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電通が有名ベンチャーに送った「謝罪文」を入手!一体なにが… 海外ビジネスを巡る「あるトラブル」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54169
2018.01.19 現代ビジネス編集部
「謹んでお詫び申し上げます」
<この度の米国における弊社グループ会社による一連のマーケティング・サービス活動の提供において、高岡会長に多大なるご迷惑とご不快な思いをさせてしまいました事、改めて謹んでお詫び申し上げます>
二つの有名企業の間で交わされた、こんな「謝罪文」を編集部は入手した。
2016年11月4日に送付されたこの文書。送り手は、広告界の雄・電通だ。常務執行役員の名前が記されたA4の紙には、「お詫びの言葉」が並んでおり、取引先との間になみなみならぬ「トラブル」があったことを想起させる。
<この度の一連の出来事については真摯に反省をし、これまで築いて参りました、高岡会長をはじめとする御社との良好な関係を、今後とも維持発展するべく、弊社といたしましても精進を重ねて参りたいと存じます。>
この「謝罪文」の受け取り主は、エアウィーヴ代表取締役会長兼社長・高岡本州氏だ。
マットレスパッド「エアウィーヴ」を主力とする、年商約120億円の寝具メーカーであるエアウィーヴ社。浅田真央さんが出演するテレビCMをはじめ、著名アスリートが同社製品を愛用することでお馴染みとなり、急成長を遂げてきた。創業者の高岡会長は日本のベンチャー経営者の雄として各種メディアの注目を集めている。
エアウィーヴ社・高岡会長【PHOTO】gettyimages
ところが同社は一昨年、高岡会長が寝食を忘れるほどに力を注いだ米国事業で想定外の事態に見舞われ、17年2月期には20億円の赤字を計上、一時は経営危機までささやかれていたことは、あまり知られていない。
そしてこの巨額の赤字の要因の一つに、電通との「トラブル」があるのだと、事情を知る関係者は明かすのだ。
「17年の年初に20億円近い赤字が生じると分かったエアウィーヴ社は、沈痛な雰囲気に包まれていたそうです。赤字計上に追い込まれた原因は、30億円を投下した海外・アメリカ事業の失敗でした。高岡会長は、海外・アメリカ事業の失敗の大きな要因は、電通子会社との取引にあるとみていました」
双方の間にいったい何があったのか――。
海外展開のためにパートナーを組んだが…
その「トラブル」をみる前に、まずはエアウィーヴ社の歴史から説明していこう。
同社の主力商品「エアウィーヴ」は高反発がウリのマットレスパットである。独自開発された高反発材によって睡眠中に無駄な筋力を消耗せずにすむため、深い眠りにつけることがウリだ。
睡眠がコンディション管理に重要な意味を持つアスリートたちに同社の製品を使用してもらうという展開を仕掛け、09年にはフィギュアスケートの浅田真央選手やテニスの錦織圭選手が同製品を利用、12年からは女子スキージャンプの高梨沙羅選手も愛用しているという。
浅田真央さんも同社の製品を愛用しているという【PHOTO】gettyimages
巧みなイメージ戦略が奏功し、同社の売上は急激に伸びていった。09年の売上高は約1億円に過ぎなかったが、12年度の売上は実に54億円に達した。
快進撃は続く。エアウィーヴ社は、12年に開催されたロンドン五輪において文科省のアスリートサポート事業に参加。これを契機に、14年のソチ五輪では米・仏・独など5カ国の選手団と契約、同五輪でのメダリストの実に3分の1がエアウィーヴ社の製品を利用したという。こうした実績が日本市場でも評価され、14年度の同社の売上は115億円を突破したのだった。
「海外の一流アスリートにも同社の製品が受け入れられると判断した高岡会長はソチ五輪後、満を持して海外・アメリカ市場への進出を決断、これまでに30億円以上を投資してきた」(前出・関係者)
売上高が100億円の同社にとって、30億円の投資は大勝負だ。この一大チャレンジを成功させるため、計画は念には念を入れて立案された。
ここまでみてきたように、エアウィーヴの「勝ちパターン」は、オリンピックやワールドカップなど国際的なスポーツイベントに合わせて、アスリートに製品を使ってもらい、その認知度をあげるというものだ。
