地球の温度と温室効果 http://www.s-yamaga.jp/kankyo/kankyo-kankyo-3-1.htm人間が作り出すエネルギーが大きくなりすぎてX点を超えてしまうと、地球は熱暴走を始め、海水はすっかり蒸発、石灰岩もすべて分解して、やっとD点(細かくいうとD点より少し温度の高いところ)で釣り合うようになる。そのとき地球の大気圧は水蒸気270気圧、二酸化炭素30〜50気圧の合計300〜320気圧、温度も200℃を越えるだろう。実際に、金星がこの状態である(図のE点)。金星は地球の90倍(90気圧)の大気を持ち、またその95%以上が温室効果ガスである二酸化炭素であるために、その温度は460℃〜480℃にもなっている(※2)。 地球の温度は、大きく見れば太陽からの放射エネルギー(地球が受け取るエネルギー)と、地球からの放射エネルギーが釣り合うところで決まる。物体が放射するエネルギーは、物体の表面積が一定ならば、その物体の表面温度(絶対温度)の4乗に比例している。これをステファン・ボルツマンの法則という。式で書くと
E(J)=σT4 ここで、σシグマはステファン・ボルツマン定数=5.67×10-8(J/秒・m2・K4) 地球の位置での太陽放射(太陽定数)は1.37×103J/秒・m2、それを地球全体に平均するとその1/4(1・2の(1)参照)、また地球の反射能(アルベド)は0.3だから(吸収しているのは0.7だから)、地球(地表と大気)が吸収している太陽放射は結局1.37×103J/秒・m2×0.7=2.40×102J/秒・mである。地球もこれと同じだけのエネルギーを放射しなくてはならない。この値をステファン・ボルツマンの法則に代入すると、 2.4×102(J・s-1・m-2)=σT4 σ=5.67×10-8(J・s-1・m-2・K-4) T4=4.23×109(K) T=255(K) (0℃=273Kだから255K=−18℃) 地球の温度は255K(−18℃)となる。これは実際の地表の温度より約33℃も低い。 なお、この詳しい計算についてはこちらも参照。 http://www.s-yamaga.jp/nanimono/taikitoumi/taikitotaiyoenergy.htm また、
<1・2 食料> http://www.s-yamaga.jp/kankyo/kankyo-shokuryo-1.htm で用いた太陽エネルギーは、地表が吸収しているエネルギー(地表に到達するエネルギー)で、上で用いている太陽エネルギーは 地表+大気(対流圏の大気) http://www.s-yamaga.jp/nanimono/taikitoumi/taikinokouzo.htm が吸収しているエネルギーであることに注意。 地球の温度が単純な計算値より高いのは、地球の大気には水蒸気や二酸化炭素、さらにはメタン、窒素酸化物、オゾン、フロンガスなどの温室効果ガスが含まれているためである。温室効果ガスは、太陽からの放射エネルギー(おもに可視光線)は通すが、地球から宇宙に出ていこうとする放射エネルギー(赤外線)を抑えるのである。そのために熱がこもって、ステファン・ボルツマンの法則から期待される温度よりも高い温度になってしまう。 ※ 物体が放射する電磁波の最大強度の波長はその物体の表面温度で決まる(ウィーンの変位則)。太陽のように表面温度が6000℃(5800K)の物体の最大強度は460nm(ナノメートル、黄色に見える)で、そのまわりの波長の電磁波が可視光線。そこで、太陽の放射エネルギーは大部分は、可視光線として放射されている。一方、地球程度の温度(-18℃であろうが、15℃であろうが)では、放射エネルギーは赤外線となる。 図6-3 温室効果
これをもう少し詳しく見てみよう。大気がない場合の地球(つまり月(※1))の放射エネルギーはステファン・ボルツマンの法則に従い、表面温度の4乗に比例する。このとき、太陽放射と釣り合う温度(図6-4のA点=約マイナス18℃)が月全体の平均温度であり、地球に大気がなかった場合の地球の温度ともなる。 図6-4 地球の温度と地球からの放射エネルギーの概念図:自然の数理(筑摩書房、数理科学シリーズ、1975年)などから作成
