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「地銀の7割は5年後に赤字」金融庁の試算を再現してみた
http://diamond.jp/articles/-/149435
2017.11.15 週刊ダイヤモンド編集部
10月25日、銀行の監督官庁である金融庁は「地銀の過半数が本業赤字」という試算結果と、2017年3月期の本業の利益とその前期との比較に基づいた散布図を公表した。週刊ダイヤモンドはこの図を再現し、地銀が抱える苦悩の核心に迫る。(「週刊ダイヤモンド」編集部 田上貴大、鈴木崇久)
「今後、ビジネスモデルに深刻な問題のある地方銀行には、立ち入り検査を行っていく」──。
今年10月下旬、こう言い放ったのは、銀行の監督官庁である金融庁の森信親長官だ。地銀の頭取が一堂に会する場でのことだ。
この発言を聞いて、耳を疑った金融関係者は少なくない。というのも金融庁は、かつて不良債権問題を抱える銀行に立ち入り検査を行い、その処理を厳しく指導してきた検査局を来年にも解体するなど、「脱・金融処分庁」の路線を打ち出しているからだ。
何が起きているのか。実は、この発言は“処分庁”への逆戻りを意味しているのではない。むしろ地銀との“対話”に本腰を入れようとする、金融庁の腹積もりがにじみ出ているといえる。
これまでも、変革に積極的な地銀は存在していた。例えば、金融庁の考えやアイデアを聞いて、現場にそれらを伝える地銀の頭取などがそうだ。ところが、あまり成果が出ず、ある金融庁幹部は「評判のいい頭取でも必ずしもパフォーマンスがいいとは限らないのはなぜなのか、ずっと疑問に思っていた」と困り顔だった。
だが今後は、文章でのやりとりでは分からないような悩みを対面で聞き出し、改善状況を継続的にフォローしていくことを目的に、地銀に乗り込んでいく考えだ。
前出の金融庁幹部も、「頭取に問題があるのか、それとも現場が動いていないのか、何が原因でもうけられないのかは、頭取をはじめとしたいろいろな人と話さないと分からない」と、立ち入り検査という名目で、地銀と対話することの意義を説く。
ただし、このように金融庁は対話を重視するとはいうものの、地銀に対する姿勢は厳格そのもの。それは、この会合で森長官が述べた、地銀の行く末を占う恐るべき“予言”に表れている。
「5年後に、約7割の地銀で本業の収益がマイナスになる」──。
この予言を明示したといえるのが、この会合から数日たった10月25日に公式発表された、「金融レポート」だ。
金融レポートとは、金融庁が金融行政における1年間の進捗や実績をまとめた資料のこと。今年は昨年に続いて2回目の発表となったわけだが、昨年の金融レポートには金融庁の腹の内がありありと記されていたこともあり、多くの金融関係者が今年の発表を待ち構えていたものだ。
とりわけ昨年の金融レポートで金融関係者の注目を集めたのが、独自の試算結果に基づく地銀の収益予測だった。
もともと金融庁は長年にわたり、全国的な人口減少に伴う資金需要の低下が地銀の収益環境を悪化させると警鐘を鳴らし、地銀に対してビジネスモデルの見直しを訴え掛けてきた。
その中で金融庁は、地銀の本業である個人や企業への融資業務に加え、投資信託などを窓口で販売する手数料ビジネスの二つに焦点を絞った。さらに、これらを顧客向けサービス業務、すなわち「本業の利益」として、それぞれの地銀でどれだけ利益を生み出しているかを計算し、記載したのだ(詳しい計算方法は図「金融レポート「顧客向けサービス業務」の散布図の再現」参照)。
その結果、2015年3月期の決算で、4割の地銀において本業の収益がマイナスに陥っていると指摘、さらに今後の人口動態予測を加味して将来収支を分析したところ、10年後の「25年3月期には6割を超える地域銀行がマイナスに陥る」という、地銀にとって衝撃的な予想を記している。
そして、前回の試算から約1年。今年の金融レポートでは、17年3月期決算を基に同様の試算を行い、昨年を上回る驚きの予想が示された。すでに過半数の地銀が本業赤字に陥っているのに加え、前述の「5年後に約7割の地銀が赤字」という森長官の発言に表れているように、本業の収益が「(昨年度の)推計・試算を上回るペースで減少している」という将来予想が示されたのだ。
■地銀の散布図を再現
今年の金融レポートでは、顧客向けサービス業務について、17年3月期決算による試算結果を縦軸に、その前の決算による試算結果と比較した増減率を横軸に取って、地銀ごとの実力値を散布図で示してある(下図参照)。
端的に言えば、4象限のうち、上半分に位置する青い点は本業が黒字の地銀で、右半分に位置する地銀が、この1年間で本業の利益を伸ばしていることを表している。
一方、下半分に位置する赤い点が、本業が赤字の地銀だ。「過半数が赤字」という指摘の通り、青をしのぐほど赤が多いのが分かる。