PR・広告宣伝の戦略がビジネスの生命線となるため、同社はアメリカ進出にあたり、2016年8月のリオデジャネイロ五輪に照準を合わせ、五輪開催前後の時期にアメリカで大々的にPRと広告宣伝を行うことを決めた。
同社は米国オリンピック協会と8億円ともいわれる契約金でスポンサー契約を結び、各種競技団体の協賛にも5億円を投じた。11年よりスタンフォード大学などと協力して睡眠研究にとりくみ、15年3月にニューヨークのSOHOにブランド発信拠点となるアメリカ1号店をオープンさせる。
セールスの土台は作った。あとは、米国内でのPRと広告宣伝が必要だ。しかし、同社には海外でのPRのノウハウはない。そこで、パートナーを組んだのが、広告界の雄・電通である。
リオ五輪が始まっても完成しない
16年初頭、エアウィーヴ社は電通本社のなじみの担当者の紹介を受けて、世界にネットワークを構築する電通の子会社「電通イージス」とその子会社と、アメリカでのマス広告に関する契約を結ぶ。国内の広告業界のリーディングカンパニーという実績はもちろん、国際事業に自信を見せる電通の総合力に期待してのことだった。
マス広告の計画は次のようなものだったという。
リオ五輪は8月5日から21日までの17日間開催される。同社にとってもここが最大の商機となる。そのため、オリンピック前の5月には集客や通信販売の要となるイーコマース(EC)機能付きのウェブサイトをアメリカで立ち上げ、さらに7月からは大々的にウェブ広告を展開、リオ五輪で一気にエアウィーヴの浸透を図り、9月に売上の最大化を目指すことにした。
エアウィーヴ社にとって当初、計画にほころびは見当たらなかった。しかしフタを開けてみれば、全く予想外の事態に見舞われたのである。事情を知る関係者が言う。
「電通イージスが制作管理を請け負い、5月に完成するはずだったウェブサイトが、ECサイトとしての基本的な設計ミスが生じ、スクロールが極めて遅かったり、サイトが頻繁に落ちたりと操作性に様々な問題が噴出した。いわば、ほとんど使いものにならないサイトだったそうです。唖然としたエアウィーヴ社が急いで改良を指示しても、なかなかHPは完成せず、なんと8月に入ってリオ五輪がスタートしても、ホームページ完成が間に合わなかったのです。
電通の子会社に任せていてはことが進まないから、と最終的に9月にエアウィーヴ社が開発ソースコードなどを引き取り、別の制作会社に頼んで完成を急いだ。結局ホームページの完成は12月までずれ込んでしまったというのです」
販売の要となるウェブサイトがリオ五輪までに機能していなければ、計画の根幹が崩れてしまうのは当然だろう。
しかも想定外の事態はこれだけに留まらなかった。
「エアウィーヴ社はリオ五輪が開催中の8月に、電通の子会社を通じて前月比で10倍のウェブ広告を出稿した。にもかかわらず、売り上げはわずか1.5倍の伸びにとどまったのです。もちろん広告を打てば商品が売れる、とは限りませんが、それにしてもあまりに効果がなさすぎる。
なにかがおかしいと感じた同社が独自に調査した結果、関心の高い消費者に何度もアプローチするウェブ広告特有のリターゲティング広告の精度が著しく低かった可能性が浮かんできた。
さらに、アメリカの大手ECサイトへ出稿されるはずだった広告が、のちに出稿されていなかったことが発覚したと聞いています。これもまた、会長の怒りを買いました」(同前)
「謝罪文」に書かれていたこと
広告の展開がこんな有り様では、アメリカでの販売計画自体が水泡に帰すのは当然のこと。結局、この期間の売り上げは、当初の計画の半分にも満たなかったという。これを機に同社の資金繰りは急速に悪化。結果、SOHOの旗艦店の閉鎖をはじめ、数々のリストラを余儀なくされたのだった。
「高岡会長は憤りを隠しませんでした。これは電通サイドにもしっかりと原因を分析してもらい、場合によってはビジネス的な補償もしてもらわなければならない、という姿勢でいました」(高岡会長を知る人物)
この高岡会長の怒りを解こうと送られたのが、冒頭の電通の「謝罪文」なのである。
ところが、これではことは済まなかった。被害」に関する認識があまりに違っていたのだ。
まず、電通の「謝罪文」にはこう書かれてある。
「本件における契約当事者が弊社グループ米国会社であることに起因する、税制を始めとする各種制約を鑑み、現地での処理として進めさせていただかざるを得ませんことを、ご了承頂けますようお願い致します。
