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中国経済は人口減少と格差問題でこのままでは「成長の限界」に
http://diamond.jp/articles/-/157583
2018.1.30 真壁昭夫:法政大学大学院教授 ダイヤモンド・オンライン
中国経済の強みを減殺する
“一人っ子政策”の後遺症
2017年、中国のGDP(国内総生産)は実質ベースで前年から6.9%成長した。成長率の加速は7年ぶりで、この成長率は当初の目標である6.5%を上回った。2018年の成長率も省人化投資などに支えられ、6%台半ばの水準を維持すると期待される。今後も中国経済が急速に減速する場合には、政府がインフラ投資などを積み増す可能性が高い。短期間で経済が大崩れするリスクはそれほど高くはないだろう。
一方、長期的に見ると、中国経済にはさまざまなリスクが潜んでいる。GDPと同時に発表された統計では、2017年の出生数が1723万人と、前年から60万人程度減少したことが明らかとなった。
これは、“一人っ子政策”の後遺症と言えるかもしれない。2016年1月に中国政府は一人っ子政策を撤廃したが、36年間続いた人口抑制策の影響を、短期間で払拭することは難しいと見られる。中国では、一人っ子政策の影響もあり、今後、少子高齢化のマイナスの影響が顕在化するはずだ。
少子高齢化の進展に伴い、経済の働き手である生産年齢人口が減少することは避けられない。これまで中国は、人口増加が安価な労働力の供給を支える“人口ボーナス”を享受してきたのだが、今後はむしろ、少子高齢化がマイナスに作用する“人口オーナス”の時代を迎えることになる。
それは、これまでの中国経済の強みを減殺する要因だ。成長率を維持していくためには、付加価値の高い産業を育成し、競争力を強化できるか否かの重要性が増す。それは中国政府も充分に認識しており、相応の対策を進めているところだ。
問題は、少子高齢化の進展に加えて、社会保障制度などを実態に合わせて改革することが必要になることだ。それができないと、共産党政権に対する支持率は低下することが懸念される。いずれ、中国にとって深刻な状況になる可能性が高い。
少子高齢化の進展で
オーナス化する労働人口
2012年、中国の生産年齢人口(一般的には15歳から64歳の人口を指す、中国では15歳から59歳を生産年齢人口と定義している)は建国以来、初めて前年から減少した。これは、人口の増加に支えられた豊富な労働力をもとにした経済成長の終焉を意味するものだった。
特に、2000年代に入ってからの中国は、“世界の工場”として繊維や家電製品などの一大生産拠点としての地位を確立してきた。それを支えたのが、農村部を中心とする生産年齢人口の増加だった。
生産年齢人口の減少局面を迎え、中国経済がその変化に対応できるか否かが問題だ。生産年齢人口の減少は、農村部から都市部への人口の流入にブレーキがかかることと言い換えられる。それによって、企業の労働コストには増加圧力がかかりやすくなる。製品の組み立てなど、労働集約型の産業が競争力を維持することは難しくなっていくだろう。それは、人口構成の変化が経済発展にとって重荷となることを意味する。これが“人口オーナス”だ。オーナス(onus)は、負担や重荷を意味する。
リーマンショック後の中国経済は、この問題に対応する目的もあり、輸出牽引型の経済を投資牽引型の経済に転換しようとした。しかし、2008年に打ち出された4兆元(当時の邦貨換算額で50兆円超)の財政出動は、鉄鋼、石炭など幅広い分野での過剰生産能力の蓄積につながった。この問題は徐々に解消されてはいるが、取り組みには時間がかかる。
構造改革を進め、成長基盤を安定させていくためには、新しい産業の育成を進め、より多くの付加価値を生み出そうとする企業の活動を支援することが欠かせない。今のところ、中国政府は工場などの生産設備の省人化、自動化などの取り組みを進めている。電気自動車(EV)の普及促進策によって新産業の育成が図られるなど、相応の対応は可能だろう。問題は、10年、20年という長い目で見た時に、比較優位性を維持できる産業があるか否かだ。それは、口で言うほど容易なことではない。
見逃せない中国の戸籍制度の影響
