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不正のデパート・神戸製鋼所と安倍首相
http://biz-journal.jp/2017/12/post_21596.html
2017.12.06 文=編集部 Business Journal
神戸製鋼所東京本社(「Wikipedia」より)
神戸製鋼所は、かつて安倍晋三首相が勤めていたことで有名だ。首相は10月22日のテレビ東京の選挙特番で、神戸製鋼所で発覚したデータ改ざん問題に関して、「工場では品質を高めていくために、職場で皆、忙しいなかで智恵を出し合い、汗を流していた。それが日本のものづくりの強さだった」と会社員時代を振り返り、「誠実な責任感を取り戻してもらいたい」と語った。
首相は新入社員時代、加古川製鉄所の工程課厚板係に配属され溶鉱炉の現場を経験した。
6月23日、沖縄全国戦没者追悼式に出席した首相は帰路、“里帰り”した。神戸製鉄所を訪れ、川崎博也会長兼社長の出迎えを受け、石炭火力発電所と10月に休止になる高炉を視察した。阪神大震災から2カ月で再稼働にこぎつけ、「復興のシンボル」と呼ばれた施設である。高炉に使われているのと同じ耐火レンガに「神の鉄魂」と揮毫した。
首相は、休止する高炉と独立系発電事業者として国内最大級の発電量を誇る石炭火力発電所を視察。1期後輩の川崎氏にエールを送った。
川崎氏は京都大学大学院工学研究科修士課程機械工学専攻修了。鉄鋼部門一筋で加古川製鉄所の副所長を務めるなど、ものづくりの現場を歩き13年4月に社長に就任した。その経歴から神鋼の本流のようにみえるが、そうではない。神鋼はメーカーでありながら、ものづくり出身者はトップになれなかった。
■安倍首相の社会人の原点
安倍首相は、「私の社会人としての原点」と語るなど神鋼への思い入れが強い。6月23日付時事通信「首相動静」によると、首相は沖縄の平和祈念公園で開かれた沖縄全戦没者追悼式に出席した後、全日空766便で那覇空港を出発した。
「午後4時40分、伊丹空港着。同48分、同空港発。
午後5時23分、神戸市灘区の神戸製鋼所の神戸製鉄所・石炭火力発電所着。視察。川崎博也神戸製鋼所会長兼社長、西村康稔自民党総裁特別補佐同行。
午後6時45分、同所発。
午後7時5分、同区のKOBELCO摩耶ゲストハウス着。川崎神戸製鋼所会長兼社長、西村自民党総裁特別補佐、久元喜造神戸市長と会食。同9時10分、同所発。同35分、神戸市中央区の神戸ピアホテル着」
神戸製鋼のデータ改ざん問題が発覚してから、安倍首相の過去の発言がインターネット上で物議を醸した。
16年3月30日に放送された自民党ネット番組で安倍首相は新社会人に対して「失敗すれば落ち込むが、くよくよせず、糧にする気持ちが大切だ」とエールを送っていたからだ。
同番組で神戸製鋼所の新入社員時代、数値の入力ミスで長さの足りないパイプを大量に製造してしまったエピソードを披露。「クビになるかと思ったが事なきを得た。多少の失敗にめけず、皆さんにがんばってもらいたい」と語った。
その後、ネット上には安倍首相の発言を揶揄する書き込みが相次いだ。
安倍首相は1979年4月、父親・安倍晋太郎氏(外務大臣などを歴任)のコネで神戸製鋼に入社。
1年間はニューヨークに勤務。帰国後、神戸製鋼所加古川製鉄所の工程課厚板係に配属され、溶鉱炉の現場を経験した。数値の入力ミスをしたのは、そのときだ。82年11月、神鋼を退社。政界に転じる。
■総会屋との腐れ縁は長くて深い
神戸製鋼所の不祥事に驚く産業人はいないだろう。「不正のデパート」と陰口を叩かれるほどで、不祥事は今に始まったことではないからだ。
99年には、総会屋・奧田一男氏への利益供与事件が発覚した。翌年3月、金銭提供などの商法違反で元専務ら3人が大阪地裁で有罪判決を受けた。当時会長だった亀高素吉相談役が辞任した。総会屋との腐れ縁は長くて深い。
