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東京五輪後、家は値下がりして買いやすくなる…バブル崩壊で「私たち」は何も困らない
http://biz-journal.jp/2017/12/post_21792.html
2017.12.23 文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役 Business Journal
東京五輪の開催まであと3年を切った。不動産マーケットはアベノミクスによる大幅で長期間にわたる金融緩和の恩恵を受けて、好調である。今年3月に発表された公示地価では全国の住宅地の地価が9年ぶりに上昇に転じて話題となり、東京・銀座の山野楽器前の地価は平方メートル当たり5000万円を上回り、平成バブル期を超えたともてはやされた。
業界のなかでも不動産マーケットは、「おそらく」「おおむね」東京五輪までこの状態が続くのではないかといういささか楽観的な観測が飛び交っている。どうやら安倍一強体制も当面は安泰らしいし、日銀の金融政策にも大きな変化がないということは、不動産業界にとって資金調達環境は「史上空前の好条件」が続くということであり、当面死角は見当たらないというのが理屈だ。
この状況を伝えるメディアの側もなんだか妙におとなしい。平成バブル時には「地価狂奔」と騒ぎ立て、このままでは一般庶民にとって住宅は手が届かなくなる、地価は無理やりにでも下げるべきだと声高に叫んでいたのが、一部の週刊誌が「バブル再来」のような特集を組んでいる以外、だいぶトーンが低いようだ。
平成バブル時と現在では何が変わっていて、何が変わっていないのだろうか。
■変わった日本の「顔」
変わったのは日本そのものの顔である。平成バブル期の1990年、日本の生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)は8587万人、全人口に占める割合は70%近くに及んでいた。ところが現在(2015年)では、その数は7682万人と1割以上も減少、全人口に占める割合は60%ぎりぎりになっているのだ。
住宅を購入する層のマーケットは萎み、「マンション価格が上がりすぎて、一般庶民には新築マンションは手が届かなくなっている」と叫んでみたところで、例えば首都圏(1都3県)のマンション供給戸数は、年間で4万戸にも及ばず、平成バブル時に比べれば半分程度の水準にまで縮小している。つまり多くの日本人にはすでに住宅が行き渡ってしまっているので、ことさら騒ぎ立てるほどのことでもなくなっているのが実態だ。
「変わった」もうひとつの側面が、不動産を扱っているプレーヤーの顔だ。平成バブル時は、猫も杓子も銀行からお金を借りて、不動産を買いまくった。本業とはなんの関係もない不動産を普通の中小企業が買いまくり、自らのバランスシートを膨らませ続け、売却して巨万の富を築こうとしたのだ。
ところが、今は不動産を本業としているデベロッパーやハウスメーカーは別として、不動産投資に狂奔する企業の姿は見られない。代わりに登場しているのが、アジアからの個人投資家や、「働き方改革」に名を借りて、副業として給料以外の稼ぎを得ようとする会社員や主婦などの個人投資家、そろそろ事業承継はあきらめて農地に賃貸アパートなどを建てて老後資金の足しにしようとする高齢者層などである。
■変わらない銀行の性分
では、「変わっていない」のはなんだろうか。不動産投資の本質は、投資して売却することによって得られるキャピタルゲインと、投資したのちにこれを運用することによって得られるインカムゲインである。そして日本の場合、これにさらに特典を与えているのが、税制上の各種優遇措置である。
これらの投資効率を上げるのが金融という道具である。借入金を利用することで自己資金に対する運用利回りは上昇する。そして投資における出口、つまり売却時にキャピタルゲインが得られるのであれば、投資効率向上に貢献した借入金を返済でき、さらにインカムゲインを手にするというのが不動産投資のシナリオだ。
税金対策における不動産投資もその本質はまったく変わっていない。現金で1億円を持っていれば、相続の際には額面通りに課税される。ところがこれを土地にすれば路線価評価、建物は固定資産税評価となり、いずれも簿価よりも安く評価される。これに借入金を使えば、借入金は相続財産評価額から差し引かれるのでさらに節税効果が働くというわけだ。
プレーヤーが誰であろうと、不動産投資を支えるのがこの金融という道具である。日銀は史上稀にみる低金利政策を行い続けている。医療の現場に例えるならば、元気がなくなり病状が悪化している患者に大量のモルヒネを与え続けているような政策だが、今のところ一定の検査値を叩き出して延命措置は成功しているかのようにみえる。そしてこうした政策は主要先進国でも蔓延しており、行き場を失った大量のマネーが不動産へと流れ込んでいる。
