http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/133.html
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確率論的地震発生予測は現状にあっていないのでは?!
現在、政府が行っている地震発生の確率予測は「確率論的地震発生予測」と呼ばれています。その説明が
「確率論的地震動予測地図」とは・・・
http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/glossary/about_map.htm
にあります。そこから、説明部分を次に引用します。
(*以下引用開始:)
@地震発生確率は、震源断層によって様々です。各断層の長期評価による地震発生確率を考え、各地震の「震源断層を特定した地震動予測地図」に基づいて、個々の地点での揺れがある震度を上回る確率の分布を求め、合算して行きます。
A震源を予め特定しにくい地震も含め、周辺の全ての地震を考慮して、それらによってもたらされる揺れの確率をまとめると、今後30年間についての確率論的地震動予測地図(確率の分布図)が出来上がります。逆に、ある確率に対する揺れの分布図を作ることもできます。
(*以上引用終わり)
この文章の肝は「各断層の長期評価による地震発生確率」です。ここに「長期的評価」という言葉がありますが、これについて、地震調査研究推進本部の地震調査委員会から次のような説明がされています。
東北地方太平洋沖地震に伴う長期評価に関する対応
* http://www.jishin.go.jp/main/chousa/11jun_chouki/taiou.pdf
より引用開始:
1.長期評価の現状
地震調査委員会では、日本周辺で発生する地震について、その震源域、規模、発生確率等の長期的な評価を行っている。評価の対象の地震は、大きく分けて2種類あり、一つは海溝型地震、もう一つは活断層による地震である。
これまでの長期評価では、観測記録、歴史資料や地形・地質学的調査の成果に基づき、同じ領域で同等の規模の地震が繰り返し発生するという考え方で評価していた。
2.海溝型地震の長期評価の高精度化へ向けて今後、長期評価の高精度化に向け、以下のとおり対応を検討する。
各領域について過去に発生した地震のデータから想定した最も起こりうる地震のみならず、史料や観測記録で発生が確認されていない地震についても以下のようなことを考慮して科学的根拠に基づき想定できるよう、評価手法の改善を図る。
・より長期間にわたる地震活動を把握し、過去の地震の規模や活動について高精度に評価をするため、津波堆積物調査、海域における活断層調査等の成果をより積極的に活用する。
・プレート運動におけるひずみや応力等の現状をより高精度で把握し、評価に反映させるため、海底の地殻変動等の調査観測の結果を積極的に活用する。
・領域間で連動する地震について、領域間の相互作用についても考慮した評価を行う。
・より防災に活用されるよう、評価の内容や示し方について検討する。
・津波について、事例整理だけでなく、津波高さや浸水域等を評価する方法や、その示し方について検討する。
*以上引用終わり
上の文章の意味は、いろいろな資料で過去数百年とか数千年の期間の地震の発生数を調べ、それによって、発生確率を計算するということです。例えば、いろいろな資料にあたって、ある地域で過去2000年間に2回M7地震が起こっていることが分かれば、その震源域でのM7地震の発生確率は1000年に1回と言うことになるのです。
こういった考え方によって、次のような予測が内閣府によってされています。
内閣府による「首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)
〜 本 文 〜
平成 25 年 12 月
中央防災会議
首都直下地震対策検討ワーキンググループ」
* http://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/taisaku_wg/pdf/syuto_wg_report.pdf
より部分引用開始:
5.首都直下地震の発生履歴等と地震発生の可能性
(2)M8クラスの海溝型地震(図 31、33、34)
○ 元禄関東地震タイプの地震
