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もはや他人事ではない!「パラダイス文書」が示す国民の血税の行方
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171215-00000037-sasahi-soci
AERA dot. 12/16(土) 7:00配信
奥山俊宏(おくやま・としひろ)/朝日新聞編集委員。1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。2011年、米非営利報道組織「ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)」のメンバーになる。パナマ文書、パラダイス文書など租税回避...
日本時間2017年11月6日午前3時。ある秘密文書に基づく報道が世界中で一斉に始まった。「パラダイス文書」。莫大(ばくだい)な内部告発データがつまびらかにしたのは、多国籍企業やセレブとタックスヘイブン(租税回避地)の関わりの実態だ。国際的なジャーナリスト集団の一員としてデータの分析・取材にあたり、著書『パラダイス文書』を緊急出版した朝日新聞の奥山俊宏編集委員に聞く、われわれにとっても他人事ではない実情とは?
――パラダイス文書の反響、影響は?
昨年のパナマ文書の報道の際には、事前にはまったく予想していなかったような大きな反響があって、正直、驚いたのですが、今回のパラダイス文書はそれとは違います。量的には反響は小さいようにも感じますが、質的にはどうでしょうか。まだよく分かりません。
欧州議会で突っ込んだ議論がされていて、おそらく制度改正につながるでしょう。米国の議会でも税制改革が議論されていて、その良し悪しは論者によって真逆でしょうが、法人税率が大幅に切り下げられそうです。
多国籍企業の税逃れや富裕層の財産隠しなどの報道は近年これまで何度も経験していますが、いつも、欧米、特にヨーロッパでは非常に大きな反響があります。今回もそうです。一方、日本はいつも反応が弱い。
というのも、欧米では、国税当局や議会の努力もあって、租税回避によって年間にどのぐらいの税収が失われているのかが明らかにされますし、アップルやアマゾンといった企業の租税回避の実態が公表されたりもします。日本ではそれがない。正直、実態がほとんど見えない。だから、実感も興味も持てないのかもしれません。つまびらかにすることで国民の納税意欲が失われることを危惧しているのかもしれませんが、実態が分からないと、対策を議論できない。議論がないと、対策もない。何となくの不公平感だけが漂っている。それでいいのかなと思いますね。
多国籍企業や大金持ちの話だからよくわからない、庶民である自分とは関係ない――。日本では、そんなふうに他人事に感じている人が欧米以上に多いように感じます。しかし、割を食っているのは中流階級の庶民であり、ふつうの企業であり、一般の納税者なのです。
――どういうことですか?
たとえば、日本でビジネスをする大企業や日本で財産を築いた富豪がタックスヘイブンで税逃れをしたとします。当然、国の税収は減る。すると国はその分を「取りやすいところ」から取ろうとする。どこか? 所得をすべて把握され、税金が給与天引きの会社員は、最たる「取りやすいところ」と言えるでしょう。
2014年に非営利の報道機関「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」が公開した秘密文書「ルクセンブルク・リークス」には、「あおぞら銀行」の名がありました。同行の前身、日本債券信用銀行は1998年に破綻し、損失の穴埋めに3兆円を超える公的資金が投入された。その中にはわれわれの血税も含まれていましたが、一切戻ってきません。その後、アメリカの投資ファンド「サーベラス」が同行の株式の過半を買収し、売り抜けて1千億円超の利益を得ました。その際、サーベラスは、その利益を、タックスヘイブンのケイマン諸島やルクセンブルク、オランダの20の法人や組合を経由させ、日本国外に吸い上げたと思われます。ルクセンブルク・リークスの中にあった文書でそういう経緯を読み取ることができます。この利益にかかる税金を日本では払っていないと関係者は言うの ですが、サーベラスにそれを当てても 、「サーベラスはすべての税法や条約を順守している。日本投資に用いられたストラクチャーは売り手にも、しかるべき当局にも透明だった」という返答です。私はこれに割り切れないものを感じます。
バブル崩壊後に金融機関が次々と破綻し、その損失穴埋めに公的資金が投入されました。それは最終的に血税でまかなわれるでしょう。日本の納税者は金融業界の不始末の尻ぬぐいをさせられたのです。また、この間、預金の金利はほとんどゼロに抑えられています。一般の預金者に入るべき金利が大規模に不良債権の処理に回されています。このようにして、私たち日本の納税者、預金者は他人の損失をかぶって日本の金融システムを守ってきたのです。にもかかわらず、その金融システムを利用 して富を築いた企業や人の一部が、タックスヘイブンにその富を逃している。私はこれを理不尽な話だと思います。
「庶民だけが損している」と言うつもりはありません。まじめに日本で税金を払っている日本の大企業もタックスヘイブンの被害を受けていると言っていいと思います。中国やアメリカの企業がタックスヘイブン(租税回避地)を使った税逃れに貪欲なのに対し、言葉の壁もあり、日本の企業はあまり積極的ではないようです。日本企業には地方税もあわせ三十数%の法人税が課せられるのに対し、海外の多国籍企業が15%しか納税していなければ、日本企業は20%ものハンディを背負わされることになります。国際競争の上で、これはとても大きなハンディです。 このハンディのせいで日本企業が海外の多国籍企業との競争に敗れるということになると、それは日本にとって国家的な損失です。
――正直者や弱いものがバカを見るのはおかしいですね。私たちにできることはあるのでしょうか?
