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日本ゼロ成長、中国6%成長が続いたら、2025年に何が起きるか このままいけば中国だけでなく…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53401
2017.11.17 村上尚己 現代ビジネス
続く中国経済への期待
中国では10月18日に第19回共産党大会が開幕、25日まで行われた。5年に1度行われる中国政治の権力シフトを象徴する大きなイベントである。これまでの習近平総書記(国家主席)が進めてきた腐敗防止運動などの政治闘争を通じて、同氏による権力掌握が進んでいる、という見解がメディアで散見される。
毛沢東、ケ小平と「同等の格」のリーダーとして習氏が君臨する方向性がはっきりした、との見方もメディアで報じられている。
筆者には、こうした見方が妥当であるかを判断する中国政治に関する深い知見はない。ただ、金融市場においては、2016年半ばから中国経済への期待改善が続いている。例えば、MSCIエマージング・マーケット指数というインデックスでみると、2017年初から10月後半までに中国を含めた新興国株は約25%と大きく上昇、米日などの先進国株式のパフォーマンスを上回っている。
新興各国において政治経済事情がそれぞれ異なるが、新興国株全体の方向性に、中国の政治経済動向が一定程度影響しているのが実情である。
2016年前半に中国が人民元の大幅切下げを余儀なくされるとの懸念が高まった時、市場参加者の新興国に対する見方は悲観方向に振れすぎた。当時、私たちは人民元の切下げを当局は行わないと楽観的に見ていた。その後、中国経済が、経済対策で安定を保っているとの認識が強まると、市場心理は改善に転じた。
実際には中国経済について明るい兆候はあまりないように思われる。ただ、かつてのような高成長ではないにしても、経済の安定が続くことで2016年までの行き過ぎた悲観が後退し続けていることが、2017年の新興国株ラリーのドライバーになっていると考えられる。
今回の共産党大会を通じて、習近平率いる政治体制に揺るぎがない、あるいは習氏のリーダーシップが強まったことが確認されたが、これを悪材料とする見方は金融市場においては少数派とみられる。
なお、私たちは今回の共産党大会が金融市場へ及ぼす影響は中立とみており、中国経済は2018年に緩やかに減速すると予想している。
■中国経済の規模、日本経済と比べてみると…
中国経済の重要性を考えるために、経済規模について日本と比較した数字を確認してみよう。IMF(国際通貨基金)のデータによれば2016年時点で、日本の名目GDPが4.9兆ドル、中国の名目GDPが11.2兆ドルとなっている。
これが正しいとすれば、日本との対比で中国は2.3倍の経済規模を持っていることになる。もちろん、中国のGDP統計はしっかり整備されておらず、また統計を作成する地方政府がGDPを水増ししているとの報道も多い。
IMFによるデータも中国の政府統計から作られており、中国のGDPが本当に11.2兆ドルあるのかの疑念を、私を含めたプロの投資家は持っている。一方、これが実際にどの程度過大推計されているかは、誰もわからない。
参考までに、米国の名目GDPは同じ2016年時点で18.6兆ドルと、日本の3.8倍の規模となっている。中国経済の正確なGDPは分からないが、米国(18.6兆ドル)と日本(4.9兆ドル)のほぼ中間に位置するというのは、相応ではないかと筆者は考えている。
実際に、世界経済そして国際商品市況の需給構造に、2000年代から急成長してきた中国経済が及ぼす影響は大きくなっている。例えば、2010年頃まで原油価格が1バレル100ドル前後の高値を維持していたが、原油価格が2014年末から半値以下に急落した。
これにはいくつか要因があるが、最大のエネルギー消費国のひとつである中国の経済成長率が長期的に低下し続け、需給バランスが緩むとの見方が広がったことがある。
そして、2016年前半から原油や銅などの商品市況のリバウンドが始まったが、これは中国経済への懸念が低下したタイミングと同じである。
つまり、中国経済への期待が反映される国際商品市況は、株式市場と同様に世界経済の先行指数として、投資家にとって重要なシグナルとなっている。
GDP統計の正確性が疑問視される中国経済について、今後のGDPの想定をしても仕方ないかもしれないが、私たちは2018年にはGDP成長率は6%前後まで低下すると予想している。なお、2019年以降は、どの程度中国経済が減速するかを議論するには至っていない。
ただ、上海などの都市部では先進国へのキャッチアップが終了する段階となる中国経済は、2020年代にかけて他の新興国と同様に4〜5%前後の成長率に徐々に減速していくと筆者は考えている。
2016年時点で中国の経済規模は日本の2.3倍の規模だが、国全体の経済規模の差は、軍事力など国際政治力学にも直結する。そう考えると、2010年前後以降中国からの強硬な対外政策が目立つのは、2010年頃までの経済成長の帰結と言えるだろう。
今後の日本の安全保障外交政策の方針を考える上で、経済成長を続ける中国とどのように戦略的に対峙していくかが、もっとも重要になってくるのではないだろうか。
■日中経済格差はどうなっていく?