海岸段丘の調査によると、大きな隆起を示す地殻変動が過去約 7000 年間に 2000 年〜3000 年間隔で4回発生しており、その最後のものが元禄関東地震によるものである。元禄関東地震が 1703 年に発生したことを踏まえると、元禄関東地震タイプの地震の発生はまだまだ先であり、暫くのところ、このようなタイプの地震が発生する可能性はほとんど無いと考えられる。なお、地震調査委員会(2004)によると、今後 30 年間の地震発生確率は、ほぼ0パーセントと推定されている。
○ 延宝房総沖地震タイプの地震
1677 年延宝房総沖地震は太平洋プレートの沈み込みに伴い発生する津波地震である可能性が高い。この地震は、東北地方太平洋沖地震の震源断層域の南側に位置しており、誘発される可能性があると指摘されている地震と概ね同じ領域に震源断層域を持つ。なお、 地震調査委員会(2011)によると、この領域でこのような津波地震のタイプの地震が発生する確率は、7パーセント程度と推定されている。
(*以上引用終わり)
注意していただきたいのは、
「海岸段丘の調査によると、大きな隆起を示す地殻変動が過去約 7000 年間に 2000 年〜3000 年間隔で4回発生しており、その最後のものが元禄関東地震によるものである。元禄関東地震が 1703 年に発生したことを踏まえると、元禄関東地震タイプの地震の発生はまだまだ先であり、暫くのところ、このようなタイプの地震が発生する可能性はほとんど無いと考えられる。」
の部分です。
以上の長期予測の前提となっている考え方が「アスペリティモデル」と言われるものです。簡単に言うと、陸のプレートへ圧力を加える海のプレートは常に一定の速度で移動していて、陸のプレートの下へ沈み込むときも、その沈み込み速度は数千年以上の期間で変化しないという考え方です。数千年以上の期間、地震発生の環境が変わらないため、「過去約7000年間に2000 年〜3000 年間隔で4回発生しており、その最後のものが元禄関東地震によるものである。元禄関東地震が 1703 年に発生したことを踏まえると、元禄関東地震タイプの地震の発生はまだまだ先」と言えるわけです。
しかし、この前提は311大地震発生前のこの1000年程度期間にしか当てはまらず、311大地震以降は違う考え方をしなければならないのです。
このことを述べる前に、次の二つのことを確認します。
(ア) 基本的に地震が起こる原因は海のプレートが動くことで、陸のプレートや他の海のプレートとの間で押し合いや引き合いが起こり、プレート間の圧力が変化したり、プレート内部での圧力が変化することにある。海のプレートが陸のプレートの下へ沈み込むときに、陸のプレートを下へ引きずり込み、陸のプレートの曲りが限界に達して跳ね返るのも、海のプレートと陸のプレートの間の相互作用の一つ。 また、海溝部の海のプレートと陸のプレートとの間の固着部分から海のプレートの沈み込み圧力が陸のプレートへ伝えられ、それが陸のプレート内部での地震の原因となる。
(イ)海のプレートは地中深くからマグマが湧き上がってくる海嶺部分で年に数センチメートル単位で発生している。そのため、年に数センチ程度の速度で海のプレートは移動し、他のプレートの下へ沈み込んでいく。
311大地震の発生によって、このアスペリティモデルが実態と合っていないことが分かったと述べているプレートテクトニクスの専門家の方がいます。その記事を引用する前に、重要な点のみを先に引用します。
>日本列島のような変動帯においてもプレート相対運動速度が一定に保たれていると考え,更に海洋プレートの沈み込み速度も一定で,プレート境界面上に固着による歪蓄積と地震による歪解放を繰り返す「アスペリティ」と名付けられた部分が局在している,と仮定するのが「アスペリティモデル」である
>「アスペリティモデル」では海洋プレートは常に等速運動し,固着しているアスペリティの島弧側にのみ歪が蓄積すると仮定している.
>東日本大震災によって解放された歪は,狭い日本列島側に蓄積するには大き過ぎ,「アスペリティモデル」で仮定された日本列島側のアスペリティへの歪蓄積も否定される.
>2011年3月11日の東日本大震災は,これまで停止していた太平洋プレートが沈み込みを開始し,太平洋プレート側の周縁隆起帯に蓄積されていた歪が解放されたと説明できる.これを「断続沈み込みモデル」と呼ぶことにする.
