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正義面した役人どもに、日本の優良企業が潰される…! 日産・スバル・神戸製鋼…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53557
2017.12.25 週刊現代 :現代ビジネス
日本のモノづくりは地に堕ちた。製造業の根幹が崩れた。そんな悲愴な声が聞こえてくる。主に、霞が関のほうから――。危機が大きくなるほど好都合。役人たちがなにやら不穏なことを企んでいる。
安全性には意味のない規制
東京大学大学院経済学研究科ものづくり経営研究センター特任研究員の吉川良三氏は、かつてサムスン電子常務としてグローバルビジネスの最前線を見てきた。
そんな吉川氏からすると、いま日産、スバルで資格のない者が新車の完成検査をしていた「無資格者検査問題」をめぐる国土交通省の対応には、「違和感を禁じえない」と言う。
「国交省は『日本の信頼を揺るがす』などと言って日産の工場に立ち入り検査していますが、私から見ればこれは異常な光景です。
まず有資格者による検査を求めていること自体、グローバル基準からは逸脱した過剰な規制。国際基準では無資格者による検査でOKで、現実として日産は問題発覚後も輸出用の自動車は従来通りに出荷しているんです。
つまり、有資格者による検査は安全性にはほとんど意味のない規制。本当は問題が発覚したのを契機に、国交省は規制が時代に合わない古いものであったと認めて、見直しに動き出すべきです。
それなのに、実際には役人たちはみずから正義の味方のように振る舞ってメーカー側を攻撃し、企業のブランドを傷つけるように火に油を注いでいる。まったく本末転倒です」
もちろん、決められたルールを守らなかった日産、スバルは悪い。しかし、この機に乗じて正義面している役人たちの言動はもっとひどい――。
かつてカルビー社長を務め、現在は経営コンサルティング業を営む中田康雄氏も言う。
「もともと日本の自動車産業では、安全性について過剰に規制がかけられています。国交省が古くからそのようにしてきたからで、車検制度ひとつとっても外国と比べてかなり厳しい。そもそも、車検制度そのものがない国もあるんです。
本来であれば、民間の自主的な安全基準があれば十分です。仮にメーカーが不正を犯して事故が起これば、巨額のリコール負担を強いられるうえ社会的制裁を受けて、その企業は生き残れなくなる。わざわざ官僚たちが余計な規制を作らなくても、おかしな企業は淘汰される」
それなのになぜ日本では過剰な規制が横行しているのかといえば、役人たちが自分たちの仕事を確保したいから。
「またひとつには、企業側に対して役人たちの存在意義を示したいから。さらに、役人にとっては企業でなにか不祥事が起こった時、自分たちに責任が降りかからないように『過剰なアリバイ作り』をしているという意味合いがあるのでしょう」(前出・中田氏)
もっと言えば、役人にとっては、企業が不祥事を起こせば起こすほど「省益拡大」の好機。
問題が起きると真っ先に「これは一大事だ」と叫ぶことで事を大袈裟に荒立て、「規制を強化しなければいけない。いままで以上に企業を監視しなければいけない」という理屈に持ち込み、「予算が必要だ」と焼け太りシナリオへ誘導するのが常套手段だ。
ある自動車部品メーカー幹部も言う。
「昨年4月に三菱自動車などの燃費不正問題が発覚した時がまさにそれ。あまり知られていないでしょうが、問題発覚後の概算要求で国交官僚は『安全確認体制の強化』などと謳い、独立行政法人自動車技術総合機構の予算額などを大きく増額させているんです。
事件後に国交省は『メーカーに裏切られた』などと語りながら、ひっそり焼け太りしているのだから狡猾です」
今回もそうした悪夢のような光景がまた、繰り返されようとしているのである。
君たちにそんな権限はない
それは、神戸製鋼所のデータ不正問題にしても同じこと。
経産省はデータ不正が明るみに出た10月8日の2日後にはさっそく記者会見を開いて、神鋼側に原因究明を指示したなどと胸を張って見せたが、実は経産省にはそんな「権限」がないことをご存じだろうか。
