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来年1ドル120円の上値試すも ドル高・円安サイクルは終盤へ
http://diamond.jp/articles/-/148155
2017.11.6 田中泰輔:ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー ダイヤモンド・オンライン
来年のドル円相場は115〜120円の上値を繰り返し突っ掛ける展開を予想する。今年はこれまで110円前後のレンジを上抜けできず、上方へと動き始める場面を辛抱強く待つことが多かった。この忍耐が報われる条件がそろったのはここ1、2カ月だ。米国・世界の景況改善を背景にリスクオン環境下の円安機運が次第に強まった。
トランプ政権の政策実現性への懸念が喧伝されがちだが、選挙公約の華々しさはなくなっても、小規模に分散された政策が米景気の底堅さに寄与している。米議会は減税法案の年内実現に動いている。米経済成長率は今年2.2%、来年2.4%を見込む。完全雇用下で巡航速度を超える成長が続けば、賃金・物価がじわり上向き、米金利の上昇に沿って、ドル円は上値トライを繰り返すはずだ。
底堅い内需と財政政策に加え、外需の改善も米景気をサポートする。今年半ばには欧州やカナダの景況改善がその通貨を反発させ、ドル安を促した。このドル安に乗じて、中国は元安と資本流出の抑止に成功した。中国リスクの後退はアジア全般の見通しを安定させた。世界景況の改善で、資源など商品相場も新興国市場も底堅さを増している。外需好転とドル安は米企業の輸出と海外収益を増加させ、米株の一段高を促している。
米株高は日本株高をもたらし、リスクオン機運が円安を誘う。日本株価とドル円の密接な連動はよく知られる。円安は、日本企業の輸出と海外収益を増加させること、外国人が円安でドル換算した日本株保有比率の低下分を買うこと、これに投機の買いが便乗すること等で、日本の株高を招く。ただし足元では、日本株価の上昇にドル円が追随せず、両者が乖離している(下図参照)。
昨年ドル円が100円前後に至った過程で、外国人は日本株を慌てて売って過少保有状態になった。昨年暮れにトランプ政権の政策期待で円安・株高になって以降、海外投資家は日本株の過少保有の修正買いを思案し始めた。しかし、北朝鮮絡みの有事リスクを懸念して動けなかった。
9月に米株高、世界景況改善、北朝鮮問題の小康が重なり、好感した日本株価が上抜けし、後手に回った外国人が修正買いに突き動かされている。
一方、為替市場では、日本の機関投資家がドル円を110円前後で押し目買いする一方、115円への上昇相場に乗って買うことはないだろう。今後米金利上昇に伴うドル円上昇は専ら海外投機筋の買いがけん引役だろう。彼らは機動的に売り手にも転じるため、日本投資家の下支えを欠くドル円の上昇軌道には下振れ場面が度々生じるとみる。
さらに2018〜19年に米景気にピーク感が出ると、日本投資家も益出しやヘッジのドル円売りに動くだろう。12年暮れ以来のドル高・円安基調も来年は終盤戦と考える。
(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー 田中泰輔)
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