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古賀茂明「商工中金スキャンダルが示した安倍総理に『改革』はできないという事実
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171119-00000013-sasahi-bus_all
AERA dot. 11/20(月) 7:00配信
著者:古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者...
「商工中金」と言えば、ほとんどの人がどこかで目にしたり耳にしたりしたことがあるのではないだろうか。政府と民間団体が共同で出資する唯一の政府系金融機関「商工組合中央金庫」の略称だ。
多くの政府系金融機関は融資や出資に特化した機能を持つのに比べ、商工中金は、預金の受け入れ、債券の発行、国際為替、手形を通じた短期金融など、「幅広い総合金融サービス」を行っている点で民間金融機関に極めて近い性格を有している。今は販売されていないが、「リッショー」「ワリショー」などの債券はよく宣伝されていたので、その広告を目にした方も多いだろう。
この商工中金による不正が発覚したのは昨年10月のことだった。商工中金が、融資実績を上げるために、融資先の業績などを改ざんしていたことが判明したのだ。
不思議なことに、その改ざんは、通常の粉飾などとは逆で、実際は、融資先の業績が良いにもかかわらず、あたかも業績が悪いように見せるための改ざんだった。
その後の調査で、不正はほぼすべての支店で行われたことがわかり、トップの安達健祐社長が辞任を発表するなど、全職員の2割にあたる約800人が処分の対象となった。まさに会社ぐるみの暴走だったのだ。
■国民の災難は経産・財務両省にとっての「幸運」
1936年に設立された商工中金は、冒頭に書いた通り、業務内容が極めて民間金融機関に近く、「民業圧迫」という批判が常になされてきた。そのため行財政改革の一環として小泉改革でやり玉にあがり、将来の民営化方針が決まった。それを受けて、2008年に特殊会社に改編され、その後、5〜7年を目処に政府出資を減らし、最終的には完全民営化される予定だった。
もちろん、その方針に経済産業省は大反対だった。商工中金は、経産省の歴代次官がトップに就く最優良天下り先だったからだ。
小泉内閣は、その反対を押し切って、民営化に舵を切り、トップに民間人を持ってきた。同時に、他の政府系金融機関、日本政策投資銀行、国際協力銀行、日本政策金融公庫についてもトップを民間人として、財務省次官級OBの天下りを止めた(ただし、いずれの機関も、副社長は天下りということにして財務・経産両省に配慮していたことはあまり知られていない。
その後、小泉政権が終わったころから、両省は天下りポスト復活を狙って、虎視眈々とその機会をうかがっていた。民主党政権では天下りポスト奪還はならなかったが、国民が気づかぬ間に民営化方針撤回に向けて大きな実績を上げた。
その過程で官僚たちが利用したのが、リーマンショックや東日本大震災という大規模な外的ショックだった。経産省は、中小企業への公的金融支援の必要性が高まったとして、2度にわたって商工中金の完全民営化を先送りさせ、今や民営化が実施されるかどうかも極めて怪しい状況にまで持ってくるのに成功した(財務省も同じ手口で彼らの系列金融機関の民営化を先送りさせている)。国民にとっての大災難が彼らにとっては天からの贈られた幸運だったのである。
では、何故、役所がそこまで民営化に反対するのだろうか。
それは、完全民営化されると、役所が人事に直接介入するのが難しくなり、天下りを好きなようにすることができなくなるからだ。だからこそ、民営化阻止は、役所にとっては至上命題なのである。
ちなみに、商工中金の民営化が2度も先送りになった背景には、経産省だけでなく、自民党族議員の思惑もある。民営化されれば、族議員は、その融資について口利きがしにくくなる。逆に、政府機関として経産省の下にあれば、いろいろと圧力をかけたり便宜供与を受けたりということがしやすいのだ。
民営化をほぼ止めることに成功した経産省は、第2次安倍政権になって商工中金の社長ポストを次官OBの天下り先として奪還することに成功した。安倍政権は、前に述べた四つの政府系金融機関のうち日本政策投資銀行以外の三つの政府系金融機関で、財務省や経産省の次官級OBの天下りを復活させたのだ。これは、安倍政権が両省の協力を得るために行った取引だったと考えられる。
