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リコーの危機、1万人削減でも赤字転落…コピー機もデジカメも売れない
http://biz-journal.jp/2017/12/post_21597.html
2017.12.06 文=編集部 Business Journal
リコー本社(「Wikipedia」より)
リコーの株価が下落した。10月25日の1182円(年初来の高値)から990円(11月29日)へと16%安くなった。年初来安値(837円、5月1日)が意識されている。2018年3月期の連結最終損益予想を黒字から赤字に修正したため、失望売りが広がったものだ。
18年3月期の業績予想は、売上高を2兆円から2兆400億円(前期比0.5%増)へとわずかに上方修正したが、経営再建中のインド子会社に対する追加の財政支援を打ち切るのに伴い、今後発生する損失額が最大で365億円になるとしたことで、営業利益は180億円から100億円(同70.5%減)、最終損益は30億円の黒字から70億円の赤字(前期は34億円の黒字)へと大幅に下方修正した。
支援を打ち切るのは、1993年に設立した現地販売子会社のリコーインド。リコーグループが73.6%を出資し、複合機の販売や保守サービスを手がけている。17年3月期の売上高は211億円で、税引き前の損益段階で赤字が続いていた。従業員数は900人強で、ムンバイ証券取引所に上場している。
リコーインドをめぐっては、15年11月に監査法人の指摘を受け、利益水増しの不正会計の兆候が発覚。リコーは17年3月期に69億円の損失を計上した。
これまでに増資の引き受けやリコーインド株式の無償消却に応じるなど、財政支援を継続。17年3月末時点で288億円の債務保証をしていた。
だが今年10月、主要取引先の印ITサービス会社が現地裁判所にリコーインドの2度目の会社更生手続きの開始を申し立てた。リコーはグループ全体の損失を限定するため、今後の追加支援を行わないことを決定した。
インド関連では、17年7〜9月期に65億円を回収不能とした。インド子会社の主要取引先に支払った前渡し金だ。リコーがインド子会社に有している債権の総額は300億円に上る。債権が回収できない場合を想定して、18年3月期に365億円の損失を織り込んだとしている。山下良則社長は、リコーインドの法的整理を「ある程度想定している」と述べている。
インド子会社への支援打ち切りによって、リコーは成長市場であるインドの拠点を失い、新興国の戦略の見直しを迫られることになる。
■ドル箱の複写機・複合機が売れなくなった
リコーは複合機のデジタル化やカラー化の波に乗り、1990年代から2008年のリーマンショックまで「野武士のリコー」と呼ばれた営業力で、事務機を拡販。07年に米IBMのデジタル印刷部門を830億円で、08年に米事務機大手アイコンオフィスソリュージョンズを1600億円で買収するなど、世界中に販売網を広げ成長を続けてきた。これがリコーの黄金期だ。
しかし、リーマンショック後、企業が事務機器のコストを見直すと、状況は一変した。売り上げが落ち込み、営業網の拡大で増えた人件費が重くのしかかってきた。そこで11年に国内外で1万人を削減するなど、一転してリコーは冬の時代を迎えた。
リコーの最大の問題は、主力の事務機が低迷していることにある。複写機・複合機は、日本勢が世界シェアの大半を握る分野だ。リコー、キヤノン、米ゼロックス=富士ゼロックス、コニカミノルタ、京セラで8割弱のシェアを誇る。リコーは世界で18.9%、国内で26.6%のシェアを有するトップメーカーだ(米DC調べ)。
しかし、先進国におけるオフイス需要が飽和状態になった上にペーパレス化が進み、事務機市場は縮小の一途を辿っている。
18年3月期通期の見通しでは、複写機・複合機などのオフィスプリンティング部門の売上高は1兆1168億円。全社売上高(2兆400億円)の55%を占めるが、それでも前期比では4%減で、主力の海外は5%減。なかでも米州では11%減と2ケタの減収の見込みだ。複写機・複合機の一本足打法の足元が揺らいでいるのである。
“脱事務機”に向けて、海外でITサービスなど複数の企業を買収したほか、国内でも11年にデジタルカメラのペンタックスを買収した。だが、スマートフォンのカメラ機能を使ってソーシャルネットワーキングサービス(SNS)に写真を投稿するケースが増え、デジカメは売れなくなった。その結果ペンタックス事業は17年4月、100億円の減損に追い込まれた。
インド子会社の365億円の損失が業績悪化に追い打ちをかけるかたちだ。そこで本業と相乗効果が見込みにくい事業を売却することにした。18年3月1日をメドに、アナログ半導体を手がけるリコー電子デバイスの発行済み株式の8割を日清紡ホールディングスに売却する。売却額は非開示。
リコー電子デバイスはスマホ向けバッテリー保護ICに強く、17年3月期の売上高は230億円、5億円の純利益を上げている。
リコーは非中核事業を切り離し、産業印刷やヘルスケアといった成長分野に経営資源を振り向けてきたが、まだ新しい成長の種を見つけられずにいる。市村清氏を祖とする名門・リコーに光明は見えてこない。
(文=編集部)
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