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キツい仕事の代表格「宅配便」が成長産業になる理由
http://diamond.jp/articles/-/150981
2017.11.28 真壁昭夫:法政大学大学院教授 ダイヤモンド・オンライン
世の中で最も忙しそうに働く
宅配サービスの担当者
今、世の中で、最も忙しそうに働いているのが宅配サービスの担当者だ。いつも、山のように小包を積んだ荷車を押して疾走している。それだけ、宅配サービスに需要があり、物流が現在の社会のなくてはならないインフラになっていることがよく分る。
物流業界の活況については、人手不足にフォーカスする報道が多い。多くのケースで、「人手不足でやむなく料金引き上げ」という論調が目立つ。そうした報道は、「企業が十分な労働力を確保できない」という、どちらかというと“悲観的なニュアンス”を含んでいる。
しかし、逆に考えると、人手が不足するほどの需要が集中しているということは、今後、当該分野の成長余地が大きいことともいえる。
そう考えると、「人手不足で宅配業界が危機的な状況」というよりも、むしろ、今後、一段と進むであろうと予想されるネット社会においては、物流ビジネスはなくてはならない必須の産業と考えた方がよい。
そうした状況下、これから物流業界は、先端のAIやIoTによる配送の効率化、さらにはドローンによる配達の省力化等を志向することになるはずだ。
物流は、これからの世界を制する産業になる可能性は十分にあると考える。
物流業界が直面する
急速な需要拡大
今、宅配便をはじめとする物流業界が、過去に例を見ないほどの需要の拡大に直面している。それは、冒頭に述べたように「日常のありふれた風景」を思い浮かべれば容易にイメージできる。
住宅街を歩いていると、ヤマト運輸や佐川急便をはじめとする宅配サービスの従業員が、台車(荷車)に荷物を山ほど載せて配達に勤しんでいる。どの配達人も、のんびり荷車を押して歩いていない。ほとんどの人が走っている。それも息が切れるほど、どの人も忙しい。
寒空の下でも汗がにじむくらい走り回らなければ、その日の荷物をさばききれないのだろう。これこそが、「宅配サービスの需要が拡大している」という状況を如実に示している。
実際、アマゾンなど有力なネット通販が増えた結果、多くの消費者の消費行動が変化している。通販で購入した商品は、宅配便を通して届けられることが多い。そのため、想像を絶するほどのスピードと規模で宅配荷物の取扱量が増えた。
わたしたちの日常を振り返っても、それは明らかだ。生活必需品をはじめ、生鮮食品、書籍、家電など、さまざまな品物をネット経由で購入することが普通になっている。そのマグニチュードは、既存の労働力での宅配能力を大きく上回っている。
アマゾンなどネット企業の影響は大きい。
9月には、米国の玩具大手トイザラスが“連邦破産法11条=チャプターイレブン”(わが国の民事再生法に相当)を申請した。例年、同社はクリスマス商戦で収益の大半を確保してきた。その前の決定であることが、消費者の行動が変化する中、対面販売を中心にした同社の既存ビジネスモデルでは対応しきれなかった現実を示している。
今後の物流業界の
重要性と将来像
ネットを通じた品物の購入では、売買の契約と資金のやり取りはネットを通じて行うことが可能だ。しかし、実際に品物を購入者に届けるためには、宅配便などの物流が欠かせない。ネット社会が成立するためには、物流が不可欠なのである。
これから「物流が世界を制する」ことになりそうだ。アマゾンが自前で物流事業を強化している背景にも、人々が必要とするモノを提供するためには、ネットと物流の両輪を強化しなければならないという発想がある。
円滑で効率的な物流が機能することで、ネットというバーチャルな空間での取引が、リアル=実生活の向上を支える。物流がなければ、それは困難だ。便利で効率的な物流システムが、需要獲得には欠かせない。
ただし、物流産業がチャンスを生かすためには、効率化や省人化を積極的に進めなければならない。既に、物流に関しては様々な研究が行われており、AI(人工知能)やIoTなどの活用によって、物流システムの効率化が可能になっている。
具体的に、物流の近未来型をイメージすると、例えば、ある宅配事業者の物流センターには人気(ひとけ)がない。動いているのは、ロボットだ。宅配地域ごとに並んだトラックに、ロボットは荷物を積む。積み込みが終わると、先頭のトラックだけに運転手が乗り、その後を自動運転システムで制御された車両がついていく。
各地区には、宅配の基地(ハブ)が設置されている。このハブから最終目的地までを人力で配達する。何台ものトラックを人間が運転する必要はない。また、ドローンを使えば、ハブから先の宅配業務も省人化できる。
その他、駅などに宅配ロッカーを設置するなど、物流の仕組みを変えるだけでも効率化・省人化は可能だ。物流業界にとって省人化に関する技術の開発などは、今後の競争力を左右する“コア・コンピタンス”となる可能性がある。
グローバル規模で進む
“物流革命”
国内だけでなく、世界各国でも物流の効率化・省人化は進んでいる。新興国などの需要を取り込むために、企業の海外進出は強化されていくと考えられる。加えて、工場などの生産現場では“IoT=モノのインターネット化”が進んでいる。そうした先端技術を活用して、多くの企業がグローバル規模で操業のレベルや製品の需要の動向をタイムリーかつ正確に把握しようとしている。
グローバル規模でモノの物流を管理するためには、複数の場所で逐次データを入力し、それを本社部門、各地の生産拠点、物流のハブなどで共有する必要がある。この目的を達成するために、分散型のネットワークシステムである“ブロックチェーン”が注目されている。
ブロックチェーンを活用し、ネットワークがルーティン的な事務作業をこなす実験も行われている。それが物流に組み込まれれば、国際空港に物流の一大拠点=ハブを設けてロボットによる在庫管理を行い、その情報をもとにしてネットワークシステムが生産指示を出すことも実現するかもしれない。それは、“物流革命”と呼ぶべき変化だ。
わが国の物流業界は人手不足の深刻化によって変革が進みつつあり、物流革命のフロントラインに差し掛かっているとも言える。人手不足にもかかわらず物流への需要が高まっているということは、省人化を推進する社会的なエネルギーが高まっていると考えるべきだ。その機会をうまく活用して企業がイノベーションを起こし、成長率を高めていくことはできるはずだ。
「人手不足で大変だ」、「人手不足で需要が取り込めない」と悲観するだけではそうした発想を見出すことは難しい。宅配需要が拡大する中、それを取り込んで成長につなげることこそが重要だ。
年末商戦を控え、ヤマトが時給2000円でパートを確保しようとしている地域もある。それほど、宅配への需要は堅調だ。この状況を活かして省人化を進めることができれば、より明るい物流業界の将来が描けるかもしれない。
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