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また首都圏直撃か、猛烈台風が次々襲う必然性
もやは気温下げる機能失ったフィリピン海、インド洋、カリブ海
2019.10.11(金)
伊東 乾
世界情勢 環境 時事・社会
海水温が高くなり、発生する台風が増え、また巨大化、猛威化している
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またしても台風です。19号も日本上陸の可能性があるらしい。「もういい加減にしてくれよ!」と思っておられるかたが大半ではないでしょうか。
「もう10月だよ。しかも半ばに差しかかっている。どうして台風なんだよ!」
これが「気候変動」そのものにほかなりません。地球環境は本格的に「変わってしまった」。
セクシーとかクールとか、世迷いごとで何とかなるような話では、とうの昔になくなっている。そのことを最初に確認しておきたいと思います。
千葉県を中心に甚大な被害を出したのが「台風15号」でした。
それから「台風17号」「台風18号」と、連続して沖縄や朝鮮半島南部、日本各地を襲った嵐は、各地に大きな被害と爪痕を現在進行形で残し続けています。
台風15号の被害だけで、3.11の被害額を上回る見通しというのは、早春の農閑期に襲いかかった津波以上に、収穫を待つ農作物を直撃した秋の嵐の影響の方が甚大であったことを如実に示しています。
農作物だけではない。停電は漁業にも深刻な被害を与えました。
停電は、冷凍庫の製氷機も、まるごと止めてしまいます。生け簀のポンプも止まってしまい、魚が窒息して死んでしまう。
早期であれば出荷も不可能でないかもしれなかったけれど、冷凍庫も製氷機も動かない。死んだ魚を腐るに任せるしかない・・・。
温度上昇を「比熱」で考える…
気候変動の影響というのは、7月や8月ならまだしも、9月、10月になっても夏日が続き、台風が繰り返し押し寄せる。
そのたびに老朽化した各地のインフラを直撃し、農作物や水産物に致命的な打撃を与え、河川敷にとめた駐車場の車をまるごと水没させる目の前の現実を示しています。
「CO2削減、ピンとこないね」というリテラシーの低い層に対して「ク―ルで」「セクシーな」キャンペーンを打つといった、ポストトゥルース250%のPRで、何とかなるような話では、全くありません。
温度上昇を「比熱」で考える
天気予報をご覧になると、南太平洋で発生した熱帯低気圧が、フィリピン近海の温度の高い海の上で発達し、台風19号は今年発生する台風の中で最大規模になったと言っているのを、耳にされたかと思います。
千葉を直撃した台風15号よりも、もっと大きな台風がこれからやって来ると言っている。でも進路によってどのような被害が出るかはまだ分からない。まさに「風任せ」の状態です。
どうしてこんなことになっているのかを考えてみましょう。
正直言って、34〜35年ほど前、私自身が大学生だった頃、「地球温暖化」「CO2排出」などに関して、ピンときませんでした。
大学4年の時(私は理学部で物理を学んでいました)、ある先生のリポートでCO2の温室効果に関する問題が出、調べたのを覚えています。しかし、あまり実感は湧きませんでした。
気温が上昇していないわけではない。ただ、その上昇は極めて緩やかで、20歳過ぎの私の了見では、問題の所在や深刻さがよく分からなかった。
そういう子供に対しては「セクシー」で「クール」なキャンペーンも有効だったかと思います。
バカにできない水の比熱…
しかし「クール」にしていたのは別の要素だったのです。サイエンスを援用して冷静に考えてみます。
「空気」は比較的温まりやすく、かつ冷めやすい物質です。
湿度100%の空気1キログラムを1度上昇させるのに必要なエネルギーは1030ジュールほどです。これが湿度0%、乾燥した空気になると1005ジュールほどと、さらに少なくて済みます。
「ほど」と書いているのは不正確ではなく正確を期すためで、実際には温度や圧力が違うことで変化します。「ボイル・シャルルの法則」として高校でも教える内容に繋がってきます。
よく、「鉄は熱しやすく冷めやすい」と言いますね。
鉄を1キログラム、1度温度を上げるのに必要なエネルギーは444ジュールほど、つまり空気の半分もありません。
これが銅になると385ジュール程度、金だと129ジュールくらいと、どんどん温まりやすくなります。いま示したような「物質の温まりやすさ」を比熱と呼んでいます。
バカにできない水の比熱
銅の鍋でシチューなどを煮込むと、熱の通りがいいわけです。欧州のシェフは「アカの鍋」を愛用する道理です。
また歯医者さんが金冠を用いるのは、装飾品として金が高価だからではなく比熱が低いので違和感が少ないのが第一の理由と言っていいでしょう。
さて、そんな中で「水の比熱」は4200ジュールほど、と極めて高いことが広く知られていると思います。
水は人間の生活になくてはならないものです…
水は人間の生活になくてはならないものですから、改めてこれを基準として、「水1グラムを大気圧のもとで、摂氏14.5度から15.5度に温度上昇させることができる熱量」として、4.184ジュールのエネルギーを「1カロリー」と定義しています。
この「カロリー」はダイエットなどで日常生活にも登場すると思います。
「一日に必要な食物のエネルギー量は2600キロカロリー」
「ダイエットしたいのでこれを基礎代謝ぎりぎりの1500キロカロリーに絞らなくちゃ」
「糖尿病で食事制限、お茶碗一杯のごはんは約120キロカロリー」