経済ジャーナリストの磯山友幸氏が指摘する。
「経産省は鉄鋼、非鉄金属業界を所管はしているものの、関連企業を監督・指導する権限は法的には認められていない。処分するような権限もない。それなのにしゃしゃり出てきていること自体、おかしなことです。
そもそも、今回のデータ不正問題は神鋼と取引先間の問題であって、経産省が出る幕はない。
法律違反をしているわけでもないのだから、本来であれば黙っていなければいけないのに、経産官僚たちは神鋼の社長を霞が関の経産省本部まで呼び出した。しかも、局長クラスを前に頭を下げさせて、それをメディアに撮影までさせたのは明らかにやり過ぎです」
そうした経産省の行動が世論の不安を掻き立て、余計に問題を大きくしている面は否めない。
もちろん神鋼がデータ不正をしたのは民間企業としてアウトだが、いまのところ納入された製品で不具合は見つかっていないし、人命に結びつくような事故が起きているわけでもない。
過去1年に不正製品が納入された525社のうち、すでに一定の安全確認がとれているのは470社。即座に回収が必要となるような安全性に問題のあるケースはひとつもない。
「当初はこの問題が経営にどのくらいの影響を及ぼすかが不透明だったため、株価は1369円から774円まで半値近く暴落しました。
しかし、製品納入先のトヨタなどが『安全に問題はない』と立て続けに発表したことで、マーケットは過剰反応を修正。最近では1000円を超える水準まで株価が戻っています。
データ不正は問題だが、それが経営に致命的な安全問題にならないことがわかってきたので、神戸製鋼の株価はこれから暴落前の水準にまで戻るでしょう。
かつてデータ不正問題を起こした東洋ゴム工業、旭化成なども問題以前の株価をすでに超えています」(絆アセットマネジメント社長の小沼正則氏)
にもかかわらず、むしろ危機をあおるように扇動しているのが、ほかならぬ経産官僚たちなのである。
天下り枠欲しさに恫喝
経産省の「出しゃばり」はとどまるところを知らず、10月末には日本工業規格(JIS)の認証機関に対して、神鋼にすでに付与しているJISの再審査の検討をするように指示を出した。
経産省には認証機関に対して再審査を指示する権限がないにもかかわらず、である。
実は神鋼のボードメンバーには、元経産事務次官の北畑髏カ氏が社外取締役で入っている。
「その北畑氏はすでに在任7年で、そろそろ退任してもおかしくない。経産官僚たちからすれば、これを『天下り枠』として引き続きキープしたい。
いま経産省が執拗に神鋼を攻撃しているのは、その枠欲しさに『恫喝』しているように映る」(神鋼の大口取引先幹部)
民の不祥事を喰って、官が肥大化していく……。
当然、そうして役人たちが民間企業にモノを言えば言うほど、経営には悪影響でしかない。
一昨年から世間を騒がせている東芝にしても、半導体事業の売却交渉に経産省が「日本の技術流出を防ぐ」などと介入してきたのは記憶に新しい。しかし、結果として事態を混乱させて、経営危機を深めただけだった。
「最近、こうした役人の介入で民間企業の経営が迷走させられるケースが増えている。シャープが経営危機に陥った時も然りで、経産省が業界再編を画策しようとした。
しかし、シャープ経営陣はそんな官僚主導の再生プランを拒否した。結果として、いま見事にV字回復を果たしている。もとより役人たちに民間企業の経営の機微などわかるはずもないのです」(前出・磯山氏)
前出・吉川氏も言う。
「霞が関の役人たちは、グローバル競争時代に企業が生き残っていくことの厳しさを肌身でわかっていない。
もともと日本企業は過剰規制のもとに過剰スペックを強いられてきたことで、グローバル競争で後手に回っているのが現実です。それなのにこれ以上、官が民に余計な規制やコストを強いるようになれば、企業の生死に直結することになりかねない」
このグローバル経営時代にあって、日本企業にとって一番怖いのは「役人リスク」。正義面した役人たちに日本の会社が潰される。
「週刊現代」2017年11月25日号より
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