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欧州経済が絶好調!その現状と日本への影響を把握しておこう
http://diamond.jp/articles/-/156546
2018.1.20 三井住友アセットマネジメント 調査部 ダイヤモンド・オンライン
ヴェルサイユ宮殿の装飾
昨年から好調の欧州経済
日本経済への影響は限定的
皆さんこんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。今回は、「欧州経済」に焦点を当てます。
欧州は、日本の輸出の11%程度を占めています。輸出先の国・地域としては小さくはないのですが、中国、米国の他、アセアンやNIEsを一つのかたまりとして見ると、それらよりも少ないため「欧州経済」は地味なイメージがあるかもしれません。確かに貿易相手としては、欧州経済が日本経済に与える影響は比較的限定的なものとなりそうです。
ただ、日本とEUの貿易量は世界の約36%を占めており(外務省データ)、欧州は日本同様に機械、ロボット、自動車など機械製造を得意とするなど共通点もあります。来週は欧州経済を読み解くためのヒントとなる二つの指標が発表されるだけでなく、欧州中央銀行(ECB)の金融政策決定会合も開催されます。この機会に、欧州経済の現状をご説明したいと思います。
まず、読者の皆さんは欧州経済が絶好調だということをご存じでしょうか。
ユーロ圏の実質GDP成長率は、昨年7〜9月が前年同期比で+2.8%となりました。続く10〜12月期も、三井住友アセットマネジメント調査部では+2.7%で成長したとみています。中長期で見るユーロ圏の潜在成長率がおおよそ1.5%程度ですから、それの倍近いペースで経済が拡大していることになります。
特に好調なのが輸出と投資です。2017年通年の前年比の伸びを実質GDPの構成項目として見ると、弊社では輸出が+5.1%、固定投資が+3.4%と見込んでいます。個人消費もまずまずで、昨年は前年比+1.8%で伸びたと見込んでいます。
景気上振れの状況は、最近の欧州中央銀行(ECB)の経済予測の修正度合いの大きさからもよく分かります。ECBが昨年9月と12月に発表した経済予想は、3ヵ月の間に17年の経済予想が+0.2%、18年の予想が+0.5%も引き上がりました。通年の経済予想は17年が+2.4%、18年が+2.3%ですから、特に18年の予想の引き上げが大きかったことが分かります。
実は、昨年9月と12月の間には、それほど大きな経済的イベントがあったわけではなく、各国の経済活動がいつもの自然体で推移しただけでした。そうした状況の中で中央銀行が経済見通しを大きく上方修正する事は大変まれだと言えます。
三井住友アセットマネジメント調査部では、上方修正の主な要因を「設備投資の回復を伴う世界的な景気回復」だと見ています。
“輸出型”の欧州経済
中国・アジア向けが増加
ここで、これまでの連載で繰り返しお伝えしてきましたが、世界経済がこのところ上振れ気味で推移していることについて改めてご紹介します。
まず、OECDの景気先行指数は世界的に上昇しています。また、国際通貨基金(IMF)も、昨年10月の経済見通し改定時に、その3ヵ月前の7月に発表した経済見通しを上方修正しています。特徴は、幅広い国・地域で上方修正されていることです。今の景気回復が、いかに地理的に見てすそ野が広がっているかがうかがえます。
この動きは、貿易統計でも確認できます。オランダ統計局が集計している世界貿易量を見ると、貿易量の前年比は16年は概ね1〜2%で推移しましたが、その後回復に転じ、17年後半は概ね前年比5%増のペースで増加しています。
また、輸出の反対である輸入の前年比の伸びは、新興アジアを中心として幅広い地域の輸入が伸びていることが分かります。
輸入元としては、特に中国などのアジアが堅調です。昨年の中国経済は、金融市場参加者の予想以上の経済成長を見せました。中国やアジアは、日本からの輸出にとって重要な市場ですが、ユーロ圏にとっても極めて重要です。その地域の経済が上振れれば、実質所得が増加して需要が増える「所得効果」として輸出の増加につながります。
なお、輸出データを品目別に見ると、回復している産業や需要分野が分かります。国連のデータを使って昨年夏ごろの日米欧の輸出を品目別で見ると、化学、金属製品類、機械類といったものの輸出が特に回復していることが分かります。これは世界的に設備投資が回復していることを示唆します。確かに、日米独の資本財受注や工作機械受注のデータを見ても設備投資は足元で堅調に回復してきており、世界的に回復していることが分かります。
日本と同様、機械製造の競争力が高い欧州にとって、設備投資の回復は輸出の回復に直結します。たとえば、ドイツから中国への輸出の内訳を見ると、輸送、機械・電気設備、化学といった品目の伸びが大きくなっており、投資の回復が輸出の増加につながっていることがうかがわれます。
なお、ユーロ圏と日本を比較すると、GDPに占める輸出の割合が日本は15%程度なのに対し、ユーロ圏ははるかに高い(ドイツの例では50%程度)ため、輸出が回復すると経済への影響はユーロ圏のほうが圧倒的に強くなります。
