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元側近たちがいま明かす「孫正義が見ている壮大な景色の正体」 10兆円の投資先をみればわかる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53555
2017.12.20 週刊現代 :現代ビジネス
悩んでいる時ほど、遠くを見よ――。この男はいつも、自分にそう言い聞かせているのだという。ソフトバンクグループを率いる稀代のカリスマ経営者。その視線の先には壮大な景色が広がっていた。
「通信が本業ではない」
11月6日、ロイヤルパークホテル(東京都中央区)の巨大ホール。この日開催された2018年度3月期の中間決算会見に登壇したソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏は、いつものようにこう吹いてみせた。
「ソフトバンクの本業はなにか? 私は通信が本業だと思ったことは一秒もない。ソフトバンクの本業は情報革命業。地球上にはじめて生まれた業態の会社である」
この日の孫氏は勢いそのままに、「ソフトバンクは1ヵ所にとどまる会社ではない」と断言。
巨大ビジョンにプレゼン資料を映し出しながら、通信のみならず、ロボット、Eコマース、医療などさまざまな事業へと投資を加速させると次々発表し、「ソフトバンク1社で、世界全部のベンチャーキャピタルが1年でやった投資をやっている」と驚きの実情を明かした。
ネイビーのスーツに赤いネクタイを締めた孫氏は、この朝、同じく「赤ネクタイ」がトレードマークで来日中のトランプ大統領と面会していた。
対米投資でアメリカの雇用に貢献していると伝えたら、「マサ、お前は素晴らしい」と褒められたとのエピソードを披露すると、会場はどよめいた。いったい、この男はどこへ向かおうとしているのか――。
今回本誌では、そんな孫氏の「頭の中」を最もよく知る2人に話を聞いた。嶋聡氏と三木雄信氏。ともに社長室長を務め、孫氏を間近で見てきた側近中の側近である。
まず気になるのは、孫氏がいま最も力を注いでいる「10兆円ファンド」プロジェクトについて。ソフトバンクが今年5月にサウジアラビア政府などと立ち上げたと思ったら、半年足らずで世界各国のベンチャー約20社に平均1000億円規模を次々に投資し、世界のビジネスエリートたちの度肝を抜いている。
その投資先はインド、アメリカ、中国など国も業種もバラバラなので「脈絡がない投資戦略」と批判する声もあるが、実はそうした視点では孫氏の狙いを見誤る。
孫氏はある明確な指針をもって、投資先を選別している。意外なことにそのキーワードは、あの財閥王ロックフェラー。嶋氏が明かす。
「ソフトバンクがかつて再生エネルギー事業に参入すると決めた時、孫さんから『ロックフェラーがどうして世界を制覇できたか知っているか』と聞かれたことがありました。
なぜですかと聞くと、『彼は石油をおさえたからだ』と言うんです。孫さんが目指しているのはまさにこれ。
ロックフェラーは第2次産業革命で大活躍した事業家ですが、いま世界が第3次産業革命の前夜にある中、孫さんは現代のロックフェラーになろうと考えているんです。
10兆円ファンドの投資先を仔細に見ればそれは一目瞭然です。そもそも産業革命とは、『エネルギー』『輸送』『コミュニケーション手段』が大きく転換することで起きるもの。
当時は石炭が石油へ、鉄道が自動車へ、印刷から電話へと転換していく中、ロックフェラーはその石油、自動車、通信の3事業をおさえて大成功した。
孫さんはその手法をまねて、次世代のエネルギー、輸送、コミュニケーションの覇者になろうとしている」
自動車業界を制覇する
確かにここ数年のソフトバンクの投資先を見ると、まず目に付くのがエネルギー分野。たとえばこの10月にはモンゴルで風力発電事業をスタートさせ、今後数千億円かけて設置する海底ケーブルを通じてアジア各国へ送電する予定。
直近では新たに国営サウジ電力に投資することを決定した。孫氏は再生エネルギーが第3次産業革命でいよいよ勃興すると読んで、猛烈に先行投資を進めているのだ。
では、「輸送分野」はどうか。嶋氏が続ける。
「孫さんはトヨタ自動車の豊田章男社長と1歳違いと年齢が近いので2人で話をすることがあり、昔から自動車には興味を持っていました。とはいえ、ソフトバンクが自動車メーカーになることはない。
輸送部門では、目下世界中で広がりつつあるライドシェアの覇者になるつもりです。
これからEV(電気自動車)時代に突入する中で、自動車は誰でも作れるようになるので、価格競争激化で旨みのないビジネスになる。
一方、すでにコモディティ化したスマホ市場では、大儲けしているのは端末メーカーではなくて、グーグルやアップルなどプラットフォームをおさえた会社。
孫さんは自動車業界も同じ道をたどると見て、そのプラットフォームとなるライドシェア分野の支配を目指している。
実際、すでに中国の滴滴出行、インドのオラ、シンガポールのグラブなどのライドシェア企業に投資済み。今後はアメリカのウーバーかリフトにも投資する予定です」
3つ目の「コミュニケーション手段」については、今後はスマホ時代からIoT(モノのインターネット)化時代へ変わっていく。
人と人がスマホでつながるのみならず、人とモノ、モノとモノが高速ネットワークでつながる次世代通信へと本格的に移行していく。
