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東芝の解体が社員にとって「幸せ」かもしれない理由
http://diamond.jp/articles/-/149900
2017.11.17 鈴木貴博:百年コンサルティング代表 ダイヤモンド・オンライン
東芝は解体によって低収益企業になる。しかし、投資家はいざ知らず、社員にとって解体後の東芝は「悪くない会社」になるかもしれない Photo by Hiroyuki Oya
テレビ事業まで中国に売却
東芝は低収益企業になる
東芝が11月14日、赤字が続くテレビ事業子会社を中国電機大手のハイセンスグループ(海信集団)に売却すると発表した。レグザブランドのテレビを製造販売している東芝映像ソリューションを、レグザのブランドとともに約129億円で売却するという内容だ。売却のめどは来年2月末頃だという。
これまで東芝は経営の健全化を目指し、白物家電事業を別の中国家電大手に、成長が期待された医療機器事業をキヤノンに売却した。一番稼いでいる半導体メモリ事業も日米韓の企業連合へ売却することになっている。それに続いてのテレビ事業売却だ。
11月上旬に発表された東芝の2017年9月中間連結決算(今年度上半期の業績)は、売上高2兆3900億円、営業利益2318億円というものだった。収益を牽引したストレージ&デバイスソリューション部門の中で、売却を予定している半導体メモリ事業の営業利益は2050億円と9割を占める。もし半導体メモリがなくなると、残された東芝はまったく収益があがらない会社になる予定だ。
「まったく収益があがらない」というと怒られてしまうかもしれないが、単純計算で稼ぎ頭の半導体メモリを引き算すれば半期売上高1.8兆円、営業利益268億円という低収益企業になってしまう。
残った事業群は低収益事業ばかりで、半期で100億円台の営業利益を稼げているのは3事業だけ。それらは、半導体メモリと同じストレージ&デバイスソリューション部門におけるハードディスク事業とデバイス事業、リテール&プリンティングソリューション部門(東芝テック)における小売業向けPOSレジなどの事業だ。
あとは、数十億円の利益をようやく稼いでいるような部門しかなく、先日大幅な業績回復を見せたソニーの画像センサのように、年間1000億円を稼いでくれそうな事業はもはや残されていない。
だから、「恒常的な赤字で引き取り手がある事業ならば、引き取ってもらいたい」というのが経営陣の本音だろう。その意味では、半期で47億円の赤字を出していたレグザをハイセンスが129億円で引き取ってくれるというのは、渡りに船という取引だったろう。
もう1つ引き取り手がいれば、ダイナブックという強いブランドを持つ赤字部門のPC事業も「どこかが引き取ってくれるといい」と経営陣は考えているのではないだろうか。
ドンキとヤフオク!で考える
東芝の「解体方法」は正しいか?
さて、一歩引いて、このような企業の「解体方法」は正しいのかを考えよう。
東芝の経営判断は株主から言えば言語道断で、稼ぎ頭の半導体メモリと成長株の医療機器を売却してしまうくらいなら「原子力部門を切り離せ」というような怒りは感じているはずだ。たとえ原子力部門が売れたとしても、巨額損失の穴埋めはできないからこそ、稼ぎ頭の事業を売らなければいけないわけだ。その意味では、不正会計と原子力子会社の巨額損失が起きた段階で、株主の利益はすでに詰んでしまっているわけだ。
では、株主以外の利害関係者から見て、この一連のグループ解体の方向は良かったのだろうか。意外に思うかもしれないが、こうした事態に陥ってしまった後の対処として、筆者は「いい解体方法を選んだ」と考えている。
今後も成長性が見込めない低収益事業だけをたくさん抱える東芝の解体方法の、いったいどこがよいのか。残されるのは、原子力、火力・水力、送変電・配電、そこそこの利益があがっているエレベーターなどのビル・施設、赤字の公共インフラ、産業システム、インダストリアルICTソリューション、そして前述の100億円以上を稼げる3事業である。これらを全部合わせて、年間で500億円程度の営業利益が出れば御の字という陣容だ。
にもかかわらず、現在の陣容にはある魅力がある。それは合計で稼ぐ粗利が多いことだ。
粗利というのは、売上から原価を引いた数字で、アメリカ流の経営学ではまったく重視しない経営指標である。もっと侮蔑的に言えば、経営を知らない初心者が注目する数字である。
たとえば彼らが、ドン・キホーテで3500円で買った商品をヤフオク!で4000円で売れることに気づいたとしよう。粗利は500円だ。これを経営の初心者は「500円儲けた」と言う。そこで毎日ドンキに出かけ、15個くらい売れそうなものを仕入れては、ヤフオク!で売る。そうすれば、「毎日7500円儲かる。1ヵ月で22万円も儲かる」かもしれないが、これはあくまで粗利である。
実際にこんな生活を始めたとしたら、ドンキに行く手間とヤフオク!に出品する手間、取引メッセージをやりとりする手間、ヤマト運輸の配送所に商品を持ち込む手間で、毎日6時間、月200時間は時間がとられるかもしれない。それらの人件費を考えれば、時給1000円として月20万円は給料が欲しいところだ。
つまりこの商売、粗利は22万円儲かるが、自分に人件費を払うと仮定したら、2万円しか営業利益は残らない。自分でやるならそれでもいいが、誰かを雇ってやれば1ヵ月の売上高は176万円なのに営業利益は2万円しか稼げないという、うすーいビジネスなのだ。そして、半導体メモリ売却後の東芝は、これとよく似た状態になっている。だから資本家から見れば、東芝はまったく魅力的には見えないのである。
紆余曲折の末に辿り着いた
「それでも雇用できる企業」の姿
しかし、別のポイントから見れば、このやり方で人件費は稼げていることになる。資本家ではなく個人でこれをやれば、20万円の収入が十分かどうかは別として、生活は成り立つ。つまり粗利が大きければ、会社として雇用は維持できるのだ。
東芝はこのような大騒ぎが起きる前は、19万人の従業員を雇う大企業だった。売上高5兆円、粗利1.4兆円規模の企業でなければ、これだけの数の従業員は雇用できない。今の日本経済を考えれば、雇用を維持できることは、社会にとって実に重要なのである。
そして、東芝は稼ぎ頭は売却したが、それでも切り詰めれば十数万人の従業員を雇用できるだけの粗利を稼げる事業を残している。言い換えれば、資本主義に走り、利益を水増しし、資本市場から信頼を失い、優良部門を解体することになった東芝が最後にたどりついたのは、「それでも従業員を雇用できる企業体」という姿だったことになる。
過去の3社長とその取り巻きはとんでもない人たちだったが、今残っている人たちにとって、東芝は「ちょっといい会社」なのかもしれないと筆者が思ったのは、このような理由からである。
(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
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