ECBの大胆な金融緩和効果が長続き
浮いた資金は不動産に流れ込む
輸出がユーロ圏経済の上振れを主導していることを見てきましたが、この動きを“脇役”として支えているのが、ECBの大胆な金融緩和です。
経済状態が改善している中で大胆な金融緩和を続けることは、その金融緩和の効果を高める可能性があります。すなわち、経済の状況によっては、追加緩和を行わなくても実質的に追加緩和していることと同じような効果が経済に表れるのです。
これは、景気が改善すると人々や企業のマインド・センチメントが明るくなるため、仮に金融緩和を行って貸出金利を引き下げなかったとしても、現在の貸出金利が相応に低ければ、資金を借りて経済活動に使おうとする人々や企業が増えるということになります。
ECBは昨年の後半に金融緩和を積極化したわけではありませんが、まさにこの効果を体感しているというわけです。
なお、現在の欧州の金利水準が相応に低いかどうかは、ドイツの10年国債利回りやインフレ率、10年国債金利からインフレ率を引いた実質金利を見ると、分かりやすいと思います。
現在のドイツでは、10年債金利は約0.55%、インフレ率は前年比+1.6%ですから、実質金利は0.55%−1.60%=▲1.05%となります。ドイツ国債に投資している人にとっては、インフレ率控除後の国債投資からの利回りはマイナスになってしまいます。ですから、国債よりも期待リターンが高いものへ資金が流れ込むのは自然です。
今のドイツでは、その資金の一部が不動産市況に流入していて、住宅市況は活況で住宅価格も上昇しています。ドイツのBulwiengesa AGという不動産コンサルティングによると、昨年の住宅価格の上昇率は前年比で+7.6%でした。
先行きを占う「ユーロ圏総合PMI」
「ドイツIfo企業景況感指数」に注目
欧州経済の先行きを占うには、来週発表される二つの指数に注目するといいでしょう。先行指標の「ユーロ圏総合PMI」と「ドイツIfo企業景況感指数」が参考になります。
「ユーロ圏総合PMI」は、ユーロ圏全体の製造業やサービス業の企業の購買担当者、計5000社を対象に、それぞれの企業の売り上げや雇用、在庫、価格動向について調査した指数です。ユーロ圏全体の景気の先行きの方向性を見るのに適しています。
「ドイツIfo企業景況感指数」は、ドイツのミュンヘンにあるIfo経済研究所が、ドイツ企業7000社に事業の現状と今後の見通しを調査し集計しています。景気との連動性はこちらの方が高く、信頼性の高さに定評があります。
いずれも来週に1月度の調査結果が発表されますが、本稿執筆時点(1月17日)ではまだ金融市場参加者のコンセンサス予想が出ていません(Bloomberg調べ)。当方では、今回も景気の先行きが明るい状況が続くことが示唆される数字となると見込みます。
一方、リスクとしては、政治的な不安定さを上げることができます。
まずドイツは、昨年秋に総選挙が行われましたが、いまだに組閣できていません。これは選挙を受けて単独で過半数を占める政党が出なかったこと、メルケル首相の連立協議が難航していることが理由です。
現在、メルケル首相が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は、以前大連立を組んでいた社会民主党(SPD)と連立協議を行っていますが、もしこれが失敗に終わった場合は、メルケル首相の退陣の可能性も含め、政治的な不安定感が高まります。
よほどのことがない限り、ドイツの経済政策が大きく変わり経済が失速するリスクは低いと思われますが、一定の注意は払いたいと思います。
次に、イタリアでは総選挙が3月初めに実施される予定ですが、選挙の結果、どの政党も単独では政権がとれない形になる見通しです。安定した政権ができないと、イタリア経済の立て直しに必要と言われている構造改革にブレーキがかかる可能性があるため、選挙後の組閣の動きに注意したいと思います。
もっとも、最近では、どの政党もユーロ離脱を主張しなくなっているため、どのような政権ができたとしても、極端なリスクオフになる可能性は小さいと見られます。
パイが拡大するため
日本とは競合せず
日本から欧州への輸出として金額が大きいのは、一般機械、輸送用機械、電気機械などです。これらは設備投資や消費活動と関連が高いものですが、冒頭で紹介したとおり、欧州でも設備投資が強まっているため、日本から欧州への輸出も堅調に推移する可能性が高いと見られます。
先述のように、欧州の産業は、機械、ロボット、自動車など、日本と競合する高品質な製品が多いことも特徴と言えます。ただ、現時点でそれらの製品群が欧州に堅調に輸出されていますし、世界経済が今のペースで成長を続けるのであれば、競合が厳しくなるのではなく、互いにとってのパイが広がるため、それぞれが十分成長できる望ましい状況が続くことになると見られます。
(三井住友アセットマネジメント 調査部長 渡辺英茂)
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