特徴的なのが、点の9割以上が散布図の左半分に寄っていること。これは、ほとんどの地銀において、この1年間で本業の利益が縮小していることを示している。
もっとも、この散布図にはどの点がどの地銀を指すという記載はなく、地銀からすれば「同じ地域の銀行と比較したとき、自分の銀行は上なのか下なのか」「金融庁が最も問題視している銀行はどこなのか」が分からない状態だ。
そこで本誌は、金融庁が公表している試算方法と地銀の決算数字を基に、地銀の名前が入った散布図を再現した(下図参照)。
図を見ると、まず目に入るのが、右上と左下の二つの地銀だ。
右上のスルガ銀行(静岡県)は、住宅ローンなどの個人への貸し出し業務に特化した地銀であり、金融庁の試算結果に基づくと、本業の利益が安定していて、前年より成長を見せるなど、その健全ぶりをアピールする形となった。
一方、左下の島根銀行は、本業が赤字の上、前年度比の収益減少の割合が最も大きく、苦しい経営状態に陥っている。
他にも、右端の佐賀共栄銀行(佐賀県)は、本業こそ赤字だが、前年度より大きく利益を改善したことで、金融庁も注目している。
また、来年4月を予定していた経営統合が半年延期になった新潟県の第四銀行と北越銀行の2行は、どちらも本業の利益が赤字に沈むという試算結果となった。統合による経営の合理化でコスト削減に期待を寄せるが、そのためには、統合によって新潟県内のシェアが高くなり、金融機関同士の競争がなくなるという観点から、経営統合に「待った」をかける公正取引委員会を納得させることが必要だ。
島根銀行をはじめ、散布図の左下には地方の2番手、3番手の地銀が並ぶ。この散布図は「金融レポートへの掲載は初めてだが、毎年同様のものは作成している」(別の金融庁幹部)ため、こうした地銀の動向には、すでに金融庁が目を光らせているのは間違いない。
■神戸製鋼の不正が飛び火
そもそも、これまで見てきたように地銀が本業で伸び悩んでいる背景には、収益環境の悪化という苦しい懐事情がある。
一つ目の本業である融資業務については、個人から集めた預金を企業へと貸し出し、その金利差である利ざやが収益源であるが、日本銀行のマイナス金利政策の導入などにより、利ざやが下げ止まらなくなっている。
もう一つの本業である手数料ビジネスも、成長に陰りが見える。顧客の資産形成を置き去りにし、自らの収益を増やすために、手数料が高い金融商品の販売に傾倒していると、金融庁が銀行の販売姿勢に警鐘を鳴らしたためだ。
こうした厳しい収益環境において、最近の地銀は少しでも稼ぎを増やそうと、「もろ刃の剣」ともいえる新しいリスクに手を出してきた。そして、損害を受けた地銀も多く見られる。
例えば、日本国債よりも利回りが高い米国債などの外国債券に運用資金を振り向けた地銀が続出したが、金利上昇により外債価格が急落。数百億円の損失を被った地銀が出る始末だ。
また、アパート・マンション向けローンやカードローンを急増させた地銀も多かったが、融資審査のずさんさや顧客軽視の姿勢を金融庁が問題視。特にカードローンは、消費者金融に次ぐ多重債務者の温床になっていると疑われ、社会問題化してしまった。
そして今、一部の地銀において思わぬリスクが顕在化していることが判明した。融資をしているわけでもないのに、神戸製鋼所のデータ改ざん問題が引き金となって、ある“爆弾”の導火線に火が付いてしまったのだ。
その正体は、社債や貸出債権を担保にして発行される、債務担保証券(CDO)という金融商品だ。
ある金融庁幹部によれば、「金融業界では、証券会社などが各業界の3番手以下といったような企業を使って、CDOをつくってきた」という。業界再編で名前が挙がることはあれ、さすがにその企業がつぶれることはないだろう──。そんな微妙なラインの企業を狙ってCDOを組成することで、高い利回りを実現してきたのだ。
そして、「いいかげんにしてくれという感じだが、そういうCDOを地銀が買っていた」(前出の金融庁幹部)という。
そこで、心配になった金融庁がすぐさま神戸製鋼を使って組成されたCDOが出回っていないか調べたところ、やはり見つかったという。「それほど巨額ではないが、経常利益と比べてこんなに投資をしているのか、という小規模な地銀もある」(同)ようで、神戸製鋼に万が一のことがあって、そのCDOの価値がゼロにでもなれば、そうした地銀は「大やけどを負うことになる」(同)という。
まさかの神戸製鋼の“飛び火”をもらうなど、今の地銀は新たな稼ぎどころとして手を出したものが次々に裏目に出るという惨憺たるありさまだ。
このように七転八倒が続くようであれば、金融庁が再試算した「7割の地銀で赤字」という予言は、5年も待たずして的中することになるだろう。
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