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トランプ米国大統領(AP/アフロ)
トランプ米国は日本の貿易黒字を絶対許さない…安倍政権、「車」死守で「農家」生贄か
http://biz-journal.jp/2017/02/post_17979.html
2017.02.10 文=垣田達哉/消費者問題研究所代表 Business Journal
2月10日に日米首脳会談が予定されているが、日本政府は何を要求されるのか戦々恐々としている。米国側から自動車の不均衡貿易を追及されると予想されているが、その理由が、1月25日に財務省が公表した2016年分貿易統計に如実に表れている。
表1を見ていただきたい。昨年の日本の貿易収支は、全体(対世界)で約4兆円の黒字だが、対米国だけで6兆円以上の黒字である。輸出総額の約20%を米国向けが占め、米国以外での約2兆円の赤字を補い、さらに4兆円もの黒字を出すことができた。対中国の赤字分を米国への輸出でカバーしたともいえる。
過去10年間でも、全体の貿易収支が赤字だろうが黒字だろうが、対米国だけで3〜8兆円の黒字だ(表2参照)。そのなかで突出しているのが自動車だ。毎年2〜5兆円も輸出している。輸出金額2位の自動車の部分品は1兆円にも満たない(表3参照)。まさに、自動車さまさま、米国さまさまの状況なのだ。
一方、日本が米国から輸入している自動車は、16年の実績が約901億円。米国が貿易収支、特に自動車の貿易不均衡を訴えるのは当然のことだろう。
■トランプは貿易不均衡を許せない
1月28日の日米電話会談で「安倍首相は『日本の自動車メーカーは米国内で150万人の雇用を生み出している』と既に米国経済に貢献している現状を説明した」(1/31付読売新聞)というが、トランプ大統領は現状で満足していないのは明らかだ。「日本政府は『トランプ氏は首脳会談で必ず自動車を取り上げる』(高官)と見ており、こうした現状を説明し、理解を求めていく方針だ」(同紙)といっても、到底理解はしてくれないだろう。
貿易統計を見れば、米国に「貿易不均衡だ」と追及されれば弁解のしようがない。米国への輸出のトップが自動車で4兆4115億円、第2位が自動車の部分品で8632億円。自動車関連だけで5兆2747億円輸出している。米国が「貿易不均衡の元凶が車だ」と主張するのも無理はない。
「米国第一主義」を掲げるトランプ大統領は「米国が赤字になる貿易は許せない」のだ。6兆円も日本が黒字になっていることこそ、貿易不均衡を証明している。米国側は「日本の貿易黒字をどこまで減らすことができるのか」を要求してくるはずだ。日本での販売数量の少ない米国車の輸入を増やそうと思っても、何をしようがすぐに数千億円もの販売増が見込めるわけがない。
■米国は納得しない
トランプ政権は、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定のように、5〜10年かけて輸入を増やすというような生ぬるいことは許してくれないだろう。「今年中にどれだけ米国の貿易赤字を減らせるのか具体的な数字を示せ」、あるいは「その代替策を提案しろ」と迫ってくるかもしれない。
日本側が無回答であれば、日本車の輸入を抑えるために「自動車の輸入に20%の関税をプラスする」ということになりかねない。トランプ大統領は「米国で売る車は米国の工場でつくれ」という姿勢だ。「4兆円のうち1兆円分を米国の工場でつくれば、米国での雇用も生まれる。日本で製造して米国に輸出するよりコストが安くなるかもしれない。そうなれば、米国民は、日本から輸入するより安い日本車を買うことができるだろう」と迫られたとき、どんな反論ができるのだろうか。
安倍政権は、自動車の関税が引き上げられ米国への輸出が減る事態は極力避けたい。1兆円でも輸出が減れば、自動車産業および経済界への打撃が大きすぎる。そうなると、貿易黒字を減らすには、米国からの輸入を増やさなければならない。数兆円の貿易黒字を一気に減らすことは難しいとしても、米国から日本への輸出を拡大する具体的な品目と金額を明示しなければ米国は納得しない。
■「米」と「牛肉」の輸入増加
そこで浮上するのが食料品である。食料品全部合わせても、昨年の米国からの輸入額は約1兆3250億円しかない。そのうち、肉類は約3500億円、穀物類は約3600億円である。米国側が要求してくるのは「米」と「牛肉」の輸入増加だろう。
穀物の小麦、トウモロコシ、大豆は日本の自給率がかなり低いので、これ以上輸入量が増えることはない。肉類の豚肉は、すでに輸入量が多いので、米国産の輸入拡大はあまり見込めない。ところが米と牛肉は、国産の消費量が多いので、安い米国産が輸入されれば、相当な需要が見込める。
しかもこの2品目は、米国での大量生産が可能で、関税をゼロにすれば日本の輸出額は数千億円増加する可能性がある。そうなると、今度は日本の米農家と畜産農家に大打撃を与えることになる。
TPP協定が実行されても国内農家への影響が大きいといわれているのに、2国間協定で米国の言いなりになって、自動車を守るために食を犠牲にすれば、まさに「トランプの思うつぼにはまる」ことになる。
2月10日に予定されている日米首脳会談について、安倍首相は衆議院予算委員会で「TPPと同じで、守るべきものは守る、攻めるところはしっかり攻めていく」と発言しているが、何を守ってどこを責めるのだろう。
トランプ大統領は「米国で売る車は米国でつくれ」「貿易赤字は許さない」と言っているのだ。日本の第一次産業を犠牲にして自動車を守るのか。それとも、輸出を減らすわけでもなく、輸入を増やすわけでもなく、第三のカードを切るのだろうか。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)
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