しかし、地球には海水として水が大量にあるし、さらに石灰岩も温度が上昇すると分解して二酸化炭素になる。つまり温度が上がれば上がるほど、大気中の水蒸気や二酸化炭素はどんどん増えて温室効果が強くなる。そのため温度が上がるとかえって放射エネルギーが低くなる。だが、すべての海水が蒸発し、またすべての石灰岩が分解すると、それ以上は温室効果は強くならないので、温度が上昇すると再び放射エネルギーは大きくなる。そこで、放射エネルギーのグラフは図の青線のようにいったん右下がりになったあと、再び上昇することになる。このグラフで、太陽放射と釣り合う温度は3カ所あるが、地球の温度はB点(約15℃)になる。 もし、太陽の放射がいまより少し(10%くらい)大きくなったり、あるいは人間が作り出すエネルギーが大きくなりすぎてX点を超えてしまうと、地球は熱暴走を始め、海水はすっかり蒸発、石灰岩もすべて分解して、やっとD点(細かくいうとD点より少し温度の高いところ)で釣り合うようになる。そのとき地球の大気圧は水蒸気270気圧、二酸化炭素30〜50気圧の合計300〜320気圧、温度も200℃を越えるだろう。実際に、金星がこの状態である(図のE点)。金星は地球の90倍(90気圧)の大気を持ち、またその95%以上が温室効果ガスである二酸化炭素であるために、その温度は460℃〜480℃にもなっている(※2)。 いくら人間が無限の、しかもクリーンなエネルギー源を開発しても、それを地球で使えば最終的には熱になる。熱暴走を起こさないためには、太陽エネルギーの10%以下に抑えなくてはならないこともわかる。実際には、こんなに使う前に地球の環境は完全に破壊されるであろう。 ※1 月のアルベド(反射能)は0.07なので、これを使って計算すると月の温度は276K(3℃)になる。 ※2 金星のアルベドは0.78もあり、地球よりも太陽に近いのにもかかわらず吸収している太陽エネルギーは地球よりも小さい。 補足:安定な平衡と不安定な平衡 図6-4で、地球放射と太陽放射が釣り合う点が3つある。B点とD点は、地球の温度が上がれば太陽放射より地球放射の方が大きくなり、出ていくエネルギーの方が大きくなるので温度が下がる。逆に、地球の温度が下がれば太陽放射より地球放射の方が小さくなり温度は上がる。ここは、負のフィードバックがかかっている。つまり、この点は地球の温度がちょっと変動しても必ず元に戻る。このような平衡を安定な平衡(釣り合い)という。 一方、C点はちょっとでも地球の温度が上がると、出ていくエネルギーの方が小さくなるのでますます温度が上がり、逆に温度が下がると出ていくエネルギーの方が大きくなるのでますます温度が下がる。ここは、正のフィードバックがかかっている。このような平衡を不安定な平衡(釣り合い)という。 安定な平衡、不安定な平衡は、坂に球(ボール)を止めることを考えるとわかる。右図の青い球は谷底と頂上で止まる。その青い球は、谷底では位置が少しずれても谷底に戻るが、頂上では少しでも左右にずれると坂を転がり落ちてしまう。谷底が安定な平衡のイメージ、頂上が不安定な平衡のイメージである。 http://www.s-yamaga.jp/kankyo/kankyo-kankyo-3-1.htm ▲△▽▼ 2019-09-28 地球環境危機は手遅れ寸前。冷笑などしている場合ではない。 http://vergil.hateblo.jp/entry/2019/09/28/142201 ■ グレタ・トゥーンベリさんの怒り 23日、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが国連気候行動サミットに出席し、大人たち、とりわけ各国指導者層がただちに破滅的事態を防ぐための具体的な行動を起こすよう、怒りを込めて訴えた。 気候変動の危機を訴え、各国政府に対策を呼びかけるスウェーデン出身のグレタ・トゥーンベリさん(16)は23日、国連本部で開かれている気候行動サミットに出席し、地球が大量絶滅の時代に直面する今、大人たちが積極的な対策をとらずに失敗すれば、自分たちの世代は絶対に許さないと、激しい口調で各国代表に訴えた。
翻訳家のT.Katsumi (@tkatsumi06j) さんが演説の全訳を公開されているので、一部引用する。 note.mu
(略)あなた方は私の夢を、そして子どもでいられる時代を空っぽの約束で奪い去りました。それでも私はまだ幸運な方です。苦しんでいる人びとがいる。死にゆく人びとがいる。生態系そのものが崩壊していっている。私たちは大量絶滅の兆しの中にいる。なのにあなた方は未だに、お金や《永続的な経済成長》といったおとぎ話しかできないと?よくもそんなことを!