社会保障制度などの改革が不可欠
人口オーナス社会が進む中で、“格差の拡大”が社会の不満につながり、さらには社会情勢不安が高まるリスクは軽視できない。中でも見逃せないのが、中国の戸籍制度の影響だ。1950年代、中国政府は社会保障と食糧供給の安定のために、戸籍を二つに分けた。それが“都市戸籍”と“農村戸籍”だ。戸籍が違うと、受けられる行政サービスなどにかなりの差がある制度である。2014年から中国政府は戸籍制度改革を進め、2020年までに、戸籍の一本化、都市戸籍を1億人に付与することを目指している。
1978年の“改革開放”以降、中国の国民には職業選択の自由が認められるようになった。この結果、農村から都市部に出てより高い所得を確保しようと、出稼ぎに出る人が増えたのは自然な流れだ。農村に戸籍を持ち、都市で就労する人々を“農民工”と呼ぶ。
今後、農民工の社会保障制度に起因する問題が顕在化する可能性がある。農村戸籍では、都市戸籍の人と比べて、医療や失業などの保険、教育サービスなど享受できる行政サービスが制限されている。
例えば、2010年の1ヵ月あたり平均年金受給額は都市部が1527元、農村の場合74元だ。この格差は、都市の経済発展のレベルによっても影響を受けるため、さらに地域格差が大きい可能性も考えられる。
また、農村からの出稼ぎ労働者の多くが年金制度に加入していない。2013年のデータによると、農民工のうち都市従業員年金に加入している割合は約18%である。賃金水準が低いために保険料の負担が重いことが、低加入率の原因だ。
中国で高齢化が進む中、年金制度などに加入していない農村からの出稼ぎ労働者が、今後、リタイアメントを迎える。社会保障制度のメリットを享受できないことによって、経済的な富を持たない多数の人々をどう救済するかが問題となるだろう。うまく対応できないと、戸籍問題が格差の固定化、および、深刻化につながり、社会問題にまで発展しかねない。それは、共産党政権にとって重大な問題になるかもしれない。
中国は過去の日本の姿に見える?
今後の中国経済の予想展開
知人の中国人経済学者と話した時、彼は興味深い見解を示してくれた。曰く、「中国は、30年ほど前の日本の後を追いかけているように見える」とのことだ。
不動産バブルが膨らむ中で民間債務がGDPの2倍超に達したこと、重工業化の振興と環境問題の深刻化など、わが国が辿ったパスの多くを中国も歩んでいる。
問題は、人口が減少し、高齢化が問題となる中で、どう経済の活力を維持するかだ。バイドゥ、アリババ、テンセント等のハイテク企業の成長を見ると、確かに中国経済には旺盛なアニマルスピリッツを感じはする。
しかし、それを長い期間、維持することは容易なことではない。特に、中国の富裕層には自国を信頼していない人が多いといわれる。実際、少しでも多くの資産を海外に持ち出して管理したいという人は後を絶たないようだ。
今後、経済成長率が低下し、所得、労働環境が悪化する、社会保障制度への懸念が高まる場合、一党独裁の体制をとる共産党政権への不満は高まりやすいだろう。そうした状況下、共産党政権が、広大かつ13億人超の膨大な人口を抱える中国を、一つの方向にまとめることができるかがポイントになる。その点に関してはあまり楽観的になれない。
中国の歴史を振り返ると、王朝(政権)の腐敗と打倒が繰り返されてきた。古より、中国では、統治者である王朝が腐敗して人民の支持を失うと、それに乗じて新しい勢力が古い王朝を倒すことが続いてきた。その新しい王朝もいずれ腐敗すると、民衆の支持を失い、再び新しい王朝が出来上がる。そのプロセスを3000年以上、繰り返してきた。
1921年に中国共産党が結成され、日中戦争、国共内戦を経て1949年に建国が宣言された。共産党政権ができて、まだ100年にも満たない。
これまでの共産党の指導の結果、社会全体の不満は高まっていく可能性がある。長い目で考えると、それをうまく利用して、共産党政権に代わる新しい体制が生み出される可能性は排除できない。
競争力の強化に加え、社会全体の格差を是正し、持続可能な社会保障制度などの実施を早期に実現することは、中国共産党の統治力を左右する要因の一つと考えられる。
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