神戸製鋼所は戦前の大商社・鈴木商店を源流とする名門企業、で1905年の創業だ。戦後、川崎製鉄は千葉県に高炉を建設、住友金属工業は小倉製鋼を吸収合併し、それぞれ鉄鋼一貫メーカーの道を歩み始めた。出遅れていた神鋼は尼崎製鉄(尼鉄)を吸収合併した。
合併後、神鋼社長の外島健吉氏と尼鉄社長の曽我野秀雄氏が対立。曽我野は右翼の巨魁・児玉誉士夫氏のもとに駆け込んだ。児玉氏は外島氏追い落しに力を貸すと約束したが、途中で外島氏側に寝返った。神鋼は児玉氏側が持つ福島県西白河郡の5億円の土地を32億円で買い上げた。児玉氏側への謝礼であった。
この時、総会屋の木島力也氏が児玉氏のダミーとして、神鋼内部に深く喰い込んでいく。神鋼は総会屋の呪縛でがんじがらめになった。「東の木島(力也)、西の奧田(一男)」が神鋼の総会屋といわれた。木島氏の死後は、その後釜に座った小池隆一氏が利権を引き継いだ。
小池氏は空前の金融スキャンダルに発展した野村證券・第一勧業銀行事件の主役である。第一勧銀が木島氏の子分の小池氏につけ込まれたのは、木島氏のバックにいる児玉氏の影に怯えて呪縛が解けなかったからだ。神鋼もまたしかりで、児玉の呪縛に金縛りになった。
「児玉と握手して、社長の椅子を手に入れた」といわれた鈴木博章氏(11代)以来、亀高素吉氏(15代)、熊本昌弘氏(16代)、水越浩士氏(17代)の歴代社長は、総会屋の窓口である総務部長や総務担当役員を経てトップに昇り詰めた。総会屋担当の総務部長が社長への登竜門と皮肉られた。
2006年、神戸、加古川両製鉄所で基準値を超えるばい煙を排出しながら、データを改ざんして自治体に報告していた。
09年には加古川製鉄所、高砂製作所のほか、今回のアルミ製品不正が発覚した長府製造所で、地方議員の後援会に政治資金規正法が禁じている寄与をしたことが明らかになった。当時の水越浩二会長と犬伏泰夫社長(18代)が引責辞任した。
これで文系社長の時代が終わり、理系社長に移る。開発部門出身の佐藤廣士氏(19代)を経て、製造部門出身の川崎氏(20代)が社長に就いた。
13年に川崎氏が社長となってからも、16年にグループの神鋼鋼線ステンレスで、ばね用ステンレス鋼材の試験データを改ざん、日本工業規格(JIS)を満たしているかのように偽装していたことが明るみに出た。
そして今回の検査データの改ざんである。
今年5月、川崎氏は行動規範「KOBELCOの6つの誓い」を公表。「法令、社内ルール、社会規範を遵守することはもちろん、高い倫理観とプロとしての誇りを持って、公正で健全な企業活動を行う」と宣言していたのだからあきれるほかない。
■不正を繰り返す社風
不正のDNA(遺伝子)を持つ神戸製鋼所の信用が溶けていく。10月8日に最初のアルミ・銅製品の不正を公表して以降、毎日のように新たな不正が発覚し、トップの川崎氏の発言も二転三転してきた。
当初、不正は「アルミ・銅製品のみ」としていた。10月12日に報道陣に対し「鉄鋼製品では不正はない」と豪語したが、翌13日の会見で発言を180度訂正し、改ざんがあったことを認めた。出身母体の鉄鋼部門で不正があったのに、正確な情報が上がっていなかったわけで、“裸の王様”であることがあらわになった。
検査データ改ざん問題では、子会社コベルコ マテリアル銅管(益野裕社長)が生産する一部の銅管製品がJISの認証を取り消された。JISは品質のお墨付きのようなものだ。神鋼グループは、この10年で3度目のJIS認証の取り消しとなり、ずさんな管理体制をさらけだした。
川崎氏は10月13日に初めて開いた社長会見で「安全性の検証、徹底的な原因究明が私の使命、進退の議論が出るなら慎重に考えたい」と進退について明言しなかったが、辞任は不可避だろう。
13日の社長会見も経済産業省で12日に取材に応じた川崎氏が「鉄鋼で(不正は)ない」と発言したのが1日でひっくり返ったため、緊急会見となった。
