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ものすごく「臭かった」多摩川氾濫
本質的に再検討すべき下水インフラ
2019.10.18(金)伊東 乾
時事・社会 インフラ
単に泥水というだけではなく、猛烈に「臭かった」・・・合流式による冠水(武蔵小杉)Photo by KT&KT.
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まず最初に、私の研究室の若い仲間K君たちが、台風通過直後、自宅近くの武蔵小杉に出かけ(やめたらと言ったのですが)撮ってきた写真をご紹介しましょう。
10月13日日曜日、午前5時過ぎの神奈川県川崎市、武蔵小杉駅近在の風景です。私がお伝えしたいのは、この写真には写ってない要素です。それは何か?
猛烈に「臭かった」のだそうです。下水の悪臭、もっとはっきり言うならば、糞便の臭いが凄まじかったという・・・。
ここまで書けば、今回の主題が何か、はっきりご理解いただけると思います。
武蔵小杉といえば、駅の水没、改札が封鎖され大変な行列ができていること、またタワーマンションが停電・断水して「トイレが使えない」「仮設トイレが設置された」といった情報は報道でも伝えられています。
しかし、インターネットが伝えることができない「臭気」という情報、というよりもこの場合はハッキリ「漏出物」があった。
そういう現場の証言を期せずして直後に耳にしたことになります。
漏出物が一体どこから来たのかは分かりません。タワーだけでも2000人ともいわれる住民がいるそうですし、増水した多摩川は、上流からも大量の漏出物が流されてきたことは間違いない。
多摩川河口のあのあたりは、すべてが集積して大変なことになる可能性も考えられないわけではない。
お台場トライアスロンのコラムなどご記憶の方もおありでしょう。大水が出ると「安全のため」未処理の下水、糞便なども直接川に「放流」されてしまう。
そもそも、大変不衛生です。決壊した、しなかったというだけが災害ではありません。
東京はもとより、日本全国の治水インフラ、本質的に検討し直すべき時期に差しかかっているのではないでしょうか?
高度成長期や21世紀初頭に想定された「気候」からは、日本の現状はすでに外れた「変動」域にあることが、ほぼ間違いなく予想されるからにほかなりません。
まず、そういうこととかなり距離のある「ポスト・トゥルース」から確認したいと思います。
何が「まずまず」なのか?…
何が「まずまず」なのか?
台風19号の被害が続々と伝えられていますが、そんななか政治家の「まずまずに収まった」という発言が報道されていました。
言語道断ですが、どうしてこういう発言になるかはよく分かります。より詳しく記すなら「予測されて、いろいろ言われていたことから比べると、まずまずに収まったという感じ」。
つまり、いろいろな予測があり、そのどれをどう信用してよいか分からない。リテラシーが完全に欠如しているので、黙って静かにしているしかなかった。
しかし、台風が過ぎてみると東京など身の回りは「大したことがない」。正確には「選挙の集票に大した影響はない」と判断された・・・という率直な感想をそのまま吐露したのだと考えれば納得できます。
そういう政治で果たしていいのか?
そう問われれば、全くそうは思いません。しかし、福島の復興に関わって耳にした中に、台風被害の「救済」はきりがなく、かつ票に結びつかないので、政治家はタッチしたがらないという話がありました。
台風は毎年やって来ます。かつ、被害が出たとき救済されるのが当然と国民誰しもが考えている。当たり前です。納税者であり主権者なのですから。
地方のインフラが破壊されているのに、ほったらかされてはたまったものではありません。
でも、毎年やって来る台風にかけられる経費や手間暇は限られている。そこで「応援」程度にとどめておくらしい。
真偽のほどは読者の良識に任せたいと思いますが、ともかく今回の台風19号は、日本全国のインフラが、誰の目にもすでに明らかな「気候変動」で、もう時代遅れ、使い物にならなくなりかけていることを、示唆しているのではないか?
東京の下水を考え直せ!…
少なくとも今現在、日本列島の至る所で発生している冠水、決壊、浸水、土砂災害、道路の寸断・・・例えば、東京都の秋川近在が凄まじいことになっているのは、SNS画像を見ただけですぐ分かります。
しかし、系統だった被害状況などはほとんど報告されていないように思われます。つまり、このようなことが起きないように設計されたはずの安全対策が十分でなかったことをはっきりと示しています。
水に浸かった新幹線車両、場合によればもう走れなくなってしまったものもある可能性もあるという。正確なところは推移を見る必要がありますが、およそ「まずまず」などではない。
このコラムは基本的に事大主義を戒める記事が大半ですが、率直に言って「静かな国難」であることは間違いありません。
東京の下水を考え直せ!
冒頭に示した「武蔵小杉」の写真に戻りましょう。このエリアの近くには某K大学があり、そのエリアは高台ですが、すぐ近くには日吉川などが流れており、至近の武蔵小杉駅を含む「南武線」は、多摩川に沿って走ります。
その多摩川が今回、こういうことになった。
台風通過直後の武蔵小杉。Photo by KT&KT.
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そこで溢れた水が、大変臭かったというのは、ほかならず未処理の下水、便や尿などの汚水がそのまま流入したからだと思われます。
私が思うのは、この汚物はいったいどの範囲からやって来たのかというポイントです。
莫大な水量に「希釈」 だから大丈夫なのか…
多摩川は武蔵小杉から遡って、溝の口、登戸、分倍河原、府中本町、私の地元である国立、立川、日野・・・と延々上流に続き、拝島で支流の秋川と合流します。本流は福生、青梅と遡行して奥多摩湖の水源に繋がっています。
逆に言うと、青梅からも、福生の米軍基地からも、立川からも府中の競馬場からも「汚物」は溢れてくるわけです。
莫大な水量に「希釈」
だから大丈夫なのか?
