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景気のよさを実感できない理由は「勤労統計と求人倍率」で分かる
http://diamond.jp/articles/-/151581
2017.12.2 三井住友アセットマネジメント 調査部 ダイヤモンド・オンライン
「景気がいい」のは本当か
「毎月勤労統計」に注目
皆さん、こんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。11月11日から、毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。
好景気が続いていますが、その「実感がない」という声も多いようです。今回は、日本の勤労者の給料や就労状況が分かる「毎月勤労統計」に注目し、「実感なき景気拡大」の実態をご説明します。
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11月上旬に「日本経済の景気拡大がいざなぎ景気を超えた」というニュースを目にした人もいるのではないでしょうか。これは、今年の9月分の経済データが出そろい、2012年12月から続く景気回復が戦後2番目の長さの景気拡大局面になった事が確定したというものです。それに歩調を合わせるように、日経平均株価は25年ぶりの高値をつけました。
しかし、マスコミ報道では、多くの人が「実感がない」と言っています。
確かに、デパート、スーパー、コンビニなどの消費者に身近な小売業の売り上げは盛り上がりに欠けていて、消費者の心理はそれほど前向きではないことがうかがわれます。
10月の業界統計を見てみると、デパート、スーパー、コンビニのいずれもが、前年と比べて売り上げが減少しました(いずれも既存店の売上を比較したもの)。
10月は週末に大型台風が襲来しましたが、天候の影響を受けにくいと言われるコンビニも数字が弱いものとなりました。このことから、天候の影響はあまり大きくなかったと可能性もあります。
消費関連でプラスの数字が見られるのは、海外からの観光客(インバウンド)関連か、株高によって儲けた人が高額品消費をするなど、比較的狭い範囲に限られています。このように、消費関連のデータを見ると、「実感なき景気拡大」がよく表れていることが分かります。
では、「経済全体の好調さ」と「人々の実感」との乖離はどこから生じているのでしょうか。そのヒントが、「毎月勤労統計」にあります。
企業は賃上げと増員の
どちらを優先しているか
「毎月勤労統計」は、厚生労働省が集計している賃金、労働時間及び雇用の変動に関する統計です。従業員が5名以上いる企業等への調査に基づき、速報値が毎月初旬に発表され、20日過ぎに確報が公表されます。
この統計により企業等で働いて賃金を得ている人々の「雇用者数」(※)や、「一人当たり賃金」(※)の推移が分かります。また、一人当たり賃金と雇用者数をかけたものは「雇用者所得」(※)と言われ、大まかに言えば企業が雇用者に支払っている賃金の総合計になります。
※「雇用者数」「一人当たり賃金」「雇用者所得」は、説明を分かりやすくするために金融市場関係者間でよく使われる言葉として「 」表示としています。「毎月勤労統計」での正確な表現ではありません。
本稿執筆時点の11月30日時点で確報値が発表されているのは9月分ですが、これによると、「一人当たり賃金」は前年比0.9%伸びていて、「雇用者数」は同2.7%の伸びとなっています。
このデータから、企業は一人当たりの賃金を上げるよりも、より多くの労働者を雇うことを優先しているように見えます。なお、雇用者全体の賃金である「雇用者所得」は前年比3%台後半で伸びています。
一人ひとりの景気などに関する感じ方で、より大事なのは自分自身の賃金、すなわち毎月勤労統計では「一人当たり賃金」の項目でしょう。これが前年比でわずか+0.9%の伸びに留まっているので、賃金が上がっているという実感は得にくいと思われます。
なお、この金額は所得税や社会保険料を差し引く前の数字ですので、手取り金額が上がっている実感はさらに乏しくなる可能性があります。また、物価も緩やかに上昇しているため、インフレを引いた「実質賃金」で考えると、今年はゼロ近辺をうろうろしています。これでは、景気拡大の実感が湧かないのは当然です。
一方、マクロ経済は、日本全体で見た数字を基準に経済指標を作りますし、また、株式市場は、数多くの企業の業績動向に左右されるため、いずれも重視されるのは全体の賃金を表す「雇用者所得」です。この数字が伸びれば、日本のGDPの6割弱を占める消費が増加し、GDP全体を押し上げ、企業の業績も伸びるので、株価に対する追い風となります。
以上のように考えると、現在の景気拡大局面において、一人ひとりの実感が伴わないにもかかわらず、経済統計の数字は堅調だったり、株価が上昇したりする理由が分かります。
では、企業業績は大変好調で、人手不足も問題になっているのに、なぜ一人当たり賃金が上がらないのでしょうか。
各種報道によると、来年の春闘も労働組合からの要求はベースアップ(基本給の引き上げ)が1〜2%、年齢に応じて給料が上がる定期昇給分を含めて3〜4%程度の賃上げを要求する模様ですが、妥結は、ベースアップと定期昇給をあわせて前年比で2%程度にとどまると見られています。
今年度の東証一部上場企業(除く金融)の利益が、前年度と比べて15%程度は伸びるのではないかと見込まれていることと比較すると、かなり低い伸びとなりそうです。
改めて「毎月勤労統計」を見てみると、「一人当たり賃金」が伸びている区分があることに気が付きます。それは、「パートタイム労働者」の毎月定期的に支払われる給料の時給です。前年比2%台の伸びとなっていて、先述の「一人当たり賃金」の伸びが前年比で0.9%であるのに対して、倍以上伸びていることが分かります。
ここから推測できるのは、企業は長期的な雇用を重視しているために正社員の賃金を簡単にはアップしないということと、短期的に企業の業績が良くなっても、将来的な業績の悪化の可能性に備える傾向があるため、現時点ではその恩恵は従業員の一部(パートタイム労働者など)にしか反映されていないということです。少なくとも、人手不足だからといって、簡単には辞めづらい正社員の給料をアップさせるケースは多くはなかったようです。
パートの時給は上昇中だが
正社員の給料アップはまだ先
ここで、厚生労働省が別の統計で発表している「有効求人倍率」を参考に、正社員の労働需給の状況を確認してみましょう。
「有効求人倍率」は、大まかに言うと、企業からの求人数(=労働需要)を職を探している人の数(求職数=労働供給)で割ったもので、1倍を超えると人手に対する需要が供給を上回ることになります。
全体の有効求人倍率の全体数字は今年10月で1.55倍なので、かなり人手不足が深刻な状況です。これは、90年前後の日本のバブル期よりも高く、1970年代に次ぐ高さで、日本全体で人手不足感が強いことを示しています。
10月の「有効求人倍率」の内訳をみると、正社員が1.03倍、パートタイムは1.80倍でした。このことは時給が高く伸びていることからも分かります。どうりでパートタイムの人手不足感が特に強いわけです。
正社員の有効求人倍率は、パートタイムのそれを大きく下回っていますが、これでも回復の途中です。というのも、正社員の「有効求人倍率」は、今年の5月までは1倍を下回っていて、つい最近まで若干の人手余剰の状況でした。これでは、今まで正社員の賃金が上がらなかったのも当然です。しかし今は、正社員も人手不足の状況になりつつあるようです。
このまま好景気が続けば、正社員の「有効求人倍率」が上昇し、賃金が明確に上がりだす可能性はあります。その時には、「実感がない」という声も自然と消えていくのではないでしょうか。
(三井住友アセットマネジメント 調査部長 渡辺英茂)
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