEU諸国から冷ややかな目で見られ、橋渡し役となる目算は外れた形になりました。さらに、トランプ大統領が発表したイスラム圏7カ国の国民に対する入国規制によって、親密さをアピールした英国は苦しい立場に立たされる可能性があります。

 一方で、英国にとって米国はEU離脱後のパートナーとして欠かせません。EU離脱後すぐに貿易協定を締結できるように、準備を進めていくでしょう。ただ、もちろん、ここにも問題はあります。例えば、EUを離脱する英国の農家はEUからの助成金を喪失する可能性が高く、そうした中で、米国の農業とどう伍していくのか。トランプ大統領と折り合うのは、決して簡単ではありません。

ロシアの経済は急成長へ

ロシアへの影響についてはどう見ますか

菅野:あまり語られていませんが、今回のトランプ大統領の就任で大きく注目されているのは、ロシアです。石油価格の回復に伴い、昨年までマイナス成長だった経済は今年はプラス成長が予想されています。このタイミングで西側の経済制裁解除が重なれば、ロシア株式市場や通貨ルーブルも大きく回復することが予想されています。

 一方で、経済制裁解除に関して米国の与党共和党からも批判が出ています。マケイン上院議員は対ロシア制裁を法制化するよう主張するなど強気の姿勢を取り続けています。ただ、ホワイトハウスの内部にいる関係者が、すでに経済制裁解除に関する大統領の令草案ができていると語るなど、大統領と議会の対立が激しさを増しています。

 「取引」好きを自認するトランプ大統領が、経済制裁解除が利益になると考えれば、3月の解除に向けて一気に情勢が動く可能性もあります。そうなれば、7月に更新を迎えるEUによる経済制裁の解除につながることも考えられます。そうなれば、欧州企業のビジネスも段階的に拡大していくでしょう。結果的に、トランプ大統領の親ロ姿勢は、ロシアが急成長する機運を高めることになりました。

 総合的に見れば、トランプ大統領の政策は、停滞する欧州経済に風穴をあける可能性があります。ただし、英国をはじめとする欧州首脳は、従来の常識が通じないトランプ大統領の一挙一動に、当面の間、右往左往させられることになりそうです。欧州首脳たちがどのように対処していくのか、今後も注目されます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/230078/021400078/?


 


 


「一中原則」米中の駆け引きは、中国の勝利か?

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス

トランプと習近平「強者同士の握手」の行方は
2017年2月15日(水)
福島 香織

日本の「戦略的人柄」外交は一定の成果を得たが、中国はどんな握手を米国に求めるのか(写真:ロイター/アフロ)
 日本首相の安倍晋三が訪米し、大統領となったトランプと初の会談を行った。印象的だったのは、トランプの力任せの19秒の握手と、それに対する安倍のおどけた表情かもしれない。少年漫画では、よく試合の前に、宿命のライバルが笑顔で力任せの握手を交わし、どちらが強者かを握力でもって相手にわからせようとするシーンがあるが、まさに、あれである。ただ安倍の場合は力任せに握り返すようなことはせず、おどけたような、困ったような表情でそれをやり過ごした。

「戦略的人柄」の見返り

 その漫画に出てくるような画面については、日米の蜜月ぶりを示すと肯定的にとらえた評価と、相手を痛がらせるような挑発的握手を重要な同盟国たる日本首相にしょっぱなにかますトランプの非礼を批判する声と、握手が痛くて長かったことに対してまんざらでもない表情でおどけてみせる安倍の様子を「媚び」「へつらい」だと揶揄する意見があったと思う。個人的な感想をいえば、米中蜜月というのは、今のところ日本の「媚び」によって基本的に維持される関係であり、この場合の「媚び」は、戦略的だと容認したい。「戦略的媚び」といってもいいし、媚びという表現が悪ければ「戦略的人柄」と言い直してもいい。