それでは、中国と日本の経済規模の格差は、今後どうなるのか。以下では、中国と日本の経済成長率について、かなり慎重な数字を想定してみる。
具体的には、(1)中国は実質GDP4%、インフレ率2%、つまり名目GDP6%で伸び続ける、(2)日本は過去20年余りと同様名目GDPがゼロで伸びない、という想定である。なお、これは筆者による投資家としての予想ではなく、将来を想像する頭の体操として、両国ともに控え目に想定していることにご留意いただきたい。
実際には、中国の実質GDP成長率は2018年も6%台を保つとみられ、過大推計となっている分があるとしても、慎重な想定であることはご理解いただけるだろう。
2017年から2025年にかけて上記の想定のように日中経済の経済成長率が推移すると、中日の名目GDPの格差は現在2.3倍から、2025年の近未来には3.5倍まで拡大する。日本の隣国の中国は、3〜4倍の経済大国となる。
今の米国と同規模の経済、軍事力を持つ国が隣に登場するわけだ。米国一辺倒ではなくなり、日本の外交、軍事政策は大きく変わらざるを得なくなるだろう。
■一人当たりGDPは日本のほうが上だが…
一方で、国民の経済的な豊かさは、国全体の経済規模ではなく、「一人当たりGDP」でみるのが妥当だ。2016年時点の一人当たりGDPは、日本が3.9万ドル、中国が0.8万ドルと日本のほうが5倍高い。
現状、中国は経済・地理的な規模が大きく、そして都市部と内陸部にきわめて大きな所得格差があるため、平均的な中国人の経済的な豊かさはかなり低い。既に、上海などの所得水準は日本を含めた先進国と変わらないが、取り残された地方の農村部は相当の貧困状態であることを意味するわけである。
先ほどの頭の体操と同様に、今度は、一人当たりGDPについて、2017年以降中国5%、日本0%で伸びないという「中国楽観、日本悲観」の想定を置いてみよう。すると、2049年には一人当たりGDPベースでも、中国が日本を追い抜くことになる。
これは、かなり極端な想定である。ただ、日本は1990年代半ば以降過去20年以上にわたり、経済政策の失政によって先進国の中でも突出して「一人当たりGDP」が停滞してきた。
具体的には、日本は1990年代半ばまで、米国よりもやや高い水準の一人当たりGDPを保っていた。ところが、1990年代後半にデフレが定着すると状況が大きく変わる。
他の先進国では一人当たりGDP水準は上昇基調をたどるが、日本はまったく上昇しなくなり、2000年前後から、米国、香港、オランダ、台湾、ドイツ、フランスなどにつぎつぎと追い抜かれた。2010年半ばからはやや持ち直し、2016年時点ではフランス、英国と肩を並べる約4万ドルの所得水準となっている。
日本以外にGDPを伸ばした米国はほぼ6万ドルで、1995年から2倍に高まっている。かつてはほぼ同水準だった日本は1.3倍しか伸びず、日本の一人当たりGDPは現在、米国の7割程度にとどまっている。米国だけではなく、ドイツなどほとんどの先進国は、過去20年で約2倍まで所得水準を高めている。
2016時点で日本より一人当たり所得水準が低い主要国は、韓国、スペイン、イタリア、ギリシャなどがある。韓国は1990年代半ばには1万ドルの低水準だったのが、過去20年で約3倍と急ピッチでGDPが伸びており、日本に追いつくのは時間の問題かもしれない。
このように、過去20年日本経済がたどった「黒歴史」を振り返ると、2050年には、一人当たりGDPでも中国に追い抜かれることも、ありえないことではないと筆者は考えている。
村上 尚紀 アライアンス・バーンスタイン株式会社マーケット・ストラテジスト。1971年生まれ。1994年東京大学経済学部を卒業後、第一生命保険に入社。その後、日本経済研究センターに出向し、エコノミストとしてのキャリアをスタートさせる。第一生命経済研究所、BNPパリバ証券、ゴールドマン・サックス証券、マネックス証券を経て2014年より現職。経済予測分析のプロとしての評価が高く、投資家目線で財政金融政策を分析する。著書に『日本人はなぜ貧乏になったか?』、『日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか?』他がある。
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