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カルロス・ゴーン、揺れるルノー・日産連合「最高権力者」の座
http://biz-journal.jp/2018/02/post_22239.html
2018.02.07 文=編集部 Business Journal
カルロス・ゴーン氏(ロイター/アフロ)
仏ルノーの会長兼CEO(最高経営責任者)で日産自動車と三菱自動車工業の会長であるカルロス・ゴーン氏の周辺がキナ臭くなってきた。
欧米メディアによるとゴーン氏は1月17日、仏国民議会の公聴会に出席し、「ルノーのCEOを退く可能性」を示唆した。ルノーのCEOは、13年務めた。ゴーン氏に権限が集中する現在のガバナンス(企業統治)について、「やむを得ず、この体制にしている。持続できるとは思えない」と明言。ルノー、日産、三菱自の企業連合体の「経営責任を分けるよう変革を進める」とした。
ゴーン氏の去就は、ルノーの大株主(15%出資)であるエマニエル・マクロン仏大統領が握っているといっても過言ではない。
「マクロン大統領は経済産業デジタル相時代に、仏政府としてルノー株式を買い増し、ゴーン流の経営に異を唱えた。ゴーン氏の高額役員報酬批判の急先鋒だった」(大手紙の現地特派員)
ルノーがヘッドハンティング会社経由で後継者の選定を始めたとの報道もあったが、フランス地元紙など一部の欧州メディアは、ゴーン氏が続投する可能性が高まったと報じた。ゴーン氏のルノー取締役の任期は6月15日までだ。交代か、続投か、株主総会までに結論を出し、後任が必要であれば、それまでに候補者を決めなければならない。
後継候補者としては、ルノーで“ものづくり”を統括するチーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)のティエリー・ボロレ氏や、上級副社長で営業・マーケティング担当のティエリー・コスカス氏、チーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)のシュテファン・ミュラー氏の名前が挙がっている。
また外部の人材では、欧州エアバスのファブリス・ブレジェ最高執行責任者(COO)や、仏グループPSAのカルロス・タバレスCEOの名前も挙がっている。タバレス氏はルノーの元副社長で、ゴーン氏に「トップの座を譲るよう」直談判して逆に切られた人物だ。PSAの経営立て直しで手腕を発揮しており、欧米の自動車業界では「ルノーの現在の副社長クラスより経営者としては上」と高く評価されている。
トヨタ自動車のディディエ・ルロワ取締役副社長も候補に挙がっている。同氏がルノーのトップになれば、まさにビッグニュースだ。
■新ポスト創設で自ら就任か
仮にゴーン氏がルノーの会長兼CEOを退任した場合、ルノー・日産・三菱自のアライアンスはどうなるのだろうか。ゴーン氏は昨年3月末に日産の社長兼CEOを退いたが、現在でも日産と三菱自で代表権のある取締役会長を務めている。
3社連合は1月30日、17年の世界販売台数が1060万8366台になったと発表したが、これについてゴーン氏は、「(3社連合は)17年に1060万台以上の乗用車や商用車を世界で販売した。フォルクスワーゲン(1074万台)と違い、大型トラックは含んでいない。我々こそが世界一だ」と強調している。
ゴーン氏の“世界一発言”の真意は、「ルノーのCEO退任後も、3社連合の経営を統括するポジションを新設して、引き続き君臨するための意思表示」(日本の自動車メーカーのトップ)と受け止められている。「アライアンスCEO」などの呼称が考えられる。「ルノーでなんらかの役職にとどまり、日産、三菱自の会長職を続けながら、企業連合全体を統括するのではないか」(日産現役役員)との見方もある。
マクロン大統領は、ゴーン氏に対して「いつまで続けるつもりなのかというスタンスだった」と伝えられている。ゴーン氏が「ルノーのCEOを辞める」と示唆したのは、「解任されたら、新しいポストを設けて(ルノーに)残ることさえできないので、その前に手を打ったのだろう」(前出の日本の自動車メーカートップ)との読みもある。
このような駆け引きの効果もあってか、地元紙によるとルノー経営陣は、すでにゴーン氏続投に関し、仏政府など大株主の同意も得たという。
「日本では、日産はルノーの下でいいようにやられているように報じられているが、仏メディアはそうではない。『日産に構っていていいのか。切り捨てたほうがルノーのため』といった論調が目立つ。実際は日産の配当でルノーは潤っているのだから事実に反するが、フランス人は心理的にそう思っている」(外資系証券会社の自動車担当アナリスト)
ルノーが新体制になれば、日産の経営は一挙に流動化する。ゴーン氏がルノーのCEOを辞めれば、日産の会長にとどまることも難しくなるとみられているからだ。
ゴーン氏は1999年にルノーと日産の資本提携に合わせてCOO(最高執行責任者)として日産入りし、2001年に日産CEOに就任。05年にルノーのCEOとなった。日産を長期支配してきたゴーン体制は終焉を迎えるのだろうか。そうなれば、“ミニ・ゴーン”といわれている西川廣人・日産社長の地位も、盤石ではなくなる。
(文=編集部)
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