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先物市場は、ビットコイン投資に警告を発している
http://diamond.jp/articles/-/158947
2018.2.8 野口悠紀雄:早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 ダイヤモンド・オンライン
ビットコインの価格について先物市場から得られる情報は、現物市場の情報より信頼できる。
ところが、ビットコインの先物市場のデータを分析すると、「ビットコインの先物売りは利益をもたらすが、現物買いは損失をもたらす可能性が高い」という結論が得られる。
だから今はビットコインへの投資は慎重であるべきだ。
先物市場は機関投資家が参加
情報が信頼できる
株価や為替レートなどの資産価格の予想について、しばしば「チャート」や「罫線」が用いられる。しかし、これらには何の根拠もない。
だから信頼すべきでない。
そこで、資産価格の評価には、しばしば「ファンダメンタルズ」の分析が行なわれる。株価の場合には企業業績、為替レートの場合には内外金利差などだ。
しかし、ビットコインの場合には、それに相当したものがない。
もちろん、ビットコインの価格には、さまざまな要因が影響する。
それらを知るのに、先物市場が発する情報は重要だ。
なぜなら、先物市場には機関投資家が参加しているため、その情報は、個人取引者が多い現物市場の情報より信頼できるからだ。
シカゴオプション取引所(CBOE)の価格データは、図表1、2に示すとおりだ(GXBTは、CBOEが参照する現物価格指数)。
◆図表1:ビットコインの現物価格の推移
◆図表2ビットコインの先物価格の推移
図表1、2に見るように、現物価格の下落に伴って、先物価格も下がってきている。
しかし、だからといって、直ちに「現物価格が将来下がると予想されている」と結論することはできない。
後で述べるように、先物取引者の関心は、将来の現物価格と先物価格の関係だ。
現物価格が下がったのは、いわば「発射台が下がった」ということだ。だから、予想上昇率が不変なら、先物価格が下がるのは自然なことだ。
今は現先価格差はプラス
有利な資産になっている
先物価格と現物価格の関係を見ると、現時点では、先物価格は現物価格より高くなっている。そして、限月(先物の期限が満了する月)が将来になるほど、先物価格は高くなっている。
ただし、これは将来の現物価格の予想値が現在の現物価格より高いことを意味しない。
なぜなら、先物価格とは将来価格の予想ではないからだ。
しかし、上述のことは、「ビットコインは価値がある安全資産になっている」ことを意味する。
なぜなら、現在、現物で買って先物を売ることで、確実にプラスの利益を上げることができるからだ。
図表3に示すように、4月、5月が限月の先物価格は、現物価格より1.28%高くなっている。年率にすれば、5%を超える。他方で、3ヵ月の財務省証券の利回りは、1.5%程度だ。これよりかなり高い利回りになっている。
この点についての解釈は後で述べるが、これは現在の先物価格が高すぎる結果であると解釈できる。
ポジションのデータから
何が分かるか?
先物市場は価格以外にも重要な情報を発している。
それはポジションだ。
これは、売り越し、買い越しのことだ。
シカゴ商品取引所のポジションのデータを見ると、図表4のとおりだ。「売り残」が「買い残」よりかなり多くなっている。
これが何を意味するかを、以下に述べよう(以下の議論は、やや複雑である)。
この問題を、つぎのように考えよう。
(1)将来の現物価格の予想値=先物価格+x
(2)先物価格=現在の現物価格+y
としよう。xは人によって異なる値を取る。その分布が図表5に示されている。
(1)(2)から、
(3)将来の現物価格の予想値=現在の現物価格+x+y
が導かれる。
先物で買っているのは、xがプラスと予想している人だ。
先物で売っているのは、xがマイナスと予想している人だ。
売り残が多いということは、xがマイナスとの予想が、プラスとの予想より多いことを意味する。
ビットコインは
今後、値下がりする可能性が高い
上述のことは、現物の買い、または売りに関して有用な情報を、直接に提供するわけではない。
なぜなら、現物取引で利益を得るためには、現物価格が将来どうなるかを知る必要があるからだ。
現状ではyがプラスであるが、もしxがプラスであれば、x+yはプラスである。
したがって、将来の現物価格の予想値は、現在の現物価格より高くなる。したがって、現在、現物で買うことが利益をもたらすと予想されているわけだ。
しかし、xがマイナスである場合には、x+yの符号は分からない。
したがって、将来の現物価格の予想値が現在の現物価格より高いか低いかは、直ちには分からない。つまり、現物で買うことが利益をもたらすと予想されているか、あるいは損失をもたらすと予想されているかは、直ちには分からない。
ところが、前述のように、先物市場においては、売り越しのポジションが買い越しのポジションよりかなり多い。
したがって、xの平均値は、マイナスになっていると考えられる。
もし、その絶対値が十分大きく、xの平均値とyの和がマイナスになれば、将来の現物価格の予想値の平均値は、現在の現物価格より低い。
つまり、平均して「現物で買うことが損失をもたらす」と予想されていることになる。
そうだと判断するデータはないが、売り越しのポジションと買い越しのポジションの現状から見て、その可能性は高い(図表5には、そのような場合を示してある)。
◆図表5:将来の現物価格の予想の分布
つまり、将来の現物価格の予想値は、現在の先物価格よりも低い値を平均値として、その周りに分布している。
その平均値が現在の現物価格より高いか低いかは確実には分からないのだが、低い可能性が高いわけだ。
そうだとすれば、現在、現物を買うことは、リスクがある上に、平均すれば損失を被る行為であることになる。
上で述べたように、現在、先物で売れば、その収益率は、他の安全資産より高くなる。このことの1つの解釈は、「現在の先物価格が高すぎる」ということだ。
このため、先物売りが多くなっており、売り残高が残っていると解釈できる。
この解釈が正しければ、将来、先物価格が下がり、それに応じて現物価格も下がる可能性が高い。
以上の検討から、つぎのような結論が得られる。
ビットコインは現在、有利な資産であり得るが、それは、先物売りした場合だけのことである。
現物で購入した場合には、リスクが高く、かつ損失を被る可能性が高い。
(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)
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