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日銀はまもなく利上げ、1万円札はなくなると予想する理由
http://diamond.jp/articles/-/156771
2018.1.24 宿輪純一:博士(経済学) ダイヤモンド・オンライン
金融緩和政策の行きつく先として、日本銀行は非伝統的金融政策として未曽有のエリアに踏み込み、量的金融緩和、そしてマイナス金利まで導入した。経済原理的には、おカネの量を増やし金利を下げて行けば、景気も良くなりインフレにもなるというのが教科書に書いていることだ。ここで、筆者が経済学者として気になった点が二つあった。
アベノミクス2つの課題
一つ目は、政策の目標として、通貨(貨幣)の量で影響を与えやすいインフレの方を優先したという事である。実は、先進国には共通の経済目標がある。「経済成長率(景気)3%とインフレ率2%」というものだ。
しかし、先進国の経済は成熟化したため、経済成長率も低下した。インフレ率の方は、まだ通貨の量によって直接的に影響を与えやすい。そもそも、金融政策は景気の引き締めには効くが景気刺激には効きにくい性質を持っている。
インフレ率を直接の目標とするのはいいとしても、国民にとってみれば、インフレになることは歓迎できない事態だ。その部分がすでに乖離していた。なぜ、インフレにして我々を苦しめるのか、と。
もう一つは、マイナス金利の「やりすぎ感」である。下げれば下げるほどいいというものではない。黒田総裁も言い始めたが、最近は「副作用」の方が「作用」を上回ってきた。「リバーサルレート」という考え方で、下げれば下げるほど、逆に景気に対し悪影響を与える。
このマイナス金利下の低金利が、金融機関の収益(経営)を悪化させた。中央銀行たる日銀は銀行ヒエラルキーのトップにある。そのトップが銀行の経営を悪化させるとは、やるせない。金融には机上の研究だけでは分からない部分がある。この辺も実際にリアルな経済や市場を見ていないと分からない。
現在、金融庁と日銀が中心となって、「金融行政方針」に基づき、銀行を始めとした金融機関が、構造不況業種として歴史上最大規模レベルの経営改革に取り組んでいる。これはかなり辛い改革だ。その際に収益の低下はかなりの負担になる。もちろん、当局の考え方がさらに負担を与えて改革にプレッシャーを掛けるというものならば別だが。
タンス預金拡大の問題点
金利が低下すると、おカネを銀行など金融機関に預ける気持ちを低下させる。マイナス金利は個人顧客には適用されないものの、結果的に現金保有(いわゆるタンス預金)を増やす結果となった。
昨年末で現金(紙幣)の発行残高は106兆円超であった。その内、タンス預金は約40兆円と言われている。これも量的金融緩和・マイナス金利の副作用である。タンス預金の増加は、同じ量的緩和政策を採用している日米欧で発生している。
タンス預金の問題点はいろいろある。現金はマネーロンダリングに使用されたり、脱税に使われれば税収が下がる。さらには金融およびその先にある金融市場と切り離されるために、金融政策の効き目が悪くなる。そのため、早急に対応をしなければならない。
インド・中国で進む管理強化
発展途上国では金融市場も未発達な場合が多い。そのため、現金取引が主となることも多い。当局から見えないおカネの取引が多くなり、流れを管理できないということだ。
そのため、インドでは紙幣の入れ替えを銀行経由で実施し、調整も含め管理を強化し、アングラマネーを排除した。これは金融の近代化にとって必要なことであった。
中国は現金主体の経済で、マネーフローや金融の管理が厳しいといわれていたが、民間のアリペイとウィーチャットペイによって都市部では現金の排除に成功。情報も活用されている。すでに都市部の中国人の多くは財布を持っていない(前回の「訪日中国人が握る、日本のフィンテック普及のカギ」参照)。
欧米でも始まった紙幣の排除
先進国でも、同じ理由で紙幣の廃止が始まっている。まず欧州は500ユーロ紙幣の廃止を決定している。さらなる高額紙幣の廃止も検討中だ。
日本も現金の電子化と紙幣の廃止を進めている。日本の場合、対象は1万円札だ。2020年に向け通貨の電子化を政策的に推進しており、新聞記事もひっきりなしに掲載されている。1万札円の廃止は5年〜7年後ともいわれている。
米国の場合は日本以上に難しい。米国に駐在または旅行した方はお分かりだろうが、米国国内では100ドル札や50ドル札までもが、受け取りを拒否されるなど実質的に使用できない。分析してみて分かったのは、それらのお札は海外で使用されている。輸出用なのである。米国の一番の輸出品は、実は100ドルなどの紙幣ともいえる。
日銀は早期金利引き上げへ
このように銀行の経営悪化、そしてタンス預金拡大の問題から、金利の引き上げが早期化する可能性が高まっている。
先日の総選挙の後、安倍政権の主要閣僚がそのまま留任したことからも、4月に任期が来る黒田総裁は続投すると考えられる。しかし、政策自体は変更の可能性が高い。そのために、前述した「リバーサルレート」にもたびたび言及しているのだ。
今後の金利の引き上げ=出口戦略については、すでに国債等の買入金額の減少を密かに進めており(ステルステーパリング)、10年物国債利回りを現在0%近辺に誘導(イールドカーブ・コントロール)しているが、これをたとえば5年物を0%にするなどして、実質的に長期金利の引き上げを行うものと考えている。少なくとも10年物金利をプラス水準に持っていくことが大事なのである。
現在、為替市場では円高が進んでいるが、金融市場はこのような状況を先読みしているのである。
(博士[経済学] 宿輪純一)
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