科学が30年以上にわたって示してきた結論はきわめて明確です。なのによくもあなた方は、必要な政治的決着も解決策もまったく見通しが立たないというのに、現実から目を逸らしながら、《我々は十分できることをやっている》などとここで言えますね! (略) 10年で [二酸化炭素の] 排出量を半分にしようという考え方がありますが、それによって世界の気温上昇を摂氏1.5度以内に抑えられる可能性は50%しかなく、後戻りの効かない人間の制御できる範囲を超えた連鎖反応が始まるリスクも同様です。 (略) 私たちにとって、50%のリスクというのは単純に、受け入れられるものではありません。その結果と生きていかなくてはいけないのは、私たちなのですから。 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が出したもっとも楽観的な確率、すなわち気温の上昇を摂氏1.5度以内に抑えられる可能性である67%を実現するには、2018年の1月1日以後、残り420ギガトンの二酸化炭素しか放出できない筈でした。 今日、この数字は、すでにあと350ギガトン未満にまで下がっています。これまでと同じように対処していれば問題は解決できるとか、何らかの技術が解決してくれるとか、よくもそんな風にご誤魔化せますね! 今の放出のレベルのままでは、あと8年半も経たないうちに許容できる二酸化炭素の放出量を超えてしまうというのに! (略) あなた方は何もしていません。若者たちはあなた方の裏切りに気付き始めています。未来を担う世代の目は、あなた方に注がれています。もしあなた方が私たちを裏切ることを選ぶのならば、私はこう言います。 「絶対に許さない」と。 言い逃れは許しません。 今、ここで、私たちの我慢は限界に達しました。世界は目覚め始めており、あなた方が好むと好まざるとにかかわらず、変化は必ず訪れます。 ■ 対処に失敗すればペルム紀末大絶滅の二の舞 彼女の抱く怒りと危機感は当然のものだ。 温暖化による被害というと、一般には夏の酷暑や冬の大寒波といった気候の極端化、台風の強大化による暴風・豪雨の頻発、海面上昇による沿岸地域の水没、といったものが想像されるだろう。それだけでも十分危機的だが、考えられる最悪のシナリオはそんな甘いものではない。 温暖化がある一定のレベルを超えると、極地の永久凍土層の氷の中に閉じ込められているメタンや低温高圧の深海底に堆積しているメタンハイドレートが溶け出し、メタンガスとなって大気中に放出される恐れがある。 メタンガスは、二酸化炭素の20倍という強力な温室効果ガスだ。これがいったん大量に放出され始めると、放出されたメタンガスによる温度上昇がメタンの融解を促進し、さらに大量のメタンガスが放出されるという、正のフィードバックが始まってしまう。世界のメタンハイドレートの総量は数千兆立方メートル(天然ガス、原油、石炭の総埋蔵量の2倍以上)もある。いったんこのサイクルが回りだしたら、もはや二酸化炭素放出量をいくら削減しようと手遅れだ。 このような温暖化の暴走を、地球は過去にも経験している。今から約2億5千万年前、古生代ペルム紀末に起きた大絶滅だ。 このときは、現在のシベリアにあたる位置で地球史上最大規模の噴火活動が発生し、数百万平方キロの面積を溶岩が覆い尽くした。(この噴火活動の痕跡が、今もシベリア・トラップと呼ばれる洪水玄武岩の大地となって残っている。)この噴火で放出された膨大な温室効果ガスが急激な気温上昇を引き起こし、深海のメタンハイドレートが気化、更に気温が上がるという悪循環が発生した上、水温の上昇によって海水の大循環が止まり、海は酸欠状態に陥った。 