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トルコ、クーデター未遂半年 深まる分断 大統領、反対意見封じ込め 権力集中へ、改憲にまい進
【イスタンブール=佐野彰洋】トルコ軍の一部勢力がエルドアン政権の転覆を図った昨年7月のクーデター未遂事件から15日で半年がたつ。政権は事件後に強権政治を急加速させ、これまでに13万人以上の公務員や軍人を追放した。反対意見を封じ込め、大統領に権力を集中させる憲法改正にもまい進しており、社会には深い亀裂が走る。
国立コジャエリ大学法医学部の教授だったウミット・ビチェルさん(55)は昨年9月、政府の非常事態宣言に基づき解雇された。社会保障をすべて失い、家族を含む旅券が無効となったため娘は海外留学の夢を絶たれた。以前にクルド人反政府勢力との和平を求める嘆願書に署名したことが解雇の理由。クーデター未遂とは無関係だ。ビチェルさんは「この国を恐怖が支配する社会に変えようとしている」と憤る。
昨年7月以降、政府は4千人以上の研究者を含む13万5千人を停職や解雇処分にした。逮捕者は4万人を超す。収監場所を確保するため、ほぼ同数の受刑者を刑期満了を待たずに釈放した。
「ゼロから国家を建設する」(エルドアン大統領)。弾圧の対象は政府がクーデター未遂の黒幕と断定した在米イスラム教指導者ギュレン師の支持勢力にとどまらない。政教分離を重視する世俗派、少数民族クルド人中心の野党など、政権の意に沿わない勢力が「テロ捜査」の名目で次々に拘束・排除されている。追放された人々は再就職もままならない。
だがそうした人々の声が政権の影響下にある主要メディアで報じられることはない。テレビは大統領や首相の演説を繰り返し放送し、政府寄りの新聞の1面には相次ぐテロの原因を国際的な陰謀だとする見出しが躍る。
トルコジャーナリスト協会によると同国では昨年、約160社のメディアが政権により閉鎖され、逮捕・拘束中のジャーナリストは140人以上に上る。「国境なき記者団」(本部パリ)が毎年発表する報道自由度ランキングで、トルコは10年前の98位から昨年は151位に転落した。
反対意見を封じ込め、エルドアン氏は悲願の改憲に突き進む。首相職の廃止、国会の解散、多選制限の事実上の緩和、大統領令の発令――。実現すれば「権力の均衡が失われ、個人の独裁につながる」(最大野党の共和人民党)との懸念が募る。強権を嫌い優秀な人材が国を離れる「頭脳流出」は欧州とアジアをつなぐ新興国の将来にとって不安材料となっている。
最大都市イスタンブールの下町出身でイスラム色の濃い政策志向を隠さないエルドアン氏は、保守的で信心深い中低所得者層に絶大な人気を誇る。一方、世俗派や一部のクルド人にとっては多元的な価値観に不寛容で、憲法で保障された権利を侵害する存在と映る。
ロンドン大学キングス・カレッジのサイモン・ワルドマン客員研究員は「エルドアン氏はクーデター未遂を自らに有利な形で最大限利用している。社会の分断をあおることで、支持基盤を固めている」と指摘する。
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トルコのクーデター未遂事件とは
▼トルコのクーデター未遂事件 2016年7月15〜16日、軍の一部勢力がエルドアン政権の転覆を試みて失敗に終わった事件。クーデター勢力は最大都市イスタンブールの空港や橋を一時占拠し、首都アンカラでは国会議事堂を爆撃した。抵抗した市民ら248人を含む270人以上が死亡した。政府が事件の黒幕と断定した在米イスラム教指導者ギュレン師とエルドアン大統領はかつて協力関係にあったが、13年ごろから敵対関係に転じていた。ギュレン師は事件への関与を否定。米国はトルコの送還要求に応じていない。
[日経新聞1月15日朝刊P.4]
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