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高速道路に「自動運転専用レーン」をつくるときが、もうすぐやってくる
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171109-00010002-wired-ind
WIRED.jp 11/9(木) 19:00配信
IMAGE COURTESY OF MADRONA VENTURE GROUP
渋滞や交通事故の減少も期待できる自律走行車。その普及を後押しするために、自動運転技術を搭載したクルマの専用レーンを段階的に設けるアイデアの実現に向けて、米国のヴェンチャーキャピタルが動き始めた。
いつかは自律走行車、すなわちロボットカーがアメリカ中の道路を支配する。車間距離はわずか数センチ。絶対にミスをしないコンピューターが制御しており、安全も保たれている。渋滞はなくなり、大気汚染物質はより少なく、致命的な交通事故もなくなる──。
こんな期待に満ちた表現や、威勢のいい言葉を聞いたことがあるはずだ。しかし、まだ「いつか」の話だ。自律走行車の走る未来はすぐそこまで来ているが、完全に道路を席巻するまでは、滅茶苦茶な運転をする人間たちと同じ空間をシェアしなければならない。
人間は予測不能な生き物である。いつもルールを守るわけではないし、集中力を欠くこともある。急ブレーキや急停車、突然の車線変更もする。カリフォルニア州車両管理局の調査によると、人間はロボットにとって脅威になるのだという。自律走行車は赤信号や停止標識で律義に停車するので、その後ろにつくことを嫌うという結果が出たからだ。
解決するには、人の運転するクルマと自律走行車の走る車線や道路を分ければいい。それが、シアトルとカナダのヴァンクーヴァーを結ぶI-5フリーウェイを「自動運転回廊」にすることを想定した政策提案書の中身である。つまり、国境をまたぐ主要な都市間道路を2040年までに自律走行車専用とし、人間の運転する“前時代的な”車両は通行禁止にするというアイデアだ。
最初にこのアイデアを発表したのは、ヴェンチャーキャピタルのマドローナ・ヴェンチャー・グループで、2016年のことだった。同社は現在、この突拍子もないアイデアを実現させるための手段を検討している。これにはアマゾンの取締役であるトム・アルバーグと、元マイクロソフト最高技術責任者(CTO)で米外交問題評議会の会員でもあるクレイグ・マンディらが参画している。
「このアイデアはどの都市でも幹線道路や大都市圏に適用できます」と、アルバーグは話す。確かに、ほかの地域でも実施できると証明するのは比較的、簡単だろう。ただし、複雑な問題を抱える二国間をまたぐ道路では難しいかもしれない。
2040年、高速は「自動運転回廊」になる
計画によると、自律走行車への移行初期には「HOVレーン」において、パワートレインや乗車人数に関係なくすべての自律走行車が走行可能になる。HOVレーンとは、乗車人数が規定以上だったり、ハイブリッド車のように環境に配慮した車だけが走行できる車線で、渋滞緩和と排気ガスの削減を狙ったものだ。現状でもほかのクルマの交通の流れとは隔てられているため、すでに登場している半自動運転のクルマでも走行しやすい。マドローナの担当チームは、このような施策を年内に実施すべきだという。
そして2025年までに、人が運転するクルマはHOVレーンを使えなくなり、その隣の車線も順次、自律走行車の専用レーンとなるだろう。車間を詰めることが可能になり、2車線を3車線分として使えるようになるという。2030年までには、ほぼすべての高速道路が自律走行車専用となり、2040年には人間の運転するクルマは完全に締め出されるだろう。
政策提案書では、このように説明されている。「(人が運転するクルマから自律走行車への)移行の最終段階では、世論と自律走行車自体の供給状況が(完全に移行できるかどうかの)決め手となるでしょう。自律走行車が安全性や効率、生産性において非常に有用だという実績やデータが集まれば、次の10〜20年で変化が起きるはずです」
この提案内容は、I-5フリーウェイのうち140マイル(約225km)に限った話だが、カリフォルニア州でも実現できそうだ。同州では、すでに電気自動車(EV)のHOVレーン走行が認められている。同じように自律走行車にもインセンティヴを与えることができば、その需要増と交通事故の低減につながるだろう。
“ペースメーカー”として渋滞を解消
自律走行車など買う余裕もないし、そもそも運転がしたいと考える人にとっては不公平な話だと思うだろうか。しかし、心配は無用だ。人の運転するクルマと自律走行車が共存する間は、自律走行車によって交通の流れが改善されると、その効果は全体の交通の流れに波及することがわかった。
一般道を走る車両の5パーセントが自律走行車になると、人の運転するクルマがストップ・アンド・ゴーを繰り返すために起きる渋滞は解消される。人の運転する20台のクルマに1台の自律走行車が入るだけで“ペースメーカー”となり、渋滞の見えざる原因を解消できるという。
英国の交通エンジニアたちは同様の概念を適用した「スマート高速道路」を構想している。複数の制限速度を設けることで、ゆっくり走っても交通の流れがスムーズになるというものだ。結果は良好で、スピードの急な変化が少なく、事故が減少したため、目的地までの所要時間も短縮できたという。
もちろん政策提案書では、全米の交通局にこうした大変革を求めているわけではない。アルバーグは、交通エンジニアや交通委員会、高速道路の管理者に自律走行車の存在を考慮に入れてもらうことが当面のゴールだと考えている。まだ影響力は小さいが、ワシントン州運輸局から次の公開会議で計画を発表してほしいと招待され、励みになっているという。
もし、自律走行車の専用レーンを走ってみたいと思っており、さらに資金があるなら、半自動運転のクルマはいまでも購入できる。テスラ、キャデラック、アウディ、メルセデス・ベンツ、日産自動車が販売しており、高速道路である程度の自動運転を楽しめる。この調子で自動運転技術が広まり、道路が自律走行車に明け渡される日を、アルバーグらは心待ちにしている。
JACK STEWART
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