なんていう量です。ごはん1杯のエネルギー量とは、それを完全に消化したとき、水120キロを1度、温度上昇させることができる程度、あるいは水12キロを10度、温度上昇させることができる程度ということになる。
意外に思われるかもしれませんが、生物、特に恒温動物が体温を維持するには、結構莫大なエネルギーが必要なのです。
成人が1日に必要とする栄養が1500キロカロリーとか2600キロカロリーというのは、
1500=50×30 とか 2600÷36=72.2・・・などと計算してみると
50キロの水を30度、温度上昇、あるいは体重72キロの身体を水と考えて、それが0度から36度まで体温上昇する(というのは生物学的にはナンセンスですが、物理化学のザル勘定は成立するわけで)のに必要な熱量・・・と感じが掴めるかと思います。
冷却水が熱源に変わるとき…
閑話休題。要するに水は空気よりも4倍も、温まりにくい。
これは「温まりにくい」のと同時に、一度温まったら「冷めにくい」ことも同時に意味します。
私たちの祖先は「湯たんぽ」にお湯を入れました。夜準備して、朝まで生暖かいことも普通でしょう。
病気をすれば氷枕を使い、けっして鉄の枕は使わない。金属はひやりとしますが、すぐに温まってしまいます。
ステーキ店の鉄板は、初めこそジュージューと美味しそうな音を立てていますが、1〜2分もすると急速に放熱して、食事が終わる頃には手で触ってもやけどしない温度まで冷めている。
物理現象は正直で嘘をつきません。いままでは、熱しにくい地球の大半の表面を囲む水、海水温が上昇することで、温まりやすい気温の上昇を抑えていた。
それが逆転してしまったことが、いま日本列島を直撃している台風の直接的な原因と考えることができるでしょう。
冷却水が熱源に変わるとき
人類が第2次世界大戦後の高度成長期から急激に排出してきた温室ガスその他の<温度上昇効果>は、初め大半が「水」という、より温まりにくい物質が吸収してくれていた。
つまり「海」が「冷却水」クーラーの役割を果たしてきた。別段「クールな環境対策」などというポエムは必要がなかった。
気温は上昇しやすいけれども冷めやすい。大気と接する広範な水が熱を吸収してくれれば、気温の上昇は微々たるものとなり、海水温の上昇もほとんど目立たない。
「地球温暖化」や「気候変動」は大したことで…
「地球温暖化」や「気候変動」は大したことではないと多くの地球市民が軽く考える道理です。
米国のドナルド・トランプ大統領のようなポピュリストは企業営利を優先させたかもしれない。
しかし、一度温まった水は冷めにくい。
それは北極や南極の氷を溶かし、海流に変化をもたらすとともに、赤道直下の海水の温度も確実に上昇させてしまう。
太平洋や大西洋は、まだ北極、南極と繋がっているので「氷で冷ましてもらう」ことができますが、それができない海があります。
例えばインド洋。赤道から北に水が流れようとしても、ユーラシア大陸がありますから「氷枕」で熱を冷ますことができません。
つまりインド洋をクールにする熱の逃げ道がない。当然ながらセクシーな熱の逃げ道などというものもない。
あるいはフィリピン海、やはり中国から日本列島、カムチャツカ半島に至る陸地の存在で、温められた海水は冷却されにくく「熱源」としての海が成立してしまっている。
いままでは「冷却水」として機能していた海が、南太平洋で生まれた「熱帯低気圧の子供」を、大きく成長させる「揺籃」に変化し、巨大な台風に育て上げたうえで北半球に送り出すようになっている。
クールではなくホット、セクシーではなくバイオレントな暴風雨となって日本や韓国を直撃し、電柱を倒し屋根を吹き飛ばしている。
ちなみに米国テキサス州、ヒューストンなど…
ちなみに米国テキサス州、ヒューストンなどで深刻な被害を生み出しているハリケーンや集中豪雨も、ほぼ並行するメカニズムで「育てられた」ものと理解されます。
この場合は北アメリカ大陸、フロリダ湾など熱の逃げ場のない海域の「ひなた水」が、「人類史上かつてない規模」のハリケーンを作り出している。
いまになってみると2017年、つまり「温暖化は虚妄」とうそぶいたドナルド・トランプ大統領が当選した年が臨界点となって、地球環境、気候はすでに「変動」してしまった。ギアは「冷却水」から「加温水」へと倒されてしまった・・・。
このように過不足なく「気候の変動」を考える必要があります。
日本列島の気候も同様に考えて対策を立てる必要があるでしょう。2017〜2018年以降、大型化傾向が高まっていた台風災害は、2019年、明らかに従来と違う状況を示しています。
「そういう年もあるさ、また来年は風向きが変わるだろう」と風任せ、運任せに考えていいほど、一過性の出来事でないのは、インド洋やフィリピン海の温められた水の熱を逃がしてやる「低温熱源」がないことから明らかです。
では、そうした余剰のエネルギーはどこに行くのか・・・「台風」にほかなりません。
エネルギー保存則は全宇宙で厳密に成立する自然法則です。日本で電柱を倒したり、屋根を吹き飛ばしたりする台風の猛威も、それにエネルギーを供給するリソースがなければ決して育つことはありません。
フィリピンから東シナ海にかけての海は「温まりにくい」水が「冷めにくく」なるまで、すでに十分に加温されてしまっている。
偶然や一過性の出来事で、台風が続々と生み出されて沖縄や朝鮮半島、日本列島を襲っているわけではない。加速へのギアはすでに入ってしまった可能性があります。
2020年、またそれ以降の日本列島の気候は、もっと変化してしまう高いリスクが懸念されます。
これに対して、中身がないポエムで執れる対策など一つもありません。実直に備える必要があります。
(つづく)
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