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2割の医療機関で訪日外国人患者の医療費未払い、回収は困難
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171203-00000005-pseven-soci
SAPIO2017年11・12月号
外国人の激増に医療現場は対応しきれていない 時事通信フォト
中国人観光客を筆頭に日本を訪れる外国人が増え続ける中、医療現場では外国人患者をめぐるトラブルが起きている。最近目立つのが、旅行中にケガや病気で病院を受診した観光客による医療費の“踏み倒し”だ。ジャーナリストの西谷格氏がレポートする。
* * *
都内の病院関係者が、ため息混じりに言う。
「足の骨を複雑骨折した中国人女性を治療した際、入院中に保険証の提示を求めたら口ごもり、スタッフが目を離した隙に松葉杖のまま逃げられてしまったことがあります。約170万円の入院・治療費がかかっていました」
いま日本の医療現場は、外国人患者による医療費の“踏み倒し”などさまざまなトラブルを抱えている。
関西の空港近くにある病院では、観光目的で来日し心臓病を発症した中国人男性(当時72歳)に対し、緊急手術を実施。男性はその後死亡し、同行していた妻に手術代などの治療費を請求することになったが、ほぼ全額の660万円が未払いのまま踏み倒されてしまった。
訪日旅行中に病院を受診した中国人患者の中には会計時に「もっと安くして」と値切る者が珍しくなく、「金儲けのために本来は必要ない検査をして治療費を釣り上げたのだろう!」と窓口で声を荒げ支払いを拒むケースすらあるという。
中国国内の病院は先払いが原則で、支払いを済ませないと治療を受けられない。診療後に費用が請求される日本とは仕組みや考え方が180度異なるため、かの国の人々が日本の病院を受診すると、当然のようにトラブルが起きるのだ。
医療費をめぐるトラブルは日本を訪れる外国人観光客の3割近くを占める中国人のケースが目立つが、他の国からの旅行者のケースも報告されている。
関東のある病院では、腹痛を訴えるメキシコ人男性にレントゲンやCT検査をしたが、終了後に「お金がない」と言われ約3万円を踏み倒された。関西では緊急搬送されたトルコ人が約60万円の医療費を払わずに帰国した例もあった。
近畿運輸局が今年3月に発表した調査によると、大阪府内の147の医療機関のうち、約2割の医療機関が訪日外国人患者の医療費未払いを経験している。こうして踏み倒された医療費の回収は困難を極め、ほとんど泣き寝入りするしかないのが実情だ。通訳を呼んで国際電話で催促しても効果は薄く、母国に“逃亡”されるとお手上げに近い。
国際医療福祉大学大学院の岡村世里奈准教授が解説する。
「外国人観光客の多くは保険証を持たない無保険状態で、しかも日本語ができない。日本の医療機関にとって、今まで経験したことのないタイプの患者です。旅行客の増加に伴い外国人患者が急激に増え、どの病院も同じような問題を抱えています。診察前に概算金額を提示するなど、対策が必要でしょう」
政府目標は2020年に外国人観光客数4000万人を掲げている。医療現場は対策を迫られている。
【PROFILE】西谷格●1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、地方新聞の記者を経てフリー。2009年から上海に渡り週刊誌などで中国の現状をレポートした。2015年日本に帰国。著書に『この手紙、とどけ!』(小学館刊)など。
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