つきましては、最大限示せる誠意としては、弊社グループ米国会社の受注金1.68mio.USD(編集部註:約1億8600万円)のうち、現在未払未了となっている約0.73mio.USD(同然・約8100万円)の範囲内となることにつき、ご理解を賜えれば幸いです」
ごく簡潔に言うなら、PR・広告宣伝の面で不手際があったことについては認めたうえで、「まだエアウィーヴが支払っていない代金のうち、8000万円は払わなくて結構です。それで収めてください」ということだ。
一方のエアウィーヴ側は、この提示に納得していないという。関係者が明かす。
「アメリカに投じた30億円のうち、少なくとも電通サイドには6億円から8億円の支払いがあった。ホームページが動かないなど、まったく満足のいく仕事をしてくれなかったのに、わずか1億ですべてをチャラにしようというのは、あまりに虫が良すぎではないか、ということでした」
「次の手を打たざるを得ない」
「現代ビジネス」は高岡会長に事実関係を確認するため、本人を直撃取材をした。戸惑いながらも、淡々とこちらの質問に答えた。
――電通が御社に宛てた「謝罪文」を入手した。前期の20億円の損失と電通子会社の一件の関係をどう考えているのか。
「どこでそんなことを聞かれたかは知りませんが、確かに謝罪文は存在しているし、トラブルがあるのは事実。当社はリオ五輪の前後にかけて大々的にマス広告を展開することを目指して準備を進めてきたのです。ここで計画通りの広告展開ができなかったのは、致命的でした。20億円の損失のうち、いくばくかはあちらの不手際によるものだと思っています」
――電通が示している誠意は「約0.73mio.USD」の未払い金の範囲内ということ。これに満足できるのか。
「当社のアメリカ事業への投資は30億円を超えている。またアメリカ事業での電通さんへの支払いは全部で6億円から8億円はあったと記憶している。その程度の話で満足できるはずはありませんよね。話し合うことがまだたくさんあると考えている」
――損害賠償を請求する意思があるということか。
「今回は電通の海外子会社の不手際だったが、それを電通本社が認めて謝罪してきている。つまり、電通本社が子会社の瑕疵を明確に認めているということで、アメリカの弁護士からは『リーガル・イシューにすることは可能』という説明を受けています。ただ私は、訴訟は本意ではない。電通も仕事上の重要なパートナーでありますから、敵対するようなつもりはない。
しかしながら、私たちはこれまで電通にきちんとした対応を求めてきました。昨年(17年)の3月になってはじめて代表取締役専務が話し合いに応じて『誠意ある対応を考える』と話してくれたのですが、5月以降、話し合いはこう着状態。8月以降はメールを送っても返事がまったくなく、放置されている状況です。
電通さんにはもう一度、当社の損失と子会社の瑕疵との関係をしっかり検証して、こちらに誠意を見せてほしい。謝罪文一枚と、1億円程度で解決ができる話ではないと思っています。
今期は立ち直って過去最高の売り上げを記録し、15億円程度の利益を出すことができたが、それで忘れられるものではありません。もしもこのまま平行線をたどるようであれば、次の手を打たざるを得ないでしょう」
同社の関係者はこうも言う。
「エアウィーヴ社は他にも電通の紹介ではじめたFINA(国際水泳連盟)とのスポンサー契約を巡ってもトラブルに見舞われており、この交渉でも、窓口となっている電通は7月以降、仲介にほとんど関与しなくなったそうで、FINAとエアウィーヴの件はスポーツ仲裁裁判所で問題にされているという。このことにも高岡会長は不信感を募らせている」
編集部では一連の経緯を電通にも質したが、「個別取引に関することについては、回答を差し控えます」(広報部)とのことだった。
この「トラブル」が起こった時期である2016年12月期、電通の決算は過去最高益を記録している。かねてよりM&Aを重ねて注力してきた海外事業が業績をけん引したためだが、それだけに、好調の海外事業でトラブルを抱えていたことを示すこの文書は、彼らとしては「表ざたにしたくないもの」だったのだろう。
「謝罪文」は「一連の出来事について真摯に反省をし、今後とも良好な関係を維持発展させるべく精進を重ねるので、今後も変わらぬお引き立てをお願いしたい」と締めくくられていたが、このままでは「良好な関係の維持発展」は叶わないのではないか。
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