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「戸建ての建物価値はわずか20年でゼロになる」は本当か?
http://diamond.jp/articles/-/159823
2018.2.15 沖有人:スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント ダイヤモンド・オンライン
戸建てはマンションより資産価値が低くなりやすい。よく言われるのは、住宅ローンを貸す際の建物評価が22年でゼロになるというものだが、実態はどうなのか(写真はイメージです)
戸建てはマンションより資産価値が低くなりやすい。業界でよく言われるのは、木造の耐用年数が22年なので、住宅ローンを貸す際の建物評価がゼロになるというものだ。これは金融機関に聞いても否定はされない。しかし、現在の建物は耐震性も機密性も高いし、22年で住めなくなるような水準にはないはずだ。実態はどうなのだろうか。今回はこの「身近な疑問」に迫りたい。
マンションほど知られていない
戸建ての相場はどうなっている?
まずは、取引価格がいくらかを把握しておこう。戸建て価格は土地と建物に分けられる。取引量の多い平均的な建物面積は100平方メートルと、だいたい相場が決まっている。戸建てと一概に言っても、注文と分譲に分かれる。その平方メートル単価は注文28万円、分譲16万円とおおよそ2倍違う。オーダーメイドと既製品の違いである。これが築22年ほどした建物価値を計算すると、平方メートル単価は3万円で取引されている。
新築分譲された戸建て価格が22年で坪3万円だとすると、建物価値の変化は以下のグラフのように一直線で下がる。ここでは、32年で建物価値がゼロになる。
◆図表1:分譲戸建ての築年別建物平均下落率
(出典)レインズのデータより、住まいサーフィン作成
一方、注文戸建て価格が22年で平方メートル単価3万円になると、下記グラフのように新築から10年で半額以下に急速に下落することになる。22年ではほぼ9割減ということになる。
それも注文住宅は木造とは限らず、鉄骨造の物件も多い。重量鉄骨の耐用年数は34年なので、もっと建物価値を見てもいいのだろうが、オーダーメイドはその家族用につくられた家であって、他人が気に入るとは限らないということなのだろう。この点がマンションのような既成の画一的な仕様と違っている。
◆図表2:注文戸建ての築年別建物平均下落率
(出典)レインズのデータより、住まいサーフィン作成
ここまで分譲の場合と注文の場合で試算したが、新築か中古かは区別されていないので、それぞれの条件を勘案する必要がある。中古戸建てで取引されている敷地面積は平均約140平方メートルで、新築分譲の約120平方メートルを大きく上回っている。同様に、延べ床面積は中古が105平方メートル、新築分譲が98平方メートル、新築注文が127平方メートルとなっている。
また新築着工戸数では、首都圏で注文戸建と分譲戸建ての数はほぼ同数の各6万戸ほどになる。これらのことから、分譲と注文が約半数ずつと考えると、大きくは違わないと考えられる。
そうすると、両者の新築時の単価差が約2倍あるので、分譲戸建てのグラフで示した下落幅はベストケースで、注文戸建てはワーストケースと考えた方がいいだろう。新築時の平方メートル単価を分譲と注文を平均した22万円とすると、22年で単価3万円になるのは86%ダウンということになる。木造の耐用年数の22年を経過すると、資産価値がゼロというのはほぼ当たっている。
ローン残高や解体費まで考えると
戸建ての価値はどこまで下がるのか?
