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苦境の銀行が一斉に手数料を引き上げる事情
http://diamond.jp/articles/-/154362
2017.12.29 塚崎公義:久留米大学商学部教授 ダイヤモンド・オンライン
メガバンクは手数料の引き上げに向かい始めた (写真はイメージです)
メガバンクが、相次いで手数料の引き上げを予定している。報道によれば、みずほ銀行は2018年1月から、三菱東京UFJ銀行は同年4月から、それぞれ両替手数料を引き上げると方針だという。
銀行は、貸出先が乏しくなったことに加え、長く続く低金利の影響で収益が悪化していたこともあって、以前から手数料を収益源の柱にしようとしていた。だが、詳しくは後述するが、昨今の「ゼロ成長」と「ゼロ金利」によって収益悪化に歯止めがかからないため、手数料収入の確保とともに、窓口でのサービスを有料化することで顧客をATMに誘導し、人員削減につなげてコストを削減しようとしているわけだ。
そもそも「サービス」は
「無料」ではない
そもそも、日本人の中には、「サービス」は「無料」だと考えている人が少なくない。だが、サービスにもコストがかかっており、そのコストを顧客が負担するのは当然の話だ。
これは銀行だって同じ。例えば銀行が両替を行うコストは、当然、顧客が支払うべきだ。「無料で両替してくれたから、御行に口座を開きます」という顧客ばかりならいいが、そうしたケースは非常に少ないだろう。その銀行と何の取引もない人たちが突然来店して、銀行員の時間を奪うのだから、その分の人件費などのコストは負担すべきである。
では、なぜ今まで無料だったのだろうか。恐らく銀行側が、イメージや評判を気にしていたのだろう。「あの銀行はガメツイ。両替の手数料を請求された」などと言いふらされてしまっては、イメージが悪化してしまう。そんなリスクを考えれば、両替のコストくらいに目くじらをたてるべきではないというわけだ。「銀行は社会の公器だから世の中の役に立つのは当然」という発想も、少しはあったかもしれない。
では、大手行が両替手数料を有料にしたとして、地方銀行など他行は追随するだろうか。もし無料を貫けば、従来は大手行で両替をしていた人(銀行にとっては客でさえもない迷惑な来店者)たちが、押し寄せてしまう可能性もある。それは避けたいだろうし、たとえ有料にしたところで、「大手行も取っているのだから、仕方ないね」と、さしたる批判は受けないだろうから、おのずと有料化を選ぶと思われる。
こうした流れによって、「サービスは無料だ」という認識に少しでも変化が起きることを期待したい。
預金口座維持にもコスト
通帳1冊当たり年間200円の印紙税
とはいえ、じつは預金口座を持っている顧客の中にも、銀行にとってみればそんなにありがたくない顧客もいる。そもそも今はマイナス金利なので、預金してくれていてもたいしてありがたくはない。
確かに、「将来、金融緩和が終了して市場金利が高くなった場合に備えて、預金客は手放したくない。だから、預金客の両替手数料は無料にする」という考え方もある。
しかし、銀行にとって預金口座を維持管理する費用は、一般の人が考えているより高い。コンピューターシステムの費用や通帳印刷費用などもかかるが、何より「発行済み預金通帳の冊数を数えて、1冊当たり200円の印紙税を毎年納税する」必要があるからだ。
読者の中にも、残高がほぼゼロの預金通帳を、複数持っている人がいるはず。そうした読者は、軽い気持ちで「解約するのも面倒だから、残高が数百円あるけど放置しておこう」と考えているかもしれないが、実は銀行にとって大変迷惑な話なのである。
新社会人のような今後の取引増加が見込まれる顧客ならいいが、休眠口座の持ち主から「自分は預金者なのだから、無料で両替してほしい」と言われても、銀行としては迷惑以外の何物でもないのだ。そうした事情もあって、預金者からも両替手数料を取ろう、という話になるのである。
「零細預金口座」に対する
維持管理手数料導入の可能性も
このように銀網にとって「零細預金口座」は迷惑である。「預金口座さえ開いてくれれば、後日残高も増やしてくれるだろう」という期待を持つ銀行があるかもしれないが、それは、預金獲得競争が繰り広げられていた高金利時代のなごりでしかない。
そうした顧客からは、少なくとも印紙税分以上の「口座維持管理手数料」を取るべきである。米国などでは一般的であるし、日本でも手数料を取っている銀行は皆無ではない。
もちろん、口座管理手数料に対する顧客の抵抗は、両替手数料とは比べものにならないほど強いだろうから、導入には時間がかかるだろう。だが、経営が苦しくなる銀行が増えてくれば、「背に腹は代えられない」ということで、そうした試みも広がっていくと思われる。
ゼロ成長とゼロ金利が収益を圧迫
横並びにならざるを得ない銀行の事情も
今回、銀行が手数料の引き上げに転じ始めたのは、銀行の本業である「預金を集めて貸出をして、利ざや(貸出と預金の金利差)を稼ぐビジネス」が、「ゼロ金利」と「ゼロ成長」によって苦境に立たされているからだ。 銀行の内部事情として、預金部門は集めた預金を市場金利で経理部に貸し出し、融資部門は必要資金を経理部から市場金利で借りる(借りたことにして部門別収益を計算する)場合が多い。
それがゼロ金利(実際にはマイナス金利)だと、預金部門はコスト分だけそっくり赤字になってしまう。かといって預金部門を廃止してしまうと、将来の金利上昇時に、一転して「やはり預金を集めますから、皆様よろしく」となった際に対応できない。したがって、赤字であっても預金部門を維持せざるを得ず、少しでも赤字削減の努力をするしかない。
預金部門の赤字を補うほど貸出部門が儲かればいいが、こちらの状況も大変厳しい。日本経済がゼロ成長だと、不思議なことに銀行の融資残高は減少していくからだ。借り手企業にとってのゼロ成長は、「去年と同じ売り上げ、同じ利益」だが、銀行にとってのそれは違うのである。
企業が新規の設備投資を行わないと、設備投資は更新投資だけになってしまい、その資金は毎年の減価償却でまかなえてしまう。そうなると借り手企業は、利益の中の配当しなかった分を、銀行借り入れの返済に回す。
そうした状況になれば銀行は、ライバルから客を奪って融資残高を増やすために貸出金利を引き下げざるを得ない。どの銀行も事情は同じなので、みんな金利を下げるしかなくなり、銀行の業績が軒並み悪化してしまうのである。
これが、牛丼業界であれば、値下げ競争の結果としてラーメン業界から顧客を奪ってくることができるかもしれない。だが、銀行が金利を下げたとしても、「それなら借金をして設備投資をしよう」という企業はほとんどないし、銀行は他業界から顧客を奪うこともできないので、業界全体が苦しくなるのである。
過剰サービス競争をやめ
振込手数料を安くする努力を
以上、銀行の事情を記したが、顧客目線で見ると、銀行にはコスト削減の余地が小さくないようにも見える。金融危機の後で、かなりコスト削減は進んだ模様であるが、それでも銀行の振込手数料は高いと感じる人は少なくないだろう。
そうした状況を改善するため、可能であれば、銀行内のコスト削減と並んで、過剰サービス競争の抑制もお願いしたい。各行が熱心に融資取引先を訪問しようと、ほとんど訪問せずにいようと、業界全体として獲得できる融資量はほぼ一定だ。であるなら、競争をやめ、そのコストを全行一律にカットすればいい。
といっても、どこの業界でも過剰サービス競争は行われているし、「全行一斉廃止なら構わないが、自分だけがやめるわけにいかない」と全ての銀行が考えているので、容易ではないのだろうが。
(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
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