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歴史的な大惨事レベル「人材不足」今年はこんなにヒドかった 2018年は「人材争奪」の年になる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53978
2017.12.27 磯山 友幸 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
歴史的な人手不足
2017年は人手不足に始まり人手不足に終わる年だった。
厚生労働省が12月26日に発表した11月の有効求人倍率(パートを含む、季節調整値)は1.56倍と、1974年1月以来、43年10カ月ぶりの高水準となった。すでにバブル期の水準を上回り、高度経済成長期並みの求人難となっている。
夏以降一服して頭打ちかと思われた新規求人件数も11月は98万8605件と前月比2.4%増加した。新規の求人に対してどれだけ採用できたかを示す「対新規充足率」は14.2%。7人雇いたいという求人に対して1人だけが決まっているという計算になる。
この14.2%という数字も、比較できる2002年以降で最低である。この厚労省の統計はハローワークを通じた求職求人の倍率だけで、最近増えているインターネットなどを使った民間サービスの求人は含まない。このため、実際には採用難はもっと深刻だという声も聞かれる。
この2年だけを見ても、2015年12月に247万人だった求人が、この11月には275万人に増えた。28万人も求人が増えたにもかかわらず、職を探している求職者は194万人から176万人と18万人減っている。
仕事を求める人が減った背景には、景気が良くなって失業者が減ったことや、少子化によって若年層の人口自体が減少したこと、女性で働く人が大幅に増えて、新規に就労する人が減ったことなどが考えられる。
なにせ11月の完全失業率は総務省の調査によると2.7%で、24年ぶりの低さとなった。求人倍率の高さ、失業率の低さとも、歴史的な人手不足状態が出現していると言える。2.7%という失業率は世界的に見ても異例の低さで、働く意思のある人が働いているという事実上の完全雇用状態といっていい。
そんな未曾有の人手不足は、いったい、いつまで続くのか。果たして2018年はどうなっていくのだろうか。
広がる人手不足倒産業種
2017年は人手不足によって深夜営業を止めたり、店舗を閉鎖したりする外食チェーンなどが相次いだ。政府が音頭を取る「働き方改革」などの影響もあり、長時間労働や低賃金といった条件の悪い職種が敬遠されている。人手の確保ができないところが、営業を縮小せざるを得なくなった。
2018年は、この傾向は一段と鮮明になるだろう。帝国データバンクの調査では2017年度上期(4〜9月)の倒産件数は4197件と前年同期比で3.4%増えた。前年同期比での増加は何と8年ぶりのことだ。
倒産理由を見ると、「人手不足倒産」が54件あり、まだ件数としては少ないが前年同期は32件で、69%も増えている。単月で見てもジワジワと人手不足倒産が増えており、2018年はこれが大きな問題になりそうだ。
人手不足が営業縮小では間に合わず、事業自体が存続できないところまで追い詰められてしまうケースが増えるとみられる。サービス業のほか、中堅中小の製造業などでも人手不足が深刻化しつつある。
有効求人倍率は2018年も上昇を続ける可能性が大きい。仮に有効求人が頭打ちになったとしても、団塊の世代の労働市場からの退出や、今後ますますの少子化によって、求職者数が減り続けるとみられる。人手不足が簡単に解消することはないだろう。
前述の厚労省の調査でも、新規求人倍率の高い職種ははっきりしている。
家庭生活支援サービスが約16.9倍、介護サービスが5.4倍、生活衛生サービスが7.7倍、接客・給仕5.9倍などとサービス産業での求人倍率の高さが目立つ。建設(6.5倍)、土木(5.5倍)など建設系の仕事も相変わらず人手不足だ。こうした職場では、2018年は人材確保が企業の死活問題になってくるに違いない。
また2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、駆け込み工事などが増えるほか、ホテルやレストランの新設オープンも目立ち始める。建設やサービスなどの人手不足が一段と激化するのは火を見るより明らかだ。
待遇改善による人材確保競争
安倍晋三内閣は2018年の春闘で「3%の賃上げ」を経済界に求めているが、賃上げに消極的だったり、労働時間の短縮が進まなかったりする企業からは、人材の流出が加速することになるだろう。
失業率が3%を恒常的に下回るようになって、人材の争奪戦が企業の間で熾烈になっていくとみられる。
給与の引き上げにどれぐらい対応できるかが、企業の人材確保を左右しそうだ。最低賃金は毎年引き上げられており、パートやアルバイトの人件費増が鮮明になっている。
そうした中で正社員化や正社員の待遇改善が焦点になっている。正社員だからと言って長時間労働を強いたり、ましてやサービス残業を常態化させるような経営を行えば、社員はどんどん逃げていく。
ひとたび社員の流出が始まれば、残った社員への負荷がさらに大きくなり、長時間労働に拍車がかかることになりかねない。労働環境の悪化がさらに離職につながるという悪循環に陥りかねないわけだ。
いったんそうした負のスパイラルに陥れば、簡単には立て直しが出来ず、「人手不足倒産」への道をまっしぐら、ということになりかねない。
2018年は必要な人材を確保できるかどうかが、企業の生殺与奪を握る、まさに「人材争奪」の年になるだろう。
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