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WTOに挑戦するトランプ、待ち受ける訴訟の嵐(WEDGE)
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/665.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 1 月 31 日 13:17:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

WTOに挑戦するトランプ、待ち受ける訴訟の嵐
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8766
2017年1月31日 岡崎研究所 WEDGE Infinity


 元WTO上級委員会委員長のジェイムス・バッカス元米下院議員は、1月4日付のウォールストリート・ジャーナル紙で、トランプ政権はWTO上の義務をどうするのかはっきりしないとして、世界貿易の将来について懸念を表明しています。論説の論旨は次の通りです。

 トランプは商務長官にロス、通商代表にライトハイザー、新設の国家貿易会議議長にナヴァロを指名した。関税を引き上げるとの公約に真剣であることを示唆する。移行チームはすべての輸入に10%の追加関税もありうるとしている。

 米大統領は議会の承認なしに貿易措置を驚くほど自由にとれる。国内裁判所で挑戦があっても、新政権は勝つだろう。しかし、本当の戦いはWTOの判事を前にしての国際的訴訟である。WTO協定上、米国は多くの貿易品目に関税上の約束をしており、これは法的に拘束力がある。
全輸入品への10%の関税は、この約束に反する。中国からの輸入品への45%関税、メキシコからの輸入品への30%関税もそうである。次期政権がWTOの義務をどう考えているのか、不明である。トランプはWTO脱退もありうるとしている。脱退まで行かないとしても、米国の一方的な措置は他国の報復を招き、世界貿易システムは崩壊しよう。

 追加関税は影響を受ける国からのWTO提訴につながる。米国は効果的な防御をなし得ない。米国がWTOの裁定を受け入れない場合、これらの国はこれまでの譲許を撤回できる。米国は毎年、数十億ドルの貿易を失うことになる。

 米国は貿易の調整措置をとりうる。中国との関係では、鉄鋼生産能力の過剰など、多くの問題がある。しかしこれらの貿易問題がWTOの法的枠組みの中で追求されるのか、WTOの枠外でなされるのかが問題である。WTOの枠外であれば、米国はWTOの訴えで負ける。

 米国はアンチ・ダンピング税を課しうる。また輸入品への補助金については、米国はそれをやめるようにWTOに訴えられるし、相殺関税をかけられる。しかしこれらの行為が国際的に合法であるためには、米国の行為はWTOの規則と整合的でなければならない。米国の初期の行動は、アンチ・ダンピングと相殺関税についての国内規則を厳しくすることかも知れない。然しこれもWTOに訴えられ、WTO違反とされる可能性がある。

 いずれにせよ、米国の措置の主要な標的は中国になろう。2015年の米国の対中赤字は3660億ドルにもなる。中国は報復を検討するだろう。米国は鉄鋼、アルミニウム、携帯電話、コンピューター、おもちゃを標的にする可能性がある。中国は自動車、航空機、大豆、豚肉を標的にしうる。さらに、独占禁止法の利用、知的財産権の無視もありうる。

 米国の貿易関連措置、他国の報復措置はWTOでの難しい紛争になる。貿易紛争を非政治化するのがWTOの目的であったが、この状況でWTOの紛争処理は機能するのか。WTOの上級審は、多数の政治的に爆発しかねない貿易紛争に直面する。WTOの上級審の独立、公平な司法の役割が、貿易上の法の支配の維持のためにこれまで以上に重要である。

出 典:James Bacchus ‘Trump’s Challenge to the WTO’(Wall Street Journal, January 4, 2017)
http://www.wsj.com/articles/trumps-challenge-to-the-wto-1483551994

 この論説は、トランプ新政権の保護主義的な通商政策が、世界貿易に与える悪影響について論じたものです。適切な問題提起です。トランプはTPPを議会に承認を求めて出すことは考えられないし、NAFTAについても再交渉を求めることは確実です。トランプのこういう保護主義的で、多国間合意より二国間合意を優先する姿勢は、世界貿易を縮小させる効果を持つでしょう。

 しかし、いくらトランプでも、WTO脱退にまでは、一度言及したことがありますが、踏み込むことはないだろうと考えてきました。そうであれば、追加関税賦課にもブレーキがかかりますし、米国もWTO紛争解決の仕組みで負け続けるわけにも行かないので、無茶なことをするにも限度があると考えました。この論説は、中国やメキシコに追加の高関税をかけることはありえ、WTO上の義務をないがしろにする危険があると指摘しています。

■米中貿易戦争は不可避

 トランプが世界貿易の基盤であるWTOを形骸化するようなことは、日本としては強く反対すべきです。米国はブロック経済が第2次世界大戦の1つの要因と考えて、IMF、世銀、GATTなどを作ったのであり、そういう米国の考え方にはそれなりの根拠があります。この点は日本として強調しておくべきでしょう。

 ただ、米中間の貿易戦争というのは今後ほぼ不可避であり、米中双方とも多くを失うことになるでしょう。中国はより多くのダメージをこうむることになるでしょうが、いずれにせよ、世界第1と第2の経済大国が貿易戦争をして世界経済が良くなることはないでしょう。トランプで米景気は良くなるというのが大方の見通しのようですが、懐疑心をもって見る必要もあるかもしれません。  

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