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日産、スバル、神鋼が不正を働く本当の理由は「グローバル競争の激化」ではない
http://diamond.jp/articles/-/148118
2017.11.4 小宮一慶 ダイヤモンド・オンライン
■「グローバル競争の激化」だけの説明では不十分
日本のものづくり企業の信用を揺るがす不祥事が続発しています。今回は、その原因がどこにあるのかを考えてみたいと思います。
小宮一慶 小宮コンサルタンツ代表
これは、大企業だけに起こる問題ではなく、中堅・中小企業などどの会社でも起こることだと私は考えています。
今回の一連の不祥事に関して、一部の方たちは、「グローバル競争の激化」を原因に挙げています。競争激化により、収益環境が厳しくなり、正社員を非正規の社員に代えるなどすることでコスト削減を行い、それによって、品質や管理の低下が起こるというものです。
もちろん、そのこともあるでしょうが、グローバル競争の激化は、不正を起こした企業にだけあることではなく、また、日本企業にだけ起こっていることではありません。世界中の多くの企業が直面していることです。
そのことだけでは十分な説明ができません。私は、後に説明する、経営者が「目的」と「目標」の違いを理解していない、もっと言えば、それも含めた「経営哲学」を十分に醸成できていない経営者の増加だと考えています。そのことを話す前に、簡単に今回の一連の事件を振り返ってみましょう。
日産自動車は9月29日、国土交通省内で緊急記者会見を開き、資格のない従業員が完成車の検査を行っていたことを公表しました。完成車は本来、国が道路運送車両法に基づき安全性を調べる必要があるのですが、それでは大量生産に支障が生じるため、各メーカーの社内資格を取得した検査員が代行できる仕組みになっています。国と自動車メーカーの信頼で成り立っている仕組みですが、日産は無資格の補助検査員が検査を代行していました。
しかも、日産は、9月18日の国土交通省の抜き打ち調査で不正が発覚したため「是正した」と説明していたのですが、その後も一部の工場では不正が続いていたことが明るみに出ました。
この問題は日産にとどまらずスバルでも発覚し、無資格検査が30年以上も前から常態化していたことを認めました。
一方、鉄鋼メーカーの神戸製鋼所は10月8日に記者会見を開き、強度のデータの改ざんを発表して謝罪しました。自動車や航空機などに使われるアルミ製品の一部で、各メーカーに約束した強度を満たしていないにもかかわらず、検査証明書のデータを書き換えて出荷していました。会社側は組織ぐるみの改ざんであることを認め、また、アルミ部門以外でも不正が発覚しています。
さらに子会社はJIS規格を満たしていない製品にJISマークを表示して出荷していたことから、JIS認証の取り消し通知を受けました。
品質表示の偽装は素材メーカーとして最もやってはいけないことだし、それを新幹線や、航空機、自動車という人命に関わる製品向けに納入することなど考えられません。それでもこの企業の製品を喜んで買いたいと思う顧客がいると思っているのでしょうか。企業経営の根幹である信用が失墜したという十分な認識を経営陣は持っているのでしょうか。
■「目的」と「目標」の違いを経営者が十分に理解していない
私は、このような不祥事を起こす会社に共通することは、経営者が正しい経営哲学を十分に持っていないことだと思っています。これは、大企業でも中小企業でも同じです。そのひとつが「目的」と「目標」の違いを理解することだと私は考えています。
経営においても人生においても「目的」と「目標」の違いを理解することがとても大切なのです。「目的」とは、最終的に行きつくところであったり、「存在意義」です。「目標」は目的に至る通過点や、目的の達成度合いを表す評価だと私は考えています。
どの企業にも共通する「目的=存在意義」は2つあると私は考えています。
まず、ひとつ目は、「良い商品やサービスをお客さまに提供し、お客さまに喜んでいただき、それを通じて社会に貢献すること」です。これは、別に良い恰好を言っているわけではなく、これなしに成り立つ会社はありません。ピーター・ドラッカーは「独自の商品やサービスを提供する」という言い方をしています。
さらに、もうひとつ重要な存在意義は「働く人を活かし、幸せにする」ことです。「ヒト・モノ・カネ」と会社が使う資源を同一に扱いがちですが、それは間違いです。人を幸せにする目的で社会は存在し、その社会の一員である企業も、働く人を活かし、幸せにする義務があるのです。
そして、売上高や利益は「目標」です。上で述べた「目的」を追求した結果であり、「目的」がどれだけ達成できているかどうかの尺度なのです。しかし、経営者が十分にこのことを理解していなければ、「目標が目的化」するのです。東芝の不正経理も原因は同じです。そうなると、社内では遵法精神が薄らぎ、また、働く人も疲弊してきます。
■会社が存在を許される最低条件は法律を守ること
ピーター・ドラッカーの言葉を借りると、会社がこの世の中で「存在」を許される最低条件は「法律を守ること」です。
法律とはこの世の中で人々が平和に暮らすために「最低限」守らなければならないルールのことです。法律を守っていてはもうからないという勘違いした経営者がいますが、もうからないのはお客さまが評価する適切なQPS(Quality、Price、Service)を提供していないからであり、法律を守っているせいではありません。
法律が間違っているのなら、法を破るのではなく、日本は民主国家ですから、正当な手続きでそれを変える努力をするべきです。各人が法律を勝手に破っていては、社会の秩序は保てないのです。
ドラッカーの言葉には続きがあって、企業が「存続」を許される条件は、「良い商品やサービスを提供して、社会に貢献すること」だというのです。
社会貢献の根源は、まさに、お客さまに良い商品やサービス、できれば独自の商品やサービスを提供することです。その結果、企業の売上げが上がり、利益が出て、社員の雇用を守ることができる。株主や仕入れ先にも利益を還元できます。それが社会貢献につながるのです。
日産、スバル、神鋼の3社は遵法意識が乏しく、企業が「存在」を許される最低条件を満たしていません。「日本のものづくり」の信用も失墜させ、他の多くのまじめにものづくりをしている企業にも多大な迷惑をかけました。
現場の社員は上司の指示に従っただけと言うのかもしれませんが、上司がどのような指示を出そうとも、法律を守らなければならないことは常識以前の問題です。社員たちがそういう考えを受け入れる土壌があることも問題です。「コンプライアンス」ということが社内に浸透していないのです。それも当然、経営者の責任です。
そして、もし、経営者に不正行為が報告されていなかったとすれば、会社組織自体が劣化している証拠です。そのように劣化した組織を放置していたとすれば経営者の能力不足ですし、報告されても黙認していたのであれば言語道断です。
いずれにしても、経営者が正しい経営哲学を持つこと、そしてそれを全社に浸透させることが、何よりも大切なのです。
(小宮コンサルタンツ代表 小宮一慶)
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