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(回答先: もし私が10歳の日本人なら…世界的投資家の「驚愕の問いと答え」 日本株はまだ上がるでしょう。しかし…(週刊現代) 投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 12 月 19 日 02:47:15)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53297
「週刊現代」2017年10月28日号より
EV、自動運転の時代が幕を開け、自動車業界は100年に1度の転換期を迎えた。今年で創業80年を迎えた「トヨタ王国」とて安穏としていられない。万が一があれば、日本経済は未曾有の大混乱に陥る。
■あまりに巨大になりすぎた
「かつて大きな市場だった北米で自動車の売り上げが落ち、国内販売台数世界一の中国では国ぐるみで次世代車の開発に取り組んでいるなど、自動車の市場は大きく変化しようとしています。
そのなかでメーカーが取り組んでいるのが、電気自動車(EV)と自動運転技術の開発です。EVではテスラをはじめ、あの家電メーカーのダイソンまでもが参入を計画するほど競争は過熱しています。
また自動運転の分野では、グーグルやマイクロソフトといった巨大IT企業がビッグビジネスを展開しようとしている。業界を超えたパイの奪い合いのなかで、既存の自動車メーカーの優位性は徐々になくなっていくでしょう」(経営コンサルタントの加谷珪一氏)
本連載第2回で自動運転を取り上げたときにも述べたが、EVと自動運転の普及は、我々のクルマに対する価値観を大きく変えていく。
内燃機関が電気モーターに置き換えられ、自分で運転する必要がなくなれば、自動車はテレビや掃除機のような「家電製品」と同様の扱いになる。
そうすると、クルマを所有することの意義がいまとは違ったものになるだろう。
新技術の到来で消費者の感覚が変わろうとしているいま、自動車業界は、潮目が変わればどんなメーカーでもたちどころに消滅しかねない時代に突入しようとしている。
これは、トヨタのような日本を代表するモンスター企業も例外ではない。
トヨタ自動車の従業員は、本社単独で約7万4000人、グループ連結では36万人を超える。
約75%のパーツを自社以外から調達する同社は、大手1次請けとして約500社、2次請けが5000社、3次以下の下請けまで含めると3万社以上の取引先がある。
そこでは、実に140万人以上がトヨタ関連の事業に携わっていると推計される。日本の労働人口の3%、学校にたとえればクラスに1人は「トヨタ王国」の一員がいるというわけだ。
グループ合計年間生産台数は1000万台を超え、純利益は約1兆8000億円。時価総額は約20兆円でフォルクスワーゲンの約3倍である。
そのトヨタは、デンソーやアイシン精機といった高い技術を持つグループ企業や下請けを傘下に持ち、確固としたピラミッド構造を形成してきた。
これまでのトヨタの強みは、ムダをくまなく排除した生産ラインにあった。必要なぶんだけ部品を作り、在庫を残さないように車体の完成までを行う『かんばん方式』や、業務の徹底的な『カイゼン』を行い、下請けとの綿密な連携を取ることで、コストカットや技術力の飛躍的な向上を成し遂げてきたのだ。
たゆまぬ企業努力のなかで築き上げられたピラミッドは、トヨタの成長とともに巨大化し、日本の雇用を支えるエグゼクティブ企業となった。
「トヨタ城下町」である愛知県・豊田市をはじめ、東北や九州に数千から数万人が働く巨大な工場を持ち、国内で年間300万台以上を生産している。
■世界の潮流は「EV」に
だが冒頭でも触れたとおり、100年に1度の産業構造の変化が起きているいま、「トヨタ王国」もまた危うい状況に曝されることになる。
このことを示唆するような出来事が今年9月に起きた。デンソー、マツダと手を組んで、トヨタがEVを作る――。5年前なら誰も想像しなかったことだろう。
トヨタは'97年に「プリウス」を発売して以来、ハイブリッド車の販路を拡大し続けてきた。近年欧州や国内の競合がEVの開発に取り組みはじめてからも、同社の主軸はより性能の高いハイブリッド車の開発にあった。
「ハイブリッド車の開発はEVに比べて部品数が多く、高い技術力も必要です。多くの下請けを必要とすることから、『雇用を守るクルマ』と捉えることができます」(ジャーナリストの井上久男氏)
プリウスPhoto by GettyImages
さらに、'14年からは世界初の量産型FCV(燃料電池車)の発売も開始した。
EVはガソリンを使用しないが、発電には化石燃料が不可欠であることを考えると、環境への負荷はゼロではない。一方、FCVでは水素を化学反応させることでエネルギーを生むため、環境への負荷が圧倒的に少ない。
そのことも含め、トヨタは次世代のエコカーとしてFCVを選んだのだ。これは、さまざまなモノづくりへの哲学が詰まったトヨタの選択なのだろう。
しかし、ここにきてトヨタはこれまでの巨大ピラミッド構造の一部を崩し、競合他社と手を組んでまでEVとFCVの「両獲り」を目指すことになった。フォルクスワーゲンやBMWといった世界企業の動向を見れば、やや後手に回った対応と見て取れるかもしれない。
だが、このトヨタの「焦り」は、同社も読み切れないほどのスピードで業界の流れが変わっていることを意味しているともいえる。
'80年代、ビデオレコーダーの規格でVHSとベータの生存競争があった。ソニーが開発したベータはビクターが売り出したVHSよりも、画質や機能性の面で優れていた。にもかかわらず、家庭への普及力でベータはVHSに敗れ、市場からフェードアウトした。