このことを、他のことへの影響などを入れて、より分かりやすく言い直すと次のようになります。
1.海のプレートには富士山程度の大きさの海山があり、それらが海溝部分から沈み込むときにつっかえたりして、海のプレートの海溝からの陸域の下への沈み込み速度は遅くなったり速くなったりする。
2.311大地震前は、少なくとも600年間以上の期間で日本海溝からの東日本の陸域の地下への太平洋プレートの沈み込みがなかった。その結果、太平洋プレートは西に進むことが出来ず、日本海溝の東側(ハワイ側)の海底に歪みが蓄積した。
3.その歪みの解消のため、日本海溝からハワイまでの海底で地震が発生した。例えば、年5cm海のプレートが進むとして、100年で5メートルとなるが、100年に一度、海底が5メートル、互いに行き違って重なることで、5メートル分の歪みが解消される。この時、断層の一方は他方の上に乗り上げる形となるので、その時に海面を押し上げる。これが津波となる。311大地震以前の東日本の太平洋での地震のほとんどは、大津波が来るが陸域の揺れがあまりなかった津波地震とされている。これは、陸域の地下で太平洋プレートが動くことがなく、単に沖合の海底で太平洋プレートの破壊が起こっただけであったから。
4.311大地震で、三陸沖の陸のプレートと太平洋プレートとの固着域が大きく破壊され、その結果、600年以上ぶりに太平洋プレートが東日本の陸のプレートの下へ沈み込むことを再開した。
5.日本海溝の三陸沖あたりから太平洋プレートが東日本の陸域の下へ大規模に沈み込みを再開した結果、その南北の両隣の地域で太平洋プレートが西へ強く引きづり込まれる形の力が働きだした。または、もともとハワイ側から西へ太平洋プレートを押していた力の障害がなくなり、その結果、311大地震の破壊域の南北の両隣で太平洋プレートが東日本の陸域の地下へ沈み込もうとしている。つまり、311大地震が発生したその南北の両隣で、311大地震と同じように太平洋プレートが陸域へ向かって沈み込む大地震の発生が起こり得る状態になっている。
6.5.のことは、単に太平洋プレートが関東平野と東北北部から西へ沈み込むだけでなく、関東平野及び東北北部で、太平洋プレートから陸のプレートへ西へ押す力が非常に大きくかかりだしたということ。この結果、東日本の陸域へ太平洋プレートから西へ押す力が非常に強く働きだし、陸のプレートの内部が破壊される直下型地震の発生が今後起こることになる。
7.つまり、311大地震が起こる前は、陸のプレートよりも沖合の海底で、海のプレートが互いに重なり合う形の大地震が起こり、その結果、重なり合った上側の海のプレートが海面を大きく持ち上げるので大きな津波が来るが、陸域の地下で海のプレートが動くことが無かったために、陸域での揺れはあまりなかったということ。しかし、311大地震以降は、600年間以上の期間ぶりに、日本海溝から太平洋プレートが東日本の陸域の地下へ大規模に沈み込みを再開している。その結果、日本海溝から陸のプレートに対して西向き圧力が大きく加えられていて、内陸直下型の地震が起こるし、もし、海溝部分の固着域が破壊されれば、陸のプレートの下で海のプレートが数メートルから数十メートル動く海溝型の大地震も起こる。どちらの地震も、陸域での揺れが311大地震前よりも格段にひどくなる。
想像していただきたいのですが、311大地震で陸のプレートは50m程度一気に沖合へ向かって延びたとされます。それに対応するように、太平洋プレートも三陸沖から東日本の地下へ沈み込みを開始したのです。これはおよそ1000年ぶりの沈み込み再開だとされます。そうであれば、三陸沖の南北の両隣りの太平洋プレートには大きく西へ沈み込む引きの力が働くことになります。その結果、青森県東方沖から北海道南部の地域、そして関東地方の二つの地域で、東方沖から太平洋プレートが大きく沈み込む大地震の発生が切迫しつつあるのです。この予測は、ごく基本的で、ごく当たり前のことなのですが、日本の専門家はごく一部の方たちを除いて、一切対応をしようとしていないのです。
くり返しになりますが、「海岸段丘の調査によると、大きな隆起を示す地殻変動が過去約 7000 年間に 2000 年〜3000 年間隔で4回発生しており」と言った考え方では、311大地震以降の関東地方での大地震発生の予測はできないのです。根拠は、日本列島近辺での太平洋プレートやフィリピン海プレートの日本列島に対する沈み込み速度が311大地震以降、数倍にはなっているからです。
太平洋プレートの大きさは103,280,000平方キロメートルですから、およそ一辺1万キロの正方形と同じ大きさです。これだけ大きいので、全体としての移動速度は数万年単位で変化しないと考えられます。しかし、例えば、日本列島の東日本の太平洋沿岸部といった1千キロメートル程度の範囲で見ると、事情が異なってしまうのです。太平洋プレートと陸のプレートとの間に非常に強い固着域が出来てしまうと、それによって陸のプレートの下への太平洋プレートの沈み込みが1000年程度停止してしまうということは起こり得るのです。東日本の沿岸部で太平洋プレートは沈み込めないので、それよりもハワイ側の海底で太平洋プレートが互いに重なり合う形での地震を発生させ、沈み込めない分の歪みを解消するのです。ただし、日本海溝よりも陸側の海底で地震が起こり、歪みを解消することもあり得ると思います。
確率論的地震発生予測は、海のプレートの移動速度や沈み込み速度が日本列島近辺で数千年以上の期間一定であるという前提が成立するときには正しいのですが、311大地震以降は日本列島周辺での海のプレートの沈み込み速度が格段に速くなってしまったため、その前提が成立しなくなってしまっているのです。
以下、プレートテクトニクスの専門家の方が書かれた記事の引用です。
特報2)「アスペリティモデル」から「断続沈み込みモデル」へ
* http://www.niitsuma-geolab.net/article-top/article02
より部分引用開始:
2013年7月4日 発行
地震とは,地下岩石の弾性変形よって蓄積した歪が間欠的に解放される現象と理解されている.