 導火線がだんだん短くなってきている火薬庫みたいな半島や、内政問題と外交的圧力の狭間でいつ何をするかわからない覇権主義の中国と海一つ隔てたところにいながら、正規の国防軍もなければ正規の諜報防諜機関もない、か弱き日本の首相がプライドばかり高くてもしょうがない。巨額インフラ投資の手土産をもって強国に媚びたその見返りが、北朝鮮の弾道ミサイル発射をうけて、パームビーチで開かれた共同記者会見での「米国は100%日本とともにある」との大統領発言であり、マティス米国防長官訪日の際の尖閣諸島の防衛が日米安保の適用範囲であるとの言明だ。

 高いか安いかは、まだ何ともいえないが、当面の外交方針としては間違ってはいまい。もちろん日本の安全保障政策設計の最前線にいる人たちは、この「安心」を鵜呑みにして、ほっとした気分に浸ってはいけない。

 それよりも気になるのが、安倍訪中直前に行われた米中首脳電話会談だ。このタイミングで、トランプは中国を思いっきり揺さぶった「台湾カード」をあっさり引っ込め、「一つの中国」(一中)原則を尊重することを言明したのはなぜだろう。

 米国が一中原則を尊重するということは、台湾海峡の緊張を大きく引き下げたという点で、日本にとっても朗報である。それだけ軍事衝突に巻き込まれる可能性が減ったわけだ。だが、米国が中国に対して強硬姿勢を貫くことを期待していた一部の日本の保守派からすれば、ちょっと拍子抜けかもしれない。台湾カードは、もっとも使い方が難しいが、もっとも中国に打撃を与える最強カードだったからだ。それをあっさり引っ込めたというのは、米国が中国の圧力に屈したというのだろうか。

米国の姿勢転換の背景は…

 この米国側の姿勢転換の背景については、各メディアがいろいろ報じている。

 ロイター通信によれば、これまでの発言を撤回してトランプが一中原則を尊重するように政策を転換した背景には、元駐米大使で外交担当国務委員の楊潔篪が2月3日、トランプ政権の国家安全保障補佐官だったマイケル・フリン(2月14日に辞任)を電話で説得したことと関係があるようだ。また北京大学国際関係学院院長で中国政府の外交政策顧問の賈慶国が、米中関係を安定させるために中国が実務的に忍耐力をもって努力を尽くすことを訴えていたので、おそらくは習近平サイドの「戦略的忍耐」も功を奏したといえる。

 BBCによれば、フリンとともに国務長官のレックス・ティラーソンもトランプに「一中政策」を堅持するよう促したという。習近平から大統領就任の祝賀電報をもらいながら、無視を決め込んでいたトランプが中国の元宵節(旧正月15日にあたる2月8日)に、祝電を送るように提言したのもティラーソンらしい。その二日後の10日に電話会談で、一中原則堅持の方針を伝えたのだ。

 新華社など中国公式メディアによると、北京時間の10日(米国東部時間9日夜)に習近平とトランプは電話会談をした。習近平から一中原則の堅持を求められると、トランプは「米国が一中政策を非常に尊重していることを私は十分理解している。米国政府は一中政策を堅持する」と語った。両者は貿易問題から私生活まで、様々な話題を45分語り合ったという。

 これはトランプ当選以降、初めて一中原則を明確に支持した発言となった。昨年12月、トランプが大統領に就任する直前に、台湾総統の蔡英文に直接電話し、蔡英文をプレジデントと呼び、その後、一中原則に対する疑問を呈して以降、中国は表向き、戦略的忍耐と称して公式発言を抑制しつつ、台湾に対する武力統一をほのめかす恫喝メディア世論を形成しつつ、米国に対する中国企業家らからの投資アプローチを展開しつつ、外交官は米国の一中原則放棄姿勢を覆すために各地を奔走した。

政治的駆け引きから経済的駆け引きへ

 ちなみに、中国外交部の動きを見ると、楊潔篪は、昨年12月中旬のメキシコ訪問前にニューヨークに立ち寄り、フリンと早々に面会も果たしていた。楊潔篪とフリンはその後、政権同士の窓口の役割を果たしていたようだ。

