http://www.asyura2.com/17/hasan125/msg/889.html
Tweet |
「AIが人間の仕事を奪う」は嘘だった
https://www.newsweekjapan.jp/stories/technology/2018/02/ai-30.php
2018年2月14日(水)20時27分 ケビン・メイニー(本誌テクノロジーコラムニスト) ニューズウィーク
Illustration by Ben Fearnley
<人間の職を奪うどころか、衛星画像をはじめ、さまざまなデータ解析によって新しい仕事を生み出している>
5年前、シリコンバレーの片隅で人知れず産声を上げた会社がある。その名は「オービタル・インサイト」。創業者はNASAに15年勤め、火星探査機のソフトウエアを開発したジェームズ・クロフォード。退職し、グーグルブックスに在籍していたときのこと、イーロン・マスクのスペースXをはじめとする新興企業の参入で人工衛星の打ち上げ・製造コストが劇的に下がっていく傾向に気付き、これは新しい商機だと確信した。
これから人工衛星の数はどんどん増え、地上へ送ってくるデータや画像もぐんと増える。そうしたデータを収集し、解析すれば有益な情報が得られるはずだ──。そこでクロフォードが開発したのは、世界中のトウモロコシ畑の画像を収集し、作物の生育状況から収量を予測するシステムだ。予想どおり、これには商品先物取引のトレーダーたちが飛び付いた。それから2年、オービタル社は既に7000万ドルもの資金を調達できた。
全ては人工知能(AI)のおかげだ。「15年に初めてコンピューターが人間の認識能力を上回った」とクロフォードは説明する。AIは樹木や船舶を迅速に識別し、膨大な画像やデータに含まれる一定のパターンを見つけ出せる。
AIが発達する以前、衛星データの大半は捨てられていた。煩雑かつ膨大過ぎて、従来のコンピューターのアルゴリズムでは解析に時間がかかり過ぎたからだ。しかしAIならば格段に速く、投資家や投機筋、各種の企業にまでデータを届けられる。
17年前半、オービタル社は膨大なデータの解析から神出鬼没の海賊船の隠れ家を次々と発見した。ビジネスではなく海上の治安に役立ったのだが、同社の技術の高さが証明された。
同年秋には米南部を襲ったハリケーンを、新技術の「合成開口レーダー」(レーダーを移動させて高解像度のイメージをつくる)によるデータを使って解析。ハリケーンで発生する洪水の予測は保険会社にとって貴重な情報となる。海賊船発見とハリケーン観測のおかげで、クロフォードはファンドや銀行から多額の資金を調達できた。同社の技術を使えば、いち早く天然資源やモノの動向についての的確な情報を得られるからだ。
「私たちはスタート地点に就いたばかりで、少しの手がかりを得たにすぎない。とはいえ既に金融、エネルギー、保険市場をはじめ、社会全体への影響を見て取っている」。クロフォードは声明でそう述べている。
オービタル社は急成長中で、データサイエンティストやマーケティングマネジャー、専門の採用担当者などを積極的に雇用している。それだけではない。オービタルのような企業が衛星データを買いあさるため、衛星関連の雇用も増えているのだ。
米衛星産業協会の17年の報告によると、世界の衛星産業の規模は現状で2605億ドルほど。特に地表観測用の比較的安価な小型衛星の需要が急激に伸びているという。つまり多くの雇用が見込まれるということだ。17年12月のリンクトインを見ると、アメリカの衛星産業関連だけで1万1084件もの求人があった。
オービタルは「オルタナティブ・データ」と呼ばれるデータを扱う急成長分野の多くの企業の1つ。市場調査会社タブ・グループによると、オルタナティブ・データ市場は16年に約2億ドル規模だったが、20年には2倍以上になると予測されている。
オルタナティブ・データは、政府統計や株価、企業の会計報告、消費者のクレジットカード使用履歴といった通常のデータとは違う。例えば携帯電話のシグナル、産業機器に搭載されているIoT(モノのインターネット)センサー、オンライン動画、ツイート、ソーシャルメディア、そして人工衛星の画像データなどだ。
未処理の生データが大量蓄積
こうした多分野にわたるデータをつなぎ合わせると、見えにくいトレンドが浮かび上がってくる。これを可能にするのがAIだ。オルタナティブ・データ業界にAIは必須だが、同時に人間の存在も必須だ。AIは人間の雇用を奪うという意見があるが、急成長しているこの業界を見れば、AIが誰も想像しなかったような規模の雇用を生み出せることが分かる。
AIは運転手や会計士、ファストフードの店員、工場労働者などの職を奪い、この世にはITを得意とするごく一部の金持ちと、政府が支給する生活費で食いつなぐ人間しかいなくなると、AIに懐疑的な人たちは言う。
実際、17年7月のオンラインビジネス誌クォーツによる読者1600人の調査では、回答者の90%が「今ある仕事の半分は自動化され、5年以内に消滅する」という予測に同意した。ただし失われるのは自分ではなく他人の職だと、91%が都合よく考えていた。
未来はそんなに暗くないという見方も増えている。減る仕事もあるが増える仕事のほうが多いということだ。例えば調査会社ガートナーによると、AIのせいで20年末までに180万人が失業する一方、230万の雇用が創出される。差し引き50万の雇用増だ。
コンサルティング会社キャップジェミニも、AI導入企業の83%で新規雇用ができたとしている。別のコンサル会社デロイトによるイギリスでの調査では、自動化によって低レベルの雇用80万が失われた一方、新規の雇用が350万も生まれ、しかも新規分の平均年収は1万3000ドルも高かった。
そうは言っても、AIの脅威のほうが見えやすい。自動運転のトラックが走りだせばトラック運転手は路頭に迷うだろう。既にAI型チャットボットは顧客サービスに一役買っている。デロイトは17年、10年以内に法務の分野で39%の業務が自動化されるとの調査結果も発表している。なるほど弁護士事務所の補助職や秘書職が憂き目を見ることは想像に難くない。
一方、プログラミングやチップ設計の能力を持たない人たちに、一体どんな雇用が用意されるのかを想像するのは難しい。だからこそ、オルタナティブ・データの活用から生まれつつある業界に注目すべきだ。
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民125掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民125掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。