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株価急落で、むしろ日米で息の長い景気拡大が期待できる理由
http://diamond.jp/articles/-/159045
2018.2.9 塚崎公義:久留米大学商学部教授 ダイヤモンド・オンライン
株価が急落したことで
米国経済はむしろ安定
米国で長期金利が上昇し、それを契機として割高だと言われていた株価が急落した。筆者は市場予想屋ではなく、景気予想屋なので、その視点から今の局面を見つめると、米国経済のファンダメンタルズが自動調節機能を果たしている“望ましい姿”が見えてくる。
株価や金利の先行きについて、様々な見方が交錯しているようだが、その際にファンダメンタルズが安定している、ということを念頭に置いた議論を期待する。
景気が拡大を続けると、遠からず景気が過熱してインフレになりかねないが、このインフレというのが厄介な代物だ。
というのも、人々がインフレがくると予想すると、買い急ぎが生じるので実際にインフレになってしまう。すると、さらに熱心に買い急ぎをする人々が増えてしまい、その結果、悪循環が生じてインフレが加速してしまう可能性があるからだ。
そうなると中央銀行は、「景気を悪化させてでもインフレを止めなければ」と考えて、金融を引き締める。その際には、人々のインフレ予想がしっかり鎮圧されたことを確認するまで引き締めが続きかねず、景気に相当なダメージが生じる可能性がある。
しかし、今回の長期金利上昇が示したのは、「長期金利が景気を自動調節し、過熱を予防する機能が健在である」ということだ。市場が、景気拡大によるインフレの芽を意識し始めると、「将来は中央銀行が金融を引き締めるだろう」という予想の下、長期金利が上昇する。長期金利の基本は、「将来の予想短期金利の平均値」だからだ。
長期金利が上がれば、企業の設備投資に際しての借り入れコストが上昇するため、設備投資が抑制されるし、株価に下落圧力がかかるため、株価上昇に伴う「資産効果(株価の上昇で個人消費が増えること)」も限定的となる。つまり、市場が景気過熱を予想すると、景気が自動的に抑制されるという「自動調節機能」が長期金利には備わっているのだ。
これまで、景気が拡大しても長期金利が上昇しないため不思議だったのだが、ようやく長期金利が上昇し、自動調節機能が“発動”されたのである。これにより、息の長い景気拡大が期待できよう。
株価下落によって
バブル懸念も解消
米国株式は、PERやPBRといったさまざまな指標から考えて、割高であったという人が多い。バブルであるという人も出始めていたようだ。しかし、今回の株価下落で、バブルが膨らんで破裂するという懸念は大幅に和らいだといっていいだろう。
そもそも、バブルが拡大することは稀である。ITバブルや不動産バブルのような局所的なものは別として、株式市場全体を覆うバブルが発生し、拡大するためには、景気が相当強くなり、企業収益が絶好調になるまで拡大が続かなければならない。
しかし通常は、景気拡大が続いてバブルが発生する頃には、インフレ懸念も発生していて金利が上昇するので、バブルが順調に成長していくことは稀なのだ。日本のバブルは、プラザ合意以降の円高で物価が安定していたことが招いた、珍しい出来事だったのだ。
今回、もしもインフレ懸念で長期金利が上昇しなければ、人々が「米国経済はインフレなき成長を手にした」と考えるようになり、株式市場が本格的なバブルに突入していたかもしれない。その意味では、インフレ懸念が長期金利を押し上げ、それが株価の割高を早い段階で修正してくれたのは、長期的にみれば良いことだったと思われる。
景気は当分の間
拡大を続ける見込み
景気は、自分では方向を変えない。「景気が拡大して物が売れるようになると、企業は生産拡大のために失業者を雇い、雇われた元失業者が給料を得て物を買うので、一層物が売れる」といった好循環が生じるからだ。
上向きの景気が腰折れする可能性としては、「政府・中央銀行がインフレ懸念から景気を故意に腰折れさせる」「海外の景気が腰折れして輸出が激減する」「バブルが崩壊する」というのが主だが、現在の米国を見るといずれも可能性は低そうだ。
政府・中央銀行が景気を抑え込む前に、長期金利が上昇して景気の過熱を防いでいるし、バブルの懸念も遠のいた。米国は輸出依存の経済ではないので、海外の景気悪化の影響は受けにくい。
そうだとすれば、今回の調整のおかげで、米国の景気拡大が長続きする可能性が高まったということになりそうで、株価のファンダメンタルズは、むしろ安定性を増したというわけだ。
米国の株価が下落したことで、割高だとは思えない日本株も「連れ安」した。いつものことだが、日本の景気にとって、株価はそれほど重要ではないため、気にすることはないだろう。
日本の景気は、緩やかながら着実に拡大を続けている。日銀が金融を引き締めるはずはなく、バブルの崩壊も見込まれない現在の状況で、日本の景気拡大が続くか否かを決めるのは、米国の景気動向だと言っても過言ではない 。
米国の景気が腰折れすると、米国の対日輸入数量が落ち込むのみならず、日本の途上国向け部品輸出(途上国で組み立てられて米国に輸出されるもの)も落ち込む。加えて、米国の金融緩和によりドル安円高になり、対世界輸出全体が打撃を被るのだ。
しかし、上記のように、米国が息の長い景気拡大をするのであれば、日本の景気も息の長い拡大を続ける可能性が高い。場合によっては、米国も日本も景気拡大期間が過去最長となるかもしれない。
企業収益改善と金利上昇の綱引きで
株価は上がらない可能性
景気は今後も拡大を続けるだろうが、株価が上がるか否かは筆者には分からない。第一に、米国株は単に割高が修正されただけなのか、まだ割高なのか、割安水準まで売り込まれているのか、判断がつかないからだ。
第二に、景気拡大の初期と比べて増益率が低下する一方で、金利には上昇圧力がかかるので、「株より国債を買う」という投資家が増える可能性がある。
以上が中期的な株価の話であるが、短期的には「相場観に基づかず、売りたくないのに売り注文を出す投資家」の存在が重要な役割を果たすかもしれない。
信用買いをしている個人投資家が、株価下落による「追証」を求められて保有株を「泣く泣く投げ売りした」といったケースに加え、ファンドマネージャーが社内の「損切り」ルールによって、泣く泣く売らされたといった場合もあろう。
そうした「売りたくない売り」が大量に出てくることが予想されると、投機家たちが「売りたくない売りで値下がりするだろうから、先回りして売っておこう」と考えるかもしれない。そうなれば、「適正な価格帯」を大きく下回って売り込まれる可能性もある。そうした時に、初心者が「この世の終わりだ」と考えて投げ売りをしたりしないことを祈るばかりである。
(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
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