 一方で、外相・王毅は1月にナイジェリアを訪問、ナイジェリア政府に「一中原則」を認めさせ、台湾の交流窓口機関を首都から退去させるよう約束させた。中国は12月、サントメ・プリンシペにも台湾と断交させ、ブルキナファソにも台湾と断交すれば500億ドルを供与するなどと持ち掛けている。王毅は2月にはオーストラリアを訪問、トランプが1月28日に電話会談して暴言を吐いたとして不仲説が取り沙汰されるターンブル首相を中国サイドに取り込むべく動いている。

 中国サイドの認識では、トランプはビジネスマンとしての感覚で政治領域を動かそうとしており、その発言に理屈も知識も畏れもない。中国としては、政治駆け引きをいかに経済駆け引きに転嫁させるかという点が、トランプ攻略のキモとしているもようだ。

 トランプ政権サイドも、必ずしも中国に強面ばかりを見せているわけではない。娘・イヴァンカを、中国語を勉強中という孫娘とともに中国大使館の春節パーティーに参加させる一方で、女婿クシュナーは中国大使の崔天凱と非公開会見を果たした。この会見内容に、「一中原則問題」が含まれていたかはわからない。

 フェニックステレビは、こうした中国外交の成果として、トランプの一中原則軽視の姿勢を180度転換させたと分析している。

 フェニックステレビはこう指摘する。

強者こそが強者と平等に

 「トランプはビジネスマンであり、頭の中はビジネス的な思考で満ちている。また感情的な面があり、その性格は率直な一面もある。オバマに比べてイデオロギーによる束縛は少なく、利益が明らかであれば、中国とも交渉するときに、問題を棚上げにすることができる。今回の首脳電話会談では、双方とも重要な共通認識を得た。中米間にも、相互的な利益が多く存在し、トランプが米国を再び偉大にするという目標と、中国の長期的利益が水と火のように絶対相いれないというものではない。たとえば、トランプが一心に願っている米国の交通インフラ建設などは、中国の得意とする領域であるし、相互に利益が行きわたるプロジェクトとすることができるだろう」

 「トランプは安内(国内安定)を攘外(外敵をはらう)に優先させ、攘外を安内に優先させるという、大きな任務に直面している。ムスリム国家からの“入国禁止令”が司法に反駁され、トランプは一時的に国内の反撃をけん制するのに精力を注がざるを得ない。年初以来、米国は南シナ海問題、日中の尖閣問題でも中国を挑発してきたが、これはいったん冷静期に入った。中米関係の緊張はいったん緩むであろう」

 「トランプは強者を崇拝する性格であり、国際関係もそうだろう。今後の米中関係の道はでこぼこがあるだろうが、強者こそが強者と平等に対話する権利があるのだ。…時間とチャンスはわが方にある。この一中原則をめぐる中米の外交の駆け引きは中国の完全勝利だった!」

 もちろん、こうした見方は中国の希望的観測が大いに入っている。本当に中国の完全勝利なのかどうなのかは、まだ今後の展開を見てみないとわからない。米国の言う一中は、中国の一中と若干ニュアンスが違い、台湾の地位に関しては未定論が主流である。だからこそ台湾関係法という矛盾する法律があるのだ。

 台湾サイドは「一中政策」は米国の内政問題だとして、特に立場を表明しておらず、今回のトランプの姿勢転換についても、「意外性はない」と冷静だ。

 ところで、フェニックスのコメントの最後の「強者こそが強者と平等に対話する権利がある」という表現は、いかにも米国や中国の外交の本質を端的に示している。安倍の外交が恫喝や当てこすりもせず、相手の機嫌をとり、痛い握手も我慢して、相手に気に入られることで、自分たちの要求を相手に求めていく「戦略的媚び外交」あるいは「戦略的人柄外交」であるなら、トランプや習近平は、まず恫喝やはったりをかまして、相手を慌てさせ、ひるませるところから始める「強者の外交」だ。

マッドマンたちは、どんな握手を?