優れた技術があっても、世の中の潮流に呑み込まれればひとたまりもない。そしてこれはEVとFCVでも起こりうる競争で、だからこそトヨタもなりふりかまっていられないのだ。
■工場の周辺施設も潰れる
あのトヨタが倒れる――。繰り返しになるが、この数十年、誰もがありえないと思っていたことが起こりうるのがこれからの自動車業界だ。時価総額日本1位のトヨタにもしものことがあれば、日本経済が未曾有のダメージを受けることは間違いない。
当然、真っ先にその影響を受けるのは全国に存在する3次以下の中小メーカーになる。EV化で部品が減るうえ、運転を制御するのがコンピュータになれば、新興メーカーの製品に置き換わっていくだろう。
すでにトヨタでは、系列会社ごとにバラバラに開発・生産していた部品を一本化する方式を採用し、共通の部品を作ることでより広範囲の販路と製造拠点を手に入れる取り組みを進めている。「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)と呼ばれる戦略だ。
だが見方を変えれば、それは効率化とコストカットにほかならず、トヨタの意向一つで下請けの運命は決まってしまう。
そうして下位から大手まで下請けの再編が進んだあとには、直営の工場も次から次へと閉鎖に追い込まれることになりかねない。
トヨタは国内に16の工場を抱えているが、それも徐々に畳むことになるだろう。言うまでもなくそれらの工場は、地元地域の経済を支える固く大きな地盤となっている。
トヨタ自動車九州では、年間に約30万台を生産している。海外でも人気のある高級車「レクサス」の大きな製造拠点で、つまりトヨタブランドを支える屋台骨だ。旧炭鉱地域を再活性させたトヨタ九州で働く従業員は約9600人いる。
たとえばこの九州の工場が閉鎖したとする。そうすると、従業員たちは「別の工場に行ってほしい」などと形式上は打診されることになるだろう。だが実際のところ、家庭の事情などを考えれば誰もが移動できるわけではない。自主退職という名目のリストラが進むことになるのだ。
これまでトヨタは国内の大規模な工場を閉鎖したことはない。だがすでに、国内の自動車メーカーでは再編に向けた動きは出てきている。たとえばホンダは'21年度をメドに、埼玉県・狭山工場を閉鎖して近隣の寄居工場に生産ラインを集約させることを決定した。
この工場では約4600人の従業員が働いているが、狭山市では地元経済に年間数十億円規模の損失が出るとの試算がある。これがトヨタのすべての工場で起こったとしたら――。想像を絶する事態が日本列島を覆いつくすことになる。
創業から80年、販売台数世界一の自動車メーカーにまで登りつめたトヨタが倒れれば、これまでにない規模の人数が働く場所を失う。家族も含めれば、のべ500万人以上の家計は一気に困窮を極めるだろう。
生活が脅かされるのは、工場の従業員だけではない。彼らが暮らしていた街も、工場が撤退すればすぐさま経済活動は縮小していく。
たとえば従業員を乗せ、工場まで巡行していた地域バスはなくなり、バス会社が潰れれば、その従業員と家族にもトヨタ社員と同様の運命が待つ。そして近隣の飲食店にスーパーマーケット、病院や福祉施設に従事していた人たちも早晩、生活の糧を失っていくことになるだろう。
完全に経済循環を失った街には失業者があふれかえり、やがて人が住むことのできないゴーストタウンと化していく。
■「第二のデトロイト」が出現
この流れは自治体をも巻き込む。日本最大の「企業城下町」である愛知県・豊田市では、もしトヨタがいなくなれば、自治体としての機能が不全に陥るのは間違いない。
'08年に起きたリーマンショックの影響を受け、トヨタは4610億円の大赤字を出した過去がある。その際、豊田市と工場が点在する田原市の法人税収は9割も減った。法人税を大きな財源とする地方自治体としては死活問題であることは改めて指摘するまでもない。
海外ではGM(ゼネラル・モーターズ)が倒産した際に、デトロイトが事実上の破綻に追い込まれた。このことを顧みれば、豊田市のみならず多くのトヨタ関連企業を有する中京経済圏全体が「第二のデトロイト」となる可能性は十分にある。
ここまでくれば、日本経済全体に及ぼす影響も並大抵ではない。具体的にはどれほどの損失になるのか。
現在の自動車業界の国内経済規模はおよそ52兆円で、そのシェアの半分を握っているのがトヨタだ。関連企業への影響を考えると、少なくとも日本のGDPは20兆円以上、4%も縮小することになる。
もちろん、先述のように工場周辺の雇用環境の悪化も含めると、経済損失はそれだけにとどまらない。トヨタという巨人が沈むことによって、取り返しのつかないダメージを日本は負うことになるのだ。
経済ジャーナリストの片山修氏は巨大企業ゆえにトヨタが抱えるジレンマを指摘する。
「トヨタほどの巨大企業であればすぐに潰れることはほぼないでしょう。ただ、実際のところ企業の規模が大きすぎるのは懸念されるところです。
刻一刻と潮目が変わる自動車業界では、組織が大きすぎるためにイノベーションの波に乗り遅れることがあるかもしれません。それにトヨタは垂直統合型でグループ経営を進めてきた日本型企業の代表ですから、そう簡単に雇用を大幅削減することはできません」
トヨタがおかしくなったら日本経済がおかしくなる――'94年、当時副社長だった奥田碩氏はこのように語っていたという。それから20年あまりが経過したいまも、日本経済はトヨタと一蓮托生の道を歩み続けている。
2028年、日本が経済大国として生き残るためには、トヨタに熾烈な競争を勝ち抜いてもらうしかない。
「週刊現代」2017年10月28日号より
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