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「米トランプ次期政権と中東和平」/nhk・出川展恒
2017年01月19日 (木)
出川 展恒 解説委員
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/900/261145.html
【冒頭映像】
今週、およそ70か国が参加して開かれたイスラエルとパレスチナの和平交渉の再開を促す国際会議。
パレスチナ国家を樹立し、イスラエルと平和共存させる「2国家共存」の大目標を確認する共同宣言が採択されました。仲介役のアメリカでトランプ政権がまもなく発足するなか、中東和平はどうなるのか考えます。
(丹野麻衣子 キャスター)
スタジオは、中東和平交渉を長年取材してきた出川展恒解説委員です。
(山澤里奈 キャスター)
Q1:中東和平交渉は、1993年の「パレスチナ暫定自治合意」を出発点に、これまでアメリカの主導で行われて来ました。今回の国際会議は、アメリカの政権交代の直前に、フランスの呼びかけで開かれたものでしたが、当事者であるイスラエルとパレスチナの代表はともに出席しませんでした。
それはなぜですか。
(出川展恒 解説委員)
A1:イスラエルのネタニヤフ首相は、この会議は「パレスチナ寄りだ」として参加を拒否しました。
イスラエルの強い味方となるトランプ政権がまもなく発足するタイミングで、自らへの批判が予想される会議に出席するメリットはないというのが本音でしょう。
一方、パレスチナ暫定自治政府のアッバス議長は、当初、参加に前向きでしたが、イスラエル側が参加しないため、参加を見送りました。会議の公平性に配慮したと見ることができます。
さて、発表された共同声明は、
▼パレスチナ国家を樹立し、イスラエルと平和共存させる「2国家共存」こそが、両者の紛争を解決する唯一の道であると確認するとともに、
▼和平交渉の結論をあらかじめ決定づけてしまうような一方的な行動を、いずれの側も差し控えるよう求める内容です。
Q2:「一方的な行動」を控えるというのは、具体的にはどういうことですか。
A2:はい。トランプ氏のこれまでの発言や、新政権の人事から判断すれば、歴代の政権と比較しても、極端にイスラエル寄りの姿勢をとることが予想されます。
【トランプ氏】
「アメリカとイスラエルは不滅の友情で結ばれている」。
トランプ氏が大統領に就任した後、イスラエルにあるアメリカ大使館の移転問題とイスラエルによる入植活動にどう対応するかが、今、とくに注目されています。
まず、トランプ氏は、現在テルアビブに置かれているアメリカ大使館をイスラエルの主張に沿って、エルサレムに移転すると公約しています。
イスラエルは、エルサレムを、「分けることのできない永遠の首都」だと主張しています。
ところが、エルサレムの東半分(東エルサレム)は、今から50年前に起きた第3次中東戦争で、イスラエルが占領し、一方的に併合したところで、国際社会はイスラエルの首都とは認めていません。
東エルサレムには、ユダヤ教だけでなく、イスラム教とキリスト教の聖地もあり、パレスチナ側は、将来の独立国家の首都と位置づけています。聖地エルサレムの扱いは、和平交渉の議題の中で最も難しい問題で、これをめぐって、過去に何度も大きな衝突や流血事件が発生しています。
このため、アメリカを含む各国は、大使館をエルサレムに置くのを差し控えてきました。
Q3:もうひとつは、これも根深い問題だと思いますが、イスラエルの入植活動ですね。
A3:はい。これも和平の根幹に関わる問題です。
オバマ政権は、イスラエルが入植活動を続ければ、その分、領土が侵食、あるいは分断されて、パレスチナ国家は樹立できなくなってしまう。入植活動と和平は両立しないとして、やめるよう説得してきました。
しかし、入植者を支持基盤とするネタニヤフ政権がこれを無視したため、オバマ政権は、先月末、イスラエルを非難する内容の国連安保理決議に、あえて、拒否権を行使しませんでした。
イスラエルと特別な同盟関係にあり、国連などで常にイスラエルをかばい続けてきたアメリカとしては、極めて異例の対応です。
オバマ大統領は、こうした決断をした理由について、先日、インタビューで、次のように述べています。
【オバマ大統領】
「私が大統領に就任した2009年から現在まで、 イスラエルの入植者は当初の30万人から40万人まで、37%も増加した。
イスラエルの入植活動による既成事実がこのまま続けば、領土の一体性があり、国家の体をなす『パレスチナ国家』の樹立は ほとんど困難になり、最終的には不可能になってしまうだろう」。
イスラエルのネタニヤフ首相は、「オバマ政権が恥ずべき反イスラエルの行動に加担した」と激しく反発、決議に賛成した国々との外交関係を縮小する対抗措置にも出ました。
Q4:トランプ氏は、イスラエルの入植活動にどう対応するとお考えですか。
A4:オバマ大統領とは全く対照的な対応が予想されます。トランプ氏は、新しい駐イスラエル大使に、フリードマン氏を指名しました。
フリードマン氏は、イスラエルの入植活動に資金を提供し、積極的に支援してきたほか、パレスチナとの「2国家共存」にも疑義を唱えるなど、イスラエルの極右勢力と考え方が近い人物です。
この人選は、トランプ政権が、イスラエルによる入植地の建設・拡大やエルサレムに対する主張を全面的に支持する姿勢を示したものと受け止められています。
Q5:和平のための国際会議は開かれたものの、イスラエルとパレスチナの厳しい対立は今後とも続きそうですね。
A5:はい。一言で言えば、中東和平の今後は、「お先真っ暗」です。
トランプ氏は、先週、自らの娘婿であるクシュナー氏を、新政権の上級大統領顧問に起用すると発表しました。
クシュナー氏は、敬虔なユダヤ教徒ですが、中東問題も担当すると伝えられます。
こうした人事を見ても、トランプ次期政権の中東政策は、「イスラエルべったり」になる可能性が高く、その場合、「2国家共存」は不可能となり、中東和平プロセスは崩壊してしまうと思います。
仮に、アメリカ大使館をエルサレムに移転したり、イスラエルが新たな入植地を建設するのを容認したりすれば、パレスチナ人だけでなく、世界中のイスラム教徒を激しく怒らせることになります。
その結果、世界各地で、イスラエルやアメリカの施設や人々を狙った過激派のテロや暴力事件が起きることも予想され、非常に憂慮される状況です。
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