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消費税アップを前に、今年マンション市場に起きる「決定的な変化」 「駆け込み需要」の夢やいかに…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54149
2018.01.17 牧野 知弘 オラガ総研代表取締役 現代ビジネス
2018(平成30)年が始まった。どうやら今年はいろいろな意味で、住宅を取り巻く環境が大きく変わる年になりそうだ。
最大の要因は、19年10月に迫った消費税率の引き上げである。安倍内閣はこれまで二度にわたって消費税率アップを見送ってきた。ここ数年の景気上昇により、税収は民主党政権の時代よりも増加したものの、財政は相変わらず大量の赤字国債を発行せざるを得ない「火の車」状態。さすがに今回は税率アップを先送りできないだろうし、してはならない。
そこで思い出されるのは前回、2014年4月に消費税率が5%から8%へと大幅に引き上げられたときの状況だ。
今回は8%から10%へのアップなので、引き上げ幅は前回を下回るが、消費者心理を考えたとき、税率10%というのは相当のインパクトがありそうだ。買い物をする際、8%を瞬時に上乗せして税込み価格を算出できる人はそう多くないが、10%であれば簡単に計算できてしまうので、その分重税を実感する機会も増えることになる。
住宅の取得にあたって、土地には消費税がかからないものの、建物には消費税がかかってくる。理由は明快だ。土地は「消費する」ものではないからである。いっぽう、建物は会計処理上も減価償却が認められているように、摩耗・劣化してやがてはなくなるもの、つまり消費財として扱われる。
そして、住宅のなかでもとりわけ建物代の割合が高いのがマンションだ。一般的に、マンションの販売価格に占める土地対建物の比率は3:7程度だ。これが都心のタワーマンションだと、建物代の比率がさらに高まって、2:8から1:9ほどになる。つまり、税率アップはマンションの販売価格にストレートに「効いて」くることになるのだ。
都市部にマンションを建てるのが困難に
前回の税率アップに際しては特例として、新築マンション購入の場合、前年(2013年)9月末までに売買契約を締結すれば、2014年4月の税率アップ時点で建物が完成、引き渡しされていなくても、旧税率の5%が適用された。
そのため、2013年はいわゆる「駆け込み需要」が集中し、マンション販売は絶好調だった。モデルルームには大量の客が押し寄せ、ちょっとした社会現象となった。実際、2013年のマンション供給戸数は5万6478戸と前年を23.8%も上回ることとなった。
同じ考え方に基づき、2019年4月までに売買契約を締結したものについては旧税率が適用されることが予想されるため、マンションデベロッパー業界では「夢よもう一度」とばかりに供給を増やす動きが顕著になっている。
しかし、どうやら今回については、彼らの思惑通りにはならない可能性が高い。
都心居住の志向が強まるなか、新築マンションはもはや都心部でないとなかなか売れない時代に入ってきている。その都心部のマンションですらも、「(居住用という)実需」だけで売れているわけではなく、相続税対策などの節税ニーズや、外国人投資家による投資ニーズに支えられているのが実態だ。そうした節税効果や短期間での売却益を求める人たちにとって、消費増税は即座に購入動機につながるものではない。
またここ数年、マンションの用地担当者は都心での用地取得に苦戦している。その理由は二つある。
まず、外国人観光客の増加を受けたホテル開発ラッシュのため、マンション建設に適当な土地が見つかっても、ホテルとの競合に敗れて用地を取得できないことが一つ。さらに、建設費の高騰により、マンション販売価格が一般の消費者にはすでに手の届かない範囲にまで値上がりしてしまい、都心での商品企画がそもそも困難な状況になっていることが二つめの理由だ。
増税前の「駆け込み需要」はあるのか
都心部で用地を仕入れられない苦境のもとでも、担当者たちはノルマを抱えているため、やむを得ず土地代が安い郊外に向かうことになる。不動産関係者のあいだで「今年は郊外のマンション販売数が急増する」と言われている背景には、こうした流れがあるのだ。
しかし、この用地担当者たちの苦肉の策は果たしてうまくいくだろうか。都心志向に「逆行」してまでも、実需層が新築マンションを購入しようと思うだろうか。都心の中古マンションに対する人気は高まるように思うが、郊外の新築マンションに「駆け込み需要」が発生するとは考えにくいものがある。
