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プーチン氏が本当にトランプ氏から得たいもの
狭い国益が国際的なルールに取って代わる世界
2017.1.17(火) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙?2017年1月13日付)
対日貿易赤字に不満=南シナ海人工島で中国非難−偉大な米国、鮮明に・次期米大統領
米ニューヨークのトランプタワーで記者会見するドナルド・トランプ次期大統領(2017年1月11日撮影)。(c)AFP/TIMOTHY A. CLARY〔AFPBB News〕
?クレムリンにすり寄ったら、ヤケドをしても驚いてはいけない。
?米国のドナルド・トランプ次期大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領に心酔することの危うさを認識するには、トランプ氏に近づいてその評判を落とそうとしたロシア側の取り組みについての、あの忌まわしく、裏付けのない話を信じる必要などない。トランプ氏は裕福な不動産開発業者で、プーチン氏はロシア連邦保安庁(FSB)という無慈悲な組織のトップだった人物だ。役者が違いすぎる。
?トランプ氏がホワイトハウス入りする前から、プーチン氏は早速大きな勝利を獲得した。米国の諜報機関が次回、安全保障上の脅威を感知して伝えようとするとき――例えば、ロシアがウクライナに再度侵攻するとか、選挙で選ばれた東欧諸国の政府を転覆させたりするといった事態になったら――クレムリンには反論材料がある。
?ホワイトハウスの主が中央情報局(CIA)、国家安全保障局(NSA)、連邦捜査局(FBI)といった諜報機関を信用しないとなれば、一体ほかの誰が諜報機関を信用するのだろうか。トランプ氏は大統領の座を勝ち取るために政治のルールをすべて破ったが、米国の安全を守ることを使命とした部署と敵対する大統領とは、一体どういうことか。
?確かに、諜報機関の言うことが常に正しいとは限らない。CIAにはサダム・フセインの兵器プログラムについて判断を誤った過去がある。CIAはこのツケをさらに何年も払い続けることになるだろう。だが、大統領選挙期間中にクレムリンが民主党のコンピューターに侵入したと報告したとき、CIAなどの諜報機関はこれ以上ないほど自信満々だった。
?連邦議会における共和党の指導者たちは、諜報機関の報告を言葉通りに受け止めた。トランプ氏が次期国務長官に指名したレックス・ティラーソン氏は、そのようなサイバー攻撃はプーチン氏の承認があって初めて行われるものだというのは「もっともな想定だ」と述べている。
?ところがトランプ氏は、悪い知らせを伝えてきた人に腹を立てる方を好む。例えば、ロシア政府がトランプ氏個人の不名誉な情報や資料を集めていた疑いがあるとの情報が先日漏れたことについては、米国の諜報機関が自分を魔女狩りの標的にしている証拠だと述べていた。トランプ氏が答えを求めるでもなく「ここはナチス時代のドイツか?」と怒りをあらわにするとき、すぐに思い浮かぶ形容詞は「unhinged(錯乱した)」という言葉だ。
?11日に行われた、とりとめのない、怒りに満ちたトランプ次期大統領の記者会見を見た人でも、同氏が提案する米ロ関係のリセットがこれでどうなるのか分かったと答えられる人はいないだろう。同氏はまだ、プーチン氏と仲良くやりたいと主張している。だが、仲たがいするかもしれないとも付け加えている。
?確かに、民主党全国委員会(DNC)のハッキングは恐らくクレムリンの仕業なのだろうが、米国の諜報機関によるリークは本当に恥ずかしいことだった。また、ロシアと良好な関係を築くことは過激派組織「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」との戦いに寄与するだろう。しかし、バラク・オバマ大統領が講じた直近の対ロ制裁措置をトランプ氏が後退させることはない。
?ホワイトハウスという場でロシアの大統領に「敬意」を示せば緊張が緩和されるととの見方に、異を唱える人はほとんどいないだろう。プーチン氏は、世界的な問題を話し合う主要国のリーダーとして認められたいと思っている。批判に敏感なところはトランプ氏と同じだ。ナルシズムにおいては兄弟のようだ。トランプ氏がプーチン氏に親愛の情を示し、それでプーチン氏の傷ついたプライドが癒やされるのであれば、それは大変結構なことだ。
?米国とロシアが両者の相違を何とか管理する方法を見つけてくれれば、世界はその分安全になる。冷戦が最も激しかった時期には、そうした配慮が一定の効果をもたらしていた。両国はここ数年、東欧やバルト諸国で再び軍備を増強したが、どちらもまだ何も得ていない。また、核弾頭の数も多すぎる。両国が偶発的に対決してしまうことになるリスクは、決して無視できるものではない。
?危険が生じるのは、関与が服従の同義語になるときであり、必要な抑止が挑発だと誤解されるとき、そして、ロシア政府との「対話」が譲歩するのは常に西側だという一種の地政学的なリアリズムに変わってしまうときだ。