 そういう意味では米中はやはり似たもの同士である。いわゆる「マッドマンセオリー」(狂人のふりをして、こいつ何をしでかすかわからない、と相手をひるませるやり方)でぐいぐい来るタイプのトランプだが、迎え撃つ習近平も本気で戦争をしかねないと思わせる「マッドマン」ぶりなので、双方がお互いのマッドマンぶりを甘くみると、軍事衝突もあり得ると懸念されるのだが、お互いの思考が想像できる分、妥協のしどころもわかるともいえる。

 歴史上、米中が厳しい対立関係から一転、世界を出し抜くように蜜月関係になったこともあったのは、そういうわけだろう。「一中原則」問題について、最初にはったりをかましたのはトランプで、中国はずいぶん狼狽させられたが、最終的にトランプを説得できた。中国の戦略的忍耐と外交努力、そしてその一線を越えたら戦争も辞さないという狂気をうまく演出して引き出した妥協という点では、中国の勝ち星だといえる。

 中国は、これをきっかけに米国の対中強硬姿勢が緩むとの期待を見せているが、トランプ政権のドラゴンスレイヤーぞろいを見れば、そう思い通りにはいくまい。少なくとも中国はいつ一中原則カードを持ち出されるかもしれぬと、オバマ政権当時よりも慎重に対米外交を展開するのではないか。となると、いわゆる米中対立という新冷戦構造の緊張感の中での安定という状況が当面続きそうな予感だ。

 だが、そういう猶予期間が与えられている間に、日本としては切実に国家としての強さというものを考えねばならないだろう。パックスアメリカーナで世界の平和が約束されていた時代は、米国に対する戦略的人柄外交で十分、日本の安全は守られた。だが米国の強者の地位が揺らぎ、あるいは強者が米中二者になれば、その狭間にいる国は対立する二者ともに媚びを売るわけにはいかない。つまり、日本自身も強くあることを求められるようになる。中国ははっきりと「強者しか相手にしない」と言っているのだから、中国と直接、対等に外交を展開して、日本の安全を守ろうとするなら、強者の外交をしなければならないということだ。

 トランプ・習近平の直接会談はいつになるのかまだわからないが、双方が互いの握力を競うような握手をするのだろうか。米中関係の本当の方向性は、この二人の握手の仕方を見てから判断したい。

【新刊】中国が抱えるアキレス腱に迫る
『赤い帝国・中国が滅びる日』

 「赤い帝国・中国」は今、南シナ海の軍事拠点化を着々と進め、人民元を国際通貨入りさせることに成功した。さらに文化面でも習近平政権の庇護を受けた万達集団の映画文化産業買収戦略はハリウッドを乗っ取る勢いだ。だが、一方で赤い帝国にもいくつものアキレス腱、リスクが存在する。党内部の権力闘争、暗殺、クーデターの可能性、経済崩壊、大衆の不満…。こうしたリスクは、日本を含む国際社会にも大いなるリスクである。そして、その現実を知ることは、日本の取るべき道を知ることにつながる。
KKベストセラーズ刊/2016年10月26日発行

このコラムについて

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
 新聞とは新しい話、ニュース。趣聞とは、中国語で興味深い話、噂話といった意味。
 中国において公式の新聞メディアが流す情報は「新聞」だが、中国の公式メディアとは宣伝機関であり、その第一の目的は党の宣伝だ。当局の都合の良いように編集されたり、美化されていたりしていることもある。そこで人々は口コミ情報、つまり知人から聞いた興味深い「趣聞」も重視する。
 特に北京のように古く歴史ある政治の街においては、その知人がしばしば中南海に出入りできるほどの人物であったり、軍関係者であったり、ということもあるので、根も葉もない話ばかりではない。時に公式メディアの流す新聞よりも早く正確であることも。特に昨今はインターネットのおかげでこの趣聞の伝播力はばかにできなくなった。新聞趣聞の両面から中国の事象を読み解いてゆくニュースコラム。
日経BP社
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http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/021400088/

 

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コメント
 
1. 2017年2月15日 11:49:11 : 57BdBTisug : UYvi3VGycKk[4]
われわれ平民にはなんの関係もない話。それより、トランプの人権蹂躙を無視するのか?

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