ちなみに、前回の消費税増に際した「駆け込み需要」は、その翌年に大幅な供給減を招いた。不動産業界では、需要を先取りしたことによる「反動減」と見なされたが、実際にはその後もマンション供給戸数は減り続け、2016年には4万戸の大台を割り込んで3万5672戸となった。そうした状況からも、来年の消費増税がマンション業界の「干天の慈雨」となる可能性は低いと思われる。
逆に今年は、東京五輪開催が2年後に迫るなか、これまで投資用に買われていたマンションが「鞘(サヤ)取り」を目論んだ売却の対象となるケースが増えるだろう。その文脈で言うと、投資物件は湾岸部のタワーマンションなど比較的都心部に集中しているため、中古市場には都心の物件が数多く出回る年となるだろう。そうなると、郊外の新築マンションよりも都心部の中古を選択する実需層が増えるかもしれない。
マンション業界はこれまで、供給戸数をとにかく増やす「量的拡大」作戦を首尾一貫続けてきた。マンション売買はもともと利幅の大きなビジネスではないため、ある程度の量を確保することで経営を維持しなければならなかったからだ。
しかし、人口減少と高齢化が急激に進もうとするなか、もはや住宅に対する実需の拡大は期待できない。多くの人々にとって、住宅はすでに所与のものであり、新しい住宅を求めるどころか、親の残した実家や子どもたちが出ていったあとの自宅を持てあます時代である。自分たち家族が住むためだけに新たに家を買うのは、あまりに無駄が多くコストフルだ。
「所有からシェアへ」元年に
最近では「シェアリング・エコノミー」の発想が、住宅についても芽生えてきている。建設費の際限ない高騰と間近に迫った消費増税の影響により、新築マイホームのようなステレオタイプ的発想に大変革がもたらされる年になるかもしれない。
たとえば「シェアハウス」は、学生や若い人たちが職業や国籍、性別などに関係なく、同じ家をシェアして暮らすスタイルだ。リビングルームや水回りなどは共用、入居者はそれぞれの部屋を専有し、互いに干渉することなく生活している。
このスタイルと発想は、欧米人などにとってはごく普通であって、最近話題の「民泊」もこの考え方に近いものだ。欧米ではバカンスシーズンになると何か月も家を空けることになるので、そのあいだ観光客などに自分の家を貸しだす。「自分たちは使わないのでどうぞシェアしてください」というわけだ。
消費増税を機に広がる「しなやかな住まい方」
日本人はこれまで、自分が留守のあいだ、他人に自宅を使わせることに抵抗を覚える人がほとんどだった。しかし、シェアハウスなどを使いこなす「これから世代」の人たちは、こうしたことにあまり抵抗を感じなくなってきていると言われている。
すでに、一台の車を近隣住民がシェアして利用する仕組み(カーシェア)も世の中ではどんどん普及してきている。はじめのうちは「他人と車を共有するなんて、レンタカーじゃないのだから」といった批判的な意見が多くあったが、いまではすっかり定着している。
「これから世代」は、自家用車を所有してメンテナンスすることの無駄をしなやかに理解し、カーシェアを「別にいいじゃない」「合理的」と考えるのだ。
こうした考え方にのっとれば、今後「夫婦共働きだから、自分たちが使わない昼間は近所の皆さんでお稽古ごとに使ってください」「キッチンを充実させて、近隣の奥様がたの料理教室にお使いください」といったシェアリング・エコノミーの考え方が広がってくる可能性が高い。
オフィスと住宅などが混在するエリアなら、近隣オフィスのための「貸会議室」に開放してもいいかもしれない。余った部屋を近隣のお店の倉庫として活用してもらうことも考えられるだろう。
これらに共通するのは、住宅を自分だけの財産として、何の収益も生み出さずにただ囲い込むのではなく、自分たちの生活をさらに豊かにするための道具として活用するという発想だ。
「資産性の高さ」という曖昧なセールストークに流されて新築マンションを買ったら、管理規約でガチガチに利用を制限された、というのはこれまでもよくある話だった。しかしこれからは、中古住宅を買って自分たちの稼ぎの足しにもなるように自由に活用するなど、「しなやかな」住まい方が求められるようになるだろう。
皮肉なことに、今年起こるであろう「消費税率アップ」の狂騒曲が、多くの人々の住宅に対する見方、住まい方を変えるきっかけとなる――そんな2018年を筆者は予測している。
人口減少と高齢化を背景に、国のあり方が大きく変わろうとしています。定年までの安定雇用で住宅ローンを返済し、静かな老後生活へ、という人生は、とっくに過去のものとなりました。家を買うのか借りるのか、どこで、どんなふうに暮らすのが幸せなのか。 これからは一人ひとりが新しい時代の「住まい方」を考える時代。現代ビジネス編集部は、特設サイト『住まい方研究所』を開設しました。皆さんが住まい方を考え、選ぶための役に立つ情報を、さまざまな視点からお届けして参ります。 |
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