ここまで建物の価値の変化を見てきたが、戸建ての場合、土地なしで建物だけが取引されるケースは稀である。土地の下落を見越して、戸建て価格の下落幅を考える必要がある。
建物と違って土地価格は値下がりしにくいものの、東京圏の住宅地は21世紀以降で年平均2%下落している(地価公示ベース)。22年で44%下がり、現在の首都圏平均の土地平方メートル単価20万円は、22年で11.2万円ほどになる。建物が86%ダウン、土地が44%ダウンとなると、これを合算した戸建ての資産下落の幅は65%ダウンになる。22年で65%ダウンとは、1年で平均3%下落することを意味する。
一方、「建物に価値があると見られるならまだマシだ」という見解もある。建物の平方メートル単価が3万円ということは、100平方メートルで300万円ということになり、高級車と同等レベルにマイホームの価値が下がることを意味している。
これは「二束三文」に等しく、住宅ローンを借りる側にとって評価されにくいことから、買い手はいっそのこと「建物は不要で土地だけでいい」という話にもなりがちである。そうなると、建物価値がゼロになるだけでなく、解体費が売主負担で別途かかる。解体費の平方メートル単価は1万円なので、100平方メートルで100万円のマイナスになる。1万円の解体費がかかるとなると、前述の22年経った土地平方メートル単価11.2万円は10.2万円になり、土地代の半額が売却価格になる。
これでは新築時から76%ダウンに相当する。建物を解体することを前提とすると、資産価値は4分の1以下に下がったことになり、年率に換算すると3.5%ダウンということになる。マンションの年平均下落率は約2%なので、かなり高いことになる。
◆図表3:新築注文・新築分譲・中古の面積と単価
(出典)スタイルアクト作成
引っ越しもできなくなる?
「売るに売れない」事態がヤバい
ここまで下がると、かなり都合が悪い。なぜなら、住宅ローンの返済スピード以上に値下がりしているからである。住宅ローンで元利返済すると、金利1%の35年ローンでは、22年経過時点で元本は当初の41%になっている。これは毎年2.7%程度の元本が減っていることを意味する。頭金を1割入れていたなら、41%×90%=37%が購入金額に対するローン元本になる。
つまり、売却価格が購入金額の37%を下回ると、ローンを返し切れないので売れなくなり、引っ越すという選択肢がなくなってしまう。また、購入金額の47%以上で売れないと当初入れた頭金を全額失ってしまうことになる。
実際、戸建ては中古で売却される戸数がマンションと比較して非常に少ない。首都圏での中古戸建ての取引戸数は年1.3万戸、これに対して中古マンションは3.7万戸と約3倍の開きがある。新築の着工戸数は戸建てが年間約12万戸、分譲マンションが約6万戸なので、中古/新築比率は戸建てが11%しかないのに対して、マンションは62%に及ぶ。資産価値が維持されないとローンの返済ができず、売るに売れないというのが実態である。
それでも戸建てに住みたいなら…
賢い「自宅戦略」のポイント
どんなにいいものを建てても、どんなに素敵なリフォームをしても、日本では戸建ての住宅ローン担保評価は低い。地震大国では致し方ない面があるものの、税務上の耐用年数を住宅ローンに当てはめるのは非合理である。
新築偏重の住宅市場を持続可能な中古市場に変えようとしている国土交通省の意向と税制が、ミスマッチとなっている。米国では、償却は税務上の便宜的な処理であり、住宅の価値は使用価値で査定される。これが自然であり、国民の資産を必要以上に目減りさせる評価は資産デフレの最大の要因となっている。こうした現状は早急に変えるべきではあるが、その見込みは小さい。
では、戸建てに住もうとしている人はどんな「自宅戦略」を考えればよいのか。現状の制度のなかで賢い選択を考えてみることにしよう。
日本では、22年で価値がほぼなくなる新築戸建てを購入するのことは究極の贅沢になる。であるならば、一生住むことが前提になってしまう。
自宅を購入するときはそれでもいいと考えがちだが、望まなくても転勤・転職・離婚・再婚・介護・世帯構成の変化などは現実に起きる。その際に、売るに売れない戸建ては人生の足かせになりかねないことに加えて、多額の負債を残すことになる。そのリスクを軽減する方法は1つしかない。建物比率を少なくすることだ。
そのためには、新築ではなく中古戸建てを購入するのが有効だ。中古だと気に入ったものを建てられない以上、気に入るものを丹念に探すことが条件になる。状態が良くて建物価値をほぼ見なくて済む価格設定ならば、減少する価値はほぼ土地だけに限られてくる。
一方で新築がいいのなら、土地代の割合が高い戸建てを買うことである。新築であっても、土地代5000万円、建物代1000万円で6000万円の戸建てなら、建物代の割合が少ないぶん、こちらも資産価値の目減りが少ない。土地は年2%下落しても、住宅ローンの元本の減り方の方が早いのでいつでも売ることができる。
家族の「愛の住処」まで資産性を気にしなければならないのは不幸だが、自宅に縛られない人生を送るには、この方法が一番の近道になることを忘れないでほしい。
(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)
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