「そんなIoT時代の中核技術となる半導体を握るのが英アーム社。スマホの頭脳となる半導体の回路設計分野では世界シェア9割を誇る会社で、孫さんは惜しげもなく3・3兆円という巨額を投じて昨年買収した。
孫さんは今後アーム社が作る半導体チップがスマホ以外の多くの製品にも搭載され、『1兆個が世界中にばら撒かれることになる』と言っている。IoT時代の中核部門での世界制覇はもう視野に入っているわけです」(嶋氏)
これから世界では、再生エネルギーで作られた電力を使ったEVが街を走り回るようになる。
そのEVには半導体チップが大量搭載されていて、前後のクルマと通信しながら自動運転する――そんな「もうすぐそこ」に待っている未来に向けて、孫氏はしたたかに布石を打っているのだ。
「池の鯉」理論
孫氏はこのように世界各国の様々な企業に投資をして巨大グループ群を構築しているわけだが、投資先ではおおむね出資比率を50%以下にして支配権を握らないのがまた特徴。孫氏はそれを「群戦略」と呼ぶが、そこにも巧みな意図がある。
三木氏が明かす。
「孫社長はソフトバンクを『300年先まで続く会社にしたい』と言っていて、そのために編み出したのが群戦略です。いま絶好調の米アップルだって、iPhoneが売れなくなれば潰れるかもしれない。孫社長といえども、将来にどのような企業・産業が花開くかをすべて見通すことはできない。
それならば、より多く種をまいておいたほうが『勝つ確率』は高くなる。多額を1社に投じるより、少額を複数社に投じるほうがソフトバンクグループの『寿命』を長く延ばせるという意図があるんです。
これは昔からの孫社長の思想で、'00年に私が自宅に呼ばれた時、孫社長は『これからアメリカの時価総額3000億円以上の会社すべてと合弁会社を作る』『すべての会社に投資すれば市場の成長に合わせて必ず成功できる』と言っていた。
当時はITバブルが崩壊してそれどころではなくなったが、これをいまになって実行に移している」
投資した各社に細かく口を出すこともしない。それぞれの会社が厳しいビジネス環境の中で闘い、どこが生き残るのかを孫氏はじっと見ているという。三木氏が続ける。
「個々のグループ企業はソフトバンク本体から指示を受けることもなく、それぞれが会社としての生存を必死に追求する。それが結果として、グループ全体としての成長につながると考えるのもまた群戦略の肝です。
あれは'99年のことでしたが、孫社長が『今日は暇だから箱根に蕎麦を食いに行こう』と言い出したことがありました。
箱根で蕎麦を食べた後には植物園『箱根湿生花園』に行ったのですが、そこの池で鯉が泳いでいた。それを孫社長が、『あれを見ろ』と指を差して、言ったんです。
『この鯉の群れは誰が指示を出しているわけでもないのに、ちゃんと群れとして行動をしている』『グループ経営もこうならなければいけない』と」
それほど周到な戦略に裏打ちされているとはいえ、ソフトバンクの場合は、投資資金を多額の借金で賄ってきたことがなによりの懸念材料。その有利子負債は9月末時点で約15兆円と巨額で、昨年度には借金の利払いだけで4600億円以上を支払っている。
「1日に約12.8億円、1時間に約5000万円が利払い費に消えている計算ですから、私がいま社長室長でも、『そろそろ考え直してくれ』というレベルです。
一方で、いままでソフトバンクが投資してきた保有株式の時価評価が22兆円超に膨れ上がっているのもまた事実。孫さんからすれば、『なにが問題なのか』ということになる」(嶋氏)
銀行とは「一蓮托生」
三木氏も、「そもそも日本企業の経営者たちは『無借金経営』を自慢しますが、それは孫社長からすれば馬鹿馬鹿しいと考えている」と言う。
「ビジネス環境が猛烈なスピードで変化する時代にあっては、企業にとっては経営判断の遅れが致命傷になる。そんな時に手持ちのカネがないからという理由で、投資が後手に回るのは経営者として失格。
それよりも将来の生き残りと成長のためには、いま必要なおカネは、どんどん借金してでも投資をしていかなければいけないと孫社長は考えているわけです。
言い方を換えれば、自分の経営判断を確信しているからこそ借金もできる。ソフトバンクがADSL事業に進出して会社がつぶれそうだった時も、孫社長とはこんなやり取りをしました。
『三木!おまえは水の上を歩く方法を知っているか』
『わかりません』
『左足が沈む前に、右足を出し、右足が沈む前に左足を出すんだ!』
孫社長はその時もADSLの先にスマホ時代が来ることを見越していた。そして、現実もその通りになった」
最近は銀行にとって目ぼしい貸出先がない中で、巨額を借りてくれるソフトバンクは上客。孫氏からすれば借りれば借りるほど銀行と「一蓮托生」になるともわかったうえで、借金経営を邁進しているのだ。
では、もう一つの懸念である「後継者問題」はどうか。三木氏は、「答えはもう出ている」と言う。
「孫社長は、『あるマネジメントのルールをAI(人工知能)にインストールすれば、群戦略でグループ経営できる』と言っていた。つまり、後継者は人間でなくてもいいと考えているんです。'80年代から脳型コンピューターの研究も支援している。
ソフトバンクが手掛ける人型ロボットのペッパーは孫社長に似ていませんか?孫社長の『頭脳』が搭載されたペッパー。それが孫正義の後継者になる気がします」
冒頭の会見翌日、ソフトバンクの株価は1万円台を回復した。世界中がまだこの男の「先」を見たがっている。
「週刊現代」2017年11月25日号より
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