海洋プレートが海溝に沿って島弧側プレートの下に沈み込み,沈み込み面の固着によってプレート相対運動による歪が蓄積し,間欠的に解放される地震が「海溝型地震」である.
約10年間の宇宙測距によって実測された安定大陸間のプレート相対運動速度が,過去300万年間の相対運動から算出される速度と合致することから,プレート運動速度が極めて一定に保たれていることが明らかになった.このような背景のもとに,日本列島のような変動帯においてもプレート相対運動速度が一定に保たれていると考え,更に海洋プレートの沈み込み速度も一定で,プレート境界面上に固着による歪蓄積と地震による歪解放を繰り返す「アスペリティ」と名付けられた部分が局在している,と仮定するのが「アスペリティモデル」である(図100).
「アスペリティモデル」では海洋プレートは常に等速運動し,固着しているアスペリティの島弧側にのみ歪が蓄積すると仮定している.すなわち,海洋プレートは常に海溝に沿って屈曲して沈み込んでいると仮定している.しかし,海溝における海洋プレート屈曲沈み込みを直接示す証拠はなかった.
東日本大震災後に起った多数の地震について,「非双偶力成分」を考慮した発震機構を解析した結果,海洋プレートの屈曲沈み込みに伴って起る地震を初めて認定することができた(特報1).
東日本大震災で解放された50mの歪が日本列島側に弾性歪として蓄積されていたとすると,日本海中央の大和堆からウラル山脈までの幅が必要であるが,太平洋プレート側には数千km離れたハワイ島まで一様な深海平坦面が続いている.
この屈曲沈み込み過程の進行を示す地震によって,東日本大震災後に太平洋プレートが日本海溝に沿って沈み込んでいることが確認された.しかし,東日本大震災前は屈曲沈み込み過程の進行を示す地震が起っておらず,太平洋プレートは沈み込んでいなかったことが判明した.これまで屈曲沈み込みを示す証拠がなかったのは,沈み込んでいなかったからである.
この事実は,太平洋プレートが日本海溝に沿って常に等速で沈み込んでいることを仮定する「アスペリティモデル」を否定するものである.
東日本大震災の本震の強震計記録の解析では,プレート境界で約50m変位したとされている(鈴木ほか,2012;速報28).50mの変位を弾性歪として蓄積するためには,その1万倍から10万倍の幅が必要である.それより狭い幅では,この歪を蓄積する前に破壊してしまう.
50mの歪が日本列島側に蓄積していたとすると,日本海溝から500kmの日本海中央の大和堆までの幅が必要であり,5000kmとするとウラル山脈までの幅が必要になるが,その間に大きな構造線や海陸境界が多数あり,これらを跨いで均質に弾性歪を蓄積できるとは考えられない(図101).
東日本大震災の前震が2011年2月16日から3月10日まで続いたが,その震源深度が7kmから43kmとプレート境界を跨いでおり,発震機構の主応力軸方位に差がない.Main:プレート境界面上の本震.
一方,日本海溝の外側には周縁隆起帯と呼ばれる広大な高まりが存在している.この周縁隆起帯は正の重力異常を伴っており,日本海溝に沿って沈み込む太平洋プレートに蓄積した歪がアイソスタシィに逆らって海底面を隆起させていると考えられている.太平洋側には周縁隆起帯を含み,ハワイ諸島まで数千km続く一様な深海平坦面があり,充分歪を蓄積できる(図101).
東日本大震災によって解放された歪は,狭い日本列島側に蓄積するには大き過ぎ,「アスペリティモデル」で仮定された日本列島側のアスペリティへの歪蓄積も否定される.
2011年3月11日の東日本大震災は,これまで停止していた太平洋プレートが沈み込みを開始し,太平洋プレート側の周縁隆起帯に蓄積されていた歪が解放されたと説明できる.これを「断続沈み込みモデル」と呼ぶことにする.東日本大震災の前震が2011年2月16日から3月10日まで続いたが,その震源深度が7kmから43kmとプレート境界を跨いでおり,発震機構の主応力軸方位に差がないことから,両プレートの固着状態下で起っていたことが分かる(速報4;速報28;図102).前震は,太平洋プレートの沈み込みを阻止していた固着部の破壊過程と説明できる.
(*以上引用終わり)
2017年07月14日21時55分 武田信弘
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