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銀行は万単位の人員削減、一方で未曽有の人手不足…透ける「要らない人材像」
http://biz-journal.jp/2017/12/post_21604.html
2017.12.06 文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表 Business Journal
大手銀行が相次いで大幅な人員削減計画を発表している。みずほフィナンシャルグループ(FG)は2026年までに1万9000人削減、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は2023年度までに6000人削減するという。おそらく他行が追随するのは必至だろう。
■AIに仕事が奪われる未来がすでに始まっている
みずほFGの人員削減は11月20日に発表された構造改革の一環だ。そこでは従業員のみならず店舗も大幅に減らすことを計画している。根底にあるのは、FinTech(フィンテック)の普及などによって「10年後の金融の姿がまったく変わる」(佐藤康博社長)という危機感だ。
みずほFGの現在の従業員数はパートを含めて7万9000人だ。そこから1万9000人を削減するということは、ほぼ4分の1の従業員を削減することになる。同社は、人工知能(AI)などを使って組織のスリム化を進める計画だ。
三菱UFJFGもデジタル技術の活用などで23年度までに9500人分の業務量を削減する方針を打ち出している。同グループは定年退職と採用抑制による自然減だけで23年度までに6000人減らす計画だが、業務削減量からすれば、それでもまだ3500人も余剰になる計算だ。果たしていつまで自然減だけといっていられるのか。
近い将来、AI等の技術によって現在の仕事の大半が奪われるといわれているが、今回の一連の大手銀行の動きは、その近い将来がすでに現在進行形で起こっていることを物語っている。
これは世界規模で起こっている出来事である。米大手銀シティグループの元CEOのビクラム・パンディット氏は9月13日、「銀行の仕事の3割は今後5年間で消滅する可能性がある」と米ブルームバーグテレビのインタビューで語った。「AIやロボットが銀行のバックオフィスを変える。多くの仕事が自動化される」と同氏は指摘している。
■付加価値を生む人手は不足
その一方で、人手不足という声もあとを絶たない。11月27日付日本経済新聞朝刊の1面トップ記事は、人手不足に関するものだ。同記事では「今後の実質国内総生産(GDP)の成長率が足元の潜在成長率並みの0.8%と仮定した場合、女性や高齢者、外国人の労働参加率が現状のままでは2025年に583万人の労働力が不足する」というパーソル総合研究所の予測を紹介している。
「もう人は要らない」と言わんばかりの大幅な人員削減のニュースがある一方で、深刻な人手不足を報じる記事。しかも、それらがほぼ同時期の記事だ。これは一体どういうことなのだろうか。
ここから透けて見えてくるのは、要らなくなるのは言われた仕事をこなすだけの人材で、付加価値を生む人材は不足しているということだ。
それを裏付けるような事実がある。ひとり当たりが生み出す付加価値を労働生産性というが、日本の労働生産性は主要先進7カ国(G7)のなかで万年最下位なのである。しかも直近ではダントツの最下位だ。
こう言うと、「それはおかしい。仕事は山ほどあって、いつも忙しく働いている。これだけ働いているのに、労働生産性がそんなに低いはずがない」と思うかもしれない。
勘違いしてはいけない。「忙しい」ことと「付加価値を生んでいる」ことはイコールではない。付加価値とは価値を生み出すことだ。端的にいえば利益を生み出すことである。それ以外は付加価値活動とはいえないのである。煩雑な社内手続き、それに伴う事務作業や多くのペーパーワーク、何かと行われる会議、そのどれもがほとんど付加価値を生んでいない。
たとえば営業にとってもっとも付加価値のある活動はお客様と会うことだ。営業はお客様に会ってナンボだからである。さて、貴社の営業がお客様と会っている時間は全就業時間の何%だろうか。私は今まで多くの人にこの質問をし、実際に調査をしたこともあるが、その時間比率はほとんどは20〜30%にすぎない。それで忙しいというのは、努力の方向性を明らかに間違っている。そういう働き方は自己満足にすぎない。
昨今の「働き方改革」は、やれ残業を減らせだとか有休をもっと取れだとか、ほとんど「休み方改革」のような議論ばかりが目につくが、「付加価値活動の割合を高める働き方に変える」という意味での働き方改革の議論をもっとすべきだ。そうでなければ、本当に多くの人がAIやロボットに取って代わられる人材になってしまう。
(文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表)
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