調査対象である川崎氏をトップに据えた品質問題調査委員会に全容解明を委ねられることへの疑問が記者会見で相次いだが、「難局を乗り切るのが先。私がリーダーシップを発揮してやる必要がある」(川崎氏)と反論した。
川崎氏自身に、調査委員会のトップに就くことへの違和感がないのは「問題を起こしたのは現場。経営者の責任ではない」という“おごり”があるからだ、との厳しい指摘がある。品質問題調査委員会での原因究明は、利害関係者を厳密に排除した第三者の手で行われなければ、再び「臭いものに蓋」をすることになるのは誰の目にも明らかだ。
神戸製鋼所が不正を繰り返しているのは、トップを含めて会社全体に「責任の重い製品をつくっている」という意識が欠けているからだ。自動車、新幹線、航空機から飲料のアルミ缶まで、国民生活全体に影響が及ぶということに思い至らない経営者の未熟さが浮かび上がってくる。納入先企業は海外を含めて525社に達するが、社名を明らかにすることを拒んでいる。
■解体は不可避か
神戸製鋼のデータ改ざんは日本のものづくりの信用を傷つけた。市場関係者の関心は「今後のシナリオ」に移っている。
「会社が危ないんじゃないか。あれだけ次から次へと出てくると深刻だ。これから訴訟も起こされるだろう。東芝みたいになるんじゃないか」(経団連の元副会長)
神戸製鋼は鉄鋼、アルミ・銅、建設機械の主力3事業の規模がどれも中途半端。グローバルな競争で生き残るために、経営統合など抜本策を講じなければならない時期に差し掛かっていたのに、独立路線にこだわった。
今回の不正で対策費用は1000億円規模に膨らむ。そのため、独立した経営を続けるのは難しくなってきた。そこで業界再編や事業売却のシナリオが浮上する。
鉄鋼業界は12年に新日本製鐵と住友金属工業が合併して新日鐵住金が誕生した。神戸製鋼は新日鐵住金、JFEホールディングスに次ぐ万年3位だ。JFEは02年に川崎製鉄とNKK(日本鋼管)が経営統合して発足した。
JFEが神戸製鋼獲りに乗り出すとの見方が有力だ。
「神鋼を買収すればJFEは新日鐵住金と肩を並べることができる。神鋼が持つアルミ素材を取り込むことで、軽量化素材として有望な鉄とアルミの複合材事業を強化できる。JFEはアルミ素材を喉から手が出るほど欲しがっている」(同)。JFE、神鋼ともメガバンク3行が融資しているが、みずほフィナンシャルグループ傘下のみずほ銀行がメインだ。
顧客離れが起こり、解体のシナリオが浮かぶ。自動車向け事業に強みを持つアルミ事業が対象だ。アルミ業界では国内首位の古河スカイと同2位の住友軽金属工業が経営統合し、13年にUACJが発足した。
国内のアルミの生産量はUACJがダントツ。2位の神戸製鋼はUACJの半分の規模だ。3位の三菱アルミニウムが買収の手を挙げる可能性がある。三菱アルミニウムは三菱マテリアルの連結子会社。三菱マテリアルと神戸製鋼の銅管事業が統合したのが、JISの認証を取り消されたコベルコ マテリアル銅管だ。
建設機械部門であるコベルコ建機もコマツ、日立建機に次いで万年3位。日立建機の前社長の辻本雄一相談役とコベルコ建機の楢木一秀社長は大阪大学の同窓。日立建機が合併すればコマツの背中が見えてくる。
自動車用の軽量素材に力を入れる繊維や樹脂の異業種もアルミ事業に魅力を感じている。三菱ケミカルホールディングスや、炭素繊維複合材で世界首位の東レが手を挙げるというシナリオを描くアナリストもいる。
神戸製鋼のデータ改ざん問題は、鉄鋼、アルミ、建設機械、さらには繊維・化学業界に新たな再編をもたらすことになりそうだ。
神戸製鋼所の企業体質はまったく変わっていない。不祥事が起こるたびにトップの首をすげ替えてきた。今度も川崎氏が引責辞任して、幕引きを図ることになるだろう。
(文=編集部)
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