■美しいストーリー演出のために使った禁じ手
以上のような構造を理解すれば、何故今回のような不祥事が起きたかがわかる。
民営化を遅らせて天下りを温存するには、政府系金融機関としての存在意義を示さなければいけない。当然、トップは実績を求めて現場にハッパをかける。とりわけ、民営化阻止の口実である、「危機の時には中小企業のための政府系金融機関が必要だ」という「錦の御旗」を明確にするために、「危機対応融資」の融資先を増やし、その融資実績を大幅に拡大したのは、ある意味当然の成り行きだった。
「リスクが高い」と尻ごみする民間銀行に代わり、最後の貸し手≠ニして「不運にも危機に陥った」中小企業に低利の資金を融資して、その企業が苦境を脱していく。そうした「美しいストーリー」を実現するためだからこそ、発生した収益減については、最終的に国が出資をして補填するというスキームが認められ、それが商工中金の存在意義を示すことになる。
その原資として商工中金が国に要求した予算は12年度だけで、何と1兆5千億円を超えた。巨額のビジネスだ。
しかし、予算があるからそれだけ巨額の融資ができるかと言うと、実はそんなに甘くはない。なぜなら、やみくもに実績を上げようとすると、危ない企業への融資が増え、焦げつきも増大する。企業の再生につながらず、損失だけが膨らめば、単なる税金の無駄遣いだということになり、それはそれでトップが責任を問われる。そんな事態は防がなくてはならない。まさにディレンマに陥るわけである。
そこで、商工中金は優良企業を“資金繰りに困っている会社”に見せかけ、そこに融資するという禁じ手を使ってしまった。これなら貸し金が焦げつくリスクを抑えつつ、「危機対応融資」の美しいストーリーを演出することができる。
中小企業の生き残りを助けるための金融機関なのに、自分の組織と親元の役所の生き残りのために「危機対応融資」を悪用するとはまさに本末転倒と言うほかない。
■予想通りの「民業圧迫」の実態
今回明るみに出た優良企業への低利融資は、当然、官による「民業圧迫」だ。本来なら、優良企業は民間の金融機関から借金をすればよいのだが、「危機対応」を装えば、民間よりも低い金利を提示できるため、商工中金が民間から優良顧客を横取りすることも可能になる。
果たせるかな、11月17日付の産経新聞や地方紙が報じた全国地方銀行協会(地銀協)の調査によれば、民間から融資機会を奪うなど政府系金融機関が民業を圧迫した例が424件あったことが判明した。税金で一部負担する利子補給を活用し、最低で地方銀行の3分の1程度の低い金利を提示していたこと、優良顧客を商工中金が民間銀行から横取りしたケースなども報じられた。中には不正発覚後にも横取りセールスをしていたケースまで報告されたという。
経産省は、とりあえず、現社長をクビにして、次期社長には民間人を充てる方針だ。しかし、そんなことでお茶を濁して終わりということではいけない。
やるべきこと、すなわち「改革」は3段階で行えばよい。
第1段階は、今回の不祥事の徹底究明と責任者への厳格な処罰だ。今の社長が辞めるだけで終わらせては、全く的外れな結末になってしまう。現社長の安達氏は私もよく知っているが、そんなに暴走するタイプではない。社長になった時は全社で不正が蔓延していて、ほとんど当たり前のように行われていたようだ。問題は誰がこれを始めたかだが、私は、不祥事が広がった時期に副社長、社長の任にあった元経産事務次官の杉山秀二氏こそ、最大の責任者だと考えている。当時のトップとして業績を上げろと現場にプレッシャーをかけたことはなかったのか。コンプライアンスの体制を十分に整えていたのか。そうした点について十分な取り調べが必要だろう。たまたま問題が発覚した時の社長の首を切って終わりにしてはならない。再発防止には、杉山秀二前社長にも退職金返納などを求めるべきだと思う。
第2段階は、他の政府系金融機関についても同様の問題がないかを調査することだ。ここまで述べた商工中金の民業圧迫と民営化の問題、さらには経産省の天下りを含めた複雑な利権の問題は、実は、財務省と日本政策金融公庫(日本公庫)や他省庁とその傘下の政府系金融機関にも当てはまる。
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