2017年12月21日(木) 主張 リニア建設談合 工事を続けていいはずがない 総事業費9兆円とされるリニア中央新幹線建設工事をめぐる大林組の不正受注事件は、大手ゼネコン4社による一大談合疑惑に発展しました。リニア建設は、JR東海が事業主体ですが、安倍晋三政権はリニアを「国家的プロジェクト」と位置づけ財政投融資として3兆円もの公的資金を投じるなど、実態は「公共的工事」です。安倍政権が主導する超巨大事業が、ゼネコンのもうけのための不正の舞台とされていたことは極めて深刻です。政府は、JR東海に工事を中止させ、徹底的な真相解明を行うことが求められます。 巨大事業を分け合う形で リニア中央新幹線は2027年に東京(品川)―名古屋間で開業、45年に大阪まで延伸をめざす今世紀最大の巨大事業といわれます。品川―名古屋の8割以上の区間で地下を掘り進めるなど前例のない工事に対して、自然破壊や生活環境への被害などを危ぐする声が相次ぎ、沿線住民らが工事差し止めを求める裁判を起こしています。 捜査対象は、東京・品川や名古屋の地下駅工事、南アルプスや中央アルプスのトンネル工事など契約済みの全22件で、うち15件を大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設の4社の共同企業体が受注しました。疑惑の発端となった大林組の名古屋市の「非常口」工事をはじめ、3〜4件ずつを4社で分け合う形となっており、不正な受注調整をした疑惑は深まります。 談合で工費がつり上げられたとすれば、しわ寄せは運賃などで国民がこうむることになります。かつてさまざまな巨大事業で談合が繰り返され価格が跳ね上がり、結果として多額の公的資金まで費やされたことに全く反省のない大手ゼネコン各社の姿勢は重大です。 リニアへの財政投融資の使い道は、国土交通省が所管する鉄道・運輸機構が検査・監視し、個別の工事内容も確認することになっています。ところが国交省は疑惑発覚後も同機構には何も聞いておらず、JR東海やゼネコン4社に対する調査もまともに行わないなど無責任な態度を取り続けています。 リニア談合疑惑の背景の一つとして、工事契約金額を「非公表」とするなど情報開示に応じないJR東海の不誠実な態度が指摘されています。国や同社は、公共事業でないので落札金額などの公表を義務付ける「公共工事入札契約適正化促進法」が適用されないことを理由にしています。国民に多大な影響を与える国家的な「公共的工事」だというのに、情報隠しはとても通用しません。問題解明のためにもJR東海は徹底した情報開示をすべきです。 JR東海側からの情報漏えいの疑いも浮上しています。公共工事であれば“官製談合の共犯”に当たることにもなります。JR東海の発注者としての姿勢が厳しく問われることは明らかです。 計画には根本的な疑念 リニアをめぐっては、南アルプスのトンネル工事による水枯れのおそれ、膨大な残土置き場の未確定など問題が山積しているのに、地元の声を無視し工事を推進しているJR東海のやり方にも批判が集まっています。そもそもリニア計画には安全性や採算性に根本的な疑念が突き付けられています。 大手ゼネコンがもうけを求め群がる構造に徹底的にメスを入れるためにも工事中止は不可欠です。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-21/2017122101_05_1.html 2017年12月21日(木) ゼネコンなれ合い ツケは国民 談合リニア 住民、怒りと不安 名古屋で聞く 安倍晋三政権とJR東海が強行するリニア中央新幹線の建設工事。総事業費が9兆円以上の巨大国家プロジェクトをめぐる不正入札事件が大手ゼネコン4社にまで広がりました。住民からは不正への怒りとともに建設工事による生活環境破壊への不安が広がっています。(原千拓)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-21/2017122101_04_1.jpg (写真)大林JVが不正入札で受注した疑いがもたれているリニアの名城非常口新設工事=名古屋市