その結果、全生物種の90から95%が絶滅、地球は文字通り死の星と化した。恐竜を滅ぼした白亜紀末の大絶滅(全生物種の約70%が絶滅)より激烈な、地球史上最悪の大絶滅である。火山活動が終息した後も、生態系の回復には数百万年を要したという。[1] 人類の活動の結果としてこのような温暖化の暴走が起こりうるのかについては、専門家の間でも意見が分かれている。しかし、可能性が否定できない以上、最悪のケースを想定して対策を進めるのが理性ある人間として当然の義務だろう。暴走が起きることが明らかになったときには既にポイント・オブ・ノーリターンを越えていました、では話にならないからだ。 news.yahoo.co.jp
ぞっとするニュースだ。米国ワシントン大学の調査によると、ワシントン州、オレゴン州の沖合の海底でメタンガスの大量放出が起きているらしい(関連情報)。(略)もし、世界各地の海域でメタンハイドレートの融解が始まったら、最悪の場合、人類滅亡をもたらす大災厄となりうる。今回の大量放出が即、そうした状況につながるわけではないだろうが、危険な兆候として、注視すべきである。
(略) 温暖化の暴走が起きるのか、ということについては、専門家の中でも意見が分かれている。ただ、ペルム紀に実際に起こったことであり、人間活動による温暖化進行によって、絶対に暴走が起きないという保証もない。だからこそ、自然エネルギー普及・省エネ推進を行い、森林の乱開発を止めるなど、温暖化をこれ以上、進行させないための努力を、これまで以上に尽力する必要がある。 だが、その地球温暖化対策でも、日本においては、安倍政権や大手電力会社などの振る舞いが問題となっている。火力発電の中でも、最もCO2を排出する石炭火力発電を推進。現在、国内で48基の新規建設が計画されているほか、海外にも石炭火力発電を輸出しようとしているのだ。これまで、温暖化対策に後ろ向きだった米国ですら、石炭火力発電規制を決めたという中、あり得ないKYぶりである。 ■ 若者の真剣な訴えを嘲笑するどうしようもない人々 しかし、トゥーンベリさんの国連での演説が報道されると、たちまち彼女を非科学的だの操られているだのと誹謗中傷する言説が社会に溢れ出した。 冷笑派とは、社会構造の改善や予想される危機への対処を「やらない」ために屁理屈をこね続ける愚か者たちだということがよく分かる。こういう連中がはびこるほど破滅的事態の可能性は高まっていく。 [1] Discovery Channel 『地球・46億年の大変動 巨大噴火』 ほか http://vergil.hateblo.jp/entry/2019/09/28/142201 ▲△▽▼ 2019年6月7日。ニューズウィークは、豪メルボルンの独立系シンクタンク「ブレイクスルー」の報告として 『2050年人類滅亡!? 豪シンクタンクの衝撃的な未来予測』 という記事を書いている。そこにはこのように書かれている。
『2050年までに気温が3度上昇する。1.5度の気温上昇で西南極氷床が融解し、2度の気温上昇でグリーンランド氷床が融解する』 『気温が2.5度上昇すると、永久凍土が広範囲にわたって消失し、アマゾン熱帯雨林は干ばつに見舞われて立ち枯れる。ジェット気流が不安定となることで、アジアや西アフリカの季節風にも影響が及び、北米は熱波や干ばつ、森林火災など、異常気象の被害を受ける。陸地面積の30%以上で乾燥化がすすみ、南アフリカ、地中海南岸、西アジア、中東、米国南西部、豪州内陸部で砂漠化が深刻となる』
[18初期非表示理由]:担当:混乱したコメント多数により全部処理
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