「それら」の濃度分布は全く私には分かりませんが、少なくとも多摩川のどん詰まり、最下流でゼロメートル地帯にも近い武蔵小杉では、水が東京湾に流れてくれず、街に溢れ出してしまったら、それより先に水の逃げ場がありません。
冠水もしますし、汚物もそれなりの濃度のまま、あるいは、密度によっては1か所に固まって、路面に溢れ出していた。
「お台場トライアスロン」での猛烈な悪臭で、十分予想されたことでしたが、研究室の若い仲間の決死の(?)現地確認で、少なくとももう1点、その現場を押さえることができてしまいました。
「東京の安全は守られた」と地下に掘られた宮殿のような「首都圏外郭放水路(http://www.ktr.mlit.go.jp/edogawa/gaikaku/)」の働きが報道されるのを見ます。
これは埼玉県の春日部から小渕にかけて掘られたもので、東京都内に流れ込む水を防ぐ働きをする利根川水系の「川」の一部です。
なるほど、都内の洪水は防ぐことができた。それはそれで価値のあることです。しかしそれで「まずまず」なのですか?
多摩川はどうなのでしょう。秋川は東京ではないのですか?
多摩川の一部となった武蔵小杉駅近くの工事現場。Photo by KT&KT.
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あるいは千曲川はどうですか。さだまさしの「防人の歌」という昔のヒットソングの節にのって、本稿を書いている私自身、自問しないわけにはいきません。
局所的に最適でも、全体を見たとき、物事が成立していない可能性がある。
同様の疑問は今回の台風19号豪雨に際しての、ダムの緊急放流についても山のようにあるのですが、別論としましょう。
まずは「下水」です。何とかしないといけません。
もっと知りたい!続けて読む
「下痢」を起こす東京の下水道
8月17日、パラ・トライアスロンのワールドカップは、会場である港区お台場の海浜公園周辺スイムコースの水質が悪化したとして、トライアスロンを中止、ランとバイクだけによるデュアスロンに変更して競技が実施されました。国際トライアスロン連合からは、1年後に控える東京オリンピックに向けてリスクを減らす環境対策」の強化が求められました。いったい何が起きていたのか?
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57949
地球温暖化は人間の脳も殺す ──DHA不足で
Climate change will kill your brain by reducing fatty acid: Study
2019年10月24日(木)18時30分
リシャブ・ジェイン
https://www.youtube.com/watch?v=sU0yfz95iEw
魚が手に入りにくくなることは、脳の材料が手に入りにくくなること StockerThings-iStock.
<魚の減少によるDHAの減少で、世界人口の大多数が必要量を摂取できなくなる日がくる。最初に影響を受けるのは胎児や乳児だ>
カナダの複数の大学が合同で実施した新たな研究によれば、気候変動は私たちの脳も殺してしまうらしい。2100年までには世界人口の大多数が、脳の重要な材料である天然の脂肪酸を摂取できなくなるからだ。
哺乳類の脳には、脳細胞の活性化に役立つ脂肪酸「ドコサヘキサエン酸(DHA)」が豊富に含まれている。人は主に魚介類を食べることでDHAを摂取しており、オメガ3脂肪酸(DHAもその一種)のサプリメントで補っている人もいる。DHAは脂の多い魚に含まれているほか体内でも合成され、熱に弱いのが特徴だ。研究報告は、地球の温暖化によってこのDHAが手に入りにくくなると指摘している。
研究チームは数学モデルを使って、温暖化がDHAの生成と供給にもたらす影響を分析した。すると、今のペースで温暖化が進めば、22世紀までには世界の96%の人の脳の機能が脅かされることになるという結果が出た。
報告によれば、温暖化によって世界中で魚の数が減るおそれがあり、ひいてはDHAの供給量も減るおそれがある。世界人口の増加ペースを考えると、2100年までには、必要量を摂取できるのは、漁獲量の多い小さな国に暮らす人々だけになる可能性がある。
2100年までに6割減る可能性も
DHAは脳の重要な構成要素で、その不足は健康リスクをもたらす。最も影響を受けやすいのは胎児や乳児で、母親がDHA不足だと赤ちゃんの発達に影響が出る可能性が高くなるとみられている。
「我々の研究によれば、温暖化の影響で、今後80年で世界全体のDHA供給量は10〜58%減る可能性がある。その最大の影響を受けることになるのが、重要な発達段階にある胎児や乳児たち。また、北極圏と南極圏に生息する捕食性哺乳類にも影響が及ぶ可能性がある」と研究報告は述べている。
DHAは脳の大脳皮質(知覚、運動や記憶などの高次機能をつかさどる部分)の機能や形成において重要な役割を果たすだけでなく、網膜や皮膚の機能にとっても重要だ。
温暖化の影響は、主に淡水の漁業水域や海区にあらわれると予想される。研究チームによれば、アフリカの内陸部に暮らす人々がその最も深刻な影響を受けることになるという。
<参考記事>肉食を減らそう......地球温暖化を抑えるために私たちができること
<参考記事>地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される
(翻訳:森美歩)
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※10月23日発売号は「躍進のラグビー」特集。世界が称賛した日本の大躍進が証明する、遅れてきた人気スポーツの歴史的転換点。グローバル化を迎えたラグビーの未来と課題、そして日本の快進撃の陰の立役者は――。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/-dha.php
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