「大手ゼネコン各社がなれ合いでリニア工事を分け合っているとしか思えません」。名古屋市のリニアを考える西区の会代表の小川輝夫さん(70)は、そう指摘します。 リニア中央新幹線は時速500キロ超で走り、2027年に東京―名古屋、45年に大阪まで延伸し1時間余りで結ぶ予定。JR東海が事業主体で、安倍政権は16年に「大阪延伸の最大8年前倒し」を理由に3兆円の財政投融資を決めるなど国家的プロジェクトに位置付けています。 東京地検特捜部は、大手ゼネコンの大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設が入札をめぐり談合した独占禁止法違反の疑いで、強制捜査にのりだしています。 背景にJR東海が、同社が直接発注した入札の契約金額などを非公開にしており、住民らがチェックできない状況があります。 小川さんは「リニアの工事費は財政投融資という形で公金が投入されています。リニアがうまくいかなければ、国民につけがまわってくる仕組みです。ますますJR東海によるリニア工事は許せません」と訴えます。 JR東海は、全国新幹線鉄道整備法に基づき、沿線自治体に用地取得の業務を肩代わりさせています。名古屋市では、名古屋新駅を建設するため、市の外郭団体「名古屋まちづくり公社」に市職員やOBを派遣し、地権者に用地売却を強引に迫っています。 中村・リニアを考える会事務局長の鳥居勝さん(69)はJR東海の対応について、こう批判します。「ある時は民間事業だといって必要な情報を示しません。またある時は公共事業という名目で立ち退きを迫ります。JR東海側の都合で使い分けをしています」 リニア建設 JR東海強引対応 用地取得ごり押し 住民「家出るの嫌」 JR東海は、地下30メートルの場所に名古屋新駅の建設をすすめています。南北に走るJR名古屋駅の新幹線などの線路と交差する形となり、東西約1キロメートルの区域内で用地取得が必要です。地権者は680人とされます。 立ち退きの対象になっている名古屋市中村区に娘の家族と住む鈴木多づ子さん(80)はこう訴えます。「先祖代々からこの土地で住んできました。この年で新しい土地に住むのは大変だし、ご先祖様に申しわけないです。この家がなくなるのはとてもつらい。家を出るのは嫌です」 中村・リニアを考える会事務局長の鳥居勝さん(69)は「立ち退きは拒否できますが、周辺の家が契約に応じる中で、早く契約しろと追いつめられれば住民にとっては精神的苦痛になります」と指摘します。 「国家」の名で JR東海側は国土交通省の認可を受け、リニアを「国家プロジェクト」としてすすめています。名古屋市の「名古屋まちづくり公社」はJR東海から用地取得を請け負い、市職員も派遣されています。鳥居さんは「行政側が用地取得に来ると住民はむげに断れないのが現状です」と話します。 リニアは東京、名古屋など大都市部でも、地下40メートル以深の大深度地下トンネルを走行します。40メートル以深は、地権者への事前補償が原則として不要とされています。 名古屋市の中村区と西区の一部では、トンネルから名古屋新駅にかけて地下40メートルより浅い区域です。地上の建物の立ち退きはありませんが、敷地が地下トンネルにかかる「区分地上権」設定の対象となります。 鳥居さんは「区分地上権が設定されると土地利用に制限がかかったり、周辺地域にも影響がでます。にもかかわらず、JR東海側は、『トンネルにかかる面積の範囲のみの補償しかしない』『ビルの土台などのくいがトンネルに重なれば削る』『建物の荷重制限などにより建物の補償は一部だけ』などJR側の都合だけで条件を提示してくる」と怒ります。 説明あやふや リニアを考える西区の会代表の小川輝夫さん(70)によると区分地上権の地域にかかる高層マンションなどでは、説明会は開かれたものの住民に対する補償が具体的に示されていないといいます。 JR東海はトンネルの影響による事故が起こったときの補償については「基準にしたがって戸別ごとに対応する」と説明するだけで実際どこまで補償するかはわからないと鳥居さんは指摘します。 JR東海は「丁寧な説明で理解を求める」としていますが、説明会ではマスコミはすべてシャットアウトで、用地についての説明会では参加は地権者のみ。周辺住民への説明会では発言は1人3問までで再質問はなしと厳しい条件を設定しているといいます。 鳥居さんは「地権者の意向にそった補償をするならまだしも非常に傲慢(ごうまん)なやり方です。生存権の侵害でもあります」と話します。 小川さんは、指摘します。「工事で出る残土の運搬やそれにともなう騒音や環境汚染など地権者の問題だけでなく、周辺地域にも影響が出ます。リニア開発の問題点をもっと広めなければなりません」 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-21/2017122101_04_1.html
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