そういう状況を許している制度を改正する必要があり、そのためには、制度改正への世論の盛り上がりが必要だ、と思います。そのためには、もっともっと実態が知られる必要がある。特にパナマ文書以降、そう感じています。
先日、「グローバル連帯税フォーラム」という市民グループと民間税制調査会が共催で「税と正義/パラダイス文書、グローバル・タックス、税制改正」をテーマにしたシンポジウムが青山学院大学で開かれました。私も見にいったのですが、その会場の熱気には驚かされました。「日本人は租税回避地の問題には無関心」とは必ずしも言えなくなってきている、そういう変化があるのかな、と感じました。
かつてタックスヘイブンはなかば野放し状態でした。政治家とか大企業とかお金持ちとか社会的影響力の大きい層がタックスヘイブンをよく利用しているということがパナマ文書やパラダイス文書で分かってきていますが、そういうこともあって、意図的にタックスヘイブンは放置されてきたのかもしれません。しかし、近年、パナマ文書やスターバックスの税逃れなどの報道の影響もあって、租税回避地への対策が急速に強化されてきています。また、多くの多国籍企業は世論を敵に回すのは得策ではないと考え、少なくともポーズの上では、世論が強いアメリカやイギリスでは税逃れをやめ、納税をするようになってきているようです。批判的な世論が強ければ、租税回避はしにくくなり、歯止めになる。一般消費者を直接相手にする企業にとって、イメージダウンは大きな打撃になるからです。逆に言えば、国民がそうした問題に無関心で世論が甘い国では、租税回避されてしまう可能性が高いとも言えます。
もう一つ、世論が後押ししているのではないかと私が考えているのが「内部告発」です。パナマ文書にせよ、パラダイス文書にせよ、法律事務所の内部文書をその意思に反して大量に外に出したのですから、ふつうに考えると、盗みに当たるように見えます。でも、それに対する批判がほとんどない。特にヨーロッパでは、「すばらしい」「よくやった」という称賛の声が上がっている。正当な内部告発のための情報流出は違法性がなく、保護されるべきだという見方が強まっています。例えばタックスヘイブンと関係のある法律事務所などに勤めていて、データを持ち出せる環境にある人がいたとします。そんなとき「間違ったことをしている」という思いに駆られたら、内部告発を好意的に受け入れてくれる世間の風潮は、勇気を与えてくれるはずです。
意を決して内部告発した人が身元を暴かれたり逮捕されたりすることなく、守られることが重要です。近年そうした法整備が進んでいることも、内部告発の増加につながっていると感じています。ちなみに、ICIJのメンバーはもちろん、データを入手した南ドイツ新聞の記者ですらパナマ文書の情報提供者の素性は知らないそうです。
世間が好意的に内部告発を受け入れるようになった背景には、ICIJや私たちジャーナリストが、内部告発者によってもたらされたデータを丁寧に扱っていることもあると自負しています。流出したデータを丸ごとそのまま公開するというような乱暴なことはしません。適切な分析と取材を重ね、相手にも言い分の機会を与え、きちんとした形で社会に提供する。今回のパラダイス文書まで続いた一連の大型金融リークではジャーナリズムの責務も改めて問われていると感じています。
(取材・構成/中津海麻子)
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