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65歳で貯蓄420万円 独身女性に迫り来る老後破綻
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180125-00000007-nikkeisty-bus_all
NIKKEI STYLE 1/25(木) 7:47配信
老人介護施設で介護補助員として働く女性のSさん(65)は夫と15年ほど前に離婚して以降、一人暮らしです。35歳の息子はすでに結婚して家庭を持ち、別々に暮らしています。Sさんが今の職場で働けるのは70歳までで残り5年ですが、貯蓄は420万円しかありません。「このままでは老後破綻する。投資で老後資金を増やしたい」と相談に来ました。
■収入は年金含めて月28万円
Sさんは離婚したとき、元夫との財産分与でマンションと現金600万円を受け取りました。Sさんはできるだけその600万円に手をつけない生活を心がけてきたそうですが、色々と物入りの時期もあったようで、現在は420万円まで減っています。毎月の収入は介護補助員の手取りが約16万円、年金が9万8000円、息子からの仕送りが2万円と合計で約28万円です。今のところ生活に困ってはいませんが、介護補助員の収入がなくなれば今の蓄えはあっという間になくなり、老後破綻することはSさん自身も自覚しています。
では、老後資金をどのようにしてためるのか。Sさんなりに考えた結論が投資でした。ただ、Sさんにはこれまで投資経験はなく、まったくの初心者です。それでも「私にもできる投資はないか。金融機関で○○という商品を薦められたが、購入しても大丈夫か」と期待を込めた様子で問いかけてきます。
■投資は未経験、ハイリターンを狙うが…
Sさんが投資先として検討しているのはハイリターンを狙うアクティブ型の投資信託です。ハイリターンを期待したい気持ちはわかりますが、リスクとの関係をちゃんと理解していません。このため「まず投資」と考える前に、投資する余裕があるのか、つまり投資に充てる資金がどれくらいあるのかを探るため、家計の状況を聞きました。
Sさんはマンションの住宅ローンは完済しており、住居費はあまりかからないため、月28万円の収入があれば貯蓄をしながら暮らしていけそうです。しかし、実際には毎月ほとんどお金は残りません。「人生は一度きり。行きたいところに行き、食べたいものを食べるのがモットー」といい、旅行や外食に頻繁に出かけており、食費や娯楽費が膨らんでいます。
旅行先ではスマートフォン(スマホ)とタブレット端末で記念の写真や動画を撮影するのを楽しみにしていますが、スマホとタブレットの通信料がそれなりに家計を圧迫しています。一人暮らしなので仕事をしている日中は自宅の電気などは使わなくてすむはずですが、水道光熱費も高めになっています。Sさん自身も「なかなか生活の質を落とせず困っている」と話します。
■「月12万円」の生活に寒け
旅行や外食といったこだわりのある支出が膨らみ、通信費や水道光熱費などほかの費目の支出も多いという典型的な「メタボ家計」だと気付いた今、家計の改善に手をつけなければ働けなくなった後に生活費で困窮することは目に見えています。さらに働ける期間は5年を切っています。5年働いて増える年金額も毎月5000円程度なので、現状では投資に充てる資金があるとはいえません。
このため、Sさんにどのような老後を送りたいのか、もっといえば人生観そのものについて問いただしました。一度しかない人生を楽しむため、今の生活の質は落とさず、その代わり老後は貧しい生活を強いられながら人生を終えることを選ぶのか、それともぜいたくはできなくとも自らの意志で家計を改善して、お金の不安がない人生を送ることを選ぶのか。
前者を選んだ場合、Sさんが退職して月16万円の手取りがなくなると、特別な支出がなくても420万円の貯蓄は26カ月、つまり2年強で底をつきます。その後は年金と息子からの仕送りの合計12万円ほどで生活していかなくてはいけません。Sさんは「月12万円の生活」を想像したとき、寒けがして怖くなったそうです。Sさんは後者の人生を選ぶことを決意しました。
■友人との外食、ホームパーティー形式に
決心さえつけば、減らせる支出を探すのはスムーズです。Sさんはまず、毎月の旅行費用を減らすことにしました。全く行かないわけではありませんが、頻度を減らし、飛行機や新幹線などで遠方に出かけるのではなくバスで行けるところを選ぶなど、節約を心がけました。Sさんは「お金をかけない旅行を考えることも結構、楽しいことだと気付いた」と話します。
社交的なSさんの交際費は友人との外食がほとんどを占めていましたが、おのおのが料理を持ち寄るホームパーティー形式に変えました。そうすることでSさんも料理を楽しめるようになり、外食の頻度が大幅に減りました。ただ、自炊をすると水道光熱費は上がりそうです。しかし、Sさんは食器洗いや入浴などの際に温水を出しっ放しにしがちだった習慣を改めたほか、乾燥まで洗濯機に任せていた洗濯物は脱水が終わった後はベランダで干すようにしました。さらに、つけっ放しだった照明やテレビなどの家電製品のスイッチもこまめに消すようにした結果、逆に水道光熱費を減らせました。
■家計を改善、退職後も11年間は破綻せず
通信費を抑えるため、スマホとタブレットのSIMも格安SIMに替えました。1つの回線で2つのSIMと契約できるタイプで、スマホ、タブレット端末のいずれかをあまり使用しなかった際、もう一方の端末で通信量を無駄なく使用できるプランとしました。被服費についても「旅行の予算に回したい」とのことで半減させました。
こうした取り組みで月に8万4000円の支出を削減し、黒字額も7000円から9万1000円にまで増えました。この分をすべて貯蓄に回せば、1年間で100万円以上の蓄えができます。70歳で退職するまでの5年間だと500万円以上の貯蓄ができる見込みです。現在の420万円と合わせると退職時には貯蓄は920万円ほどになります。家計改善で月々の生活費は19万円ほどに抑えましたから、年金と息子からの仕送り計約12万円について貯蓄から補填するのは月7万円、年84万円で済み、退職後も11年間は老後破綻しない見通しです。
「『人生は一度きりだから楽しまなくては』とばかり思っていたのが失敗だった。老後について少し安心できるようになった」とSさん。その一方で「『人生100年』といわれているので、これだけでは老後資金は足りない。退職しても働けるところがあれば働き続けたい」と意欲をみせます。また、もともと投資への関心も高かったので、18年からスタートした積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)で少しずつ資産運用をしていくことにしました。今は株価も高くどの程度資産を増やせるかは分かりませんが、Sさんの生きがいのひとつになるはずです。
■生きがいと節約のバランスを保つ
「自分らしく生きる」とか「充実した人生を送りたい」などと考えると、やりたいことも色々出てくるでしょうし、お金もかかります。しかし、働き盛りの家庭と同様、メリハリのある家計をつくり上げなくては長くは続きません。やりたいことは貪欲に試すという生きがいを残しつつ、節約も継続してバランスを保つことが満足できる老後を送ることにつながるのではないでしょうか。
(「もうかる家計のつくり方」は隔週水曜更新です)
横山光昭(株)マイエフピー代表、mirai talk株式会社取締役共同代表。顧客が「現在も未来も豊かな生活を送ることができる」ことを一番の目標に、独自の家計再生・貯金プログラムを用いた個別の指導で、これまで10000件以上の赤字家計を再生。著書は累計100万部を超える『年収200万円からの貯金生活宣言』シリーズ、累計65万部の『はじめての人のための3000円投資生活』シリーズがあり、著作合計88冊、累計270万部となる。講演も多数。
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