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トランプの長女の夫はユダヤ教徒。宗教対立に安倍首相も巻き込まれる? (c)朝日新聞社
過激派が「トランプ暗殺指令」米国民へのテロを呼びかけるSNSが急増〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170208-00000021-sasahi-n_ame
週刊朝日 2017年2月17日号
トランプ米大統領が命令した中東・アフリカ7カ国の国籍保持者の入国禁止措置で「パンドラの箱」が開いた。イスラム過激派は「トランプ暗殺指令」を出し、さらには「米国民にテロを」と呼びかけるSNSが激増。一触即発の敵愾心が世界中で蔓延中だ。ジャーナリストの黒井文太郎が取材した。
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「我々は悪魔であるアメリカに復讐する。待つがいい。トランプは愚かなブタだ!」
「トランプの命令など無意味だ。アメリカで生まれた者が、米国内でお前たちを攻撃するだろう」
イスラム過激派のSNSでは今、アメリカへのジハード(聖戦)を呼びかける書き込みが急増している。
きっかけは、1月27日にトランプ大統領が、中東・アフリカの7カ国の国籍保持者の入国を禁止する大統領令を出したことだ。
この大統領令をめぐる大混乱は周知のとおりだが、トランプ大統領に敵視されているイスラム過激派の側は、この大統領令を自分たちのジハードの正しさが証明されたものだと主張している。
たとえば、メッセージ・アプリ「テレグラム」のイスラム系チャンネル「アブ・マグレブ」には、「これでイスラム教徒に対する米政府の憎悪の真実と、厳しい現実がはっきりと明らかになった」という投稿も寄せられている。自分たちのジハードの正しさを証明したトランプ大統領を「イスラム教徒への最高の呼びかけ人」と皮肉交じりに評価するコメントもあった。
また、イスラム過激派系のSNSでは現在、2011年にイエメンで米軍に殺害された米国籍の「アラビア半島のアルカイダ」の指導者アンワル・アウラキが遺した次の言葉が広く拡散されている。
「いずれ西側の攻撃は、イスラム教徒の一般市民に向かうだろう」
現時点まで、イスラム国(IS)とアルカイダは今回のトランプ大統領の入国禁止措置に対して正式な声明は出していないが、親IS系のSNSでは、このアウラキの予言が現実のものになったとして、アメリカへの攻撃を呼びかける投稿が殺到している。
憎悪が渦巻く中、1月29日に米軍がイエメンで「アラビア半島のアルカイダ」幹部を標的とした急襲作戦を実施し、巻き添えで子供6人を含む民間人13人が殺害されるという事件があった(殺害された子供のひとりは前出のアウラキの8歳の娘)。
「アラビア半島のアルカイダ」は翌日、この攻撃をトランプ大統領の入国禁止措置と結び付け、「アメリカがイスラム教徒と戦争している証明だ」との声明を発表している。トランプ政権の挑発的なイスラム敵視政策をきっかけに、世界中のイスラム過激派が今、アメリカとの戦いを正当化しているのだ。
米政府は表向き「宗教差別ではない」として、あくまで国別の対応をしており、「イスラム教徒」という括りでの措置はとっていないが、それはタテマエにすぎない。例えば、トランプ政権でサイバー・セキュリティー・アドバイザーに指名されているジュリアーニ元ニューヨーク市長は1月28日に出演した米FOXニュースで、「トランプ大統領から、合法的にイスラム教徒を入国させない方法について尋ねられた」と証言した。
また、大統領令に署名する前、トランプ大統領はキリスト教系の米CBN放送に対し、イラクやシリアで迫害されてきたキリスト教徒を助けたい旨の発言をしている。トランプ大統領は自身のツイッターでも、1月29日に「中東では多数のキリスト教徒が処刑されてきた。我々はこの惨劇が続くことは許さない」と書いており、自身の対テロ政策の基本に、キリスト教徒のための戦いという宗教的な意識が非常に色濃いことを示唆している。
それだけではない。トランプ大統領は支持基盤のひとつであるキリスト教右派を優遇し、同派の大物であるベッツィ・デボスを教育長官に指名。さらに福音派の大物2世であるジェリー・ファルウェル・ジュニアを教育省改革本部長に指名するなど、キリスト教右派との連携を強化。2月2日には、教会などの政治活動を制限している税法のジョンソン条項を撤廃することを示唆するなど、明らかにキリスト教優遇策を打ち出している。
他方、トランプ大統領はユダヤ教にも気をつかっている。ユダヤ教徒の国・イスラエルにおいて、米国大使館のエルサレム移転の意向を示しているのだ。エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の共通の聖地だが、そのエルサレムをめぐってイスラエルとパレスチナが争っていることから、アメリカは政治的配慮で大使館をそこには置かず、テルアビブに置いていた。大使館をエルサレムに移転するということは、イスラエルの首都を正式にエルサレムと認めることを意味する。これはイスラム世界からすれば、敵対的な行為にほかならない。
さらに、トランプ政権はイランの核・ミサイル問題に関しても、オバマ前政権とは違い、イラン側に非常に強硬な態度を示している。これを、イランの宿敵であるイスラエルは歓迎しているが、こうしたトランプ政権のイスラエル優遇政策もまた、イスラム過激派からすれば、「敵の攻勢」そのものに映るだろう。
ちなみに、トランプ大統領自身はキリスト教徒だが、長女イヴァンカの夫であるジャレッド・クシュナーがユダヤ教徒で、彼と結婚したイヴァンカもユダヤ教に改宗している。
「クシュナーは今や大統領に最も近い側近として活動しているが、トランプ政権のイスラエル重視には、こうした背景がある」(外務省関係者)
トランプ政権はかねてIS殲滅(せんめつ)を公約としていたが、1月26日には、比較的穏健なイスラム組織である「ムスリム同胞団」をテロ組織に指定する案が、マイケル・フリン国家安全保障担当大統領補佐官を中心に検討されていることが明らかになった。フリン補佐官は、かねてからイスラム勢力に対する強硬な態度で知られている人物だが、もしもこうした案が実行されれば、穏健なイスラム教徒を過激な勢力に近づけてしまうことになるだろう。
以上のように、トランプ大統領の対イスラム差別・敵視政策は、イスラム過激派からみれば、まさに現代の「十字軍」にほかならない。イスラム過激派の世界では、十字軍に対しては、より激烈な反撃を行うことが、より貴いジハードとみなされる。
「今、彼らにとって最も価値あるジハードは、十字軍の首領たるトランプ大統領を暗殺すること。もちろん米国大統領は常に厳重に警護されており、そう簡単に殺害することはできないが、そうであれば、次なるジハードの標的は、トランプ大統領を選んだ米国民に向かうことになるだろう」(米軍事関係者)
現在、トランプ政権の大統領令により、中東7カ国の国籍保持者のアメリカ入国は難しくなっているが、実際には過去のテロ犯の多くは、この7カ国以外の国出身である。また、冒頭に紹介したネットのコメントのように、多数いる米国籍のイスラム教徒の中から、過激思想に入り込む者が出てくる可能性もある。また、海外にいる米国人が狙われる危険も高まっている。
トランプ大統領が開いた宗教対立の罪は深い。
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