?トランプ氏がロシア政府から何を得たいと思っているかははっきりしないが、プーチン氏が目指すところは明白だ。
?同氏はまず、ロシアによるウクライナでの失地回復主義政策や、シリアのアサド政権を支えるために行った一般市民への無慈悲な爆撃を、西側に黙認させたいと思っている。そしてロシアに対する経済制裁を解除させること、ゆくゆくは欧州から米軍を撤退させること、最後に旧ソビエト連邦の領土にロシアの勢力圏を築くことを願っている。
?ロシア政府の高官が欧州の新たな安全保障構造について語るとき、彼らが意味しているのは米国のプレゼンスの終焉だ。冷戦は終わった、米国は故郷(くに)に帰れ、というわけだ。このプリズムを通して見れば、ウクライナはもとよりジョージア(グルジア)、ベラルーシ、モルドバ、中央アジアまでがすべてロシアに「属している」。片や、北大西洋条約機構(NATO)はもはや目的を失っており、かつてワルシャワ条約機構に属していた国々に用はないはずだ、ということになる。
?こうした野心が絵空事に聞こえるのであれば、トランプ氏が公の場でNATOを軽蔑したり同盟国への支援を気まぐれに回避したりすることが、プーチン氏につけいる隙を与えた。トランプ氏はパックス・アメリカーナ(米国の覇権による平和)を維持することよりも、ほかの大国と「取引」することの方に関心がある。欧州諸国は自衛のためにカネを払えばいい、というわけだ。
?プーチン氏が描く世界はトランプ氏が描く世界と同じだ。狭量な国益が国際的なルールや基準に取って代わる世界であり、弱い国々が強い国に服従する世界だ。欧州ではかつて、これを力の均衡(バランス・オブ・パワー)と呼んでていた。
?トランプ氏の動きを阻むものも存在する。まず、ハッキングのスキャンダルは同氏の動機や判断に対する疑念をもたらしている。また、ティラーソン氏の議会上院の指名公聴会から何かを読み取るとしたら、それはトランプ氏の所属する政党はプーチン氏とはいささか異なる見方をしているということになるだろう。
?だが、ロシア政府が緒戦の成功で満足することはない。また、トランプ氏が正式に大統領に就任したら何をするのかは、まだ誰にも分からない。どうやら、今の状況を危険な時代という言葉で表現するのは、控えめすぎるようだ。
By Philip Stephens
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48931
米国の諜報活動と政治:トランプ氏のスパイ叩き
2017.1.18(水) The Economist
(英エコノミスト誌 2017年1月14日号)
米CIA長官、トランプ氏は「発言に気を付けろ」 対ロ認識も批判
米首都ワシントンで開かれたシンクタンクの討論会で発言するジョン・ブレナン中央情報局長官(2016年9月14日撮影、資料写真)。(c)AFP/ZACH GIBSON〔AFPBB News〕
ドナルド・トランプ氏は容赦ない批判によって、諜報機関に対する信頼を台無しにしている。
ドナルド・トランプ氏はあまり記者会見を開かない。だが、1月11日のように、開くときには(昨年7月以来初の会見だった)どんな次期米国大統領の記者会見とも全く異なるものになる。
トランプ氏は原稿を読まずに話し、メキシコと医薬品業界を脅し、おだてた(製薬会社の株価は急落した)。自分の商才を自慢してみせた(そしてある程度、自身の利益相反の度合いを減らした)。ロシアの諜報機関がトランプ氏の弱みを握っており、選挙中に同氏の部下らと協力したという衝撃的な報道には、冷笑を浴びせた(問題の報告書の存在を明らかにしたニュース専門局のリポーターに対しては怒鳴り倒した)。
これらはただのハイライトにすぎない。会見は一度にあまりに多くの方向に話が飛んだため、見ていた人は、米国の安全と安心のためにトランプ氏が即座に封じるべきドラムの音に気づかなかった可能性がある。
米国の諜報機関に対してトランプ氏が抱き続ける敵意がそれだ。
諜報機関を敵に回す
関係はすでに不安定だった。選挙の前、米国の諜報機関は、トランプ氏の対抗馬のヒラリー・クリントン氏に打撃を与えた文書を、ロシアがハッキングし、盗み、リークしたと結論付けたことを世間に知らせた。大半の機関は(すべてではないが)、ロシアの意図はトランプ氏が勝つのを手助けすることだったと考えている。
トランプ氏はこれに対し、2003年のイラク侵攻前に米国の諜報機関は大量破壊兵器について間違っていたとあざ笑った。
つい先日はさらに見苦しい事態となった。諜報機関がトランプ氏に、多くの人の多大な努力にもかかわらず、内容の裏付けが取れていない報告書の要約を提出したことがリークされたのだ。
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48941
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