日本においては運用先のない金融機関が、事業性についてはあまり考えずに不動産の担保価値だけを判断根拠として大量の融資を行っている。その結果として、あまり需要のないような地方の農村部にアパートが何棟も立ち上がるような奇怪な光景を目にすることが多くなっているのだ。
金融機関というところは、まったく懲りない性分のようだ。彼らの基本的性質は、とにかく集まってきた金はなんとしてでも貸さなければならないところにある。そこでもっとも効率が良く、しかも貸し出した結果が相当「後」にならないと判明しない不動産に対する融資が最も「お気に入り」になるのだ。
「効率が良い」とは、不動産はなんといっても「嵩が張る」ので同じように申請書を書いて融資を行うにあたっても、一度に多額の貸し出しができてノルマを達成しやすいということだ。
「貸し出した結果の判明が遅い」点についてはどうか。銀行員の多くは2年から3年で他部署や他支店に人事異動になる。たとえ貸し出したお金が焦げ付いたとしてもそれは数年先の話で、異動後には「知らぬ存ぜぬ」を決め込める不動産という素材は、彼らにとってはまことに都合のよい代物なのだ。
■「バブル崩壊」は困ったことではない
さて、この不動産業界の好景気はいつまで続くのだろうか。モルヒネ効果もおそらく東京五輪前には効き目が薄くなりそうだ。需要がないところに政策的に多くの不動産をこしらえても、結局客の奪い合いとなることは火を見るよりもあきらかだからだ。
今現在、都心部で槌音が鳴り響いている巨大オフィスビルが続々竣工し始める来年後半くらいからオフィスビルはテナントの奪い合いが始まるだろう。今建設されているビルの多くが、もともと老朽化したビルを、容積率アップを利用して巨大ビルに建て替えているにすぎない。すなわち老朽化ビルに居たテナントが追い出されて、空室のあるビルに移転した結果として空室率が改善しただけ、というのが現在オフィスの空室率が低い大きな要因である。すべてのビルの建て替えが完了すれば、当然テナントの奪い合いは激化し、空室率は上昇し、賃料は下がる方向へと向かうだろう。
また、東京をはじめとした都市部郊外では、戦中世代から団塊世代にかけての高齢者に相続が多発するようになる。2022年からは生産緑地制度の期限到来が始まり、高齢となり事業承継が困難となった都市農地の一部が宅地化の選択をして、賃貸マンションやアパートを建設または土地売却に走ることも予想される。意味するところは都市部においても今後地価はかなり下がるだろうという当然すぎる結論へと向かうのだ。
宴はそろそろ終焉に向かっているのだ。ところが、国や政府は地価が下がらないように生産緑地制度については10年の延長制度のみならず、賃貸に拠出しても宅地並み課税を防げるように制度改正を考えているし、東京における一極集中の是正を唱える一方で、得意の国家戦略特区を設定し、国際金融都市を目指してさまざまな制度上の優遇措置を設けてその優位性を保とうとしている。
つまり、地価が下がるとこれまで不動産を支えていた投資家マネーは一気に逃げ足を速めてしまうし、需要の見極めもろくすっぽせずに貸し込んでしまったアパートやマンションの債権が焦げ付くことを極端に恐れているとしかいいようがないのだ。
本当はこれから家を買おうとする、事業を立ち上げてオフィスを借りようとするような若い世代の人たちには、不動産の価格は低いほうが、固定費が削減できてハッピーなはずである。これではまるで既得権益を守るために無理やり地価の水準を保ち、いい加減な投資をしてきたプレーヤーを守ろうとしているようにも映る。
しかし、平成バブル時以上に、やがてくるナイアガラの滝は誰からも同情されないだろう。結局欲の皮が突っ張った人たちが勝手に死ぬだけなのだから。地価が下がって一番困るのは、実は不動産を担保にとっているから大丈夫としか思っていない金融機関なのだ。需要と供給を見極め、顧客マーケティングを正しく行うことがビジネスの基本原則であることは、古今東西変わりはないのに、なぜか不動産になると人々の判断能力は鈍ってしまうものらしい。
むしろ東京五輪後の世界は、家は買いやすく、借りやすくなり、オフィスの賃料もリーズナブルになる。このことは消費者にとって薔薇色の未来が控えているということなのかもしれない。一部メディアのいう「バブル崩壊」も意外と困ったことではない。そんな未来になってほしいものだ。
(文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)
●牧野知弘(まきの・ともひろ)
オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にもかかわり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
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